ブリーフサイコセラピー研究
Online ISSN : 2432-9371
Print ISSN : 1880-5132
26 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
特集 「ブリーフ」を再定義する
  • 北村 文昭
    2017 年 26 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2018/01/20
    ジャーナル フリー

    ブリーフサイコセラピーの原点には,「問うこと」がある。「ポジティビティ」そして「プラグマティック」というブリーフサイコセラピーの特徴は,様々な現代のセラピーを支える比喩的な意味でのオペレーティングシステムとして存在すると考えられる。次に現代の私たちに降りかかる諸「問題」と対峙するセラピーとしてのブリーフサイコセラピーを考察する。例えば,臓器移植をめぐる難問は,限られた時間の中で自らの,そして周囲の人々の人生を左右する選択を迫ることがある。このような「問題」に応えるのはやはり「限られた時間内の問い」であろう。ブリーフサイコセラピストはその質問の特徴を活用して,専門家であるクライエントに専門家として本領を発揮することを援助する。さらにブリーフサイコセラピーの言葉の特徴を検討することが必要である。

  • 八巻 秀
    2017 年 26 巻 1 号 p. 7-20
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2018/01/20
    ジャーナル フリー

    本論文では,〈ブリーフ〉を再定義するために,まずブリーフセラピーの始まりは,いつなのかを確認する。その始まりは,これまでミルトン・エリクソンとグレゴリー・ベイトソンが多く言及されている。筆者は,〈ブリーフ〉の始まりとして,これらにもう1つ時代を遡って,アルフレッド・アドラーの臨床実践とその思想を加える必要があると考えている。アドラーの臨床実践は,短期的・効果的・効率的という現代のブリーフセラピーの考え方に通じるところは多い。またアドラー心理学は,技法と理論とともに「思想」もあるという三位一体の体系をなしている。これまでブリーフセラピーは,様々な技法と理論が開発され,臨床心理学の技法や理論の発展に大いに貢献してきたが,思想については議論されてこなかった。そこで,アドラーが示した「臨床思想」の検討が,これからの〈ブリーフ〉を考えていく上で,必要になってくると思われる。そこで,ブリーフセラピーの臨床思想につながる共通項として,「臨床的主体性」「臨床的楽観性」「外在化」の3つのキーワードを取り上げて,〈ブリーフ〉の臨床思想の試案を作成した。このような臨床思想を考えていくことで,新しい〈ブリーフ〉の再定義が可能になると思われる。

原著
  • 谷 英俊, 津川 秀夫
    2017 年 26 巻 1 号 p. 21-28
    発行日: 2017/12/31
    公開日: 2018/01/20
    ジャーナル 認証あり

    心理面接においては,既定の治療手続きに従えないクライエントが存在する。本研究では,治療中断を経験してきたクライエントに対して,合わせとずらしを用いる試みについて検討した。クライエントは窓ガラスを触ると性的に興奮を覚え,他人の住居のガラスを触り警察に捕まった。セラピストは,クライエントの考えや行動を受け入れ,その後,合法的にガラスに触れられるよう導いていった。本事例から,(1)クライエントがこだわっている考えや行動に対して合わせること,(2)クライエントのこだわりが少ない部分に変化を加えて望ましいゴールへ導くこと,が有効であることが示唆された。

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