日本クリティカルケア看護学会誌
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6 巻, 3 号
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第6回日本クリティカルケア看護学会学術集会報告 会長講演
第6回日本クリティカルケア看護学会学術集会報告 基調講演
総説
  • 福田 和明, 黒田 裕子
    2010 年 6 巻 3 号 p. 8-15
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/01/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的はクリティカルケア領域における重症患者家族のニーズの概念を明らかにするために分析を行うことである.データベースから抽出された124件の文献と看護理論家の著作を対象に,Walker & Avantの方法を参考に分析した.
    その結果,重症患者家族のニーズは7属性,2先行要件,10帰結であった.それらをふまえ,重症患者家族のニーズを「クリティカルケアを必要とする患者の家族(血縁・婚姻関係を問わない)が認識あるいは表明の有無にかかわらず,もし充足されなければ家族個人あるいはシステムに影響を及ぼす欲求・欲望」と定義づけられた.これまで主に扱われてきた心理社会的ニーズだけでなく,より重症患者家族のニーズを明らかにした上で調査研究を実施していく必要性が示唆された.また,そのためにも概念の特性をもとに,臨床現場での検証を経て,概念モデルの作成,新たな質問紙開発・検証,理論構築が必要と考える.
原著
  • 益田 美津美, 井上 智子
    2010 年 6 巻 3 号 p. 16-25
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/01/25
    ジャーナル フリー
    未破裂脳動脈瘤(以下UIAとする)に対する血管内手術を受けた患者19名を対象とし,UIAにより血管内手術を受けた患者の体験を明らかにし,看護支援のあり方を検討した.縦断群:退院前,手術後1カ月,3カ月,横断群:手術後1~1.5年の時期に,半構成的面接を行い,解釈的現象学を参考に分析した.その結果,5つの時期が抽出され,体験した不確かさ,受け止め・対処,意味づけの3側面が抽出された.各時期に異なる不確かさを体験していた.診断期には体験した不確かさの側面にのみテーマが存在しており,治療選択期では受け止め・対処の側面に多くのテーマが出現した.治療期においては,不確かさから一時的に解放された.その後,日常性の取り戻し期・再治療選択期に至ると意味づけの側面のテーマが増していた.UIAにより血管内手術を受けるということは不確かさが常につきまとい,診断・治療も繰り返される可能性があるという現実を受け入れ,患者が自分で意思決定し意味を見出していけるように支援する必要がある.
研究報告
  • 井上 智子, 佐々木 吉子, 川本 祐子, 矢富 有見子, 内堀 真弓, 山﨑 智子, 横堀 潤子
    2010 年 6 巻 3 号 p. 26-36
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/01/25
    ジャーナル フリー
    クリティカルケア領域において,看護師が生命維持のための医療機器装着患者への日常生活援助ケアの実施状況は,施設による差異,なかでも医師の指示(許可)が大きく関わっていることが推察されるが,全国規模での実態は明らかにされていない.本研究は,クリティカルケア領域において,看護師による侵襲的治療環境にある重症患者への日常生活援助ケアの現状と,ケア実施にあたっての看護師の判断,医師の指示との関連等を調査した.方法は,全国200の基幹病院でICU/CCU,集中治療部,救命センターなどで重症患者ケアに携わり,中核的な役割を担っている看護師各施設2名計400名に質問紙を郵送し,209名(52.3%)から回答を得た.結果より,我が国のクリティカルケア領域の看護師は,かなりの侵襲的医療処置を実施していることが明らかとなった.また将来の方向性については,現在以上に侵襲的医療処置は看護師の実施割合が増加すること,現在は看護師がほとんど実施していない処置でも,専門看護師や認定看護師など教育・研修を受けた看護師なら実施する可能性は高いと認識していることが示された.本研究の結果をもとに,看護師の役割拡大も含めたよりよいクリティカルケア看護のあり方を引き続き検討していく必要がある.
  • 茂呂 悦子, 中村 美鈴
    2010 年 6 巻 3 号 p. 37-45
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/01/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,集中治療室入室中に人工呼吸器を装着した術後患者が,どのようにして苦痛を乗り越えたのか,さらに回復への意欲を支えたのは何かを明らかにし,回復を促すための看護援助を検討することを目的に,予定した手術後,集中治療室入室と人工呼吸器装着が必要となった3名を対象に半構造化面接法と参加観察法を用い,質的帰納的に分析した.
    苦痛をどのようにして乗り越えたのかについて9つのカテゴリーが見出され,患者は【つらさから解放されたい】と望みながらも,対峙し乗り越えようとしていた.また,回復への意欲に対する支えについては6つのカテゴリーが見出され,回復過程が進むにつれ意欲は高まり・強まっていると捉えられた.そして,回復への意欲は,苦痛が和らぐことや,家族との情緒的な絆,看護師・医師の関わりと医療に対する信頼によって安心の感覚をもつことで促されており,「安心の感覚」をもつための看護援助や,家族の支えを促すための看護援助が重要であると示唆された.
  • 日坂 ゆかり
    2010 年 6 巻 3 号 p. 46-54
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/01/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,急性期の頸髄損傷患者の体験と,どのようなことで生きようとする力が引き出されあるいはその反対に失われていくのか,生きようとする力に看護ケアがいかに影響しているのかを明らかにすることである.
    研究参加者は,不慮の事故により受傷し救急部に搬送されて頸髄損傷と診断された5名である.研究者が研究参加者の看護ケアに携わりながら言動と提供した看護ケアを記憶し,記述してデータを得るプロスペクティブな質的記述的研究とした.また,看護ケアの効果を含む,患者の生きようとする力が引き出されることに影響を与える要因を明らかにする因子探索型研究でもある.
    研究参加者の体験では,医療者から不治の告知がされなくても受傷後数日で患者は自分の身体は治らないかもしれないと思い始め,またその時期に5名中4名が死をも考えていたことを口にしていた.生きようとする力を失わせていることには,治らないかもしれないと考えることと,痛み,不眠,安静,および吸引などの苦痛があった.生きようとする力を強めていることは,「普段の生活に近づく」こと,「視界が広がる」こと,「自分でできることが拡大する」こと,「苦痛が軽減する」こと,「家族や看護師の生きようとしてほしいとの思いを感じる」ことが見出された.
    頸髄損傷患者は,受傷後早い段階で動けなくなる不安と身体的苦痛から絶望し,死にたいと考えるが,その絶望感から立ち直る強さを持っていた.看護ケアは,患者の苦痛を強くし生きようとする力を奪っている場合もあるが,それ以上に患者の生きようとする力を支えることに深く関わっていた.
  • 田口 豊恵, 中森 美季, 林 朱美
    2010 年 6 巻 3 号 p. 55-62
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/01/25
    ジャーナル フリー
    今回の研究は,全身麻酔下で消化器系の手術を受けた高齢者のせん妄発症と睡眠実態の関連性を明確にすることを目的に取り組んだ.対象者には,手術前2日間と手術後1週間にわたり時計型の加速度計を装着してもらい活動量を計測するとともに睡眠実態調査を実施した.
    結果,80歳代の患者4名のうち3名に術後せん妄の発症がみとめられた.また,せん妄の発症時期は手術当日~手術後4日目であった.活動量をもとに解析した睡眠評価では手術後の睡眠効率はせん妄発症当日に著しく低下していた.さらに,起床時の眠気は手術後1日目および手術後3日目に低下する傾向が強かったが,手術後7日目には改善する傾向が示された.しかし,入眠と睡眠維持は手術前より手術後に悪い傾向を示した.このことより,手術後早期の高齢者の睡眠の特徴は,寝つきが悪く,睡眠維持が困難になることが明らかになった.
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