学級経営心理学研究
Online ISSN : 2434-9062
5 巻
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • ―自己調整の視点から―
    河村 茂雄
    2016 年5 巻 p. 1-8
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー
    学級担任制度をとる小学校の学級担任を対象にして,学級集団づくりに困難さを感じている教員たち,良好に展開できている教員たちに半構造化面接を行い,学級集団づくりのプロセスのどこにつまずいているのか,うまくいっている要因は何かを抽出して,Zimmerman (1998) の「初歩と上達した自己調整学習者の自己調整の下位過程の比較」を参考に,学級集団づくりのつまずき,学級集団づくりのポイントを明らかにすることを目的とした。なお,自己調整とは,教育目標の到達を目指す自己調整された思考,感情,行為のことをいい(Zimmerman et a1.,1996),本研究においては,学習者は学級担任であり,学習は年間の学級集団づくりの取組である。結果,学級集団づくりが良好に展開できている教員たち(Aタイプ)と,学級集団づくりに困難さを感じている教員たち(Bタイプ)には①予見段階,②遂行段階,③自己内省段階3つの段階における自己調整学習の仕方に明確に相違が認められた。
  • 石丸 裕士, 水野 治久
    2016 年5 巻 p. 9-18
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,高専生に高校用Q-Uが適応できることを論理的に示し,高専の学級経営に役立つ知見を得ることである。本研究では,異なる2高専の659名に対して高校用Q-Uを実施した。その結果,女子学生の方が男子学生より「学校生活意欲尺度」の「教員との関係」の得点が高く,「学級満足度尺度」の「被侵害得点」が低かった。「学校生活意欲尺度」の5因子を独立変数とし,「学級満足度尺度」の2因子を従属変数として,重回帰分析を実施したところ,「承認得点」には「学級との関係」が正の影響を及ぼしており,「被侵害得点」には「友人との関係」が負の影響を及ぼしていた。高専の学級経営においても,学級適応を上げるためには,学生間のリレーションへの介入が有効であることが確かめられた。
  • 西村 多久磨, 村上 達也
    2016 年5 巻 p. 19-28
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,孤独を感じている子どもを把握することの困難さを示す証拠を提出することであった。調査協力者は公立小学校5校の小学4年生から6年生の646名と担任教師24名であった。小学生には,子ども用孤独感尺度と学級生活満足度尺度が実施され,担任教師には担当のクラスから“さみしさを感じている”と予想される児童を抽出してもらった。その結果,子どもの主観的な孤独感得点と教師による客観的な孤独児の抽出傾向にはズレが生じていることが明らかにされ,教師は学級の中でまわりの人から認められることの少ない児童を,孤独を感じていると予想する傾向のあることが示された。
  • 四辻 伸吾, 水野 治久
    2016 年5 巻 p. 39-52
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー
    本研究は,小学生児童が自分自身を成長させたいという意欲について明らかにする「小学校高学年児童自己成長意欲尺度」の作成を試みるとともに,その尺度を活用して実践を行ったものである。研究1として小学校5・6年生児童198名の児童を対象に「小学校高学年児童自己成長意欲」に関する質問紙調査を行い,調査結果を因子分析したところ,<社会性スキル成長意欲>因子,<学習性スキル成長意欲>因子の2因子14項目が得られ,これを「小学校高学年児童自己成長意欲尺度」とした。研究2として,「自己成長意欲」を高めるため,小学校5年生児童120名に対して,教育実習生との関わりから自分の生活力を高めようとする取り組みである「教育実習生との関わりプロジェクト」と,学期末テストに向けて毎日の学習について見通しを持つという取り組みである「学習への見通しプロジェクト」を行った。その結果,<社会性スキル成長意欲>は「教育実習生との関わりプロジェクト」により,有意に高まる可能性が示唆された。また,<学習性スキル成長意欲>は「教育実習生との関わりプロジェクト」と「学習への見通しプロジェクト」の連続的な取り組みにより,有意に高まる可能性が示唆された。
  • ―謝罪会の実施を含めた早期対応を通して―
    苅間澤 勇人
    2016 年5 巻 p. 53-64
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー
    2013年9月の「いじめ防止対策推進法」の施行後,地方及び学校のいじめ防止基本方針の整備が進んでいる。しかし,その後も各地でいじめによる自死が続いており,有効ないじめ対応策の実施が課題となっている。いじめの対応は未然防止と早期発見,早期対応(事案対処)が必要であり,これらが適切に行われない場合に重大事案に発展してしまう。本稿では,いじめ対応チームによるいじめ解消を目指した事例を報告する。本事例の対象校は高等学校である。対象校では2006年に「いじめ対応マニュアル」が制定されている。本報告は,いじめ対応マニュアルに基づいていじめ対応チームを招集して行われた最初のいじめ対応の事例である。本事例では,いじめと疑われる行為の発見後から,いじめ被害生徒と加害生徒に事実確認を行った。次に,いじめ解消を目指していじめ対応チームも含めて謝罪会を行った。同時にいじめ防止対策を再検討して,学校全体にいじめ再発防止策を実施した。そのような実践から,いじめ対応マニュアルといじめ対応チーム,謝罪会の有効性について考察した。さらに,いじめ行為の認定の難しさなどを指摘した。
  • 熊谷 圭二郎
    2016 年5 巻 p. 65-74
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,クラス会議,または構成的なグループワークを週に1回短い時間で継続的に実施することで,高校生の学校に対する意識や共同体感覚などにどのような影響を与えたかを検証することであった。高校1年生を対象に行なった結果,学校生活満足群が増加し,非承認群が減少するとともに,学習意欲,教師との関係,進路意識が有意に高まったことが明らかになった。一方,学級との関係は有意に低くなり,共同体感覚については大きな変化が見られなかった。以上の結果から,クラス会議や構成的なグループワークの短い時間での継続的な実施は,学校生活の満足度や学習・進路意識の高まりが期待できる一方,短時間で行うことから生じる問題点が明らかになった。
  • 河村 明和
    2016 年5 巻 p. 75-81
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー
    日本の中学校の学校現場で取り組まれている部活動について,部活動が生徒の「生きる力」につながる心理社会的発達に及ぼす影響について,先行研究を整理することを目的とした。本研究において,部活動は中学校の生徒たちにとって,学校生活の中で比重の大きい取り組みであり,生徒の心理社会的発達には,l) その部活動が追求する内容に取り組むプロセスから,2) 部活動における集団体験から,影響を受けることが整理された。また,①全体に研究が少ないこと,②研究全体に総論的なものが多いこと,が明らかになった。
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