日本クリティカルケア看護学会誌
Online ISSN : 2187-400X
Print ISSN : 1880-8913
ISSN-L : 1880-8913
9 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
第8回日本クリティカルケア看護学会学術集会報告 会長講演
原著
  • 上澤 弘美, 中村 美鈴
    2013 年 9 巻 1 号 p. 6-18
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/22
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,初療で代理意思決定を担う家族員への関わりに対し看護師が抱える困難と理由を明確にすることである.研究参加者8名に対して半構造化面接法を実施し,Berelson Bの内容分析を参考にカテゴリ化し,カテゴリの信頼性を検討するため,Scott W.Aの式により一致率を算出し70% 以上を信頼性確保の基準とした.
    分析の結果,困難では302の記録単位が抽出され,【家族員の意思決定内容を肯定的に受け止めることができず悩む】,【医療者が治療を決定する傾向があり悩む】などの13カテゴリ,理由では,698の記録単位が抽出され,【看護師の倫理観・看護観・価値観によっては,意思決定内容を肯定的に受け止めることができない場合がある】,【自身の関わりが良いか悪いか判断するための手段がない】など14カテゴリに分類された.一致率は困難が82.9%,理由が93.2%であり,困難,理由ともに信頼性を確保していることを示した.
    結果から,初療で他職種を含めたケースカンファレンスを定期的に実施していくことで,個々の役割機能や看護師自身の家族員に対する関わり方を再確認でき,自己の振り返りの場を提供できる環境をつくり,看護師の倫理的葛藤の軽減を図っていく必要があると示唆された.
  • 山口 庸子, 井上 智子
    2013 年 9 巻 1 号 p. 19-28
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究は,急性大動脈解離を発症し降圧安静治療を受けた患者の体験を明らかにし,必要な看護支援について検討することを目的とした.患者20名を対象に半構成的面接を行い,グランデッド・セオリー・アプローチを参考に質的帰納的に分析した.
    結果,発症から医師より病状説明を受けるまでは同様の経過をたどっていた.そして,集中治療室での降圧安静治療の体験内容から4つの体験パターンが導き出された.1つ目のパターンは,説明を受け,疾患・治療を理解しようと模索し理解することで《安静指示が順守できた》.2つ目は,医師から受けた説明の記憶は断片的であり,入院治療の必要性を実感できず,また見通しが立たないことに不安を抱き困惑するが,何とか状況と折り合いをつけ《困惑しながらも安静が履行できた》.3つ目は,医師から受けた説明の記憶はほとんどなく状況が理解できず,《混乱の中で安静が履行できなかった》.4つ目は,《重症化し人工呼吸器管理となった》.
    安静の保持には,疾患および治療に対する患者の認知と自己効力感が影響していると考えられた.そのため,疾患・治療に対する患者の理解を促し,自己効力感を高められるような支援が必要であると考える.
  • 福田 友秀, 井上 智子, 佐々木 吉子, 茂呂 悦子
    2013 年 9 巻 1 号 p. 29-38
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,ICU入室経験を有する患者の記憶と体験の実態およびICU退室後の思いを明らかにし,ICUにおける看護支援を検討することである.
    ICUに3日以上滞在した患者を対象にICUメモリーツールおよびHADSを用いた質問紙調査を行い,ICU入室中の記憶に欠落や非現実的な体験があった者に半構成的面接を行った.患者の記憶を質的・量的に捉えるため,方法論的トライアンギュレーションを用いて統合した.対象者は男性32名,女性8名の計40名であり,18名が非現実的な体験,14名に記憶の欠落があった.うち7名は記憶の欠落と非現実的な体験の両方を体験していた.ICU入室中の記憶が欠落していた対象者からは,【ICU入室中の記憶の欠落】【処置やケア・ICU環境への印象】【事実や記憶を補いたい】の3つのパターンが導かれ,非現実的な体験をした対象者からは,【ICU入室中の記憶の欠落】,【ICUでの非現実的な体験】,【記憶や体験の整理の欲求】などの5つのパターンが導き出された.
    患者の多くはICU退室後早期からICU在室中の整理を試みており,今後はICU入室中から開始できる記憶や体験の整理を促すサポートプログラムを開発する必要がある.
研究報告
  • 淺見 綾
    2013 年 9 巻 1 号 p. 39-47
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究は,ICUにおける「終末期ケアの実態」と終末期ケアに対する「ICU看護師の認識」との関連性を明らかにすることを目的とした.ICUで働く看護師53名を対象に56項目からなる自記式質問紙調査を郵送法で行い,26名より返信を得た.この結果,「患者への終末期ケア」では,全体的に実施頻度は高く,「家族への終末期ケア」では,面会時の環境を調整する項目で実施頻度が高かった.しかし,家族が患者ケアへ参加できるように介入する行為においては実施頻度が低い傾向にあった.「医療スタッフ間の調整」では,面会の調整に関する実施頻度は高かったが,治療の転換期に関しての介入は実施頻度が低かった.
    終末期ケアに対する否定的感情はケアの実態と無相関であったが,肯定的感情はケアの実態との間でr=.45~.73という高い相関を示しており,肯定的感情が看護行為に大きな影響を与えていることが明らかとなった.
  • 山口 亜希子, 江川 幸二, 吉永 喜久恵
    2013 年 9 巻 1 号 p. 48-60
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/05
    ジャーナル フリー
    ICUにおける看護師の人工呼吸器装着患者とのコミュニケーションの困難さおよび実践を明らかにすることを目的とした.ICU看護師14名を対象に参加観察法および半構造化面接法でデータ収集を行い質的帰納的に分析した.ICUの人工呼吸器装着患者は重篤な状態にあるため【身体状態や精神状態が安定しない患者が送るメッセージを読み取れない】困難さを体験していた.そして,コミュニケーションの継続が患者の身体状態や精神状態に影響を及ぼす可能性があるため【コミュニケーションを続けられるか判断する】実践を行っていた.看護師はコミュニケーションが確立しないことに伴う患者の苦痛に対して【話すことができない辛さを理解し患者に伝える】実践を行っていた.人工呼吸器装着患者とのコミュニケーションには多くの困難が伴うことが明らかとなり,人工呼吸器装着患者との機能的なコミュニケーションを確立できるような実践的な教育の必要性が示唆された.
feedback
Top