日本クリティカルケア看護学会誌
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3 巻, 2 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
第3回日本クリティカルケア看護学会学術集会報告 会長講演
シンポジウムⅠ
シンポジウムⅡ
原著
  • 古賀 雄二, 井上 智子
    2007 年 3 巻 2 号 p. 34-42
    発行日: 2007年
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,脳卒中による意識障害患者が ICU を退室し,一般病棟へ移行する際の家族の困難を明らかにし,看護支援を検討することである.対象は脳卒中による緊急手術患者の主な面会者である家族とした.書面による研究同意を得た 7 名から,ICU 入室中からの面会・説明場面の参加観察,ICU 退室後の計 3 回の半構成面接,診療録閲覧によりデータを得て,Giorgi A の手法を参考に現象学的アプローチを用いて質的分析を行った.その結果,ICU から病棟への移行期は<移行準備期><移行開始期><移行継続期><移行終了期>の 4 時期に分類された.また,家族が移行期に抱く思いとして「患者の生命・治療環境への思い」「意識障害への思い」「家族生活と入院生活への思い」「患者イメージへの思い」「経済的負担への思い」が抽出され,各時期の本質的な意味を図式化した「意識障害患者家族が移行過程に抱く思いの構造図」により家族の移行期の思いの傾向が明らかになった.
  • 若崎 淳子, 谷口 敏代, 掛橋 千賀子, 森 將晏
    2007 年 3 巻 2 号 p. 43-55
    発行日: 2007年
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    本研究は,レジリエンスに着目し,乳房手術後 30 カ月未満に在る成人期初発乳がん患者の QOL に影響する要因を探索することを目的とした.
    QOL-ACD,GSES,SRS-18,精神的回復力尺度,個人的属性で構成された自記式質問紙調査票を用いて,郵送法により 150 名に配布,110 名より回収,このうち 93 名から有効回答が得られた(有効回答率 84.5%).
    階層的重回帰分析の結果,レジリエンスの一要素である肯定的な未来志向であることが,QOL 合計,身体状況 QOL,精神・心理状態 QOL,社会性 QOL,全体的な QOL に良い影響を示した.患者のレジリエンスに関心を向けることは,患者の QOL 向上に向けた支援を検討する上で重要な要素になることが示唆された.
    また,ロジスティック回帰分析の結果,QOL 向上には,活動性 QOL では娘の支え(OR=4.24)が,身体状況 QOL では失敗に対する不安の低さ(OR=3.30)と娘の支え(OR=2.56)が,精神・心理状態 QOL では失敗に対する不安の低さ(OR=6.12)が,社会性 QOL では肯定的な未来志向であること(OR=4.88)が有意に関連し,QOL に影響する要因として示唆された.個人的要因と疾病要因には,QOL に有意な関連はみられなかった.
  • 福田 和明, 黒田 裕子
    2007 年 3 巻 2 号 p. 56-66
    発行日: 2007年
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    重症患者家族ニーズに関するクリティカルケア看護師の認識の実態,また,その認識に対する要因との関連を明らかにするために,206 名の看護師を対象に調査を実施した.データの収集には,筆者らが作成した CCFNI-J,情動的共感性尺度,社会的控えめ尺度,GHQ12 を用いた.
    重症患者家族ニーズに関する看護師の認識は,“危機認識群(15.8%)”,“中間認識群(49.1%)”,“現状満足認識群(35.1%)”の 3 つに分類された.“危機認識群”には 30 歳以上の看護師が 51.8%を占め,“現状満足認識群”には 40 歳以上の看護師が 26.7%を占めた.“危機認識群”は感情的被影響性得点が高く(p<0.05),“中間認識群”は社会的控えめ度が高く(p<0.05),“現状満足認識群”は感情的冷淡さが高かった(p<0.01).看護師の家族ニーズに関する認識は,看護師の個人要因との関連が示唆された.
研究報告
  • 田口 豊恵, 平松 八重子, 小山 恵美
    2007 年 3 巻 2 号 p. 67-74
    発行日: 2007年
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    2003 年,食道がん術後患者に対し,午前中の補光を実施したところ,せん妄発症率の低下および早期離床効果が示された.また,同時計測していた直腸温の周期的変動は,補光後に安定化傾向が示された.しかし,サンプル数が少なく補光効果を裏付けるまでに至らなかった.そこで,今回,約 1 年にわたり,ICU 入室患者の直腸温計測を実施した.さらに,対象の状態から回復群,小康状態群,死亡群の 3 群に分け,三角関数あてはめによる最小自乗法を用いて解析した.
    健常人が示す直腸温の周期的変動は,相関係数 R>0.7,カイ二乗平均自乗誤差<0.1,振幅>0.3 である.この指標をもとにリズム特性を評価したところ回復群で最も明確なリズム性が示された.しかし,周期については,3 群とも 24 時間からの乖離が認められた.治療別に見ると手術療法後は,周期に著しいバラツキはあるが順調な回復を遂げていた.これらの要因として,同調因子の少ない入院環境や手術・麻酔侵襲が影響しているのではないかと考える.
  • 中島 春香, 沓澤 智子, 佐藤 正美
    2007 年 3 巻 2 号 p. 75-82
    発行日: 2007年
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,看護師が観察したこと,アセスメントしたことがどのくらい記録されているのかを,参加観察と記録調査および面接により明らかにすることである.対象は全身麻酔下で手術を受けた消化器疾患患者に対して看護行為を行った看護師 10 名(25.2±2.0 歳)とその患者 8 名(71.0±5.9 歳).参加観察法を用いて看護行為を観察し,その時間帯の呼吸・循環系の情報とアセスメントに関する看護記録を調査・分析し,各々の記載率を計算した.記載内容については,面接法で看護師へ確認し,記載した/記載しなかった根拠と理由をカテゴリー化した.情報のほうがアセスメントより記載されている割合が高かった(情報の記載率 61.8±16.0%,アセスメントの記載率 29.9±22.0%).情報およびアセスメントは,継続したケアや治療方針を残すために記録されていたが,問題状況ではないと記録に残されない傾向があった.これは正常であるという看護師の判断が記録に残りにくい状況があり,今後の課題であることが見いだされた.
  • 第 1 部:心臓外科手術後の変化過程への対応場面に焦点を当てて
    福田 美和子
    2007 年 3 巻 2 号 p. 83-92
    発行日: 2007年
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,ICU 熟練看護師が刻々と変化する臨床においてどのような看護実践をしているのか,その様相を具体的に明らかにし,「ICU には看護がない」と指摘される現状に応えようとするものである.本稿は,その第 1 部として,心臓外科手術後の臨床状況の変化過程に応ずる場面に焦点を当てて具体的に明らかにする.
    参与観察法と半構成的面接法を用いた質的研究とした.研究参加者は ICU 経験が 4~16 年の ICU 看護師 5 名であった.分析方法は,研究参加者と受け持ち患者とのやりとりをもとに,臨床の何を捉えどのようなことを意図しながら行為したのか再構成し解釈した.
    結果として,ICU 看護実践は,〈生命危機からの回避〉,〈身体の諸機能の自立を促す調整〉,〈日常生活動作の試み〉であった.ここには術後の変化過程に応じた順序性があること,この ICU 看護実践を支えるものとして生理学的指標の読み方に特徴があることがわかった.
  • 第 2 部:心臓外科手術後患者の人工呼吸器からのウィーニング場面に焦点を当てて
    福田 美和子
    2007 年 3 巻 2 号 p. 93-101
    発行日: 2007年
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,ICU 熟練看護師が刻々と変化する臨床においてどのような看護実践をしているのか,その様相を具体的に明らかにし,「ICU には看護がない」と指摘される現状に応えようとするものである.本稿は,その第 2 部として,心臓外科手術後の人工呼吸器からのウィーニング場面に焦点を当てて具体的に明らかにする.
    参与観察法と半構成的面接法を用いた質的研究とした.研究参加者は ICU 経験が 4~16 年の ICU 看護師 5 名であった.分析方法は,研究参加者と受け持ち患者とのやりとりをもとに,臨床の何を捉えどのようなことを意図しながら行為したのか再構成し解釈した.
    結果として,第 1 部の〈身体の諸機能の自立を促す調整〉に含まれる ICU 看護実践が見いだされた.この ICU 看護実践には,気管挿管中の感情の揺れ動きを見ながら苦痛状況を乗り越えさせ,患者の呼吸する力を引き出すタイミングのよさがあることがわかった.
総説
  • ―海外における研究の動向と我が国との比較,周手術期患者の家族看護への示唆―
    高橋 美奈子, 中島 恵美子
    2007 年 3 巻 2 号 p. 102-110
    発行日: 2007年
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    本研究では,海外と我が国におけるクリティカルケアを必要としている患者の家族のニードに関する研究の動向を比較するため,過去 10 年間(1996~2006 年)で原著論文 60 件の海外文献を抽出し,周手術期に望まれる看護支援内容について今後の課題を明らかにすることを目的に,先行研究「我が国における研究の動向」の結果と比較検討した.その結果,周手術期における家族ニードに関する研究は 60 件中 6 件,我が国でも研究全体の 30%と少なかった.調査は,質問紙調査法が多く,測定ツールは CCFNI を用いた研究が多かった.研究の目的としては,国内外ともにニードの把握を目的とした研究が半数を占めていた.また,近年海外でも患者の経験に注目した研究がなされていたが,手術を目的とした患者および家族のニードへの具体的支援内容に関する研究は国内外ともに少なかった.今後はより効果的看護支援内容の提示を可能とする研究の必要性が示唆された.
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