日本クリティカルケア看護学会誌
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5 巻, 2 号
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第5回日本クリティカルケア看護学会学術集会報告 会長講演
原著
  • 第 1 部:科学的看護論を適用した事例検討会における看護者全体の認識の変化の構造
    寺島 久美
    2009 年 5 巻 2 号 p. 4-14
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    本研究は,看護の独自性を見失いがちなクリティカルケア看護において,看護理論を適用するための知見を得ることを目的とする.その第 1 部として,クリティカルケア看護に科学的看護論を適用する意義と課題を明確にすることをねらいとして,クリティカルケア看護に携わる看護師グループと理論の有用性を検証した研究者とで科学的看護論を適用した事例検討を行った.その過程で生じた看護者(看護師・研究者)全体の認識の変化を質的に分析し,以下の結果を得た.
    1)看護者全体の認識は,看護学的視点に貫かれた諸現象の捉え方へと統合・発展し,問題解決に至っていた.
    2)科学的看護論を適用した事例検討の意義は,自らを内観して使命感を高め,看護の喜びを分かち合い,看護理論適用の意義を実感するという看護者個々の認識の発展をもたらし,それがチーム全体の実践の変化へと拡大して対象のよい変化を支えていったことである.
    3)理論の基盤を認識に形成し自在に活用するには積み重ねの訓練が必要である.
  • 第 2 部:科学的看護論適用のための方法的知見
    寺島 久美
    2009 年 5 巻 2 号 p. 15-24
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    本研究は,クリティカルケア看護に看護理論を適用するための知見を得ることを目指すものである.第 1 部では,クリティカルケア看護に携わる看護師グループとの協働で科学的看護論を適用した事例検討を行い,その過程で生じた看護者全体の認識の変化・発展の構造を明らかにした.第 2 部では,科学的看護論適用のための方法的知見を得ることを目的に,この事例検討における看護師と研究者の認識の相互作用の構造を質的に探り,以下の結果を得た.
    1)看護者全体の認識の変化・発展は,対象についての現象像を豊かにもっている看護師と,看護一般論に照らして現象から意味を描くことになじんでいる研究者という異なる特徴をもつ認識の相互浸透によってもたらされていた.
    2)科学的看護論を適用していくには,<看護理論に照らしながら対象像と看護上の問題を明確にして解決の方向を定めて実践し,その実践を再構成して評価していく方法>が有用であり,看護理論の修得段階が進んだメンバーによる刺激が重要な意味をもち,個人的・構成員的・職場環境的要件が有機的に作用する条件を確保することでその実現が期待できる.
  • 長澤 静代, 黒田 裕子
    2009 年 5 巻 2 号 p. 25-32
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    本研究は ICU に勤務する看護師が患者管理を行いながら,身体抑制を取り巻く状況をどのように捉え,どのように行動しているのかを明らかにすることを目的とした.ICU 看護師 5 名を研究参加者として,参加観察と半構成的面接を実施し質的分析を行った.
    分析の結果,ICU では患者管理の 1 つとして身体抑制が存在し,ICU の状況が看護師の抑制に対する判断と行動に影響を及ぼしていた.身体抑制に対する判断と行動としては,「ICU の状況を耳で捉える」「看護師の動きから ICU の状況を読む」「主観的観察と客観的観察を併用して判断する」「ICU の状況が看護師の行動に影響を与える」というカテゴリーが見いだされ,身体抑制に対しては「受け持ち看護師としての責任」と「メンバー看護師としての役割を果たす」ことが特に影響を及ぼしていた.
研究報告
  • 山口 亜希子, 江川 幸二, 吉永 喜久恵
    2009 年 5 巻 2 号 p. 33-42
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    本研究は,ICU 入院中の患者に対する子どもの面会制限の実態とその理由を明らかにし,ICU 入院中の患者に対する子どもの面会のあり方について検討することを目的とし,ICU を有する全国 333 施設の看護師長を対象とした郵送法による自記式質問紙調査を実施した.その結果,148 施設の看護師長から回答を得て(回収率 44.4%),有効回答数は 141 施設(95.3%)であった.そのうち ICU 入院中の患者に対する子どもの面会は,「原則面会制限しているが特例で許可」が 109 施設(77.3%)で最も多く,「面会制限あり」が 19 施設(13.5%),「面会制限なし」が 13 施設(9.2%)であった.子どもの面会を制限する理由は,患者・子ども双方への感染の可能性,子どもへの心理的影響等が主な理由であった.また,特例面会は,患者が終末期の場合,患者の看取りをする場合,患者の予断が許されない場合などに多かった.そして,特例面会許可者は,看護師長や看護主任が最も多く,面会のゲートキーパー的役割を果たしていると考えられた.
  • 蓬田 淳, 黒田 裕子
    2009 年 5 巻 2 号 p. 43-50
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,拡張型心筋症患者が病気を受け入れていくプロセスの明確化である.拡張型心筋症に罹患した男性 5 名から,3 回の半構成面接により得られたデータを修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにて分析した結果,<受け流す><受け止める><受け入れを強いられる><現状を受け入れる>という 4 つのカテゴリーが見いだされた.拡張型心筋症患者はこのプロセスの中で,病態・症状・治療・日常生活を予測しながら,病気の受け入れを強めたり,弱めたりする病気体験をしていた.
    以上のことから,拡張型心筋症患者が病気を受け入れていくプロセスの特徴に合わせた看護支援が必要であることが示唆された.
  • 林 みよ子, 黒田 裕子
    2009 年 5 巻 2 号 p. 51-59
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,早期にリハビリテーション施設への転院を選択した初発脳卒中患者の家族の在宅介護に対する認識を明らかにすることである.研究参加者 6 名に対して半構成的面接を用いてデータ収集し,木下による修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析を行った.
    分析の結果,家族の認識は,“機能障害の回復認知”と“家族生活の安定認知”という 2 つの軸によって導かれる,【在宅介護を前提にする】【在宅介護を一時回避する】【在宅介護を準備する】という 3 つのカテゴリーで構成された.【在宅介護を前提にする】を核として,【在宅介護を一時回避する】【在宅介護を準備する】と軌道変更しながら在宅介護実現に向かう過程が明らかとなった.この過程は,在宅介護を希望しながらも機能障害や介護に不慣れであるために歯止めがかけられるものの,転院を選択したことで家族が在宅介護を考える時間を得,患者の回復状況と自身のおかれた状況を肯定的に捉えることで再び在宅介護実現に向かったと考えられた.
  • ―全国調査による病棟看護管理者の認識―
    高島 尚美, 五木田 和枝
    2009 年 5 巻 2 号 p. 60-68
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    本研究は,在院日数短縮に伴う消化器外科系病棟における周手術期看護の現状と課題を明らかにすることを目的とし,全国の消化器外科系病棟の病棟看護管理者に自作自記式質問紙調査を実施した.その結果 282 施設から回答が得られ(有効回答率 37.9%),平均在院日数は 16.16±4.30 で,3 年前の 19.44 日よりも有意に短縮していた.在院日数が短縮したことでの周手術期看護への影響への認識は,患者の自立にとってよい,経済効果がある,自宅のほうが患者の療養環境としてよいという肯定的認識が示された.その一方,忙しくなった,家族の不安が残ると 8 割以上の病棟看護管理者で,また半数以上で患者の不安や術後のセルフケア不足があるとされ,特に高齢者支援の困難さが認識されていた.今後の課題として,患者の回復やセルフケア支援のための効果的な介入や,家族を含めた心理的支援および特に外来部門を含めた院内・地域における多職種との協働を含めた退院調整としての連携を検討する必要性が示唆された.
  • 立野 淳子, 山勢 博彰, 山勢 善江, 藤野 成美, 田戸 朝美, 藤田 直子
    2009 年 5 巻 2 号 p. 69-81
    発行日: 2009年
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    【目的】わが国のクリティカルケアにおける遺族ケアの現状および,医療者の遺族ケアに対する認識を明らかにし,遺族ケアの実施に向けた課題を見いだすこと.【方法】わが国の救急医療または集中治療に携わる医療者を目的母集団とし,層化二段無作為抽出法でサンプリングした 710 名を対象に,2009 年 4~6 月に,遺族ケアの実施状況,遺族ケアの必要性,課題等について質問紙を用いた郵送調査を実施した.【結果】回答者数は 530 名であった.そのうち,これまでに遺族ケアの経験がある医師は 5 名,看護師は 112 名であった.遺族ケアの必要性は 5 割以上の医療者が認識していた.遺族ケアの利点について平均得点が高かった項目は,「心身の健康状態を把握できる」であった.一方,欠点は「通常業務の妨げになる」「医療者のストレスになる」の平均得点が高かった.約 7 割の医療者は,遺族ケアの実施を困難に感じており,課題として「マンパワーの確保」「遺族ケアに関する知識」「遺族ケアスキルの習得」等が指摘された.【考察】本調査で明らかになった遺族ケアの実施状況や医療者の認識を踏まえ,遺族ケア実施に向けた課題を検討する必要がある.
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