日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
9 巻, 1 号
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  • 大野 昌美, 佐伯 和子, 織田 初江, 塚田 久恵
    原稿種別: 本文
    2006 年 9 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2006/09/26
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:高齢者保健福祉活動のための地域看護アセスメントの基礎的研究の第1段階とし,地域の人々の社会的側面と行動的側面をアセスメントするために必要な視点としてのアセスメント項目を明らかにした.方法:看護実践国際分類(ICNP®),NANDA看護診断等の文献を参考に,社会的側面は役割理論を,また行動的側面はクラークのディメンションモデルのうち"健康のディメンション"の行動的側面を活用し,アセスメント項目の第1次案を作成した.次に,行政機関に働く熟練保健師を対象に3回のデルファイ調査による評価を行った.アセスメント項目の理論的整合性と妥当性は,地域看護アセスメントや看護診断について研究業績がある研究者・教育者を対象に,エキスパート審査による評価を2回行った.デルファイ調査,エキスパート審査による評価に基づき,アセスメント項目の検討を行った.結果・考察:最終的なアセスメント項目は,社会的側面が,コミュニケーション,社会参加,家族内役割遂行,家族関係,家族介護,虐待,異性との交流,労働,経済的安定の9項目,行動的側面が,食行動,運動,飲酒,喫煙,睡眠-休息行動,気分転換,ストレス対処行動,日常生活行動,健康探求行動の9項目で構成された.社会的側面と行動的側面ともに,熟練保健師からの量的な評価,およびエキスパートからの質的な評価により,アセスメント項目の妥当性が保証された.
  • 桝本 妙子, 三橋 美和, 堀井 節子, 福本 恵
    原稿種別: 本文
    2006 年 9 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 2006/09/26
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:「地区視診ガイドライン」を用いて行った学生の地区把握を構造的に分析し,「ガイドライン」の有用性と限界およびその活用方法を検討した.方法:1年間の保健師基礎教育課程学生101名を対象に,「ガイドライン」15項目の理解度および既存資料との関連について調査した.「ガイドライン」15項目すべてに回答の得られた96名について分析した.分析方法は「ガイドライン」15項目の因子分析を行い,理解しやすいものとそうでないものを抽出した.あわせて既存資料の分析と「ガイドライン」との関連性を検討した.結果:因子分析の結果,『政治・宗教・健康』『社会資源』『行き交う人々の様子』『町の様子』の4つの因子を抽出した(累積寄与率63.3%).理解度の高かったものは『町の様子』『行き交う人々の様子』『社会資源』,低いものは『政治・宗教・健康』であった.また,既存資料と結びつけて理解できたと答えた者ほど「ガイドライン」の平均得点が有意に高かった.考察:「ガイドライン」の活用によって,地区をチェックリスト的に観察することができ,既存資料とも結びつけて理解できていた.しかし既存資料にある基礎的データを確認するにとどまっており,住民の意識や行動と関連づけて把握することは困難であった.そのため,具体的に助言・指導するとともに,「ガイドライン」の活用目的と方法およびその限界を説明し,さらに住民と接する機会を増やして地区の理解を深めることが必要であると考えられた.
  • 岡本 双美子
    原稿種別: 本文
    2006 年 9 巻 1 号 p. 32-39
    発行日: 2006/09/26
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,遺族が遺族会で受けているサポートを明らかにし,受領サポートに関連する要因を明らかにすることを目的とした.雑誌「ターミナルケア」に掲載されている8遺族会の中から,160名の遺族を対象に自記式質問紙による調査を行った.項目分析を行った後,最尤法・プロマックス回転による探索的因子分析を行った.その結果4因子解を最適解として採用し,第I因子を「情緒的サポート」,第II因子を「認知的サポート」,第III因子を「情報的サポート」,第IV因子を「専門的サポート」と命名した.さらに,Stepwise探索的因子分析の結果,4因子16項目が選択された.分散分析と多重比較により,遺族会で遺族が受けているサポートは,遺族の年齢,故人との関係,死因,遺族会の満足度,悲しみの軽減,日常生活の過ごし方との間で有意差がみられた.
  • 原田 春美, 小西 美智子, 寺岡 佐和
    原稿種別: 本文
    2006 年 9 巻 1 号 p. 40-46
    発行日: 2006/09/26
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:訪問看護師とホームヘルパーがケアを提供する際に結んだ相互関係を類型化する.さらに,その比較を通して,ホームヘルパーとの連携において訪問看護師に求められることを検討する.方法:調査対象は,同一事例に対して看護・介護ケアを提供した訪問看護師とホームヘルパーである.データ収集方法は,半構成的面接法である.面接結果については,質的帰納的に分析を行った.結果と考察:訪問看護師とホームヘルパーの関係は,<情報共有の仕方>,<方法の一元化>,<役割分担の仕方>,<同盟の結び方>,<関係認識の仕方>,<成果の捉え方>,<ケアの捉え方>,<連絡手段の用い方>という8つに分類された行動パターンの内容の組み合わせにより,協働型関係,適応型関係,競合型関係,分離型関係の4つに類型化された.また,訪問看護師がホームヘルパーと協働関係を形成し,連携するためには,相互助長の姿勢や学ぶ姿勢,対等の関係という認識,職務意識と職務に対する責任,課題を共有するという感覚,生活全体を支えるという意識をもつ必要性が示唆された.
  • 春名 めぐみ, 村嶋 幸代, 永田 智子, 田口 敦子
    原稿種別: 本文
    2006 年 9 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 2006/09/26
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:介護保険導入後の保健師の配置や業務の変化,保健事業への影響を検討し,今後,国の施策の動向が変化する際の保健師活動の留意点を明らかにする.方法:介護保険施行直後の平成13年2月〜3月に全国の政令指定都市・特別区・市の全数,町・村の4分の1を抽出した計1,344市区町村を対象とし,各自治体の老人保健担当課長宛に調査票を郵送した.調査内容は,人口,65歳以上人口割合,保健部門の保健師数,介護保険部門への転出,老人保健事業の業務量と実施状況,老人保健や介護予防への保健師の関与であった.結果と考察:有効回答数は569自治体(回収率42.3%)であった.介護保険導入に伴う保健部門の保健師数は,8割の自治体で増加もしくは変化がなかった.保健師の介護保険部門への転出は,保健部門の保健師数の減少の一因となっていた.保健師数の減少がなくても,事業の見直しにより,訪問事業や機能訓練A型といった保健師が直接行ってきた保健事業の活動が減少していた.健康教育や健康相談への影響は少なく,事業によって影響の受けやすさが異なっていた.介護予防事業について,約7〜8割の自治体で保健師が関わっていたが,企画・運営に比して,評価への関わりが少ないことが今後の課題といえる.結論:介護保険の導入といった大きな制度改正の際には,福祉部門への移行や外部へ委託できる事業に変化が生じやすく,保健師の独自の機能である訪問事業などに影響が及ぶことが明らかとなった.
  • 伊藤 智子, 景山 真理子, 森山 美恵子, 佐々木 順子
    原稿種別: 本文
    2006 年 9 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 2006/09/26
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    高齢者のよりよい生活を支え続けるコミュニテイ活動として,S県I市K町で行われているミニデイサービスに注目し,その参加者の心理,行動と支援者からみた参加者の心理・行動の質的分析を行い,ミニデイサービス参加高齢者のエンパワメントプロセスとその促進要因を検討した.その結果,14の重要アイテムと5つのカテゴリ化ができ,次のことが明らかになった.(1)ミニデイ参加高齢者のエンパワメントの特徴は,「考え方の固執」「参加者・他人への関心」「自己表現,身の回りの出来事の共有・共感,存在の認め合い」「自然な行動」というゆるやかなプロセスをたどるものであった.(2)ミニデイ参加高齢者のエンパワメント促進要因は参加の促進と参加者相互の対話・共感の促進であった.(3)抽出したアイテムは高齢者のQOLおよびエンパワメント指標に類似しており,ミニデイは参加者のQOLに関与していた.
  • 鈴木 みちえ, 中野 照代, 飯田 澄美子
    原稿種別: 本文
    2006 年 9 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 2006/09/26
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:保健推進員の経験と健康習慣,家族の健康管理行動,地域の健康づくり参加行動との関連性を明らかにし,推進員活動の有用性検討の基礎資料を得る.方法:小規模市町村の2年任期交代制の保健推進員経験者132名と未経験者225名を対象に自記式質問紙調査を行った.質問項目は健康習慣10項目,家族の健康管理行動および地域の健康づくり参加行動について各5項目を設定した.有効回答を得た経験者99名,未経験者135名両群の年齢構成を乱数表を用いてマッチングし,各75名,計150名を分析対象とした.結果:1.健康習慣および家族の健康管理行動と推進員の経験との関連は認められなかった.2.地域の健康づくり参加行動総得点平均値は経験者のほうが有意に高く,「広報の中の健康に関する記事や推進員便りを関心をもってよく読む」「自治会単位の健康座談会に積極的に参加している」「隣人と一緒に定期的に運動している」「健康に関する講演会や行事へ積極的に参加している」者の割合が経験者のほうが有意に高かった.結論:推進員の経験と地域の健康づくり参加行動との関連性が明らかになり,2年任期交替制で経験者が増すことで,地域全体の健康意識の高揚をはかることを意図した推進員活動の有用性が示唆された.一方,好ましい健康習慣の獲得,家族の健康管理力向上を意図した学習プログラムの充実強化が今後の課題である.
  • 渡邊 輝美, 深江 久代, 今福 恵子, 福與 知恵
    原稿種別: 本文
    2006 年 9 巻 1 号 p. 65-70
    発行日: 2006/09/26
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:静岡県内の市町村における胎児性アルコール症候群(以下FASとする)の予防のための禁酒の取り組みの実態を明らかにし,FASの予防の方策を検討する.方法:調査対象は静岡県の市町村68カ所の母子保健担当保健師であり,郵送による質問紙調査を行った.調査内容はFASの予防活動の有無,FASの予防活動の未実施の理由,保健師が考える妊婦の禁酒の必要性などである.これらの調査内容から,FASの予防活動の実態を明らかにし,FASの予防活動の実施の有無と実施に影響すると考えられる要因との関連について分析した.結果:調査票の回収は49カ所(回収率67.1%)であった.すべての市町村でFASの予防は必要と認識されていたが,FASの予防活動の実施は約40%であった.FASの予防と限定せず,妊婦へ飲酒を控える教育をしている所は,約50%であった.市町村保健計画にFASの予防や妊婦の禁酒を取り入れている所は少なかった.FASの実施の有無とその実施に関連する要因間で分析をしたが,有意な差はみられなかった.結論:FASの実施の有無とその実施に関連する要因間で分析したが,有意な差はみられなかった.すべての市町村でFASの予防は必要と認識されていたが,FASの予防活動の実施は,約40%であった.禁酒は,禁煙ほど徹底して行われていないことや,地域の妊婦の飲酒の実態などが明らかになっていないことが,FASの予防や禁酒が推進できない理由と考えられた.
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