目的:10代母親への妊娠中から育児期をとおした保健師の支援について,10代母親のもつACEの有無に焦点を当てて考察する.
方法:A市保健師50人に対し質問紙調査を行った.調査期間は2016年8~9月.調査内容は10代妊婦の成育歴,支援内容,10代母親に関わる際の工夫点等とした.量的データはχ2検定およびFisherの直接確率法を行い,有意水準を5%とした.質的データは,質的帰納的分析を行った.本研究は所属大学研究倫理委員会の承認を得て実施した.
結果:回答者数47人(回収率94.0%),10代妊婦の分析対象事例は110人であった.10代母親のうちACEあり45人(40.9%),なし49人(44.5%)であった.ACEありの母親は,高校進学せず・中退,特定妊婦,出産年齢18歳未満,妊娠時の思いが「不安」,出産までに母となる決意が「あいまい・みられない」者がACEなしの母親と比較して有意に高かった.ACEをもつ母親への保健師の支援として,妊娠届出提出後の面接・訪問,妊娠後期の電話・面接・訪問,入院中の病院訪問を行う割合が有意に高く,4か月児健診前に母親からコンタクトがある割合も有意に高かった.
考察:母親の子ども時代の逆境的体験が学校生活や妊娠への思い,そして母となる決意に影響をおよぼし続けていると考えられた.10代母親の支援にあたっては,妊娠中からACEの有無を把握し,ACEをもつ母親には妊娠後期から重点的な支援を行ない,保健師との関係づくりから集団における事業へと橋渡しすることが重要である.
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