日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
16 巻, 3 号
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  • 吉岡 京子
    原稿種別: 本文
    2014 年 16 巻 3 号 p. 4-12
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:わが国における保健師の事業化・施策化に関する近年の研究について文献レビューを行い,これまでにどのような研究が進められているのかを解明する.方法:医学中央雑誌およびCiNii Articlesを用いて,「保健師」「事業化」「施策化」「政策形成」「保健医療福祉計画」の5ワードで,2001年から2013年までに発表された文献を検索した.結果:収集した41件のうち,質的研究は21件,量的研究は18件,レビューが2件であった.文献の内容は,「事業化・施策化に必要な技術・能力の解明」「教育分野における事業化・施策化能力の育成」「具体的な取り組み事例」に大別された.研究は急速に進展していたが,保健師が現場レベルで地域の健康課題をアセスメントするための方法論は,十分に整理されていないことが明らかとなった.考察:保健師の事業化・施策化能力を高めるためには,行政として取り組む必要性の高い健康課題を把握するためのアセスメントツールや,現任教育プログラムの開発が必要と考えられる.また,介入研究によって,アセスメントツールや教育プログラムの効果を検証する必要性が示唆された.さらに,基礎教育において学生の理解をよりいっそう深める教育方法を検討することも課題であることが示唆された.
  • 依田 純子, 佐藤 悦子, 泉宗 美恵, 須田 由紀, 井出 成美
    原稿種別: 本文
    2014 年 16 巻 3 号 p. 13-21
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:在宅ケアにおいて訪問看護師がもつ介護支援専門員との連携の困難性と課題の構造を明らかにし,連携の課題解決に向けた方略についての示唆を得る.方法:管理職にある訪問看護師へのフォーカス・グループインタビューを実施し,質的統合法(KJ法)によって,介護支援専門員との連携の困難性と課題に関する内容を分析した.結果:訪問看護師が感じている介護支援専門員との連携の困難性と課題について,以下の6つの内容が抽出され,構造化された.訪問看護師は,両者の連携の現状において【連携の必要性に関する意識の高まり】が浸透するなかで,【連携能力の個人差】による【介護支援専門員との情報共有のむずかしさ】があると感じていた.しかし,それと同時に,訪問看護師自らが【うちとけた関係づくりを基盤にした情報共有への努力】や【情報伝達方法の模索と工夫】をしており,これが【情報共有に対する介護支援専門員の積極的な姿勢】に影響しているという構造をもつことが明らかになった.結論:訪問看護師と介護支援専門員との連携を円滑に進めていくためには,訪問看護師の課題とする情報共有への努力や工夫を,専門職連携実践への意図的な方略として精選する必要性が示唆された.
  • 青山 京子, 国井 由生子, 柳澤 理子, 石﨑 美保, 古田 加代子, 佐久間 清美, 元木 麻衣子
    原稿種別: 本文
    2014 年 16 巻 3 号 p. 22-31
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は,在日外国人Children with Special Health Care Needs(CSHCN;特別な保健医療ニーズをもつ児)に対する行政保健師の支援プロセスとその影響要因を明らかにすることである.方法:研究参加者は,愛知県で外国人登録者数の多い市の保健師13人である.データは半構成的面接で収集し,過去5年間にかかわった最も対応が困難であった事例について語っていただいた.分析は,事例ごとに保健師の支援内容からプロセスの段階を整理し,各段階の影響要因をカテゴリー化した.結果:CSHCNの出身国はブラジル,フィリピン,ペルーであった.CSHCNには,発達障害,先天性疾患,悪性腫瘍,脳性麻痺,低出生体重児とその合併症などが含まれた.保健師の支援プロセスは『対象把握のきっかけ』『対象の状況・ニーズの把握』『サービス利用の意向確認』『適切なサービスの検討・選択と導入に向けた準備』『サービス利用継続への支援』の5段階であった.またプロセスの影響要因は,【児】【養育者と家族】【民族コミュニティ】【日本人コミュニティ】【通訳】【関係機関との連携】【制度・システム】【保健師】の8カテゴリーに分類された.結論:在日外国人CSHCNに対する支援プロセスは,日本人CSHCNと類似するが,支援プロセスの影響要因には外国人に特徴的な要因が存在し,支援にあたっては,質の高い通訳確保や異文化理解に努め,外国人が利用しやすいサービスの拡大が望まれる.
  • 濱吉 美穂, 河野 あゆみ
    原稿種別: 本文
    2014 年 16 巻 3 号 p. 32-40
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:自らの意思決定が可能な地域住民を対象とした,邦訳版アドバンス・ディレクティブ(Advance Directive;AD)知識度尺度と態度測定尺度の信頼性・妥当性とわが国での活用可能性を検討する.方法:研究対象者は,A市S区の老人会会員104人である.研究方法は,無記名自記式質問紙調査であり,調査項目は,Murphyらが作成した尺度の邦訳版AD知識度尺度10項目,AD態度尺度13項目と基本属性基準関連妥当性検証を目的とした質問項目「ADについて聞いたことがあるか」「AD作成者を知っているか」「家族の看取り・介護経験の有無」「家族と終末期について話した経験の有無」「過去の大病・手術歴の有無」の5項目,合計28項目である.結果:回答者は102人(98%),平均年齢は74.9±6.6歳,男性,女性共に51人であった.I-T相関係数0.3以下の項目を削除した結果,AD知識度尺度は8項目,最小値2点〜最大値8点,平均は5.6±1.9点,AD態度尺度はll項目,最小値1点〜最大値11点,平均は7.5±3.2点であり,両尺度共に分布の正規性が認められた.尺度全体のCronbachのα係数は,AD知識度尺度が0.67,AD態度尺度は0.86であった.基準関連妥当性の検証では,AD知識度尺度で「過去に大病・手術歴がある」の1項目,AD態度尺度では「ADについて聞いたことがある」「過去に大病・手術歴がある」の2項目において外的基準項目との間に関連が認められた.結論:邦訳版AD知識度尺度と態度尺度は,一定の信頼性・妥当性が検証されたが,今後も関連尺度を精査し併存妥当性の検証も含め,わが国の現状により合致させるために精査を続けていく必要がある.
  • 林 知里, 早川 和生
    原稿種別: 本文
    2014 年 16 巻 3 号 p. 41-52
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:単胎児と多胎児の父親の育児参加度を予測する要因を明らかにする.方法:多胎児の父親1,016人と単胎児の父親300人に自記式調査用紙を配布.多胎児の父親211人,単胎児の父親101人から返答を得た(回収率:20.8%・33.7%).結果:子どもが0歳時点の父親の育児参加度は,多胎児の父親では,「妻の妊婦健診に付き添った」「子育ての悩みを友人・同僚に相談した」「妻は,子育てに関する自分の頑張りをほめてくれた」「妻は,仕事での自分の頑張りをほめてくれた(負の関連)」「子育ては,男女ともに協力して行うものである」で回帰係数が有意であった(調整済みR2値=0.326).一方,単胎児の父親では,「妻は,子育てに関する自分の頑張りをほめてくれた」「子どもを育てることに対してあまり関心が持てない(負の関連)」「地域での活動や仕事などを通じて,子どもたちとかかわりをもちたい」「仕事と子育ての両立には,上司や同僚の理解が必要である」で回帰係数が有意であった(調整済みR2値=0.366).同様に,子どもが1・2歳時点および3〜5歳時点での育児参加度を予測する要因についても分析した結果,0歳時点で有意差があった項目のうち1〜2項目においては有意差が認められなかったが,全体として同様の傾向が認められた.考察:単胎児と多胎児の父親では,異なる要因が育児参加度を予測していた.父親の背景にある要因を考慮し,育児参加をスムーズに促すアプローチが重要であろう.
  • 松浦 仁美, 西嶋 真理子, 星田 ゆかり
    原稿種別: 本文
    2014 年 16 巻 3 号 p. 53-64
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:自殺予防におけるソーシャルキャピタル(以下,SC)を醸成する保健師活動を測定する尺度(自殺予防SC醸成尺度)を開発し,その信頼性,妥当性を検討する.方法:文献検討とインタビューをもとに,22項目の質問紙を作成した.2007年の自殺死亡率が27.0以上ある9県内すべての市町村(271か所)で自殺対策を担当している保健師に対し,郵送法による質問紙調査を行った.有効回答が得られた129自治体を分析対象に,主因子法,Promax回転による因子分析を行い,尺度の信頼性と妥当性の検討を行った.結果:16項目3因子「実効性のある関係者との連携」「個別ニーズを共有し,住民の主体的な取り組みへつなげる」「住民同士が気遣いあえるネットワークづくり」からなる尺度を作成した.尺度全体のCronbach's αは,0.91,3因子各項目は,0.79〜0.88であった.既知グループ法で有意差がみられ,外部指標とは有意な相関がみられたが,0.7以上の相関ではなかった.考察:基準関連妥当性に検証の余地は残ったが,尺度の内的整合性,構成概念妥当性は支持され,自殺予防SC醸成尺度として使用可能であることが示唆された.
  • 後藤 順子, 細谷 たき子, 小林 淳子, 叶谷 由佳, 大竹 まり子, 森鍵 祐子
    原稿種別: 本文
    2014 年 16 巻 3 号 p. 65-74
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:地域在住の自立高齢者の生活機能低下の一次予防の検討のために,6年後の生活機能のリスクの発生に影響する要因を明らかにする.方法:2004年健康調査参加者185人に対して,2010年に追跡調査を実施した.追跡調査回答者146人を対象に,生活機能のリスクの有無と関連があった健康調査の有意な項目を独立変数追跡調査の生活機能のリスクの有無を従属変数として,6年後の生活機能のリスクの発生の影響要因について多重ロジスティック回帰分析を実施した.結果:回答者146人の生活機能のリスクなし群が27人(18.5%)であり,多重ロジスティック回帰分析の結果,「下肢筋力(伸展)」(OR2.01),「過去1年間の転倒経験」(OR18.83),「病気で2〜3日寝込んだときに看病や世話をしてくれる同居家族以外の有無」(ORI3.53)が生活機能のリスクの発生に関連していた.考察:歩行機能が自立している高齢者では,「下肢筋力(伸展)」が生活機能低下の徴候であり,「過去1年間の転倒」ありが影響要因だったことは,下肢筋力(伸展)の低下を補足する結果と考えられる.自立高齢者では日常心身共に介護が不要であり,短期間寝込んでも,同居家族以外に支援を求めない可能性がある.日常からのインフォーマルサポートづくりが重要である.結論:自立高齢者の生活機能低下を防ぐ一次予防は,個人の努力に加えて,下肢筋力の維持強化,インフォーマルサポートを含む地域づくりの重要性が示唆された.
  • 田中 美延里, 金藤 亜希子, 奥田 美恵, 野村 美千江, 岡本 玲子, 宮内 清子
    原稿種別: 本文
    2014 年 16 巻 3 号 p. 75-81
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:管理期保健師に向けてキャリアに焦点を当てたポートフォリオの作成支援を行うことにより保健師に生じた変化を記述することである.方法:保健師のキャリア開発に向けたアクションリサーチの一部として,1回のセッションと個別支援によるポートフォリオ作成支援段階を取り上げた.データ収集には,セッション実施記録研究者の支援記録,参加者の活動記録を用いた.全プログラムに参加した保健師5人のデータを分析対象とし,記録から保健師の変化を表す内容を抽出し,質的帰納的に分析した.結果:保健師は11カテゴリーからなる3つの段階で変化していた,最初は《作業に取り組む目標が明確になる》《保健師の専門能力への意識が高まる》《先駆的保健師の成長過程に自分を重ねてたどる》という【成長過程を振り返る準備性が高まる】段階,次いで《懐かしい品々を掘り起こし過去の自分に励まされる》《時系列に出来事を布置し全体を見渡す》《個々の出来事がつながり成長過程が浮かび上がる》《成長過程をたどって新たな意味を見いだす》《成長過程を筋立てて生き生きと語る》という【ひとりの保健師としての振り返りに専心する】段階,そして《今と昔の職場環境を比較する》《自分の経験を役立てたい気持ちになる》《組織的な取り組みへの発展を考える》という【管理期の自分に立ち戻ってとらえ直す】段階に至っていた.考察:管理期保健師はポートフォリオ作成により,専門職としての成長を実感し,成長過程を構造化することで,自ら貫いてきた活動理念などの新たな意味を見いだし,ひとりの保健師としてエンパワーされる経験を経て,管理期の視座へと転換していた.
  • 牛尾 裕子, 松下 光子, 飯野 理恵
    原稿種別: 本文
    2014 年 16 巻 3 号 p. 82-89
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:大学における公衆衛生看護教育のあり方を検討する自主勉強会に参加した教員が「地区診断」の教育において重視していた教授内容と,その背景にある「地区診断」の教育の考え方を明らかにした.「地区診断」とは,特定集団・地域住民全体を含む地域生活集団(Community)に焦点を当てた看護実践を導く,看護固有の判断とする.方法:自主勉強会において地区診断の教育方法を検討するグループワークを2010年3〜8月に3回実施し,3回目のワーク記録を分析データとし,教育方法の工夫とその工夫による教授内容を分析した.参加教員は10大学31人,うち全回参加19人であった.3回目参加27人中講師以上20人,地域看護学教育経験平均10.1年である.結果:重視した教授内容は,「地区診断の目的」「対応すべき課題のとらえ方」「公衆衛生看護の理念・価値・信念」「保健師が行う地区診断の特質」「地区診断に必要となる知識・技術」であった.考察:重視した教授内容の背景となる「地区診断」の教育の考え方は,「地区診断」は実際の活動展開を導くためのものであることを伝える,意味のある学習経験をデザインする,現実の複雑な状況のなかで学生が考える過程を重視する,看護固有の地区診断を追究する,であった.地区診断の知識・技術を単に伝達するのではなく,現実の公衆衛生看護実践で使えるものとなるよう,学習者にとって意味のある学習経験を創り出すことが重視されていた.
  • 川崎 千恵
    原稿種別: 本文
    2014 年 16 巻 3 号 p. 90-97
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:在日外国人女性の出産・育児の過程において経験する困難や,異文化社会で出産・育児を行うことの健康への影響,出産・育児の過程における支援ニーズを明らかにし,今後の在日外国人女性への育児支援策を検討するうえで示唆を得ることを目的とした.方法:医学中央雑誌,CINAHL,PubMedを用いて検索し,抽出した国内外の原著論文について分析を行った.結果:在日外国人女性は出産・育児の過程において,異文化間の葛藤やジレンマ,サポートを得られない,孤立や孤独感などの困難を経験していることが明らかになった.また,これらは産後うつなどの精神的な健康にも影響しており,情報やソーシャル・サポートのサービスへのアクセス,異文化に関連する困難への対処についての支援が必要であることが明らかになった.結論:文献レビューの結果,日本の文化の影響を考慮した在日外国人女性への具体的な支援策を検討することが今後の研究課題と考えられた.特に,在日外国人女性の支援ニーズを満たし,精神的な健康を維持するために必要な方法についての検討が求められていると考えられた.保健師等専門職は,情報やソーシャル・サポート,ソーシャル・ネットワークにつながる仕組みを整備するとともに,在日外国人女性が出産・育児の過程で直面していると考えられる困難に共感し継続的に支援を行う必要があること,家族に対する働きかけが必要であることが示唆された.
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