タケの給餌による採食エンリッチメントが動物園で飼育されているアジアゾウ(Elephas maximus)の行動発現割合に及ぼす効果を検証した。4頭のアジアゾウ(雄1頭および雌3頭、年齢4〜8歳)を、慣行給餌区(CON区)とタケ給餌区(BAM区:慣行給餌区のスーダングラス乾草を2.5 kg原物/頭を4.5 kg原物/頭のタケに置き換え)に割振った。屋外展示場に放飼した昼間(9:30 am-3:30 pm)の行動は、目視により2分間隔の瞬間サンプリングで記録し、屋内飼育房に収容した夜間(3:30 pm-9:30 am)の行動観察はビデオカメラを用いて行い、5分間隔の瞬間サンプリングで記録した。日中のBAM区のゾウは、CON区のゾウより採食の発現割合が多く、これは乾草をタケに置き換えることで給与量が増えたことと、タケの採食には葉や稈を操作する時間が必要なことが影響していた。日中の常同歩行は、いずれの処理区でも観察されなかった。日中におけるタケの給餌は、夜間の行動発現割合には影響しなかった。夜間では、処理区によらず常同歩行の発現割合が15.6~22.3%を占め、とくに早朝での発現割合が高かった。以上から、乾草をタケに置き換えることで採食時間が増加することが示唆された。また、常同歩行は早朝に発現割合が高かったことから、採食エンリッチメントは早朝に実施した方が効果的な可能性を示唆している。
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