日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
11 巻, 2 号
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  • 中山 貴美子
    原稿種別: 本文
    2009 年 11 巻 2 号 p. 7-14
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は,住民組織活動が地域づくりに発展するための保健師の支援内容の特徴を明らかにすることである.方法:対象は,ヘルスプロモーション先進5地域における,住民組織活動が地域づくりに発展する過程と保健師による支援内容である.調査は,半構成的面接法によるインタビュー調査を行った.結果:住民組織活動が地域づくりに発展する過程は,過程I「活動準備期」,過程II「活動意思決定期」,過程III「活動開始期」,過程IV「主体的活動期」,過程V「地域展開期」がみられた.住民組織活動が地域づくりに発展する各過程における保健師の支援内容は,81サブカテゴリー,37カテゴリーが抽出された.その内容は,「住民の思いを把握する」「新たな住民組織をつくる」「組織運営を支える」「活動の継続を支える」「活動困難時に相談にのる」等であった.また,住民組織活動が地域づくりに発展する全過程における保健師の支援内容は,31サブカテゴリー,12カテゴリーがみられた.その内容は,「住民との信頼関係を維持する」「住民の主体性を引き出す」等であった.考察:保健師の支援内容は,地域の中で協働できる人材や住民組織を決定するという特徴がみられた.また,保健師の支援内容には,住民組織への直接的な支援のみではなく,行政内で住民参加のしくみをつくるなどの行政への働きかけの内容を含むという特徴がみられた.
  • 浅野 神奈, 和泉 比佐子, 片倉 洋子, 波川 京子
    原稿種別: 本文
    2009 年 11 巻 2 号 p. 15-24
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:市町に勤務する新任保健師の職務満足感とメンタリングの受け止め,個人的要因および組織的要因との関連を検討すること.方法:経験年数2〜5年目の新任保健師756人を対象に,郵送法による無記名自記式質問紙調査を実施した.質問紙の回収数は312人(回収率41.3%)であり,226人(有効回答率29.9%)を分析対象とした.調査項目は,職務満足感尺度14項目,メンタリング尺度42項目,個人的要因13項目(個人属性,職務属性,職業背景,自己啓発等),組織的要因24項目(組織の概況,現任教育体制,労働条件,メンターの存在等)であった.分析は,職務満足感を得点の中央値で高群と低群に2分し,メンタリングの受け止め,個人的要因および組織的要因の各項目とχ2検定またはt検定を行い,関連がみられた項目とロジスティック回帰分析を行った.結果:職務満足感が高いことと有意な関連がみられた項目は,「メンタリング尺度の得点が高い」(OR;4.57,95%CI;2.38〜8.76),「1週間あたりの時間外勤務時間が少ない」(OR;1.75,95%CI;1.17〜2.61),「所属部門保健師数が多い」(OR;1.28,95%CI;1.05〜1.55)であった.考察:市町に勤務する新任保健師の職務満足感には,メンターからの支援を認識できることが重要であり,メンタリングの重要性が示唆された.
  • 北山 明子, 大西 章恵, 河野 啓子
    原稿種別: 本文
    2009 年 11 巻 2 号 p. 25-30
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本研究は,保健師のボランティア支援の一助とするために,障がい者と関わるボランティアが活動を通して感じる充実感に影響を与える要因を明らかにすることを目的とする.方法:北海道内の保健医療福祉機関に登録し,「障がい者の活動」に参加しているボランティア396名を対象に自記式質問調査を行った.260名(65.7%)から回答が得られ,そのうち244名を解析対象とした.ボランティア活動に対する充実感を充実感尺度で測定し,充実感に影響すると考えられる要因を,「個人属性」「ボランティア経験」「ボランティア動機」「病気の知識」「障がい者との接触体験」「視野の広がり」「情緒的サポート」「負担感」の8つの枠組みで構成した.充実感を従属変数とし,8つの枠組みから導いた要因29項目を独立変数として,重回帰分析を行った.結果:障がい者と関わるボランティアが活動のなかで感じる充実感に影響を与えていた要因は,大きい順に挙げると「障がい者観の変化」「年齢」「金銭的負担感」「病気の知識に対する自信」など,全部で10要因であった.結論:ボランティアの充実感に最も影響を与えていたのは「障がい者観の変化」であり,充実感を高めるためには,障がい者観の変化につながるよう障がい者との相互交流を促す支援が最も重要である.
  • 岡本 双美子, 河野 あゆみ, 津村 智恵子, 曽我部 ゆかり
    原稿種別: 本文
    2009 年 11 巻 2 号 p. 31-37
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本研究では,A市B地区に住む高齢者の同居家族との死別を体験した者と,性別による特徴について比較検討を行い,同居家族との死別を体験した在宅高齢者の閉じこもり状況を明らかにすることを目的とする.方法:A市B地区に住む全在宅高齢者4,523人に郵送調査を実施し,回収者3,420人(75.6%)中,死別を体験した72人(2.1%)を対象とした.対象群の年齢・性別・自立度についてマッチングを行い,対照群72人を得た.分析は,死別体験の有無と性別による比較検討をχ2検定にて行った.結果:分析対象者144人のうち,男性は46人(31.9%),女性98人(68.1%),平均年齢73.2歳(SD6.2),自立度はJ1・J2の者が128人(88.9%)であった.死別を体験した者は,未体験者に比べて一人暮らしで,自分で買い物をする者が多かった.しかし,用事を頼める人がいない者が多かった.また,男性の死別体験者は,家族や友人の相談にのっている者が少なく,用事を頼める人,看病や世話をしてくれる人,災害時に声をかけてくれる人がいない者が多かった.さらに,行政サービスの利用意向が低い者が多かった.結論:男性は女性に比べて人との交流が乏しく,特に男性死別体験者はソーシャルサポートも乏しいことが明らかになった.また,サービス利用の意向も低いことから,社会とのつながりをもてるような支援が必要である.
  • 丸谷 美紀, 宮﨑 美砂子
    原稿種別: 本文
    2009 年 11 巻 2 号 p. 38-45
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:農村部の保健師が生活習慣病予防の保健指導で考慮している地域の文化の内容と援助行為を調査し,農村部の地域の文化に即した生活習慣病予防の保健指導方法を明らかにする.方法:農村部の保健師3名が行う生活習慣病予防の保健指導場面の参加観察,保健師への聞き取り,記録類の閲覧をした.14事例から「a.保健師が考慮していた地域の文化の内容」「b.援助行為」「c.指導対象者の反応」を抽出し,性質の類似性を捉えて質的帰納的に分類整理した.各事例の「b.援助行為」と「c.指導対象者の反応」の関係を「援助と反応の関係」とし,さらにそれら3つから「保健指導方法」を読み取った.結果:保健師は,指導対象者の生活を形成してきた時代背景,職業,社会構造を踏まえた,定着している生活習慣や価値観,新たな健康習慣を考慮していた.保健指導方法は「生活習慣病の要因となりがちな地域の文化を話題にし,生活習慣病の要因の有無を確認し指導対象者の気づきを促す」「地域の文化が生活習慣病の要因となりうる根拠を,指導対象者の経験や医学的知識に関連づけて説明し,行動変容を動機づける」「地域の文化の指導対象者にとっての意味や変更の難しさを共有し,意思決定を支える」「地域の文化に引きつけた生活習慣病予防の方法を提案・支持し,実行を支える」に整理された.考察:時代背景・職業・社会構造を踏まえた生活や価値観,新たな健康習慣を考慮して,生活習慣病の要因となっている事柄への指導対象者の気づきと理解を促し,行動変容への動機づけ,安心・安楽を与え,目標設定を支えることにより,主体的な行動変容を促すことができる.
  • 岡本 千明, 荒木田 美香子
    原稿種別: 本文
    2009 年 11 巻 2 号 p. 46-51
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,小規模事業所の健康診断を推進する要因をソーシャル・キャピタルの観点から検討することである.方法は健康管理について,F市の小規模事業所を対象にしたアンケート調査(198事業所)の検討,および小規模事業所5社の健康管理担当者と保健サービス提供機関5社の責任者と保健師を対象に実施した半構造化面接の質的帰納的分析である.その結果,健康管理を推進する要因は,【担当者の健康管理への熱意】【健康管理に関する情報伝達】【質の保証された保健サービスの提供】【機関の資源を活かした支援】【信頼関係】の5要素が見出された.これらを機能させて事業所が健康診断を推進するためには,キーパーソンである担当者への健康啓発を図ること,他機関と協働・連携することで事業所へ効率的かつ効果的な産業保健サービスの提供を図ることが必要であった.そのためには,地域の健康管理関係機関同士の関係性を高め合える場や機会がもてる環境を整備する必要性が示唆された.
  • 佐伯 和子, 河原田 まり子, 和泉 比佐子, 関 美雪, 上田 泉, 平野 美千代
    原稿種別: 本文
    2009 年 11 巻 2 号 p. 52-58
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:保健師指導者が職場内で行った人材育成を通して,現任教育を推進する職場の組織育成の観点から実践の成果を明らかにした.方法:保健師指導者は現任教育についての集合研修を受講し,約1年間をかけて自分の職場で人材育成の計画の作成から評価まで一連の過程を実施した.これら実践の評価は,研修会実施前と10〜12カ月後に自記式質問紙により行った.4カ所のフィールドで研修会を行い,145名の参加者のうち前後ともに回収できた90名を対象に分析をした.前後比較はWilcoxon符号付順位検定,その関連要因はχ2検定を行った.結果および考察:職場での現任教育の実践に関しては,スタッフの力量に応じた職務配分,チームワークの指導,教育的事例検討会開催,現任教育の話し合いの機会設定に有意差が認められ,改善された.教育的な職場環境の整備では,現任教育計画の作成,職場の現任教育目標の明文化,教育担当者の配置に有意差が認められ改善された.スタッフの人材育成計画の作成や実践を,上司やスタッフなど組織全体に浸透させながら実施することで,職場組織の人材育成環境の整備が可能になったと考えられる.また,変化のみられた現任教育の実践項目には,職場での教育担当者の配置,参加者の保健師経験年数や職位が有意に関連していた.関連要因からは,職場での教育担当者の明確化と権限付与の重要性が示唆された.
  • 平野 美千代, 佐伯 和子
    原稿種別: 本文
    2009 年 11 巻 2 号 p. 59-67
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:保健師と事務系職員が10年目の保健所保健師に求める実践能力レベルを明らかにすることを目的とした.研究方法:調査対象は47都道府県庁および7都道府県の県型保健所と市町村に勤める,実務経験10年以上の保健師,事務系職員とし,2006年11〜12月に無記名自記式質問紙調査を郵送法で実施した.調査への協力は自由意思とし、返送をもって承諾とみなした.10年目に1人で実践できる内容を基準に,保健所保健師に求められる実践能力レベルを4段階で記載し,回答者の各2群比較はMann-Whitney U検定を用いた.分析対象は都道府県保健師261人,市町村保健師392名,事務系職員211人,計864人(有効回答率29.8%)であった.結果:経験10年目を基準にした実践能力39項目のうち2項目を除いて,保健所保健師の10年目に8割以上の人が「1人でできる」レベル以上の実践能力を求めていた.職種,所属により求めるレベルに差はあったが,保健師の基礎となる能力は50〜70%,対人支援能力・地域支援能力は25〜60%,施策能力・管理能力は15〜55%の人が「指導できる」レベルを求めていた.回答者の各2群比較では,1O年目の保健所保健師に対し,事務系職員,市町村保健師は都道府県保健師よりも高いレベルの実践能力を求め,特に地域支援能力,施策能力,管理能力で有意差が認められた.結論:保健所保健師には中堅期から指導者として必要な能力を育成していく重要性が示唆された.
  • 松村 寛子, 河村 奈美子, 山内 まゆみ, 加藤 登紀子
    原稿種別: 本文
    2009 年 11 巻 2 号 p. 68-73
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:地域で4か月児を養育する母親を対象に,母乳育児の実施に関連する要因を心理社会面に焦点を当て明らかにし,地域における母乳育児支援の方策を検討する基礎的資料を得ることを目的とした.方法:B市の4か月児健診を訪れた4か月児の母親216名を調査対象に,無記名自記式質問紙調査を実施した.調査項目は基本属性,母乳育児の実施,母乳育児のきっかけ,母乳育児のサポートに関する項目であった.結果:返送を得られた138名のうち有効回答の得られた137名を分析対象とした.94.2%が母乳育児に関心があると回答した.母乳の実施には「子どもの出生順位」,「母乳育児への関心」,母乳育児に関心がある理由として「児に飲ませるのが楽であると思う」,「母親教室の受講経験」,母親がサポートを必要とした時期の「助産師からのサポート」,家族の「評価的サポート」が関連していた.考察:対象者は母乳に高い関心をもっていた.母親の母乳育児の実施には飲ませるのが楽であるという母親側が日常的メリットを感じることが重要であり,母乳育児確立時期までの支援が求められると考える.また,第1子をもつ母親への支援の充実ならびに家族を巻き込んだ母乳育児の推進活動,母親のニーズの高い時期に適切な支援が受けられることが母乳の実施要因としては重要であると考える.
  • 呉 珠響, 斉藤 恵美子, 河原 加代子
    原稿種別: 本文
    2009 年 11 巻 2 号 p. 74-79
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本研究は,都市部の一地域に暮らす在日フィリピン人の肥満と生活習慣の実態を明らかにし,基礎資料を得ることを目的とした.方法:20歳以上の在日フィリピン人60名に対し,無記名の英語の自記式質問紙による集合調査を実施した.結果:回収数は53名,有効回答数は40名であった.男性は12名(30.0%),女性28名(70.0%),BMI≧25の割合は男女ともに25.0%であった.男女での2群間での比較では,男性のほうが,家族以外の者との同居,大学卒業以上,8時間以上の勤務の人の割合が有意に高かった.また,男性のほうが,毎日フィリピン料理を食べる人の割合が有意に高く,ミリエンダの回数が有意に多く,食品摂取の多様性得点が有意に低く,食事の時間が有意に短かった.肥満群と非肥満群との比較では,肥満群のほうが,腹囲≧90cmの人の割合,身体的疲労がある人の割合,日本料理を食べる頻度が少ない人の割合が有意に高かった.結語:在日フィリピン人の肥満者の割合は25.0%であった.彼らの身体的な疲労,肉体労働への従事や長時間勤務,および食生活に関する習慣が肥満に影響を及ぼしていることが明らかになった.仕事や生活状況を考慮した肥満予防と健康維持および増進のための保健指導の必要性が示唆された.
  • 熊坂 智美, 稲毛 映子, 矢野 正文, 結城 美智子
    原稿種別: 本文
    2009 年 11 巻 2 号 p. 80-86
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:地区活動に参加している後期高齢者について,前期高齢者と比較検討し,ソーシャルサポートの現状と将来の介護ニーズに関する特性を把握し,地域における課題を明らかにする.方法:老人クラブ等に定期的に参加している高齢者152人を対象に,質問紙を用いた聞き取り調査を実施した.結果:前期,後期高齢者の2群で集計・分析を行った.その結果,後期高齢者のソーシャルサポートは「配偶者以外の同居家族」から受け取るサポートが「別居子・親族」「友人・近隣」より高い割合を示した.また,サポートの種類によりサポート提供者は限定的な傾向がみられた.将来の介護ニーズについては,地域に必要なものとして「状態悪化時の施設・病院」「同年代との交流」等が挙げられ,介護希望場所は「自分の家」が最も多かった.結論:後期高齢者にとって,家族のサポート源としての役割は大きく,手段的サポート,情緒的サポートの主な提供者であることが示された.また,友人や近隣との交流がサポートを得やすい環境づくりにつながることが示唆された.後期高齢者であっても前期高齢者とほぼ変わらない社会的支援の程度が維持されると推察された.後期高齢者にとって活動の場をもつことは,他者との交流によりサポートを受ける可能性を高め,そこで役割を担うことで心身の保持・増進意欲を高めることにつながる.
  • 白川 あゆみ
    原稿種別: 本文
    2009 年 11 巻 2 号 p. 87-92
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:過疎地域に暮らす配偶者と死別した女性高齢者の死別後の体験を明らかにし,地域における支援について検討すること.方法:過疎地域に暮らす65歳以上で,配偶者を亡くした女性高齢者5名に,死別後の体験について半構成的面接を行い,データの収集,質的分析を行った.結果:〈一人暮らしになり将来の健康を案じる〉という思いがある一方で〈何かあれば将来,村の福祉サービスを利用したい〉という思い,〈夫が行っていた役割もすべて自分の肩にかかってきて大変である〉という思いがある一方で〈夫が行っていた役割を継承していくことが生きがいであり支えである〉という思いを,また〈交流に気遣いをするという思い〉がある一方で〈同年代との人たちとの交流を楽しむという思い〉が語られた.考察:高齢化が高い過疎地域に暮らす女性高齢者に対しては,基本的には現在行われていることを継続,さらには補強し,〈何かあれば将来,村の福祉サービスを利用したい〉〈夫が行っていた役割を継承していくことが生きがいであり支えである〉〈同年代との人たちとの交流を楽しむという思い〉の,肯定的側面がより強化されていく支援が必要と考えられた.
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