目的:地域精神保健福祉活動における保健師の訪問回数判断に関与する指標を明らかにし,判断を困難にする影響要因を検討することを目的とした.対象と方法:対象は,北海道内10保健所において統合失調症者の訪問指導に従事している保健師52名であった.調査方法は郵送法による無記名自記式質問紙法とし,調査期間内に訪問指導した慢性統合失調症事例に関する記載を依頼した.調査項目は,(1)対象者の基本的属性,(2)事例の基本的属性,(3)生活能力(Life Assessment Scale for Mentally Ill),(4)精神症状(Brief Psychiatric Rating Scale),(5)ソーシャルサポート状況(Jichi Medical Schoolソーシャルサポートスケール),(6)保健師の判断,で構成した.データ分析は,判別分析,Kruskal-Wallis検定および多重比較を行った.統計解析にはSPSS Ver.10を用いた.結果および考察:対象者52名に調査票を配布し,43名から回答を得た(回収率82.7%).対象者から提出された83事例を分析した.年間訪問回数が適切であると評価された52事例について,判別分析を行った結果,訪問回数を年3回以下とする判断指標は,「家族外情緒的サポート」,「陰性症状」「対人関係」に問題がない場合であり,訪問回数を年10回以上とする判断指標は,「家族情緒的サポート」,「持続性・安定性」,「労働または課題の遂行」に問題がある場合であることが明らかとなった.また訪問回数を不適切と判断する要因には情緒的サポート不足が関与しており,訪問回数判断を困難にする要因には,統合失調症者の生活能力や情緒的サポート状況を適切にとらえられないことが関与していた.統合失調症者は疾病と障害が共存し常に再発・悪化の危険にさらされているため,本人のセルフケア能力や家族のケア力量を適切に評価し援助していくことが必要である.本研究で示された訪問回数判断指標を訪問場面で用いることは判断根拠を明確にし,有用であると考える.
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