目的:中小規模事業場に勤務する勤労者の抑うつの実態と,ソーシャルサポートや経済状況,勤務状況などの諸要因と抑うつとの関連を明らかにする.方法:A市内の従業員100人未満の中小規模事業場のうち協力の得られた28か所に勤務する勤労者1,129人を対象に,自記式質問紙調査を実施し,郵送により回収した.調査項目は,基本属性,勤務状況,抑うつ,ソーシャルサポートである.結果:146票を有効回答とし(有効回答率12.9%),うち男性は65.1%,女性は34.9%で,平均年齢(±SD)は40.6±11.9歳であった.経済的な余裕なしは63.0%,主観的健康感の非健康は25.3%であった.勤務状況では,平均週間就業時間(±SD)が47.8±13.1時間であった.Self-rating Depression Scaleによる抑うつ区分では,非抑うつが45.2%,軽度抑うつが39.0%,中度抑うつが11.6%,重度抑うつが4.1%であった.多重ロジスティック回帰分析の結果,抑うつと有意な関連がみられたのは,女性,経済的な余裕がないこと,主観的健康感が非健康であること,就業時間が41時間以上であること,受け取った情緒的サポートが1点下がるごとであった.結論:中小規模事業場で働く勤労者の多くが抑うつ状態にあり,抑うつには主観的健康感や就業時間,経済状態等の関連が明らかになった.市町村と地域産業保健センターが連携を密にし,中小規模事業場におけるメンタルヘルス対策の充実が急務であると考えられる.
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