自治体が把握している諸地域集団・社会活動団体の中枢的活動者を調査対象とする大量観察法データに基づき、彼らの地域感情、地域参画への主体要件の発達の様態と地域活動との関連性を追求した。
本調査対象地では、町内会などの旧来からの地縁組織も存続している一方で、伝統的な地縁、血縁とは異質な、コミュニティをアソシエーションの原理で再構成する「コミュニティ・アソシエーション」活動や自己充足的なサークル活動も多くみられる。地域集団・社会活動団体中枢活動層の地域感情は、一般住民に比して相対的に高いが、性別、年齢、世帯年間収入、住居形態など個々人の属性や所属する地域集団・社会活動団体によって差がみられた。また地域集団・社会活動団体中枢活動層の地域参画への主体要件は十分に発達しているとはいえず、特に「共同的問題提起性」「犠牲許容性」「公共性」が未発達であり、共同行為による自利を超克した共同利益の実現への志向も弱い。反面、自治体との協働性度が高い活動であっても低い活動であっても、その活動を通して、地域参画への主体要件と相互規定関係にある地域感情が発達することが示唆された。
地域参画の主体形成の課題として本研究の結果が指摘するのは、地域参画への属性に関わる阻害要因を解消する施策と共に、地域集団・社会団体活動への場や機会を豊富化し、そこでの役割付与やその活動経験を通して、問題の共有・共感と地域感情を高め、地域参画への主体要件を発達させていくことである。
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