本研究の日的は, 地域住民が歯科クリニックを受診する, あるいは受診しない要因を住民意識調査を通じて明らかにし, 受診行動の意思決定にもっとも影響を与える要因をもとに, 地域住民を戦略的にセグメンテーションすることである.静岡県 (浜松市, 湖西市) 在住住民2.000名に対するアンケート調査の結果, 住民の受診行動の意思決定にもっとも影響する5つの要因を抽出し.これをもとに住民を10のセグメントに分類した.その結果, 阻害要因を緩和することで, 受診率が大きく上昇するセグメントが多数存在することが判明した.各セグメントに対する効果的なマーケティングを歯科クリニック, 学会, 行政が一体となってきめ細かく行うことによって受診率を高めることが可能である.

抄録全体を表示

解剖学的平均値に基づいて製作した咬合床を観察することにより, 無歯顎者の対向関係や顎堤の吸収度合いが明確になる.規格模型を分析することは総義歯治療の事前診査となり, 結果として正しい位置設定, 目標につながる.そのためにも解剖学的指標を含んだ形態変形の少ない印象採得が必要となる.

抄録全体を表示

かみ癖の視点から, 顎関節症を下顎の運動障害と捉えて対処することによって, 開口障害や痛みという症状に良好な成績が得られることを, その1, その2において詳述してきた.その1では開口障害の解除の仕方を示すとともに, 下顎の運動障害が痛みや関節雑音を惹起するという考え方を示し, その2において, かみ癖の視点からの対処法が痛みという症状に効果のあることを症例を通して明らかにした.本論文では, 残されたかみ癖の視点からの対処法が関節雑音, とくに現在対処不能ともされ, 放置されてもしかたがないといった状況にあるクリックに対してきわめて効果のあることを症例を通して示す.

抄録全体を表示

前歯部の補綴処置を行なうにあたり, 顔貌の正中, 水平ラインを記録し, それをラボへ伝達する手段として, 小さなレジン板を用いた非常に簡便な方法を紹介させていただく.

抄録全体を表示

いかなる種類のオーラルリハビリテーションであっても, 長期的見地から症例を成功させるためには, エビデンスベースに基づいた診断と綿密な治療計画が必要である, また, 各治療ステップに応じた治療基準, 診断基準がないと場当たり的治療になり, 理論に基づいた再建は不可能となる.その結果治療後のロンジェビティーは望めない.
フルマウスリコンストラクションを行うにあたって必要なクライテリアは種々さまざまあると思われるが, 今回咬合学的側面からのクライテリアを中心に症例を通して提示したいと思う。

抄録全体を表示

根管治療は, われわれが行う日常臨床の中でもっとも頻度が高い処置であるといっても過言ではないであろう.とくに中高年の治療においては根管治療を避けては通れないことが多い.もし根管治療に不備があれば, その上部にどんなにすばらしい補綴物が装着されようとも, それは砂上の楼閣となってしまう.全顎的な歯科治療においては, 1本の根管治療のエラーが治療計画全体に影響を及ぼすことさえある.自分が施した根管処置が原因で再治療が必要になる事態だけは避けたいと思いながら, 根管治療に取り組んできた.根管という目視できない部分の清掃を行うわけで, 自分の技量で完全な清掃が行えているのか, その確実性には正直疑問が残るところである.しかし, 正確な診断力と手技を身に付け, 根管治療を施した歯牙の予後を客観的に評価することで, その成功率を1%でも上げることができると考えている.
本論文では, 根管治療の確実性を上げるための取り組みを提示させていただく.

抄録全体を表示

日々の診療の中ではすでに何度か処置されている歯の再治療をすることが少なくない.クラウンのマージンからのう蝕によって生物学的幅径が侵されており, 抜歯してしまうには忍びないが, そのままで保存できないケースにもよく遭遇する.また, 補綴前処置として少し歯を移動させるだけで治療の幅が拡がることも多い.審美的・機能的に問題がある部分のみに対し治療目的を明確にしたうえで少数歯で部分的に矯正を行うMTMは, 非常に有効な治療のオプションとなる.いくつかの症例で日常臨床での取り組みを提示させていただければと思う.

抄録全体を表示

インプラント治療において, 歯槽骨の吸収が著しい症例ではGBRが多用される.しかし, 骨に置換したGBR部の骨質についての報告は少ない, 今回, CT値から不均質な臨床的下顎骨臼歯部骨欠損モデルを作成し, GBR部の骨質をMischの骨質分類であるD1からD4へ変え, また埋入フィクスチャーの太さを変えて, インプラントが周囲骨へ及ぼす力学的影響について有限.要.素解析をおこなった.
結果, 考察および結論: GBR部の骨質が硬いほど最大ミーゼス応力が小さくなった.とくに骨質がD2以上では, フィクスチャーの太さによらず一定傾向になった.またフィクスチャーが太いほど最大ミーゼス応力が小さくなった.とくにフィクスチャーがある一定以上に太くなると, 最大ミーゼス応力はGBR部の骨質に関係なく一定傾向になった.また最大ミーゼス応力の発生位置は, 骨質がD1, D2の場合, インプラント周囲表層歯槽骨に位置し, D3からD4に従い, GBRと母床骨との境界付近へ移動した.またGBR部骨質は, 単純に硬ければ良いというのではなく, 母床骨との調和が重要であることが示唆された.

抄録全体を表示

At the turn of the twentieth century, periodontal regeneration has gain much attention due to its ability to restore the lost periodontium once was thought difficult to regain. In doing so, periodontal regenerative therapy has even contributed to the retention of severe periodontally involved hopeless teeth. However, this treatment modality had soon met great resistance by the emergence and steady growth of dental implant which claimed to have the ability to replace poor diseased natural roots with a better future.
It is the purpose of this paper, from the therapeutic perspective of a clinical periodontal practitioner, to develop a judging principle utilizing cross matching of prognosis and strategic value of the severely involved teeth with periodontitis to determine the optimal choice for periodontal regeneration or dental implant. In addition, the clinical significance and limitation of various periodontal regenerative procedures will also be discussed in terms of quality and quantity.
Careful evaluation must be exercised as a periodontist providing the best capability in preserving natural dentition for the maximum benefit of the patient.

抄録全体を表示

近年, 広く定着した再生療法はインプラント治療や歯周病治療に応用されている。その際, 骨増生のために種々の生体材料が使用されているが, 適切な骨補填材の使用が重要である.現在筆者らは国産β-TCP (吸収性β-リン酸三カルシウム) (商品名: オスフェリオン) , Bio-oss, 自家骨の3種類を骨補填材として用いている.本稿ではβ-TCPの特性を知った上での使い分けや適応症の選択について, 筆者らの考え方や症例を紹介する.

抄録全体を表示

セラミックスは高い審美性と生体親和性を有しているが, 強度不足のために臼歯部ブリッジ症例への応用は難しかった.ジルコニアは高い曲げ強さと破壊靭性値を有しているため, 既存のオールセラミックシステムと比べると破折の危険性は大きく低下したといわれる.そのため, 臼歯部におけるメタルフリーブリッジへの応用の可能性が広がった.
今回, ジルコニアコーピングを用いて, 両側下顎大臼歯部のフルクラウンとブリッジのオールセラミックスレストレーション補綴を行ったので報告する.

抄録全体を表示