本研究の目的は,初療で代理意思決定を担う家族員への関わりに対し看護師が抱える困難と理由を明確にすることである.研究参加者8名に対して半構造化面接法を実施し,Berelson Bの内容分析を参考にカテゴリ化し,カテゴリの信頼性を検討するため,Scott W.Aの式により一致率を算出し70% 以上を信頼性確保の基準とした.
分析の結果,困難では302の記録単位が抽出され,【家族員の意思決定内容を肯定的に受け止めることができず悩む】,【医療者が治療を決定する傾向があり悩む】などの13カテゴリ,理由では,698の記録単位が抽出され,【看護師の倫理観・看護観・価値観によっては,意思決定内容を肯定的に受け止めることができない場合がある】,【自身の関わりが良いか悪いか判断するための手段がない】など14カテゴリに分類された.一致率は困難が82.9%,理由が93.2%であり,困難,理由ともに信頼性を確保していることを示した.
結果から,初療で他職種を含めたケースカンファレンスを定期的に実施していくことで,個々の役割機能や看護師自身の家族員に対する関わり方を再確認でき,自己の振り返りの場を提供できる環境をつくり,看護師の倫理的葛藤の軽減を図っていく必要があると示唆された.
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