日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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34 巻, 1-2 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
症例報告
  • ——顆頭安定位を求めて——
    松本 晃治
    2014 年 34 巻 1-2 号 p. 15-23
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル フリー
    二態咬合を有する中等度歯周炎患者にスプリントにより顎位を決定し咬合再構成を行ったケースを提示して,術前の診査・診断の重要性と咬合の安定を図るための方法について考察する.【症例概要】患者は初診時60 歳の女性で歯周組織検査ではプロービングポケットデプス(PPD)が6mm を超える部位が認められ,咬合検査では習慣性の閉口位では,臼歯においては咬合接触関係が認められない部位が存在し,側方運動時に左右の第二大臼歯に咬頭干渉しているのが認められ,左右ともグループファンクションであった.筋の緊張を解除した状態で閉口させると 7 7 で早期接触を生じ,咬頭嵌合位は大きなズレを認めた.【治療経過】スタビリゼーションスプリントの24 時 間の使用を指示し,3 ~4 週ごとに下顎位の確認とスプリントの調整を行った.その後,プロビジョナルレストレーションを装着したが,プロビジョナルレストレーションの破損や仮着セメントのウォッシュアウト,顎関節症状などは認められなかった.スタビリゼーションスプリントによる顎位の決定は,口腔内に不可逆的な変化を与える前に正確な診断が行えるほか, 患者固有の安定した顆頭位を具現化できる利点があり,その後の補綴操作が容易に行え,術後の顎位の安定も得やすいことが確認できた.【顎咬合誌 34(1・2):15-23,2014
  • 石黒 雄人
    2014 年 34 巻 1-2 号 p. 24-29
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル フリー
    臼歯部の咬合支持を失った症例では,歯の喪失に伴う歯根膜からの感覚入力の減少や咬合高径の低下,下顎位の偏位等の問題が起こりやすい.そのため,欠損補綴治療を行ううえでマウスボリュームの回復,下顎位の修正,口腔周囲筋の活性化など機能と形態の調和を図ることが重要になる.今回,上記に示した症状をもつ少数歯残存患者に対して機能的咀嚼系(感覚入力系‐中枢処理系‐運動出力系‐抹消効果器系)を再構築するために,上下顎に治療用義歯を装着しリハビリ・トレーニングを行った.治療開始から6 カ月後,下顎位が安定し患者の主訴である咀嚼障害が改善したため,上下顎に最終義歯を装着した.治療用義歯によるリハビリ・トレーニングにより下顎位が安定したのもと考えられた.【顎咬合誌 34(1・2):24-29,2014
  • 日栄 綾乃
    2014 年 34 巻 1-2 号 p. 30-37
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル フリー
    歯並びや咬み合わせの異常は,「何故,この患者は歯並びや咬み合わせが悪くなったのだろうか」と現在から過去にさかのぼり原因を考え,過去から現在に至った経緯を知ることが不可欠である.狭窄した歯並びの症例,矯正治療を行ってもなかなか目標に達しない症例,治療しても再び後戻りする症例等,これらは舌・口唇の筋力のアンバランスや,日常生活のなかで何気なくしている態癖が口腔や顎顔面に悪影響を及ぼしていることが多い.今回,矯正治療後の後戻り症例,咬爪癖による歯列不正症例,態癖が関与した歯列不正症例の3 症例において舌・口唇癖や態癖の指導を行い,良好な結果が得られたので報告する.【顎咬合誌 34(1・2):30-37,2014
  • 宮田 匡人
    2014 年 34 巻 1-2 号 p. 38-49
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル フリー
    この症例は咬み合わせ不良を訴えサードオピニオンで来院された患者である.一見問題のないように見え不定愁訴だと捉えがちな症例でもある.しかし患者さんの話には何らかの機能異常の根拠があるはずだという視点で形態に表われた異常を精査すると患者の訴えが理解でき,病態の理解を患者と共有できた.そこでその原因を考察し,原因にかかわると思われた不良補綴物を除去してプロビジョナルレストレーションに置き換えた.患者が訴えるしびれなどの不快感はプロビジョナルレストレーションにおいてほぼすべて解消した.現在治療終了直後ではあるが良好な経過を得られた1 例を報告する.【顎咬合誌 34(1・2):38-49,2014
  • 太田 拓哉, 松島 正和
    2014 年 34 巻 1-2 号 p. 50-56
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル フリー
    咬合の安定に伴い下顎頭の吸収が止まり,その後継続的な修復反応を示した変形性関節症を経験したので,その概要を報告する.患者は,開口障害と関節痛を主訴に来院した22 歳の女性である.3 年前に歯科矯正治療が終了しているが,臼歯部のみ嵌合し,前歯部は開咬を呈していた.エックス線検査より変形性関節症と診断し,顎関節への過剰負荷を軽減するために保存療法を施行した.咬合が安定した段階で下顎頭の吸収が停止し,継続的な修復反応がみられた.咬合の安定が病態改善に影響を与える重要な因子となったものと考えられた.【顎咬合誌 34(1・2): 50-56,2014
  • 佐藤 博宣, 藤田 大樹
    2014 年 34 巻 1-2 号 p. 57-64
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル フリー
    無歯顎インプラント症例においてはCT 撮影時の診断用ステントと外科手術時のサージカルガイドの位置再現性が乏しく,治療計画と異なる位置にインプラントを埋入してしまうという問題がある.そこで,ミニスクリューを用いてステントの位置再現性を向上させることとした.ミニスクリューによりCT 撮影時の診断用ステントと外科手術時のサージカルガイドの位置を一致させることができるだけでなく,インプラント埋入時にサージカルガイドを安定させることが可能となった.また,トリートメントデンチャーの支持にも利用でき,創面の保護にも役立つことが確認できた.【顎咬合誌34(1.2):57-64,2014
  • 小林 英史
    2014 年 34 巻 1-2 号 p. 65-75
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル フリー
    従来の歯科医療では,う歯には修復治療,軽度から中等度の歯周病には歯周治療,重度の歯周病には歯周補綴,歯を失った場合には義歯によって対応してきた.近年ではその対応にインプラントや審美的要件が加わり,患者はさまざまな治療オプションの中から自らが受けたい治療を選択することが可能となっている.しかしながら,歯科医師と患者がどの治療オプションを選択するにせよ,最終的に健康な口腔内の維持には「咬合の安定」が重要であることに異論の余地はない.咬合の再構成に迫られる症例では,安定した中心位咬合,バーティカルストップ,アンテリアガイダンス,それに伴う臼歯離開咬合,適切なアンテリアカップリングの獲得を第一の治療目標とすることは,これからの歯科医療にとっても不変であるものと考えている.今回,長期的に偏った嚙み癖により,下顎位の病的偏位をきたした患者に対し,咬合治療に焦点をあて,必要最小限の歯質の切削による下顎位ならびに審美的な主訴の改善に努めた結果,良好な結果が得られた.【顎咬合誌 34(1・2):65-75,2014
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