日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
10 巻, 1 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 近藤 明代, 大西 章恵, 羽原 美奈子, 笹原 千穂, 真渓 淳子, 北山 明子, 河野 啓子
    原稿種別: 本文
    2007 年 10 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 2007/10/10
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    行政に働く保健師が行う家庭訪問の件数が年々減少するなかで,保健師の,対象を理解する能力の低下が危惧されている.そこで,保健師自身は最近の家庭訪問の現状に対してどのような認識をもっているかを明らかにし,その認識に影響していると考えられる要因を探ることを目的とした.研究デザインは質的帰納的研究とした.調査は中堅保健師7名を対象にグループインタビュー法を用いた.分析の結果,『家庭訪問の意義』『保健師個人の現状に対する認識』『家庭訪問の実態』『保健師仲間の特徴』『所属する職場の特徴』『現任教育の実態』の6つの中核カテゴリーに分けることができた.保健師個人の家庭訪問に対する認識は『家庭訪問の意義』『保健師個人の現状に対する認識』であった.これは家庭訪問の意義を認識しているが,実際の訪問場面でその意義を実感することが減少しており,保健師はその状況にジレンマを感じ,家庭訪問の意義や自分の能力に対して不安をもつことがあるというものだった.その認識に影響していると考えられる要因として,『家庭訪問の実態』『保健師仲間の特徴』『所属する職場の特徴』『現任教育の実態』があった.
  • 小林 真朝, 麻原 きよみ
    原稿種別: 本文
    2007 年 10 巻 1 号 p. 42-48
    発行日: 2007/10/10
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,乳幼児健康診査の委託に焦点を当て,市町村保健師の事業委託の経験を記述・分析することで,市町村保健師にとっての委託の意味づけを検討し,委託事業における市町村保健師の役割および保健事業の効果的な委託のあり方への示唆を得ることである.乳幼児健康診査の委託の前後に携わった経験をもつ市町村保健師11名に半構成的インタビューを行い,データを質的に分析した.市町村保健師にとっての保健事業の委託の経験は【委託を契機に生じる変化に気づき,自分にとっての委託を意味づけていくプロセス】であり,時間の変化の特徴に沿って5つの期で構成された.さらに保健師の住民との関係性のとらえ方により,住民庇護型,住民顧客型,住民パートナー型の3つの型に分類され,<委託とは住民との距離を隔てるもの><委託とは住民の求めるものに応えるための保健師にとっての救いの手><委託とはコミュニティの資源の専門性を高め豊かにするもの>という意味づけがされていた.これらのことから,保健師がそれまでの自身と住民との関係性や事業のとらえ方の傾向に気づき,視点や視野を変えたらどう見えるか,状況に即したやり方で活動しているかを見直すことが重要であると考えられた.
  • 中山 貴美子
    原稿種別: 本文
    2007 年 10 巻 1 号 p. 49-58
    発行日: 2007/10/10
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は,保健専門職によって,住民組織がコミュニティ・エンパワメント(以下,CEと略す)する過程を質的に評価する指標を開発し,その信用可能性と移転可能性,実用性を検討することである.研究方法:質的評価指標は,先行研究の結果をもとに作成した.調査は,健康な地域づくり活動を支援している保健専門職を対象に,郵送による自記式質問紙調査を2回実施した.調査内容は,保健専門職が支援している1住民組織の質的評価指標評価,主観的CE評価,活動発展5段階評価等であった.評価は,支援の開始時と終了時の2時点を問うた.他に,基本属性,質的評価指標の実用性等を問うた.分析には,t検定,相関係数,単純集計結果を用いた.結果と考察:質的評価指標は,3領域と14項目,項目の段階等から構成された.結果は,1回目調査125名(有効回答率32.3%)と2回目調査46名(有効回答率12.0%)の協力者を分析した.信用可能性は,2時点の質的評価指標評価のt検定の結果,全項目で有意差がみられたことにより確認された.移転可能性は,2時点の質的評価指標評価と主観的CE評価の全項目で相関関係がみられたこと等により確認された.実用性は質的評価指標が実践に役立つとの回答者が97.8%と高いことにより確認された.結論:本質的評価指標は,住民組織のCE過程の質的評価指標として実践に適用可能であることが示唆された.
  • 西尾 美紀, 成瀬 優知
    原稿種別: 本文
    2007 年 10 巻 1 号 p. 59-65
    発行日: 2007/10/10
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:家族介護者における介護に対する肯定的・否定的評価がどれくらいの頻度で同時に存在しているのか,また,肯定的・否定的評価に関連する要因の相違について検討した.方法:介護保険制度で要介護3以上の認定を受けた在宅高齢者の介護者で,176名を対象に質問紙調査を行った.介護に対する肯定的認知評価には介護継続意欲,否定的認知評価には精神健康度の低さすなわち,不安・不眠とした.そして,認知的評価の前段階であると考えた介護に対する感覚について肯定面・否定面として主観的介護やりがい感,負担感とした.介護継続意欲は5段階評定で回答を求め,高低の2区分とした.不安・不眠は,日本語版GHQ28項目の下位尺度である「不安・不眠」7項目より,4点以上を不安・不眠群とした.介護者の属性,家族介護者対処スタイル(和気の作成した測定尺度),介護やりがい感,介護負担感を一括投入し多重ロジスティック回帰分析にて解析した.結果:(1)介護継続意欲・不安・不眠の組合せの割合については,介護継続意欲が高く,非不安・不眠者の割合は全体の中で29.2%であった.(2)介護継続意欲が高い群には,やりがい感は関連していたが,介護負担感は関連していなかった.不安・不眠群には,介護負担感のみが関連していた.また,コーピング・スタイルでは,介護継続意欲が高い群には問題解決型得点が関連していた.
  • 平野 美千代, 平野 憲子, 和泉 比佐子, 波川 京子
    原稿種別: 本文
    2007 年 10 巻 1 号 p. 66-71
    発行日: 2007/10/10
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:地域保健活動における自己評価の中で中堅保健師が感じた自信のなさを明らかにすることを目的とした.研究方法:都道府県型保健所に勤務する精神障害者の個別援助活動から地域保健活動を展開した経験をもつ,実務経験6〜10年の保健師7名を対象に,半構造化面接を用いてデータ収集を行った.自信のなさを「実践に対する自己評価によって生じる,自己の判断や能力,技術,価値を確信・尊重することができない感情」とし,分析は質的帰納的に行った.結果:中堅保健師は,個別援助活動から,関係者との連携・ネットワークの構築,当事者組織の立ち上げ等の地域保健活動を展開していたが,その中でみられた自信のなさは,【保健医療福祉関係者と協働していくことへの悩みや不安】,【保健医療福祉関係者のネットワークを構築していくことへの困難さ】,【精神障害者の当事者組織を維持していくことへの困難さ】,【精神保健活動を地域で展開していくことへの緊張や不安】,【個別事例への支援を円滑にすすめていくことへの苦しさや不安】であった.考察:中堅保健師の自信のなさは,中堅期に期待されている能力や中堅保健師としてあるべき姿と,自己の判断や行動を対峙させ自問自答しているものと考えられた.また,中堅保健師の自信のなさは,より良い支援を熟考することで自己の判断や行動を自己評価し生じるものと考えられた.以上のことから,中堅保健師が自己の実践能力を適切に自己評価することや,上司や同僚の客観的な評価や承認が得られるようなサポート体制の重要性が示唆された.
  • 原賀 美紀, 野村 美子, 志賀 たずよ, 井手 知恵子
    原稿種別: 本文
    2007 年 10 巻 1 号 p. 72-77
    発行日: 2007/10/10
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:老人保健法による集団健診実施場面での市町村保健師の行動と行動の意味,行動に関与する認識から,保健師が従事することの重要性・価値を検討する.方法:5年以上の経験があり,同意の得られた4名の保健師を対象に,集団健診実施場面での保健師の行動と行動の意味,行動に関与する認識について半構成的面接を行った.行動は集団健診の時期別に,行動の意味は向けられた相手別に分析した.行動に関与する認識は同じ内容ごと,カテゴリーに分類・整理した.結果:行動136件のうち,「連絡.報告・確認する」などは準備,実施中,実施後のすべての時期においてみられた.行動の意味222件では,住民,地区役員,委託機関スタッフなどさまざまな相手に対して,関係づくりや効率的で安心・リラックスした健診を実施することがあり,保健行動を促すことは住民に対するものであった.行動に関与する認識として,従事していてよかったこと・役立ったこと22件を7カテゴリーに,従事するうえでの今後の抱負12件を6カテゴリーに分類した.考察:保健師は集団健診の実施全体において,絶えず受診者の流れを意識し,調整役を務めていた.また,同時に複数の意図をもち,援助技術・技法を組み合わせた活動を実践していた.保健師が従事することの重要性・価値として,「スムーズな健診を実施する」「住民との関係性を深める」「地域を知る」「ニーズや課題を明確にする」「活動の成果を把握する」「活動を展開・発展する」「行政サービスを紹介する」の7点が示唆された.
  • 田高 悦子, 金川 克子, 古川 照美
    原稿種別: 本文
    2007 年 10 巻 1 号 p. 78-84
    発行日: 2007/10/10
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    【目的】農村部の一人暮らし高齢者における自立の意味を明らかにするとともに,今後の地域における支援のあり方について示唆を得ることとした.【対象】A県a村の一人暮らし高齢者16名(プライマリーインフォーマント)ならびに専門職10名(キーインフォーマント)の計26名である.【方法】マイクロエスノグラフィーを用いた質的記述的デザインである.データ収集は「農村部の一人暮らし高齢者における自立の意味」を主題とする半構成的面接法にて行い,データ分析は全逐語録等を用いた質的帰納的分析法により展開した.【結果】農村部の一人暮らし高齢者における自立の意味として,主要な2テーマ,すなわち《自己の意志と生活の尊厳を保持すること》《自分が生きてきたむらの自然や人とともにあろうとすること》が抽出された.さらに前者の下位には<自分自身の意志をもつこと><アドバンスディレクティブスがあること><自らに役割と仕事を課すこと><自ら生計を立てる信念があること><一人暮らしに足る生活手段を有すること><現状を受容し情緒的に自立すること>が,また,後者の下位には<むらの慣例を尊重すること><集落共同体意識をもつこと><狭小の集落で生活を営んでいくこと><自然環境を受け入れ共生していくこと>が抽出された.【考察】農村部の一人暮らし高齢者における主要な自立の意味を勘案し,具体的な支援プログラム開発へと発展させることが必要である.
  • 田村 須賀子, 上杉 絵理, 曽根 志穂
    原稿種別: 本文
    2007 年 10 巻 1 号 p. 85-92
    発行日: 2007/10/10
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    保健師は,地区住民の健康生活上の援助ニーズを把握し,個人あるいは住民集団に対して看護援助を提供する.本稿では,保健事業の実践過程における保健師の意図と行為を記述することにより,保健師による保健資源提供活動の特徴を明確にすることを目的とする.研究対象は,熟練保健師による保健事業の実践過程7事例である.調査項目は,保健師の意図,保健師の行為である.熟練保健師とは保健師として原則5年以上の実務経験があり,実践活動の詳細な記述と現状分析ができる者とした.保健師による保健資源提供活動の特徴は,1)公衆衛生・疾病予防の観点で,住民の生活実態・健康課題を捉え,より重点的に対応すべき援助ニーズを明確にする,2)事業対象者およびその家族ばかりでなく,全数に対する提供を原則とし,適切な健康行動とライフスキルを獲得できるようにする,3)住民あるいは関係機関と協働し主体的な課題解決を促すために,既存の保健事業の活用または他事業と連絡・調整した一体的な展開を図る,4)国や都道府県の施策に関連づけて,その地区の実情に合った保健福祉事業の推進体制の基盤整備をする,と考えられた.保健師の意図を記述することにより,保健事業の実践過程の特徴を明確にし,保健師の住民に対する責任と役割を共有でき,より質の高い実践活動を導くことができると考えられた.
  • 本田 亜起子, 村嶋 幸代
    原稿種別: 本文
    2007 年 10 巻 1 号 p. 93-99
    発行日: 2007/10/10
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:高齢夫婦のみ世帯で妻を介護する夫介護者を対象に,妻の「食事の支度」の自立度に焦点を当て,夫介護者による食事の支度の遂行に伴う困り事の有無とその内容について明らかにすることを目的とした.方法:東京都A区に居住する夫婦のみ世帯で介護保険の要介護度1〜5の認定を受けている妻を介護する夫介護者38名に対し,訪問面接調査を実施した.妻のIADL「食事の支度」の自立度によって対象者を2群に分類し(I群:妻が食事の支度を「できる」/II群:妻が食事の支度を「できない」),各群における食事の支度の遂行状況,食事の支度に関する困り事の有無や内容を比較した.結果:I群では食事の支度の遂行に関して,困り事は挙げられなかった.一方,II群のうち,夫が食事を作ることができないケースや食事を作ることに慣れていないケースで,食事づくりや食事の内容に関する困り事が挙げられた.これらのケースは,妻のIADLはすべて要介助であったが,ADLのうち食事や排泄,離床,室内歩行は自立していた.考察:妻の基本的なADLは自立しているが,食事の支度ができなくなった段階で,夫介護者の食事の支度に関する困り事が生じやすいことが示唆された.高齢夫婦のみ世帯の夫介護者に対しては,適切な食生活を維持し,家事や介護を円滑に遂行するための援助を早期に行う必要があると考えられる.
  • 本田 光, 前川 美奈代, 砂川 貴美, 根間 京子, 盛島 幸子, 宇座 美代子
    原稿種別: 本文
    2007 年 10 巻 1 号 p. 100-105
    発行日: 2007/10/10
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    離島はその大小にかかわらず,独自の生活習慣,言語,思考態度をもち,それらを理解することは保健師活動の基本ではあるが,それは文化の違う環境に育った県外出身保健師にとっては困難な面がある.県外出身者である著者は既存の保健統計の分析を行い,保健活動を実践し始めるが保健指導が住民の感覚と一致しない不全感は拭えなかった.その原因は育ってきた文化に違いがあるからではないかと考えた.そこで地域を歴史的背景から考察し理解を深めるため,民族看護学研究の手法を参考に研究を行った.沖縄県M島の住民である役場職員4人より彼等が経験してきた事実を生活史として聴取し,その結果を「50歳代の生活史」として,生活習慣と食文化の変遷を示す年表にまとめ,島出身者を含む保健師間で検討を重ねた.この異文化を理解しようと努力する過程を踏まえることによって,島民の健康上好ましくない生活習慣・慣習の歴史的背景を理解することができるようになった.生活史の年表作成は,数量的なデータの把握のみでは捉えきれない住民の実生活に文化的側面からアプローチすることを可能とし,その地域へのより深い理解と思慮を促すことができた.このことは地域保健活動の実践の入り口として非常に有効であった.
  • 松下 光子, 米増 直美, 大井 靖子
    原稿種別: 本文
    2007 年 10 巻 1 号 p. 106-112
    発行日: 2007/10/10
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:過疎地域に暮らす高齢者世帯への別居の子どもの通いによる支援の現状を明らかにし,別居の子どもと高齢者という家族を支える援助を検討する.方法:別居の子どもが通って支援している過疎地域に住む高齢者世帯6世帯(単独2,夫婦4)への家庭訪問による聞き取り調査と,通って支援している子どもへの聞き取り調査により,生活と介護の実態を把握し,援助ニーズと援助方法を検討した.結果:子どもが通う頻度はさまざまであった.子どもによる支援内容は,買い物,経済的支援,家事,農作業,サービス利用の方針決定や手続き等であった.必要な援助は,相談体制整備,通って支援している子どもへの支援,納得できる選択と介護への支援,近隣者による支援,サービスによる支援,経済面の支援などであった.考察:高齢者と子どもの関わりの現状は,「通い介護」・「通い家族」という表現が適切と考えられた.「通い介護」・「通い家族」への支援としては,まず,ケアマネジャー,保健師,看護師による,相談窓口につなげる支援,通って支援している子どもの健康管理への支援と別居の子どもを含む高齢者世帯への支援が考えられる.介護サービス等による,基本的生活の維持,健康管理などの支援や交通費の補助等の経済的支援も必要である.さらに,地域住民ネットワークによる,見守り,声かけ,助け合い等の支援が考えられる.
  • 村山 洋史, 田口 敦子, 村嶋 幸代, 柳 修平
    原稿種別: 本文
    2007 年 10 巻 1 号 p. 113-121
    発行日: 2007/10/10
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:健康推進員(以下,推進員)活動は,保健分野の住民組織活動の一つであり,多くの自治体で行政によって養成,支援されている.本研究では,推進員活動における組織と行政との関係への推進員個人がもつ認識の違いを軸に据え,それと推進員の活動状況,活動への意識および行政の推進員活動への関わりの認識との関連を明らかにすることを目的とした.方法:対象は,S県A市およびB市で活動する健康推進員600名であり,2004年11月に郵送法による無記名自記式質問紙調査を実施した.調査項目は,推進員活動状況,推進員活動への意識,推進員組織と行政との関係(「推進員組織主導」,「対等」,「行政主導」の3つの選択肢),行政の推進員活動への関わりであった.結果:有効回答数は449票(有効回答率74.8%)であった.推進員組織主導あるいは対等と考える推進員は,行政主導と考える推進員に比べて,活動に楽しさ,やりがいを感じるとともに,活動への困難感や負担感が低く,活動への評価が高かった.また,地域の問題に関心をもっていた.さらに,行政からの関わりを肯定的に認識していた.結論:推進員活動において,組織と行政との関係性は,行政主導ではなく,推進員組織主導あるいは対等と推進員個人が認識できるような関係性が望ましい可能性が示唆された.
feedback
Top