日本クリティカルケア看護学会誌
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11 巻, 1 号
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第10回日本クリティカルケア看護学会学術集会報告 学術集会長講演
第10回日本クリティカルケア看護学会学術集会報告 教育講演
総説
  • 伊藤 聡子, 明石 惠子
    2015 年 11 巻 1 号 p. 19-30
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,せん妄に関する医療者の知識・理解・実践・教育の実態を明らかにし,医療者に対する教育介入の研究から効果的な教育方法の示唆を得ることである.文献データベースを用い,「せん妄」「delirium」「集中治療」「critical care」をキーワードとして2000 年から2012 年の文献159件を抽出した.このうち120 件はせん妄患者を対象とした疫学や発症要因に関する調査であった.
     せん妄に対する医療者の知識・理解・実践・教育の実態を調査した研究は12 文献であった.その主な内容は,せん妄の判定はスケールやガイドラインの活用よりも臨床症状に依存している,せん妄誘発因子への対応や認知的介入の実践度が高い,せん妄の教育を受けている人は少ないなどであった.
     医療者を対象とするせん妄の教育介入の方法や効果を調査した研究は12 文献であった.せん妄の教育介入により,せん妄の知識やスケール使用率などが上昇し,せん妄持続期間などが減少した.また,せん妄教育は講義やベッドサイドでの訓練など複数の方法を取り入れると効果的であった.
研究報告
  • 高田 望, 平野 かよ子
    2015 年 11 巻 1 号 p. 31-40
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
     本研究は,ICU での終末期の意思決定への看護師の参画の現状と,看護師の終末期の意思決定参画に関する課題を明らかにすることを目的とし,全国83 の特定機能病院のICU の看護師を対象に郵送質問紙調査を行った 合計498 部の質問紙を送付し,147 名(回収率29.5%)の回答を得た.
     約6割の看護師は終末期の意思決定の場に同席していたが,意思決定に自分の考えを伝えて参加しているとの認識を持つ看護師は約1割であった.また,約5割の看護師が意思決定に参画したいという態度を示していた.意思決定への参画の認識または態度を強化する要因としてデスカンファレンス,医師と合同のカンファレンス,プライマリーナーシング等が見出された.看護師は終末期の意思決定が遅すぎるというジレンマを感じることが多かった.その背景には医師との医療観の違いがあり,情緒的な面を含め患者の生命の質を総合的に考えていることを,医師中心の意思決定にどのように反映させていくかが課題であると明らかにされた.
  • 山田 紋子, 黒田 裕子
    2015 年 11 巻 1 号 p. 41-51
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,横軸型腹直筋皮弁による一次乳房再建術を受けた初発乳がん患者の手術施行に関する意思決定から決定した手術の結果を認識していくまでのプロセスを明らかにすることである.研究参加者は,手術前に医師より乳房再建術の説明を受け,手術後1年以内の初発乳がん患者12 名であった.データ収集は半構成的面接法にて行い,質的帰納的に分析した.
     分析の結果,このプロセスは,まず手術の施行を決定していく局面は,【乳房全摘術施行の必要性の認知】,【乳房全摘による社会生活の否定的変化の予測】と【乳房喪失による精神的ダメージの予測】,【再建への期待】,【手術施行の決定への後押し】による【手術施行の自己決定】,【自家組織移植の検討】と【シリコン挿入の検討】,【自家組織移植の選択への踏ん切り】からなった.次に自分で決定した手術の結果を認識していく局面では2つのパターンを見出した.決定した結果に対する肯定的な認識のパターンは,【徐々に元通りに近づきつつある身体】と【再建によって維持される社会生活】,【再建への満足】,否定的な認識のパターンは,【手術によって変容してしまった身体】,【選択した再建方法への後悔】からなった.
  • 小笠 美春, 當目 雅代, 野口 英子
    2015 年 11 巻 1 号 p. 53-62
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2015/03/01
    ジャーナル フリー
    Objective:本研究は,入院前待機手術患者の健康関連QOL および不安・抑うつ状態の特徴を明らかにし,効果的な看護援助について示唆を得ることを目的とする.
    Methods:全身麻酔手術を受ける入院前待機手術患者201 名を対象に,麻酔科術前診察受診時にSF-8 およびHADS を用いた自記式質問紙調査を実施した.回答に欠損値のない188 名を分析対象とし,SF-8 スコアおよびHADS 得点について記述統計量を算出し,属性による比較はt 検定または一元配置分散分析を行った.
    Results:入院前待機手術患者のSF-8 サマリースコアのPCS の平均値は45.8 ± 9.2 点,MCS の平均値は47.4 ± 8.2 点であり,日本国民標準値と比較し低値を示していた.特に女性は男性に比べ有意にMCS が低下していた.また,HADS の不安得点の平均値は5.7 ± 4.1 点,抑うつ得点の平均値は5.9 ± 3.8 点であり,40 歳以上の患者で不安得点が高かった.
    Conclusion:入院前待機手術患者は健康関連QOL が低下していた.特に壮年期以上の女性の精神状態は不安定であり,精神面・社会的役割をふまえた支援の必要性が示唆された.
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