本研究はキョンの聴覚受容に関する第一段階の調査として、純音刺激に対する反応を調査した。純音刺激に対する反応を調査した。個体間の視覚的接触を制限した上で9頭の供試個体に対して実験を行った。50 Hzから40 kHz の9種の純音を低周波数から順に提示した。各音は10秒間提示し、その後に30秒間の無音時間を設けた。60%以上の個体が全ての音刺激に対して耳介動作や音源定位の反応を示したことから、50 Hzから40 kHzまでの周波数はキョンの可聴域に含まれることが示唆された。瞬間的な筋肉の収縮は30 kHzで2頭、音源から離れる行動は50 Hz、5 kHz、30 kHzでそれぞれ1頭みられた。音源定位持続時間は周波数間での差は見られなかったが、個体間で有意な差が見られた(P<0.001)。これらの結果から、キョンの可聴域は50 Hzから40 kHzの範囲を含むことが推定された。また、特定の周波数域の音はキョンの行動に一時的に影響を与える可能性が示された。しかし本研究で用いた音を提示するだけでは、驚愕や逃避を誘発して長期的に行動を制御することは困難であろう。
獣舎転居がキリンの行動と糞中コルチコステロン濃度に及ぼす影響を調査した。2021年7月から2023年8月にかけて、埼玉県こども動物自然公園にいる4頭のキリンを対象に、転居前(15日)、転居直後(7日)、転居5-6ヵ月後(15日)、転居17-18ヵ月後(15日)に5分間隔の瞬間サンプリングを行った。さらに、各期間中2日おきに糞を採取し、糞中コルチコステロン濃度を測定した。転居前と比較して、転居直後と転居5ヵ月後に移動と糞中コルチコステロン濃度が有意に増加した。さらに、転居17ヵ月後には、移動は転居前と同程度の発現割合となり、糞中コルチコステロン濃度は有意に減少した。以上のことから、キリンにおいて、獣舎転居の影響は少なくとも5-6ヵ月後まで持続することが示唆された。
これまで日本の動物園で屠体給餌が行われてきたが、動物の行動への影響や来園者への教育効果に不明瞭な点があった。本資料では、京都市動物園で実施したニワトリを活用した屠体給餌に着目し、来園者への採卵鶏のアニマルウェルフェアに関する啓発効果と、ジャガーの行動に与える効果を調査した。教育効果は2021年10月から11月に実施した屠体給餌プログラムでの参加者アンケート(195件)の自由記述をテキストマイニングで評価した。行動評価は2024年2月から5月にジャガー1頭を対象に実施した。結果、自由記述には、採卵鶏の飼育環境への関心の喚起やフードロス削減に関する記述が認められた。ジャガーの行動は、ニワトリの屠体給餌時に、先行研究同様、常同行動が有意に減少し、採食行動が有意に増加した。つまり、ニワトリの屠体給餌により、採卵鶏のアニマルウェルフェア啓発に貢献でき、また、肉食動物の採食環境を改善する効果が望めた。
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