日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
17 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 佐々木 純子, 難波 峰子, 二宮 一枝
    原稿種別: 本文
    2014 年 17 巻 2 号 p. 10-18
    発行日: 2014/11/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:訪問看護ステーションの管理者が管理実践上で体験した困難の様相を明らかにすることである.方法:A県下の開設主体の異なる訪問看護ステーションの管理者14人を対象とし,管理実践上での困難について半構造的面接を行い,得られたデータを質的帰納的に分析した.結果:母体組織に所属している訪問看護ステーションの管理者が体験している管理実践上での困難には,3つの様相がみられた.まず,事業所の最高管理者として,自分の部署から外をみたときに,母体組織との関係性で生じる軋轢と,訪問看護制度上の縛りからなる【仕組みのなかでの葛藤】があった.次に自分の職場内をみたときに,職場運営上の課題が山積した【担う役割への焦燥】があり,これらの状況に直面して,管理者を理解し認めてくれる者がいない状況での【共通理解者不在の孤独】という3つの要素から成り立っていた.結論:訪問看護ステーション管理者の困難感として,職務裁量が少ない状況で経営管理責任を負うことへの葛藤と孤独が考えられ,母体組織内での十分な権限移譲と管理実務面での支援,心理的な支援としての承認の重要性が示唆された.
  • 平野 美千代, 河原 加代子, 佐伯 和子
    原稿種別: 本文
    2014 年 17 巻 2 号 p. 19-27
    発行日: 2014/11/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本研究は,要支援認定を受けた高齢女性(以下,要支援高齢女性)の社会活動尺度を開発し,尺度の信頼性と妥当性を検証することを目的とする.方法:予備調査により作成した要支援高齢女性の社会活動尺度(SASOWS)をもとに,要支援高齢女性と一般高齢女性を対象に質問紙調査を実施した.回収数は要支援高齢女性269人,一般高齢女性306人であり,そのうち要支援高齢女性253人,一般高齢女性250人を分析対象とした.結果:探索的因子分析では,予備調査で想定した【身近な人たちとの交流】【食にかかわる能動的な創作活動】【専門職への相談行動】の3因子が抽出された.確認的因子分析では,適合度指標によりSASOWSのモデルは許容できる水準を満たした.また,要支援高齢女性群と一般高齢女性群のSASOWS得点の比較では,下位尺度で両群に有意差が認められた.SASOWSとADL,IADL,主観的健康感との相関では,ADL,主観的健康感とSASOWSにはほとんど相関がみられなかった.考察:本研究の結果,信頼性および妥当性が確認された3因子からなるSASOWSが開発された.本尺度を用いた社会活動の支援は,要支援高齢女性の社会活動の維持・向上ならびに,生活に対する肯定的な感情を深め,介護予防に対する意欲の向上につながることが示唆された.
  • 福島 奈緒美, 河野 あゆみ
    原稿種別: 本文
    2014 年 17 巻 2 号 p. 28-35
    発行日: 2014/11/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:研究目的は,介護保険の要支援認定を受けた男性高齢者の飲酒行動と身体心理社会的特徴との関連を明らかにすることである.方法:A市で介護保険の要支援認定を受けた65歳以上の居宅在住の男性高齢者全600人を対象に,自記式無記名調査票を郵送した.対象を非飲酒者,適正飲酒者,有害飲酒者の3群にわけ,適正飲酒者を基準としてオッズ比による比較を行った.結果:271人から回答を得て,218人を分析対象とした.有害飲酒者34人(15.6%)は適正飲酒者73人(33.5%)に比べ,肝臓病を有している人が6.5倍(95% CI 1.18-35.7,p=0.03).知的能動性が低い人が2.48倍(95% CI 1.07-5.75,p=0.035)多く,非飲酒者111人(50.9%)は適正飲酒者に比べ,生活機能が低い人が1.84倍(95% CI 1.00-3.38,p=0.049).手段的自立度が低い人が2.10倍(95% CI 1.14-3.87,P=0.017),主観的健康感が低い人が2.48倍(95% CI 1.33-4.61,p=0.004)と有意に多かった.結論:男性要支援高齢者では,有害飲酒行動と身体機能の低下に関連があり,高齢期の適正飲酒の普及啓発,飲酒に関するスクリーニングと生活背景を含めたアセスメント,適正飲酒とQOLの向上に向けた保健指導の必要性が示唆された.
  • 蔭山 正子, 横山 恵子, 中村 由嘉子, 小林 清香
    原稿種別: 本文
    2014 年 17 巻 2 号 p. 36-44
    発行日: 2014/11/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:精神障がいの家族ピア教育プログラムの効果的な普及戦略を検討するために,すでにプログラムを実施したことのある家族会を対象として,プログラムの継続意向に関連する要因を明らかにすることを目的とした.方法:プログラム開発時の2007年度から2012年度に家族学習会を実施した家族会59か所を対象とし,自記式質問紙を送付し.郵送で回収した.分析枠組みは,ヘルスケア提供組織におけるイノベーション普及の理論枠組みを用いた.プログラムの継続意向を定期実施意向あり群と定期実施意向なし群の2群にわけて従属変数とし,家族会のシステムの素地,準備性,プログラムを実施した結果との関連をみた.結果:56か所の家族会から回答を得た.プログラムの継続意向を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析では,プログラムの採用動機が新目標であること(OR=7.11,p=0.005),財源(OR=1.98,p=0.035)が有意な関連を示した.考察:家族会は,小規模作業所の運営という目標をなくし新しい目標として家族の相互支援や学習を求めている.本プログラム内容は,その新しい目標と合致している.また,プログラムの継続意向に財源の確保が関連していた.今後は,家族会が行政などに補助金や助成金を申請する際に活用できるツールを提供することを含め,財政面を確保する取り組みが必要である.
  • 有本 梓, 田髙 悦子
    原稿種別: 本文
    2014 年 17 巻 2 号 p. 45-54
    発行日: 2014/11/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:児童虐待に対する保健師活動と課題に関する国内文献を整理し,近年の保健師による活動内容および活動上の課題を明らかにする.方法:2006年1月〜2013年3月に発表された文献を対象に医学中央雑誌を用いて検索し得られた論文33本を対象とした.文献中の記述から,活動内容と課題を抽出し,質的に分析した.保健師の活動内容を,支援対象別に分類して整理した.結果:個人・家族への支援は,「対象や支援の場にかかわらず共通する普遍的な支援」,妊娠・産褥期の自殺・自殺企図事例への支援などの「特定の対象または場での特徴的な支援」に整理された.グループ支援では,個別支援との連動,グループの類型化が示された.地域・システムにかかわる活動は,「地域全体での虐待予防・対応のための連携システムやネットワーク構築」として,育児支援家庭訪問事業の運用,産後うつスクリーニング,周産期医療機関との連携,児童相談所での連携が示された.課題は,個人・家族への支援,地域・システムにかかわる活動,専門職としての能力開発における課題に整理された.結論:児童虐待に対する保健師活動に関する国内文献は,2006年以前に比べ,1)対応が必要な母親への直接支援,2)グループ支援や児童相談所に配属された保健師の活動内容,3)地域・システムレベルでの児童虐待予防事業の展開や他機関連携における活動に関する文献などがみられ,内容に変化が生じていた.
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