日本呼吸器外科学会雑誌
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11 巻, 5 号
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  • 「他病死」は本当に他病死か?
    中出 雅治, 谷口 哲郎, 阪井 宏彰, 渡辺 裕介, 弘野 慶次郎
    1997 年 11 巻 5 号 p. 591-595
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    肺癌手術の評価において生存は最も重要なエンドポイントであるが, 生存率算出の際の他病死例の扱いが, 本邦の報告では統一されておらず, その定義も明確ではない.自験例を検討した結果, 他病死の時期が術後2年以内に多いこと, 特に拡大手術が行われる病理病期IIIb期症例に術後早期の他病死発生率が有意に高いこと, 日本人全体の死因順位と比較して, 他病死例の死因には呼吸器疾患が多いこと等から, 他病死が原疾患や手術と無関係とは言い切れないことが示唆された.又他病死例を含めるか否かで, 手術症例の生存率に有意差を認めた.これらのことから, 肺癌手術の評価には, 手術死, 他病死等全ての死亡を含めた生存率を算出することが真の評価につながると共に, 他の報告との客観的な比較のためにも必要と考えられた.
  • 柴田 和男, 山川 洋右, 森山 悟, 石黒 秀行
    1997 年 11 巻 5 号 p. 596-601
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    肋骨原発の良性骨腫瘍と骨腫瘍性疾患の9切除例を報告した.性別は男性7例, 女性2例で平均年齢は35.8歳であった.腫瘍の内訳は fibrous dysplasia 3例, non-ossifying fibroma2例, eosinophilic granuloma, osteoidosteoma, solitarybonecyst, osteochondroma 各1例であった.病理診断は全て切除標本によって行った.術前, 術中診断は細胞診を5例に, 凍結標本による迅速診断を1例に行ったが, 全ての症例で正診は得られなかった.単純X線写真が鑑別診断に有用で, 各腫瘍毎にX線写真所見や肋骨内の局在において一定の傾向を認めた.
  • 河崎 英範, 永井 完治, 吉田 純司, 西村 光世, 高橋 健郎, 鈴木 健司, 河野 貴文, 児玉 哲郎, 西脇 裕
    1997 年 11 巻 5 号 p. 602-608
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    上葉原発肺癌の, 気管分岐部 (#7) および下縦隔群 (#8.#9) リンパ節転移の臨床病理学的背景および予後について検討した.対象は上葉原発肺癌で, 病理病期IIIA期, pN2の106例であった。縦隔リンパ節の好発転移部位は, 右側では#4および潟で, 左側では#5および#6であった.両側とも#7, #8, 湘への転移頻度は低く, 106例中#7転移は16例 (15.1%) で, #8転移は2例 (1.8%), #9転移は1例 (0.9%) で, 左右差はみられなかった.気管分岐部および下縦隔リンパ節転移陽性例の5年生存率は12.7%で, 6年以上の生存例は認められなかった.これに対し陰性例の5年生存率は37.1%で有意に予後良好であった (p-0.0095).以上より予後を改善するという点では上葉原発肺癌に対する気管分岐部・下縦隔リンパ節郭清の意義は乏しいと思われた.また病期の判定を行うために, これらの縦隔リンパ節の郭清を行う必要のある症例は極少数であった.
  • 真崎 義隆, 笹井 巧, 五味淵 誠, 原口 秀司, 田中 茂夫
    1997 年 11 巻 5 号 p. 609-613
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    開胸術後の疼痛対策として胸腔内局麻剤注入法 (interpleur alanaigsia 以下IPA) の有効性を, 硬膜外麻酔単独群 (Epi群) と硬膜外麻酔にIPAを併用した群 (IPA群) の2群に分けて検討した。対象は33例で, 硬膜外麻酔には塩酸ブプレノルフィン0.2mgを用いた.閉胸時, ダブルルーメントロッカールを胸腔内に留麗し, IPA群にはこの薬剤注入用ルーメンから局麻剤 (0.25%ブビバカイン20ml) を注入した.Epi, IPA 施行前, 施行後6時間までの癖痛評価と, 血中ブビバカイン濃度を測定した.疹痛評価には Visual analogscale (VAS) と PrinceHenry painscore (PH) を用いた.VAS, PH どちらの評価でもIPA群で有意に疼痛は軽度であった.血中ブビバカイン濃度はIPA施行後1時間でピーク値に達した後低下し, 全経過で安全範囲内であった.以上から開胸術後疼痛対策としてIPAは簡伸で右用で魅ると考えられた.
  • 管野 隆三, 塩 豊, 鈴木 弘行, 藤生 浩一, 櫛田 正男, 大石 明雄, 井上 仁, 元木 良一
    1997 年 11 巻 5 号 p. 614-619
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    肺切除後急性期における心房性ナトリウム利尿ペプチド (ANP) 及びレニンーアンギオテンシン-アルドステロン系とアンギオテンシン1変換酵素 (ACE) 活性の変動について術前値と比較検討した.ANPは, 術後, 有意な分泌促進が認められた.レニン活性 (PRA) およびアンギオテンシン1 (ANGI) は術後有意に増加するがアンギオテンシンII (ANGII) に有意の変動はなく, アルドステロン (ALD) は術直後の一過性増加の後, 減少した.ACE活性は肺血管床の減少により術後有意に減少しており, このことがALD低下の原因と推察された.肺切除後急性期は心房負荷によるANPの分泌促進とPRA上昇という矛盾した内分泌環境下にあり, dry side での輸液管理と心機能補助及び腎血流量の確保のためにカテコールアミンの使用も考慮されるべきと思われた.
  • 白石 裕治, 福島 鼎, 相良 勇三, 林 孝二, 佐藤 伸之
    1997 年 11 巻 5 号 p. 620-623
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    荒蕪肺を伴う膿胸では肺の再膨張が得られず胸膜肺全摘除術が適応となる.しかしこの術式は侵襲が大きくリスクも高いとされる.そこで当院にて行った有瘻性結核性膿胸に対する胸膜肺全摘除術4例につき, 手術侵襲, 術後合併症および術前後の呼吸機能につき検討を加えた.全例術前に抗結核剤を投与し, 結核菌培養陰性となったのち手術を行った.手術時間は469~648 (544±79) 分であり, 術中出血量は1492~3446 (2309±962) mlであった.合併症は1例に乳糜胸が認められ再開胸して胸管結紮術を行った.肺活量は術前1.75±0.5lから術後1.35±0.2lと, 1秒量は術前1.31±0.4lから術後1.02±0.3lと低下する傾向を認めたが, 血液ガスでは有意の変化を認めなかった.術死および膿胸の再発は認められていない.症例を適切に選択すれば, 胸膜肺全摘除術は低リスクで, 呼吸機能をそれ程低下させずに根治性を期待できる.
  • 妻鳥 元太郎, 尾関 雄一, 青木 輝浩, 渡辺 真純, 田中 勧, 相田 真介, 高木 啓吾, 尾形 利郎
    1997 年 11 巻 5 号 p. 624-630
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    大腸癌肺転移を切除した20例の原発巣と転移巣について, 糖鎖抗原 (SLX, CA19-9) の発現を免疫組織化学的に調べ, 予後や転移との関連について検討した.原発巣と肺転移巣の糖鎖抗原の発現はほぼ同等であった.SLXを発現している群では原発巣切除後の生存率が発現していない群より不良であった.CA19-9と肺転移個数とに関連がみられ, 転移個数では4個までと5個以上で生存率に差を認めた.原発部位別では, 結腸癌は全例が糖鎖抗原陽性であり, 直腸癌は60%が陽性-であった.大腸癌の好肺転移性や予後と糖鎖抗原発現との関連が示唆された.
  • 田 大力, 殷 洪年, 趙 恵儒, 胡 永校, 陳 東義, 李 厚文
    1997 年 11 巻 5 号 p. 631-635
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    1985年1月から1996年12月までの12年間に, 肺原発悪性線維性組織球腫 (MFH) 7例を経験した.平均年齢は57.1歳, 男性4例, 女性3例であった.自覚症状は血痰6例, 発熱1例であった.胸部X線像では1例は左肺の完全な無気肺であり, 6例は肺内の腫瘤影であった.気管支鏡検査では1例は左主気管支内に腫瘤, 1例は左下葉気管支に狭窄が認められたが, 生検と擦過細胞診では2例とも陰性であった.7例とも肺内悪性腫瘍の術前診断にて肺葉切除とリンパ節郭清術を施行した.その内訳は, 右上葉切除1例, 右上・中葉切除2例, 右下葉切除1例, 右下葉切除+横隔膜・肝臓部分切除1例, 左肺全摘除1例, 左下葉切除+心膜部分切除1例であった.予後は6例 (86%) が術後3ヵ月~18ヵ月で腫瘍死した.1例 (14%) が右下葉切除術後10ヵ月で右上葉に再発し, 放射線治療を受け術後4年を経過し再発なく健在である.
  • 時津 浩輔, 立花 秀一, 川上 万平, 折野 達彦, 中尾 圭一, 森田 琢也, 橋本 隆彦, 佐々木 進次郎
    1997 年 11 巻 5 号 p. 636-641
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    甲状腺機能亢進症を伴った胸腺脂肪腫の症例を経験した.症例は47歳の女性, 3年前よりGraves病を指摘されていた.肺炎治療時の胸部CT検査で前縦隔の異常影を発見された.胸骨正中切開アプローチで摘出したところ, 胸腺脂肪腫と診断された.成書には胸腺脂肪腫と甲状腺機能亢進症が合併する可能性が記載されているが, 実際の報告例は極めて少数であり, 我々が調べえた限りでは, 国外ではBentonの報告以後3例であり, 本邦では自験例が最初の報告である.また, この計4例のうちBentonの報告と自験例以外の2例は重症筋無力症を合併していたものであり, 甲状腺機能亢進症と胸腺脂肪腫のみの組み合わせでは自験例は2例目といえる.合併の理由について現時点で断言するのは困難であるが, 自験例では, 甲状腺機能亢進症と胸腺脂肪腫中の胸腺成分の関与が示唆され, また, 過形成性胸腺の退縮と脂肪成分の増殖が胸腺脂肪腫の成因として推測された.
  • 君野 孝二, 仲宗根 朝紀, 山下 秀樹, 岸川 正大
    1997 年 11 巻 5 号 p. 642-646
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    原発性肺癌が cystic pattem を形成するのは稀であるが, 胸部CTでcystic and solid patternを呈した大細胞癌を経験した.症例は45歳女性, 血痰を主訴として来院, 胸部単純写真で左下肺野に5×4.5cm大の辺縁明瞭, 均一で卵円形の腫瘤陰影を認めた.腫瘤は胸部CTで左S10に5cm大の辺縁平滑な cystic and solid pattern を示し, 中枢側の支配気管支が腫瘍により閉塞を起こしたため出血・壊死組織の喀出が妨げられ, CT画像上 cystic and solid pattern を示したと推察された.
  • 佐々木 寛, 片岡 大輔, 千田 雅之, 前田 寿美子
    1997 年 11 巻 5 号 p. 647-650
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は72歳女性.胸部異常陰影を主訴として来院した.画像診断では, 上前縦隔に内腔に突出する充実性腫瘤の部分を有する嚢胞性病変であった。左腕頭静脈は嚢胞の尾側を回り込むようにして下大静脈下部に流入していた.タリウムシンチグラフィーでは充実性腫瘤の部分に取り込みがあった.血中SCCは1.8ng/mlと軽度上昇していた.以上の所見をもとに腫瘤摘出術を施行した.病理学上, 胸腺嚢胞に合併した胸腺扁平上皮癌であった.本症例は右腕頭静脈の走行より先天性嚢胞と考えられ, 同部に胸腺癌を併発したものと思われた.
  • 長谷川 剛, 村山 史雄, 齋藤 紀子, 遠藤 俊輔, 山口 勉, 蘇原 泰則, 布施 勝生
    1997 年 11 巻 5 号 p. 651-654
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    生体腎移植約2年後, 免疫抑制剤投与中に発症した肺クリプトコッカス症に対し胸腔鏡を用いて診断・治療を行った一例を報告した.症例は49歳男性, 飼育歴, 居住歴に特記事項はない.糖尿病性腎症から腎不全に移行し, 2年前に生体腎移植を受けた, 術後順調に経過していたが, 外来経過観察中胸部X線写真で左中肺野に結節陰影の出現をみた.身体所見, 検査所見に異常はなく, 気管支鏡検査で確定診断が得られなかったため, 術当日まで免疫抑制剤投与を続け, 胸腔鏡を用いて病巣の切除を行い肺クリプトコヅカス症と診断した.術後翌日より経口摂取, 免疫抑制剤投与を再開し, 術後シクロスポリン濃度は大きな変動を示さなかった.術前に採取した血清でクリプトコッカス抗原は高値であった.
    侵襲の少ない胸腔鏡手術は, 移植後免疫抑制剤投与に伴う肺真菌感染症の診断治療に有効であると考えた.
  • 肺高血圧からみた手術適応に関する考察
    杉 和郎, 井上 隆, 縄田 浩一, 藤田 信弘, 上田 和弘, 金田 好和, 縄田 純彦, 江里 健輔
    1997 年 11 巻 5 号 p. 655-661
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    片側の胸腔鏡下肺容量減少術を施行し, 術後肺高血圧が不可逆的に増悪した症例を経験した.症例は72歳男性.術前一秒量480ml (50.5%), 肺活量960ml (45.4%), 全肺気量5600ml, 残気量4530ml, PaO2 67mmHg (経鼻2L酸素投与中), PaCO2 38mmHg, 心拍出量4.32L/min, 肺動脈圧57/32 (38) mmHg, 肺血管抵抗429dyne・sec・cm-5/m2.右側胸腔鏡下肺容量減少術後, 肺動脈圧71/27 (50) rnmHg, 肺血管抵抗520dyne・sec・cm-5/m2と上昇した.この肺高血圧はドブタミン, プロスタグランディンE1, アムリノン投与によって低下しなかった.肺機能のみならず肺高血圧から本手術の適応を示唆する一例であった.
  • 上床 邦彦, 梶田 正文
    1997 年 11 巻 5 号 p. 662-666
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    性腺以外に発生する胚細胞性腫瘍は稀な疾患である.特に男性の肺原発絨毛癌は数例報告されているのみである.今回, 我々は肺原発絨毛癌と考えられた症例を経験したので報告した.症例は66歳男性.右下肢脱力感あるため近医受診し精査で肺癌の脳転移と診断された.転移性脳腫瘍摘出術を受けた後に化学療法を2クール施行した.手術は左上葉切除及び胸壁合併切除術を施行した.その後, 脊髄および肺内転移のため術後6ヵ月後に死亡した.
  • 南 寛行, 糸柳 則昭, 佐野 功, 窪田 芙佐雄, 中村 譲
    1997 年 11 巻 5 号 p. 667-670
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    胸壁原発の神経鞘腫は比較的稀である.われわれは血性胸水と血液凝固第XIII因子活性値の低下を伴った本症の一例を経験した.症例は58歳女性, 労作時呼吸困難で入院.術前検査では右胸腔に巨大な腫瘍と胸水を認め, 血液凝固検査において凝固第XIII因子活性値の低下を認めた.腫瘍は肋間神経より発生した胸壁原発の神経鞘腫で19.5×14.5×13.0cm大, 重量は1760gであった.凝固第XIII因子活性値の低下による術中, 術後の出血に対し, 凝固第XIII因子濃縮剤を使用した.術後, 徐々に凝固第XIII因子活性値は正常値に回復した.
  • 可児 久典, 山川 洋右, 丹羽 宏, 桐山 昌伸, 深井 一郎, 近藤 知史, 斉藤 雄史, 佐々木 秀文, 横山 智輝, 藤井 義敬, ...
    1997 年 11 巻 5 号 p. 671-676
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は, 62歳男性.嚥下困難にて発症.食道および甲状腺浸潤を伴った気管癌の診断で, 気管亜全摘, 食道・喉頭全摘, 甲状腺左葉合併切除, 胃管による食道再建, 前縦隔気管瘻造設術を施行した.広範な気管切除を要したため残存気管は4軟骨輪のみとなり, 前縦隔気管瘻を作成する際に上行大動脈および上大静脈と接することとなったため, 有茎大網弁および大胸筋弁で残存気管周囲を被覆した.術後気管断端縫合部に縫合不全をきたし感染が生じたが, 重篤な合併症に至らず治癒した.その後, 気管孔の狭窄を来したが, シリコン製自作ステントを用いることで気道確保が可能であった.術後4年の現在, 電気人工喉頭を用いることで会話も電話も可能で, 充実した生活を送っている.
  • 西山 典利, 中谷 守一, 田口 伸一, 井上 清俊, 木下 博明
    1997 年 11 巻 5 号 p. 677-681
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    胸腔鏡補助下に切除した肋骨原発好酸球性肉芽腫の1例を報告する.症例は59歳, 男性.右胸痛を主訴とし, 単純X線撮影で右第4肋骨の融解像および胸部CT像では骨融解を伴う腫瘍陰影を認めた.RIを含む全身検索では他に異常を認めなかったため, 原発性肋骨腫瘍の診断で手術を施行した.皮切は後側方切開で腹側を後腋窩線までにとどめた縮小切開とし, 第7肋間の2ヵ所からトラコポートを挿入, 腫瘍の進展範囲を胸腔内からも観察しつつ切除した.胸腔鏡補助による胸壁切除は皮膚切開および肋間筋切離を縮小し, かつ安全に行いうることから, 非常に有用な手技であると思われた.病理組織学的には好酸球性肉芽腫と診断されたが, 肋骨原発は比較的稀である.治療は手術的に切除されることが多いが, 他臓器病変の出現にも留意して経過観察が必要である.
  • 術前Cisplatin を主体とした化学療法が有効であった1例
    菰田 研二, 佐々木 達哉, 藤井 祐次, 金 一, 鎌田 武, 川副 浩平
    1997 年 11 巻 5 号 p. 682-686
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    縦隔原発のα-Fetoprotein 産生非精上皮腫性胚細胞性腫瘍の症例に, 術前cisplatin (CDDP) を主体とする化学療法を施行し, 全摘手術を行ない, 良好な結果を得たので報告する.症例は25歳の男性で, 主訴は胸部異常陰影と胸痛で, 精査の結果, 縦隔原発の悪性胚細胞性腫瘍と診断された.術前CDDPを主体とする化学療法を3クール施行した.α-Fetoprotein値は速やかに正常化したが, 発熱, 食欲不振, 汎血球減少症が副作用として認められた.血小板輸血やgranulocyte colony stimulating factor (G-CSF) などを投与し臨床症状が改善した後, 腫瘍の全摘術を施行した.腫瘍は前縦隔から左胸腔を大きく占拠し, 左腕頭静脈, 左横隔神経, 心膜の一部を腫瘍とともに合併切除した.術後5日間のレスピレーターによる呼吸管理を要したが, 術後経過は良好であった.術後にもCDDPによる化学療法を1クール施行した.術後2年再発を認めず経過は良好である.
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