日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
16 巻, 1 号
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  • 土井 有羽子, 上野 昌江, 和泉 京子
    原稿種別: 本文
    2013 年 16 巻 1 号 p. 4-11
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:地域で生活する女性高齢者の自宅内再転倒の実態とその要因を明らかにし,要介護認定に至る原因のひとつである転倒を予防するための方策として住宅環境に着目した転倒予防の支援について検討する.方法:対象はA市生活機能評価受診女性のうち転倒経験があった1,706人中,要介護認定を受けていない1,562人である.方法は自記式質問紙調査であり,基本属性,再転倒の有無,再転倒場所,住宅環境・身体的・社会的項目を収集した.結果:全項目に有効回答の自宅内再転倒者100人と非再転倒者436人の比較を,カテゴリー変数はχ2検定,年齢はMann Whitney検定で行い,自宅内再転倒の有無と有意であった項目について多重ロジスティック回帰分析を行った結果,「一人暮らし(の有無)」(OR=1.67,95%CI=1.01-2.75),「邪魔になる家具(の有無)」(OR=2.74,CI=1.63-4.61),老研式活動能力指標下位尺度の「手段的自立得点(1点)」(OR=0.65,CI=0.49-0.86),「知的能動性得点(1点)」(OR=0.68,CI=0.52-0.88)が抽出された.結論:自宅内に邪魔になる家具があると本人が回答している場合は,自宅内再転倒リスクが高いと考えられ,従来の運動プログラムの提供に併せ,住宅環境の転倒リスクを把握できる住宅環境評価を実施する必要性が示唆された.
  • 成田 太一, 宇田 優子, 小林 恵子
    原稿種別: 本文
    2013 年 16 巻 1 号 p. 12-19
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:災害における被害は直接死,間接死においても高齢者の占める割合は高い.そこで,近年,自然災害を経験した信越地域での地域包括支援センター(以下,包括)の災害対策の実態と運営主体や被災経験等との関連を把握し,高齢者への災害対策を推進していくうえでの示唆を得ることを目的とした.方法:信越地域の包括238施設の管理者を対象に郵送による自記式質問紙調査を行った.結果:有効回答数95(有効回答率39.9%).災害対策状況は,ほとんどの包括が職員の緊急連絡体制を整備しており,70%以上の包括が出勤基準,災害時の指揮・命令系統の整備をしていた.災害対策マニュアルを有する包括は約半数であり,安否確認方法の整備といった初動後に続く対象住民への支援活動の準備について,整備が十分でない現状が明らかになった.過去1年間に実施した包括の災害対策に関する活動をみると,スタッフへの防災教育・研修は半数を超える施設が実施していたが,管轄住民への避難訓練は約20%,防災教育は約10%と実施率は低かった.また,災害対策の状況は包括の運営形態や被災および被災地支援経験によっても差がみられた.考察:包括の災害対策マニュアルの所有率が約半数であり,マニュアルがあっても十分な内容が盛り込まれていない実態があることから,自治体と連携しながら,安否確認方法の整備等,具体的な内容が記載されたマニュアルを整備し,それに基づいた訓練を行っていく必要がある.
  • 丸谷 美紀, 雨宮 有子, 鶴岡 章子, 宮﨑 美砂子
    原稿種別: 本文
    2013 年 16 巻 1 号 p. 20-28
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:都市近郊で実施された生活習慣病予防の保健指導場面において,保健師が考慮した地域の文化の内容および地域の文化を考慮した援助行為を調査し,「都市近郊における地域の文化を考慮した生活習慣病予防の保健指導」を明らかにする.方法:都市近郊2市に勤務する保健師7人が行った生活習慣病予防の保健指導場面の参加観察により,保健師が考慮した【地域の文化の内容】および《地域の文化を考慮した援助行為》を抽出し,性質の類似性から分類整理しカテゴリーとした.次に,同じ保健師へ半構成面接を行い,先の分析結果を確認・補完した.結果:【地域の文化の内容】は7つに整理された.《地域の文化を考慮した援助行為》は,住民の関心ごとを話題に上げたり語調を合わせたりして対象者が話をしやすくする,地域によくみられる生活習慣等を参照して生活習慣病の要因の有無をアセスメントする,対象者の生活が生活習慣病の要因となり得ても理解を示す,対象者が自己の生活を振り返るよう促す,対象者の生活と調和のとれた方法を検討する,対象者の関心事や能力等を生かした方法を提案する,が得られた.考察:都市近郊の地域の文化を保健指導で考慮することは,人々が暮らしてきた意味や地元をつくる営みを理解し,それらと調和のとれた方法を検討することを可能にする.さらに,都市近郊でのその人らしい生活を支えることに加え,地元意識を強化することにつながり得る.また,対象者を地域の文化の影響を受けつつも文化を創り出す存在としてとらえることが,保健指導の前提として示唆された.
  • 尾﨑 伊都子, 小西 美智子, 松浦 恵美
    原稿種別: 本文
    2013 年 16 巻 1 号 p. 29-39
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:生活習慣改善が必要性な勤労者を対象にウェブサイトを用いた保健指導プログラムを実施し,介入度の違いによる効果を検討した.方法:研究対象は健診を受けた男性勤労者17人で,介入群に6人,対照群Aに6人,対照群Bに5人を無作為に割りつけた.保健指導期間は24週間で,開始から12週目,24週目に検査と生活習慣等に関する調査を受けてもらった.ウェブサイトの内容は,生活習慣に関する情報,自己観察日記,掲示板を設けた.開始時に保健師が個別面接指導を行い,改善目標を設定してもらった.介入群には日記内容に対して最初の12週間に4回,ウェブ上で個別指導・助言を送付した.対照群Aにはウェブサイトを利用してもらったが個別指導・助言は送付しなかった.対照群Bにはウェブ上の情報のみを提供した.評価指標は健診検査値,生活習慣,自己効力感,ウェブサイトの利用状況とした.結果:開始から24週間後,介入群では体重,BMI,LDL-コレステロール,ALTが有意に減少した.対照群Aでは有意に改善した検査値はなく,対照群BでLDL-コレステロールが有意に改善した.考察:介入群では検査値が有意に改善したが,介入群と同様のウェブサイトの内容を提供した対照群Aでは有意な改善はみられなかったことから,ウェブ上からの個別指導・助言には効果がある可能性が示唆された.
  • 藤田 淳子, 渡辺 美奈子, 福井 小紀子
    原稿種別: 本文
    2013 年 16 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    高齢者の在宅終末期ケアにおける介護支援専門員・介護職に対する訪問看護師の連携行動とその関連要因を検討した.13道府県の訪問看護事業所から無作為に1/2抽出し,訪問看護師に質問紙による郵送調査を実施した.1か月以上ターミナルケアを受けて亡くなった高齢者を2事例ずつ収集した.返送された事例のうち,訪問看護師が介護支援専門員と介護職双方と連携していた155例を分析した.介護支援専門員・介護職に対する訪問看護師の連携行動は,因子分析の結果,「介護職に対する連携」「介護支援専門員に対する連携」「チーム力の強化」の3因子に分類された.「介護職に対する連携」と関連した要因は,介護事業所と訪問看護師のいままでの連携が頻繁で,介護事業所の終末期ケア経験があること,「介護支援専門員に対する連携」では,介護支援専門員からの相談があり,利用者・家族の死亡場所の希望を把握した職種が訪問看護師の場合であった.よって,介護支援専門員・介護職に対する訪問看護師の連携行動を高めるには,情報交換のシステムや勉強会などが必要と考えられた.
  • 足立 安正, 上野 昌江, 和泉 京子
    原稿種別: 本文
    2013 年 16 巻 1 号 p. 48-55
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:中小規模事業場に勤務する勤労者の抑うつの実態と,ソーシャルサポートや経済状況,勤務状況などの諸要因と抑うつとの関連を明らかにする.方法:A市内の従業員100人未満の中小規模事業場のうち協力の得られた28か所に勤務する勤労者1,129人を対象に,自記式質問紙調査を実施し,郵送により回収した.調査項目は,基本属性,勤務状況,抑うつ,ソーシャルサポートである.結果:146票を有効回答とし(有効回答率12.9%),うち男性は65.1%,女性は34.9%で,平均年齢(±SD)は40.6±11.9歳であった.経済的な余裕なしは63.0%,主観的健康感の非健康は25.3%であった.勤務状況では,平均週間就業時間(±SD)が47.8±13.1時間であった.Self-rating Depression Scaleによる抑うつ区分では,非抑うつが45.2%,軽度抑うつが39.0%,中度抑うつが11.6%,重度抑うつが4.1%であった.多重ロジスティック回帰分析の結果,抑うつと有意な関連がみられたのは,女性,経済的な余裕がないこと,主観的健康感が非健康であること,就業時間が41時間以上であること,受け取った情緒的サポートが1点下がるごとであった.結論:中小規模事業場で働く勤労者の多くが抑うつ状態にあり,抑うつには主観的健康感や就業時間,経済状態等の関連が明らかになった.市町村と地域産業保健センターが連携を密にし,中小規模事業場におけるメンタルヘルス対策の充実が急務であると考えられる.
  • 金谷 志子, 河野 あゆみ, 津村 智恵子
    原稿種別: 本文
    2013 年 16 巻 1 号 p. 56-62
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:訪問看護師病院滞在型相談プログラム(以下,プログラム)を実施し,病院スタッフの訪問看護連携の知識・スキルの重要度と達成度の認識の変化を評価し,プログラムの効果を検討することを目的とした.方法:プログラムを実施した8病院のスタッフ816人に質問紙調査をプログラム開始前,中間時,終了時の3回実施した.訪問看護連携の知識・スキルに関する20項目を作成し,重要度と達成度を5件法(得点範囲20〜100点)で評価した.分析方法は3時点の変化の検討にFriedman検定と反復測定の一元配置分散分析を用いた.結果:有効回答者は691人,全体の95.8%が看護師,勤務年数10年未満が56.1%であった.訪問看護連携の知識・スキルの重要度は開始前87.4点,中間時88.1点,終了時88.3点と3時点間で差はなかった.達成度は実施前54.4点,中間時55.8点,終了時56.2点と3時点間で有意な差があった(p<0.05).結論:病院スタッフはプログラム開始前から訪問看護連携のための知識・スキルは重要度が高いと認識していた.達成度はプログラムの進行に伴い高くなり,プログラムは病院スタッフの訪問看護連携の知識・スキルの向上に一定の効果をもたらすことが示唆された.
  • 岡本 双美子, 中村 裕美子
    原稿種別: 本文
    2013 年 16 巻 1 号 p. 63-69
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:在宅で終末期がん患者を看取った家族の悲嘆反応と対処を明らかにする.方法:対象は在宅で終末期がん患者を看取った家族とし,年齢が40歳以上75歳未満である者とした.データ収集方法は半構成化面接法,分析方法は質的記述的に分析を行った.倫理的配慮については,大阪府立大学看護学部研究科倫理委員会の承認を得た.結果:対象者は男性2人と女性6人の計8人,平均年齢は65.4歳,続柄は妻5人,夫2人,娘1人,死別後4〜12か月であった.家族の悲嘆反応には,【死の否認】【後悔と寂しさ】【介護からの解放】【満足感】【体調の悪化】【不眠】【役割負担と経済的心配】【閉じこもり】の8カテゴリー,対処では【死の回避】【気分転換】【気持ちの整理】の3カテゴリーが抽出された.結論:家族の悲嘆反応には,情緒的・認知的,身体的,社会的反応がみられ,対処には死の回避や気分転換という「回復志向」と,気持ちの整理という「喪失志向」がみられた.特に,在宅で終末期がん患者を看取った家族の特徴として,介護からの解放と満足感を感じていたことが考えられ,死の心構えや準備,できる限りの介護ができるよう支援することが重要であることが示唆された.これらのことから,訪問看護師は,家族の心理的反応だけではなく,身体的・社会的反応も含めた悲嘆反応を理解したうえで,家族を支援することが重要であると考える.
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