学術情報処理研究
Online ISSN : 2433-7595
Print ISSN : 1343-2915
24 巻, 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
原著論文
  • 森下 孟, 鈴木彦文, 永井一弥, 東原義訓
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 24 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2020/12/03
    ジャーナル フリー

    対象の小中学校が既設地域ネットワーク網を経由してSINETに接続することを通じ,初等中等教育機関の高速ネットワーク環境を構築する際の問題点やその解決方法について検証した。SINET接続においては,①SINETノードDCへの接続回線の確保,②IP Addressの取得と維持,③SINETへの接続用ネットワーク機材の設置・構築・維持が課題となることを明らかにし,既存地域ネットワーク網が有するグローバルIP Addressを用いたSINET接続を提案した。SINET接続前後における回線速度を比較した結果,SINET接続による高速ネットワーク環境は遠隔授業時の通信途絶や音声・映像の遅延頻度を大幅に改善させた。しかし,UTM装置や校内ネットワーク環境などに課題があり,SINETの高速・広帯域な特長を最大限活用するためには,上流層のネットワーク環境の改善だけではなく,自治体や学校内のインフラ整備の重要性が浮き彫りになった。

  • 塩野 康徳
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 24 巻 1 号 p. 10-18
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2020/12/03
    ジャーナル フリー

    組織を円滑に運用し,サービス提供などの業務を行うためには,適切なマネジメントが不可欠であり,組織の活動全体と取り巻く環境を俯瞰し,現状を把握していかなければならない.そのため,実際の業務との関連性を分析する手法が必要になってくる.業務効率化や意思決定に有用なわかりやすい分析手法が実現できれば,組織を効率的かつ効果的に運用しやすくなる.一方,筆者はこれまでにファジィグラフを用いた有効な分析手法の研究を行っている.そこで本論文では,業務やマネジメントシステム運用で蓄積されたデータを利用して,ファジィモデルによる組織運用に有効な業務とマネジメントシステム運用の分析手法について述べる.モデル化では,業務データを学習させた機械学習(ニューラルネットワーク)を利用し,ファジィグラフにより関連性を可視化する.業務データとしては,実際に横浜国立大学情報基盤センターで蓄積したデータを用い,分析と考察を行う.

  • 永田正樹, 山崎國弘, 磯部千裕, 神山夏実, 長谷川孝博
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 24 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2020/12/03
    ジャーナル フリー

    静岡大学では,2013年から大学に関連する動画をWebシステムにて公開する「静岡大学テレビジョン(SUTV)」を運営している.新型コロナウィルス感染症対策により,多くの大学行事が中止され対面授業が制限された状態が続いている.このような状況で2020年5月,6月は前年同月と比較して訪問数,再生回数とも増加していることがわかった.本稿では,SUTVの訪問数,再生回数を分析し,コロナ禍におけるSUTVの情報発信効果について考察する.

  • —タブレット必携化の取組を踏まえて—
    和田 智仁
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 24 巻 1 号 p. 28-35
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2020/12/03
    ジャーナル フリー

    鹿屋体育大学では2015年からの学部新入生を対象にタブレットの必携化を行っている.一般に大学における必携化施策ではPCが指定されることが多く,タブレットの事例は少ない.そこで本稿では,鹿屋体育大学におけるタブレット必携化に関して,仕様の変遷と学生のデバイス導入状況,さらに大学の支援体制や授業における利用状況などを示しつつ,大学における必携デバイスとしてのタブレットの是非について考察する.鹿屋体育大学においてタブレットは,学生の携帯率も高く,LMSを含め授業等で広く利用されていた.2020年前期の遠隔授業においてもタブレットは多く利用されており,今後も活用できるデバイスであると考えられた.

  • 沖野浩二, 山下和也, 遠山和大, 上木佐季子, 柴田啓司
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 24 巻 1 号 p. 36-47
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2020/12/03
    ジャーナル フリー

    富山大学において,COVID-19を受けた全学非対面授業のために,LMSなどのICT利用環境整備を行った.また,LMSのアクセス記録を解析することにより,LMS利用者のアクセス環境や授業進行に伴う行動変容を調べた.さらに,新入生に対するアンケート調査や提出課題を分析することで,新入生の自宅ICT環境についても調査した.本論文では,行った対策および調査結果について報告する.

  • 板東孝文, 竹内寛典, 上田哲史, 松浦健二
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 24 巻 1 号 p. 48-57
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2020/12/03
    ジャーナル フリー

    大学など研究機関は,常にサイバー攻撃の脅威にさらされており,水際であるPC,および搭載OSのセキュリティ対策の需要が高まっている.本学では,構成員が使用しているクライアント機器のOSについて,新たな方針の策定と,既存の情報システムを利用したOS更新の促進のための施策を実施した.これら施策は,大学組織の構成員の多様性を考慮して設計されている.学内の認証基盤の網羅性に着目し,そのログを用いて利用者と利用OSを推定,対象となるOSの利用者に対しては個別メールによるOS更新の周知促進を行った.本論文では,その実践事例と効果,今後の課題について述べる.

  • 大瀧保広, 嶌田敏行, 山本一幸, 野口宏, 佐藤伸也, 外岡秀行, 羽渕裕真
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 24 巻 1 号 p. 58-67
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2020/12/03
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため,茨城大学でも全学的な遠隔授業/テレワーク体制を整える必要に迫られた.本論文では,IT基盤センター及び全学教育機構を中心とする遠隔授業実施タスクフォースが遠隔授業/テレワークの実施に向けてどのような対応を行なったのかを報告する.細かいトラブルはいくつか発生したものの,全体としては大きな混乱もなく第1クォータを終了することができた.Teamsのログや教職員・学生へのアンケートから支援が有効に機能したと判断した.大きな問題が発生しなかった要因として,(1)遠隔授業実施タスクフォースから各授業担当教員までスムーズに情報共有ができたこと,(2)想定される問題のうち技術的に解決困難なものは先にガイドラインを示すことで問題の発生を抑止したこと,(3)推奨する遠隔授業方式を早めに提示することで疑問点のバリエーションが限定されたこと,などが挙げられる.

  • 山本一幸, 大瀧保広, 佐藤伸也, 嶌田敏行, 野口宏, 羽渕裕真, 外岡秀行
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 24 巻 1 号 p. 68-77
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2020/12/03
    ジャーナル フリー

    情報系センターの主要な業務のひとつに,利用者からの問合わせへの対応がある.クラウドサービスの使い方からパソコンの不具合まで多岐にわたる問合わせに対応するには,多くの経験と知識が必要となる.しかし多くの情報系センターでは,昨今の予算不足により任期付きのポジションへの変更や人員削減が行われ,問合わせ対応を的確に行うための経験や知識の継承が問題となっている.問合せとその回答が電子データとして蓄積されている場合,問合せデータを機械的にカテゴライズできれば,カテゴライズされた過去の回答データを参考に回答するといった,人の経験や知識に頼らない業務フローの構築が行える.本研究では,カテゴライズするために1つの問合せを1つの文書データとみなした分散表現による文書ベクトルを導出し,文書ベクトルを使ったクラスタ分析,特徴量の抽出を行う.この方法により,客観的な数値データからカテゴライズ可能か検証する.

  • 野口宏, 大瀧保広, 山本一幸, 西原忠史, 外岡秀行
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 24 巻 1 号 p. 78-84
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2020/12/03
    ジャーナル フリー

    茨城大学(以下「本学」)では,Shibbolethとマイクロソフト社のOffice365の認証連携をした統合認証基盤を構築しシングルサインオン(以下「SSO」)環境を整備するとともに,Office365の多要素認証環境も利用してきた.しかし,多要素認証に関してはOffice365のみが対象であり,学内ネットワーク接続時の認証はSSOの対象外となっていた.本稿では,統合認証基盤における認証の要をActive Directory Federation System(以下「ADFS」)からAzure Active Directory(以下「AAD」)へ更新し,多要素認証をOffice365のみならずShibboleth環境でも可能とするとともに,対象サービス等によりレベル分けされた多要素認証の要否の制御も可能とする多要素認証システムを構築した.更に,ネットワーク接続時の認証を認証連携の対象とする拡張を行った.

  • 根本貴弘, 三島和宏, 萩原洋一, 辻澤隆彦
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 24 巻 1 号 p. 85-93
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2020/12/03
    ジャーナル フリー

    本稿では,東京農工大学における人事システム及び学務システム,教務システム等の学内情報源より得た情報に基づき登録したデータを一元管理する統合管理運用システムに登録されている文字情報の実態を把握するために,登録されている文字の実態把握が詳しく行えていなかった属性を対象に,登録されている文字情報について行った調査及び考察について述べる.本調査では,統合管理運用システムに登録されている全アカウントに対し,総合情報メディアセンターの管理外にある,学内システムを情報源とする「氏名」及びユーザ自ら情報を登録する「表示名」を調査対象とし,登録されている文字数やその種別,また,それが国際化文字列を許容するプロトコルで利用が許容されている文字であるか等を調べるために,Unicode Standard 及びIETFが標準化しプロトコルでの利用可否を定義した文字分類に従い調査を行った.その結果,統合管理運用システムに登録されていた文字の実態把握を達成するとともに,本システムから外部サービスに向けた情報提供を行う際に課題があることが示唆された.

  • 浜元信州, 井田寿朗, 齋藤貴英, 小田切貴志, 綿貫明広, 横山重俊
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 24 巻 1 号 p. 94-103
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2020/12/03
    ジャーナル フリー

    群馬大学では,全学情報基盤システムの更新を行い,2018年4月より運用を開始した.本システムは,群馬県の被災やクラウドの障害を想定し,パブリッククラウドのMicrosoft Azureとプライベートクラウドである本学データセンタを利用した地理冗長を施した構成である.この中で,SSOや2段階認証機能を有する全学認証基盤を構築し,全教職員への2段階認証の導入を行った.本稿では,導入した全学認証基盤の地理分散の設計と,2段階認証導入時の状況,そこから得られた知見について報告する.

  • - ログ監視,認証基盤の強化 -
    林豊洋, 福田豊, 佐藤彰洋, 大橋健
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 24 巻 1 号 p. 104-115
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2020/12/03
    ジャーナル フリー

    九州工業大学では2012年度より,卒業後も継続して利用可能な全学メールサービスの提供を開始した.メールサービスの稼働基盤には,2015年度よりMicrosoft社のSaaSであるOffice365およびMicrosoft365(以降365とも称する)を活用している.本サービスには,2020年7月現在で約21,800アカウントが存在し,在学生・在職者に加え本学の卒業生が含まれている.このような多様な利用者層が,電子メールに加えネットワークストレージやグループウェア機能を利用しているため,不正アクセスによるアカウント詐取の対象になっていた.本学では,365に対するセキュリティ向上対策として,ログ監視体制の強化と認証基盤の強化を検討・運用を行っている.具体的には,365へのサインイン情報,メール送受信ログ等を学内のログ収集基盤へ集約する手法を確立した.また,サインイン時の認証強化については,365が有する多数の実現手法の中から,実現容易性やライセンスの観点から比較検討を行い,利用者層に応じた手法を採用した.本稿ではこれらの詳細について報告する.

  • 青山茂義, 三河賢治
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 24 巻 1 号 p. 116-125
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2020/12/03
    ジャーナル フリー

    新潟大学では,2016年度から情報セキュリティ対策強化のため,セキュリティ体制の大幅な見直しを行ってきた.その一環として,既存のCSIRT(Computer Security Incident Response Team)の権限を強化し,2017年から新大CSIRTが発足した.また,2018年度には,部局のセキュリティセキュリティインシデントレスポンス能力向上のために,部局CSIRTの設置を行った.本論文では,大学のCSIRT体制の考察を行い,新潟大学に適用した部局CSIRTを中心に報告を行う.又,その応用として,実際のセキュリティ管理組織構造に合うように,新潟大学で初めて導入した合同部局CSIRTと分割部局CSIRTについての報告を行う.

  • 本山一隆, 重歳憲治, 芦原貴司
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 24 巻 1 号 p. 126-133
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2020/12/03
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響を受け,滋賀医科大学ではウェブ会議システムを用いた同時双方向型の遠隔講義を配信できるシステムを構築した.大学の認証基盤と連携させて参加者を制限することで,遠隔講義のセキュリティを確保できるようにした.HDMIキャプチャーデバイスを経由して教員の持ち込みPCの画面を共有する構成としたことで,医学部の講義で必要とされる品質の高い動画を配信することが可能となっている.学生の受講環境の整備,学生や教員に対する技術的支援のためのサポート体制も整備した.

feedback
Top