日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
2 巻, 1 号
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  • 蔭山 正子, 金川 克子, 大島 巌
    原稿種別: 本文
    2000 年 2 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    精神障害者家族会への専門職による支援内容を把握して支援を評価する指標を作成すること,および,作成した評価指標を用いて家族会が設立されるまでの支援(以下,設立支援とする)と現在の支援を比較検討することを目的とした.実際に家族会を支援している専門職から支援内容を把握し,支援に関する質問項目を作成した.作成した質問項目を用いて郵送法による全国調査を実施した.調査対象とした家族会は,1990年以降に専門職が支援して新しく設立された全国の地域家族会150団体(回収率81.1%)であり,調査対象者は,各対象家族会の設立を支援した専門職と,現在家族会を担当している専門職である.作成した質問項目から設立支援と現在の支援に共通する因子構造を持つ項目23項目を選択し,評価指標を作成した.各因子は,「相互援助機能支援」「対外的活動支援」「運営業務遂行支援」「代行支援」「関係機関への働きかけ」「個人支援」の6因子であり,これを支援の種類とした.6種類23項目で構成する家族支援の評価指標について妥当性と信頼性を検討した.作成した評価指標を用いて,設立支援と現在の支援を比較すると,設立支援は「対外的活動支援」以外の全種類で現在の支援よりも実施の程度が高かった.特に,設立支援では,多くの専門職が「相互援助機能支援」を実施していた.また,「代行支援」については,設立支援では実施の程度が高かったが,現在では低くなっており,設立支援と現在の支援で差が大きかった.これらから,設立支援は現在の支援と比べて,相互援助機能支援と代行支援を中心とした精力的な支援が行われていることが明らかになった.
  • 島内 節, 木村 恵子, 亀井 智子, 藤谷 久美子, 内田 恵美子, 川越 博美, 佐々木 明子, 福島 道子, 高階 恵美子, 丸山 美 ...
    原稿種別: 本文
    2000 年 2 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:訪問看護実践における看護業務について訪問看護業務分類を作成し,知識的・判断的・技術的専門性からみた訪問看護の難易度を明らかにする.さらに,明らかになった業務難易度の利用可能性を検討する.方法:調査対象は訪問看護の経験が5年以上で,エキスパートナースとして研究メンバーが全国から選んだ訪問看護婦および保健婦118名であり,訪問看護業務の難易度に関する質問紙調査を郵送法により実施した.本研究において作成した訪問看護業務分類は大分類(14項目),中分類(45項目),小分類(130項目)より構成された.小分類には看護方法として「観察・判断」,「ケア実施」,「利用者・家族教育」,「物品の選定・調達・準備」を設定し,総項目数は491項目であった.難易度は高度専門的知識・技術から基本的知識・技術までの3段階で得点化し,平均得点が高いほど難度が高いと設定した.結果:1)有効回答数は104名(88.1%)であり,調査対象看護職の平均年齢は46.6歳であった.2)大分類14項目における難易度は以下の4群に区分された.難度の最も高い群は「ターミナル状態のケア」,「認知の問題のケア」であった.2番目に難度が高い群は「医療処置のケア」,「コミュニケーションの問題のケア」,「家族・介護者の問題のケア」であった.3番目の群は,「心理・社会的問題のケア」,「バイタルサインズ・問題兆候のケア」,「居住環境のケア」,「睡眠の問題のケア」,「摂取と排泄問題のケア」,「社会資源利用の援助」,「身体機能・日常生活動作のケア」であった.4番目の群が基本的な知識と技術があればできる業務として「薬剤使用と検査のケア」,「皮膚と清潔問題のケア」であった.3)看護方法別にみた難易度の全体平均得点順位は(1)「利用者・家族教育」,(2)「物品の選定・調達・準備」,(3)「観察・判断」,(4)「ケア実施」の順であった.この結果は施設内看護と異なる訪問看護の特徴を示している.以上の結果は次の2点に利用可能である.第1は現場の運営管理への利用可能性であり,事例の難易度とスタッフ条件から受け入れ許容量の明確化,熟練度に応じた事例分担,勤務スケジュール管理等に生かされる.第2に教育プログラムへの利用可能性である.業務内容と看護方法の難易度に基づき,教育内容やその順序,強調・強化すべき点が明確になったといえる.
  • 荒木田 美香子, 金森 雅夫, 松本 友子
    原稿種別: 本文
    2000 年 2 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    急速な人口の高齢化が進行する日本の現状においては,生活習慣病の予防活動にますます重点が置かれていく.その中でも,まだ疾病・異常率の低い20歳代の若者の生活習慣をより健康的な方向に導いていくことは特に重要であると考える.本研究は,静岡県北西部の4市町村の18歳から29歳までの若者1,153人に質問紙による調査を行い,602人より有効回答を得たものを対象に,保健行動と精神的健康状態の実態およびその関係を把握することを目的とした.主な質問項目は保健行動として,睡眠・喫煙・体格・飲酒・運動・朝食の摂取・間食の摂取・健康診断受診の8項目とし,精神的健康は日本語GHQ12項目版を使用し,以下の結果を得た.(1)保健行動の8項目中4項目を実施しているのは59.8%であった.(2)実施率の低い項目は男女ともに「運動実施群」で,男性33.3%,女性21,3%,「間食習慣のない群」で男性46,5%,女性19.0%,男性の「喫煙習慣なし群」44.1%であった.(3)保健行動に男女差があるものは,喫煙,朝食摂取,間食の習慣,飲酒,健診の定期受診,保健行動の実施総数であった.(4)喫煙習慣のあるもののうち,習慣化した年代は「中学」3.9%,「高校」27.0%であった.(5)主婦・フリーター・自営業などの職業に就いているもので,定期的に健康診断を受診している割合は27.1%にとどまった.(6)GHQの高得点群(精神健康不良)は3/4点をcut-off pointにしたとき,全体の39.7%であった.また,男性より女性のほうが有意に得点が高かった.(7)GHQを従属変数としたロジスティック回帰分析では,朝食の摂取・自覚的適正体格・適正な睡眠時間が有意な項目として抽出された.以上のことから,本対象地域の若者に対しては運動・間食の摂取,加えて,男性には喫煙に関すること,自営業や主婦へは健康診断の受診への働きかけが必要であるといえる.また,喫煙については小学校段階からの教育が必要であろう.健康相談などでは,女性,朝食の不定期摂取や摂取しないもの,体格を太りすぎやせすぎと感じているもの,睡眠時間が短いものについては精神面の健康状態についても配慮しつつ,注意深く面接を進めなければならないといえよう.
  • 河野 啓子, 荒木 郁乃
    原稿種別: 本文
    2000 年 2 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,働く人々の健康と安全の確保に貢献することを役割とする産業看護職が,職場の安全管理にどのようにかかわっているか,その現状を明らかにし,安全管理における産業看護職の役割を探ることである。職場の安全管理における産業看護職のかかわりの現状は,日本看護協会による調査研究報告と産業衛生学雑誌に発表されている調査報告から明らかにした.安全管理における産業看護職の役割は,産業看護分野での安全問題に関する日本および米国の文献をレビューすることにより探った.その結果,以下のことが明らかになった.現状としては,産業看護職は安全問題に積極的にかかわっていない.また,安全管理における産業看護職の役割は,心理的要因,生理的要因,環境要因,作業要因,管理要因,教育要因など,不安全行動の要因への働きかけとともに,「行動に基づく安全(Behavior Based Safety)」の考え方を用いたアプローチの必要性があることがわかった.
  • 西嶋 真理子, 小西 美智子
    原稿種別: 本文
    2000 年 2 巻 1 号 p. 36-43
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,ヘルスプロモーションの活動原則である唱道に焦点を当て,保健婦が行った唱道プロセスを分析し,保健行動の変容における保健婦の役割を考察することである.調査対象は,日本看護協会の先駆的保健活動交流推進事業の一環として報告された市町村の保健活動21事例,健康なまちづくりの活動例1事例および住民参加型の地域保健活動の推進モデル事業3事例,計25事例の市町村保健婦とした.方法は,保健婦の唱道によるヘルスプロモーションの5つの活動方法ごとの手応えや変化,保健行動の変容,市町村の概要等自記式アンケートにより調査した.また送付を依頼した資料も分析に使用した.アンケートの回答があったのは14事例(56.4%)であったが,保健婦の唱道のプロセスがアンケートおよび資料から読み取れた13事例について分析した.その結果,以下の結論を得た.(1)保健婦の唱道プロセスから共通の働きかけを用いた5つのグループに分類でき,各グループの活動の展開方法は地域特性や地区のニーズを反映していることが考えられた.(2)活動の契機の多くは保健婦活動から生じた問題意識から発展しており,首長等政策決定にかかわる者への働きかけとともに,住民の活動を支援していた.また,関係者にとって衝撃となる事態やモデル事業が活動の推進力となった活動もみられた.(3)ヘルスプロモーションへ最も発展した活動の唱道プロセスは,活動の早い時期から住民との対話を続け,住民を政策決定のパートナーとしてともに活動を展開していた.(4)ヘルスプロモーションへと発展した活動では住民の保健行動の変容も多くみられており,保健婦のヘルスプロモーションに向けての唱道が保健行動の変容にかかわっていることが示唆された.
  • 二瓶 真由美, 成瀬 優知, 村山 正子
    原稿種別: 本文
    2000 年 2 巻 1 号 p. 44-50
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,在宅要介護高齢者の援助において看護職が行う判断を,記述的に把握することである.本研究においては,判断を,看護職が在宅要介護高齢者に対して行った援助の判断理由と捉えた.対象は,同一事例を援助した市町村保健婦11名と訪問看護婦9名で,経験年数4年以上の者である.半構造的面接法により,事例に対して行った援助と,その援助行為の理由について語ってもらった.録音した面接内容から逐語録を作成し,援助行為の理由と行った援助とを結びつけた形でデータを抽出し,要旨をカード化した後,援助行為の理由をもとにカテゴリーに分類した.カード化した600件は,8カテゴリーに分類することができた.それは,(1)家族全員の健康を守る,(2)家族介護が継続される,(3)QOLを高める,(4)本人や家族の気持を重視する,(5)円滑な家族関係を構築し維持する,(6)社会資源を上手に使いこなす,(7)在宅ケアチームとして対応する,(8)より効果的な援助手段を見出す,である.これらから,高齢者の在宅ケアにおける看護職の援助行為は,援助目標に直結する理由,援助目標達成のための方法に関する理由,援助の効果性・効率性に関する理由により,判断されていることを確認した.
  • 東 清巳, 永田 千鶴
    原稿種別: 本文
    2000 年 2 巻 1 号 p. 51-60
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    【目的】在宅ケアに必要なケアの要素と訪問看護婦の能力について,ケアの主要な働きである「成長を促す」という概念に焦点を当てて分析し,訪問看護婦に必要な能力を追及した.【方法】平成10年度の事例検討会に出された在宅療養中の介入困難な6事例と訪問看護婦6名を対象に,看護婦が事例について説明した内容を,できるだけ正確に,解釈を加えず書きとめた.それを後日文字にして整理し,再度確認と修正を依頼した.最終的に得られたデータを療養者,看護婦,および両者の変化に注目し内容分析の手法を用いで分析した.その結果をM.メイヤロフのケアの8つの要素と対比させた.【結論】(1)「知識」「リズムを変えること」「忍耐」「正直」「信頼」「謙遜」「希望」「勇気」といったメイヤロフがケアの本質の要素として述べている8項目のほかに,「傾聴」「受容」「調整」「代弁」「力を与える」「意図的にかかわる」「まき込まれる」「かかわり続ける」「引き下がる」「承認」という10の要業が抽出された.(2)メイヤロフのいう8項目のうち,「知識」と「リズムを変えること」は本研究において顕箸に認められ,知識不足や知識が明確でない場合,積極的にそれを求めていくか否かがケアの質に影響を及ぼしていた.「リズムを変えること」には「他の方法でまた試みる」と「非行動性」といった2つの側面があった.(3)本研究において新たに認められた10項目のうち,特徴的なものは「意図的にかかわる」「まき込まれる」「かかわり続ける」「引き下がる」の4項目であった.(4)訪問看護婦-対象者間の相互作用は,きわめて個別性が強く,普遍化するには至らなかったが,ケアの質に明らかに影響を及ぼしていた.
  • 足立 登志子, 金谷 絵美, 藤田 真実, 伊藤 美樹子, 千代 豪昭, 三上 洋
    原稿種別: 本文
    2000 年 2 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:小児の在宅高度医療を行う家族の主観的well-beingの規定要因を明らかにし,主観的well-beingの保持・増進について検討することを目的とした.方法:大阪府医師会勤務医部会に平成4年に発足した小児の在宅医療システム検討委員会が,平成9年に実施した「家族のQOLに関するアンケート」(回答51家族)に対し2次的アプローチを加えた.質問は,(1)対象家族の基本的属性,(2)対象家族の生活状況,(3)在宅医療開始に伴う患児の変化,(4)在宅医療開始に伴う両親の生活の主な変化,の4群から構成された。回答を尺度化・カテゴリー化し,以下の解析を行った.結果:主観的well-beingとして「在宅医療に対する満足度」,「在宅医療の家族への影響に対する評価」を選び,まず相関分析行い,有意な単相関を示した項目を独立変数として重回帰分析を行った.その結果,「在宅医療に対する満足度」は家族関係のよさ,行動範囲の拡大,配偶者の賛成によって規定され,「在宅医療の家族への影響に対する評価」は家族関係のよさ,行動範囲の拡大,きょうだいの有無に規定されていた.さらに,家族関係のよさは社会資源の活用,肉体的疲労の軽減,父親の家族との対話時間の増加,きょうだいの有無によって規定されていることが明らかになった.結論:小児在宅高度医療を行う家族の主観的well-beingは,介護者である母親の身体的疲労の軽減とともに,きょうだいの存在や父親の関与などによって得られる,患児と介護者を取り巻く良好な家族関係に影響されることが示唆された.
  • 藤田 真実, 伊藤 美樹子, 三上 洋, 有馬 和代, 志村 雅彦
    原稿種別: 本文
    2000 年 2 巻 1 号 p. 69-75
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:大阪市大正区N地域において『つどいの場』の参加者の力量形成を目的とした活動を保健婦が行うにあたって,大学研究者は保健婦が問題提起した活動の第一段階からかかわり,ともに地域活動を行った.その中で,理論の活用や調査の実施・分析などの面から側方的な支援を行い,保健婦と大学研究者が地域活動に一緒に取り組む礎を築いた.現場と大学が互いにかかわりをもって活動した例の1つとしてその成果を報告する.方法:大正区N地域において,保健婦と協同して『つどいの場』参加高齢者と支える住民の力量形成を目的とする地域活動を行った.活動内容は,(1)住民参加による質問紙調査を実施して,その結果報告会を開催し,(2)(1)の成果を踏まえ,他の地域組織で今後の『つどいの場』活動について考える会合を実施した.(3)これら全体を通じで活動内容の整理と評価を行った.成果:(1)『つどいの場』に参加する閉じこもりがちな高齢者と地域ネットワーク委員は『つどいの場』の必要性を再認識し,主体的に活動するようになった.また,理想と現実のギャップを埋めるためにできることをそれぞれの立場で考えることができた.(2)PTAや子供会,老人会などの地域組織は『つどいの場』との協同活動に意欲を見せ,実際に計画(一部はすでに実施)した.さまざまな地域住民が交流できる兆しが見え,『つどいの場』が地域とのつながりをもって活動を広げるようになった.(3)保健婦と大学研究者は共同で活動初期からの経過と成果を整理・評価し,報告書を作成した.また,活動の経過を学会で発表した.考察:(1)活動を通して,集い参加者の力量形成は個人レベルだけでなく地域組織同士のつながりを持った組織レベルまで達成された.(2)保健婦は著者らとのかかわりを通じて,日頃の活動を客観的に評価することができ,研究的な営みに基づいた活動のあり方について学習する機会となった.大学研究者は,地域に研究拠点をもつことで研究活動の成果をより身近に感じることができ,研究を発展させていきやすく,地域の発展に寄与するという見地からも社会的責任の一端を遂行できると言える.こうした点から,地域と大学との共同の活動は意義深いと考える.
  • 安田 貴恵子, 俵 麻紀, 河原田 美紀, 御子柴 裕子, 北山 三津子
    原稿種別: 本文
    2000 年 2 巻 1 号 p. 76-79
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    行政における看護の機能についての理解を深め,役割追求の動機付けを高めることをねらいとし,ベテラン保健婦の活動を素材にした授業を試みた.講義終了後の学生レポートの記述内容から学びを取り出し,教育評価を行った.抽出できた記述は288件あり,8項目18細目に分類できた.8つの項目は以下のとおりである.(1)住民主体を基本とした活動,(2)多様な人々と共同したサービス堤供,(3)住民のニーズに沿い健康生活の営みを支援する,(4)地域で働く看護専門職に必要な知識・能力,(5)地域住民に対する責任性,(6)援助のあり方・方法,(7)保健婦活動の工夫,(8)その他,であった.最も多くの学生が学びを得ていたものは,項目1で64人(76.2%)であった.次いで項目2が46人(54.8%),項目3が44人(52.4%)であった.項目4の内容は,幅広い分野に及ぶ知識の必要性,積極性や協調性が求められることであった.保健婦の活動史を直接聴くことにより,住民のニーズに応じできた活動を知ることに加えて,専門職として自己研鑽をしてきた努力や保健婦の人間性までも学生は学びとっていると推測された.一方,項目5は24人(28.6%)と学びを得た学生は少なく,地域住民に対する責任性に関する内容について,今後の授業内容および実習指導の中で意図的に教授する必要がある.
  • 高波 澄子
    原稿種別: 本文
    2000 年 2 巻 1 号 p. 80-86
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    社会的・経済的背景が医療の場を施設から家庭へと向かわせている.このような状況にあって,実際に訪問看護に従事する看護婦等はどのような法的立場で業務を遂行しているのか.さらに,訪問看護の過程で過誤をおかした場合,いかなる責任か課せられるのか.そして,訪問看護においては,どのような看護過誤が予測され,それらは,いかに克服されるべきなのか.老人保健法や母子保健法等の法律が,市町村や保健所,指定訪問看護事業者等に課すところの適切な訪問看護(指導)を提供するという責務の履行を,看護婦等は,市町村,保健所,指定訪問看護事業者等の被用者という立場で補助している.すなわち,看護婦等の多くは,使用者である機関が負う責務の履行補助者として訪問看護に携わっているのである.そこで,看護婦等が,訪問看護の過程で過誤をおかして対象者に不利益を与えた場合,そこから生じる損害の賠償責任は,民法715条,または415条により看護婦等の使用者にある場合が多い.訪問看護は,医師が同行しない患者の居宅で単独で行われることから,施設内看護とは,人的・物的条件に大きな違いがある.実際に,老人保健法や健康保険法を適用して利用者に行われている訪問看護の内容を見ると,「利用者の症状観察」や「家族の介護指導」が,ほとんどにおいてなされている.さらに,医療的処置もかなり多い.そこで,これらの訪問看護にはどのような看護過誤が予測されるかを,従来の医療(看護)過誤裁判例を素材に検討した.結論は次のようになろう.在宅という限られた環境の中でさまざまな状況にある利用者に看護を提供する看護婦等の責務は非常に大きい.看護婦等個人の専門的知識,技能が求められるのはもちろんのこと,当該利用者の看護に当たり予測し得る悪しき結果の発生を回避するために万全を尽くすべきである.
  • 中本 朱美, 小西 美智子
    原稿種別: 本文
    2000 年 2 巻 1 号 p. 87-92
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,高齢在宅療養者の生きがいの構造と療養生活の受け止め方との関連性を明らかにし,その関連性をみること,高齢在宅療養者が生きがいを持って生活できるように支援するための方法を検討することである.研究対象はH県看護協会の訪問看護ステーションを利用しており,コミュニケーションがとれる高齢在宅療養者で,研究の同意が得られた34名である.研究方法は訪問看護婦に同行し,ケア実施時またはケア終了後30〜60分をめやすに生きがいの内容および療養生活の受け止め方について面接し,対象者の許可を得て録音した.録音した内容は逐語的に書き起こし,コーディングし,カテゴリー化した.27名について面接内容を分析した結果,生きがいを持っている,あるいは実現したいと望んでいる高齢在宅療養者26名から生きがいに繋がる活動を抽出した.その内容を構造化すると,「基本的な活動(4小項目)」「社会的な活動(7小項目)」「創造的な活動(20小項目)」の3つのカテゴリーに分類することができた.さらに,高齢在宅療養者の病気や療養生活に関する意識を分析した結果,「肯定的な受け止め方」と「否定的な受け止め方」に分類することができた.生きがいの構造で自己実現に繋がる活動と療養生活の受け止め方との関連性を分析すると,望ましい「創造的な活動があり療養生活を肯定的に受け止めている」と「創造的な活動があり療養生活を肯定的と否定的に受け止めている」「創造的な活動を求め療養生活を肯定的と否定的に受け止めている」「創造的な活動がなく療養生活を否定的に受け止めている」の4つに分類することができた.「創造的な活動があり療養生活を肯定的に受け止めている」者は4名と少なく,いずれも寝たきり度がランクAで,公的な保健・医療・福祉サービスとともに家族・友人等によるインフォーマルなサポートも受けていた.看護職およびその他の専門職は,高齢在宅療養者が創造的な活動を実現できるように,本人の過去の趣味を把握し,それらを取り入れた療養生活ができるように,家族,ボランティア等の協力を得て支援する必要がある.
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