目的:本研究は,都市部地域在住高齢者の主観的健康感の関連要因を男女別に検討し,高齢者の健康の維持・増進を支援する保健活動の実践の示唆を得ることを目的とした.
方法:A市B区C地区在住の65歳以上の住民より年齢層化無作為に1/2抽出された2,928人に,無記名自記式質問紙調査を実施した.調査項目は,主観的健康感,基本属性,疾病の有無,生活習慣,地域での活動や人とのかかわり,地域コミットメントである.男女別に主観的健康感を従属変数とした重回帰分析を実施した.
結果:905人を分析対象とした(有効回答率30.9%).主観的健康感には男性では年齢(β=-0.116,p<0.01),疾病の有無(β=-0.270,p<0.001),主観的経済状況(β=0.110,p<0.05),生活習慣(β=0.133,p<0.01)が関連しており,女性では年齢(β=-0.052,p<0.01),疾病の有無(β=-0.248,p<0.001),就業の有無(β=0.141,p<0.01),主観的経済状況(β=0.144,p<0.01),住みやすさ(β=0.180,p<0.01),生活習慣(β=0.147,p<0.01)が関連していた.
結論:都市部地域在住高齢者の主観的健康感には,男女ともに年齢,経済状況,疾病の有無,生活習慣が関連しており,女性では住みやすさと就業も関連していることが明らかとなった.このことから高齢期においては,生活習慣改善と維持を目的とした地域活動に取り組むことの重要性が示唆された.また,高齢者は同一年代であっても,住みやすさや地域への愛着といった要因に性差があるため,今後は地域への意識や考えについての性差を踏まえた支援を検討する必要性が示唆された.
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