日本呼吸器外科学会雑誌
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12 巻, 1 号
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  • 八柳 英治, 平田 哲, 森山 博史, 越湖 進, 杉本 泰一, 野坂 哲也, 山崎 弘資, 笹嶋 唯博, 久保 良彦
    1998 年 12 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 1998/01/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    pN2肺癌90例を対象とし, 縦隔リンパ節転移様式と予後因子について検討した.右上葉からは上縦隔 (97.0%), 左上葉からは上縦隔 (63.2%) に加え大動脈領域 (52.6%), 下葉からは左右とも#7 (右 : 75.9%, 左 : 62.5%) へのリンパ節転移率が高かった.一方, 上葉から#7 (右 : 18.2%, 左 : 36.8%), 下葉から上縦隔領域 (右 : 65.5%, 左 : 50.0%) への転移も比較的高率に認められた.絶非例を除いた5生率は19.8%であった.転移好発部位より遠位の縦隔リンパ節転移が比較的高率に認められ, その診断精度も満足いくものではない以上, 肺癌の根治性を高める為には広範囲縦隔郭清を目指すべきと考えられた.ただし, 5個以上の縦隔リンパ節転移, cN2, pT3・4はpN2肺癌の予後不良因子であり, その手術適応は慎重に考慮すべきと思われた.特に, pT4及び複数の予後不良因子を持つpN2症例は, 現時点では根治手術の対象から除外すべきと考えられた.
  • 田畑 俊治, 小野 貞文, 谷田 達男, 半田 政志, 佐久間 勉, 藤村 重文
    1998 年 12 巻 1 号 p. 10-14
    発行日: 1998/01/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    肺線維化の過程で関与しうる物質として注目されている血清KL-6値について, 肺切除術後急性期の変動を検討した.対象は肺葉切除例9例 (肺切除群) と肺切除を伴わない全身麻酔下手術例7例 (対照群) である.血清KL-6値は術前, 術後1日目, 2日目, 4日目, 7日目にそれぞれKL-6測定用キットEDO46を用いて測定した.術前の血清KL-6値は肺切除群220±66U/ml, 対照群219±72U/mlと両群間で差を認めなかった.術後1日目には200±90U/ml, 239±84U/ml, 2日目には175±74U/ml, 211±64U/ml, 4日目には144±40U/ml, 205±60U/ml, 7日目には155±30U/ml, 234±94U/mlと推移し, 肺切除群では血清KL-6値が術前値に比し有意に低下した.また, 術後7日目の血清KL-6値は肺切除群では非肺切除群に比し, 有意に低値であった.以上より, 血清KL-6値は肺切除によって減少することが示唆された.
  • 岡林 寛, 桑原 元尚, 稲田 一雄, 白石 武史, 安藤 公英, 岩崎 昭憲, 川原 克信, 白日 高歩
    1998 年 12 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 1998/01/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    当科でこれまでに経験した非腫瘍性中葉症候群の29例を臨床的に検討した.【結果】男性11例, 女性18例, 年齢は23-85歳 (平均59.6歳), 中葉病変27例, 舌区病変2例, 切除16例, 非切除13例 (切除率55%) であった.好発年齢は50-60歳代 (66%) であり, 40-50歳代全例が切除, 70-80歳代全例が非切除であった.また, 無症状例は全て非切除であった.気管支鏡検査で83%に異常所見 (炎症, 肥厚, 肉芽様変化, 不整狭窄等) を認めたが, 17%は無所見であった.結核由来の症例や気管支壁外性の症例は各1例であった.非切除の理由は保存的治療が奏功 (肺炎への抗生物質 : 10例, 喀血への気管支動脈塞栓術 : 2例), 高齢, 低肺機能 : 5例, 中葉以外に病変が存在 : 2例などであった.【考察】臨床症状, 気管支鏡所見, 経過などから手術適応は慎重に決定すべきである.今後ステントや胸腔鏡下のアプローチが検討課題となると考えられる.
  • 高嶋 成輝, 伊達 洋至, 松田 英祐, 秋山 祐治, 市場 晋吾, 青江 基, 岡部 和倫, 山下 素弘, 安藤 陽夫, 清水 信義
    1998 年 12 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 1998/01/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    1982年より1994年までに, 胸部X線で所見を認めないで, 喀痰細胞診陽性で肺癌と診断された30例について臨床病理学的検討を行った.全例重度喫煙経験者であり, 大多数が, 男性かつ60歳以上であった.発見動機は, 27例は喀痰細胞診による集団健診であり, 自覚症状を主訴にしたのは3例に過ぎなかった.全例気管支鏡を施行し, 29例に異常所見を認め, 生検にてsquamous cell carcinomaと診断した.手術は27例に施行した.PathologicaiTNMはTisN0M0が7例, TIN0M0が14例, T1N1M0が3例, T2N0M0が1例, T3N0M0が1例, T3N1M0が1例であった.4例に気道系 (肺癌3, 喉頭癌1) の重複癌を認めた.5年生存率は76.9%であった.肺癌治療成績の向上のためには, 健診網の拡大と喀痰細胞診の施行が重要であると思われる.
  • 渡辺 俊一, 常塚 宣男, 佐藤 日出夫
    1998 年 12 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 1998/01/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    自然気胸に対する胸腔鏡下手術と腋窩開胸手術の違いを多方面から比較検討した. (1) 手術侵襲 : 術後の血中CRP, CPK, WBC値はいずれも胸腔鏡下手術群が有意に低かったものの, 手術侵襲をより客観的に定量評価する指標とされる血中IL-6値は両群間に全く差がみられなかった. (2) 術後経過 : 胸腔ドレーン留置期間, 入院期間はいずれも胸腔鏡下手術群が有意に短期間であった. (3) 再発 : 胸腔鏡下手術の再発率は腋窩開胸手術に比べ明らかに高値を示した.以上より, 腋窩開胸手術は胸腔鏡下手術と比べると手術侵襲はやや大きい可能性はあるものの, 高サイトカイン血症を誘導するほどの生体侵襲ではなかった.一方, 胸腔鏡下手術は入院期間や美容の面ではすぐれているものの再発率が高いため, 高齢の患者になるほどその適応は薄れていくと考えられた.今後さらに胸腔鏡下手術の適応範囲を広げていくには, 再発率を引き下げる工夫が肝要と思われる.
  • 太田 三徳, 桑原 修, 前田 元, 稲田 啓次, 前田 昌純
    1998 年 12 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 1998/01/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    気管分岐部形成術は吻合部の合併症が高率に発生すると報告されている.今回, 吻合部にかかる過剰な張力と変形を避けることで, これらの合併症の予防を試みた.Grillo の方法による気管分岐部形成術では吻合部狭窄や縫合不全はしばしば気管気管支端側吻合部に発生する.そこで吻合部の狭い範囲に張力がかからないように, 結節縫合の代わりに連続縫合を行った.気管分岐部楔状切除術では口径を一致させるために膜様部を縫縮すると合併症が生じやすい.このため気管軟骨部を襖状に切除し口径を縮めた.更に両症例とも気管と気管支の吻合にテレスコープ縫合を行った.手術後の気管支鏡所見では吻合部の肉芽増生, 狭窄, 縫合不全等の問題はみられなかった.
  • 金子 隆幸, 原田 洋明, 上村 晋一
    1998 年 12 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 1998/01/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    症例は63歳男性.肺癌に対し, 右肺別除, 術後化学療法施行.2ヵ月半後に気管支瘻による膿胸を生じた.再入院後2ヵ月目にWilms 変法による胸郭形成と大網充填を施行し, 気管支瘻は閉鎖した.しかし再手術後4ヵ月目に転位した肋骨断端による損傷と思われる上行大動脈の破裂により死亡した.Wilms 変法による胸郭形成を行う場合, 肋骨断端による周囲臓器の損傷を避けるため, 筋肉弁充填術を併用する必要がある.
  • 花岡 淳, 根本 悦夫, 深井 志摩夫, 柳内 登
    1998 年 12 巻 1 号 p. 42-47
    発行日: 1998/01/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    症例は40歳女性.検診にて胸部異常陰影を指摘され本院入院となった.胸部CTで右肺内に腫瘤影を4ヵ所認め, 気管支鏡検査を行うも確定診断が得られず手術を施行した.術中所見では右中葉と下葉内に腫瘍をそれぞれ2個触知し核出術を行った.術後病理検査では, 腫瘍は唾液腺多形腺腫 (pleomorphic adenoma) に一致した組織像であった.15歳及び28歳時に左耳下腺に発生した同様の腫瘍に対し手術が行われていることから, 原発巣摘出25年後に認められた唾液腺原発多形腺腫の肺転移と考えられた.
  • 櫻庭 幹, 宮元 秀昭, 浜田 哲郎, 坂口 浩三, 二川 俊郎, 羽田 圓城
    1998 年 12 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 1998/01/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    当院においては, 拡大リンパ節郭清 (左原発肺癌に対しては胸骨正中切開アプローチによるR3α縦隔郭清を, 右原発肺癌は後側方開胸左#4を含むR2b縦隔郭清, 1995年1月から右上葉原発肺癌に対して胸骨正中切開アプローチによるR3γ縦隔郭清) を施行し, 良好な成績を得ている.拡大リンパ節郭清は, 通常の手術と比較し, 心臓に多大な負担をあたえると考えられる.そのため, 術前に心機能の十分な評価が必要である。今回我々は術前の心機能検査で異常を認めなかったが, 術中心停止をきたし, 心嚢内用手的心マッサージにて一命をとりとめ, 術後の冠動脈造影にて Spastic Angina と診断された1 症例を経験した.Spastic angina の診断は運動負荷試験やタリウム心筋 シンチグラフィーのみでは困難で, Ach やエルゴノビン誘発試験が必要となる為, 拡大リンパ節郭清を予定する症例においては, 本疾患の併発を常に念頭に置く必要がある.
  • 早川 正宣, 中村 憲二
    1998 年 12 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 1998/01/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    症例は49歳女性.労作時呼吸困難と喘鳴を主訴に紹介受診.胸部X線上声帯から約6cmの気管右側壁に約2cm大の腫瘤陰影を認めた.胸部CT上第2から第3胸椎の高さの気管右側壁から膜様部にかけて隆起性病変を認めたが, 気管外への浸潤は認めなかった.気管支鏡にて, 気管分岐部より口側5軟骨輪部から上方約2cmにわたる粗大顆粒状の腫瘤を認め, 生検にて扁平上皮癌の診断を得た.気管内腔が径約5mmに狭窄していたので, 窒息を回避するため緊急でNd-YAGレーザーを行い, 後日根治手術を行った.手術は頸部襟状切開と胸骨正中切開を加え, 気管を7軟骨輪管状切除し端々縫合した.気管切除断端近傍まで癌浸潤を認めた事と口側切除断端に高度異形成を認めたので, 術後CDDP+VDS+MMCを1クール追加した.術後2年10ヵ月現在再発徴候はない.また, 術前Empey係数が15.0ml/l/minと高かったが, 術後6ヵ月時には, 6.5ml/l/minに低下していた.
  • 鳥 正幸, 中村 憲二, 早川 正宣
    1998 年 12 巻 1 号 p. 60-65
    発行日: 1998/01/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    極めて稀な縦隔脂肪肉腫局所再発例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は62歳女性.58歳時に検診で胸部異常陰影を指摘され当科へ紹介入院となった.CT scan上, 前縦隔に脂肪のCT値に一致する腫瘤を認め拡大胸腺摘出術に準じた手術を施行された。腫瘤は340gで病理組織学的に脂肪腫と診断された.その後外来にて経過観察されていたが, 初回術後3年9ヵ月後の胸部CTで異常を認め, 前回の縦隔腫瘍の再発と考えられ, 広範囲腫瘍切除術, 両側肺部分切除術, 心膜合併切除術を施行した.腫瘤は600gで病理組織学的検索を前回と併せて慎重に行った結果, 分化型脂肪肉腫の局所再発と診断した.術後経過は良好であり第2回目術後2年4ヵ月の現在再々発の兆候は認めていない.脂肪肉腫は脂肪腫との鑑別が困難で, 慎重な病理組織学的検索が要求されるとともに, 再発例も含めて切除可能であれば拡大完全切除を施行すること, 及びその後の綿密な画像診断による厳重な経過観察が重要であると考えられる.
  • 辻 博治, 吉永 恵, 綾部 公懿, 新宮 浩, 山本 聡, 田川 泰
    1998 年 12 巻 1 号 p. 66-73
    発行日: 1998/01/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    胸腺カルチノイドの術後経過観察中, 肺内腫瘤陰影の増大を来したため肺転移再発を疑い外科治療を行った症例を経験したので報告した.
    症例は45歳, 男性.1991年8月, 胸腺腫の術前診断で胸腺胸腺腫摘出, 左肺部分切除, 左横隔神経合併切除を施行し, 最終病理診断は胸腺カルチノイドであった.術後50Gyの放射線治療施行後, 外来経過観察を行っていた.1993年8月, 右下肺野に2.5×1.5cmの腫瘤陰影出現し, 肺転移を疑い全身遠隔転移検索を行ったところ, 前頭骨への転移も疑われ多発転移としてVP-16 (50mg/dl, 2隔週) の化学療法を開始した.以後, 1994年11月まで腫瘤陰影の変化は見られなかったが, 1995年2月右下肺野に浸潤影の出現を認め, !995年8月には腫瘤陰影の増大 (3.0×2.0cm) と, 右S8領域のconsolidationを呈するに至った.精査加療目的で同年10月入院.気管支鏡でB8入口部にポリープ状に突出する腫瘍が直視可能であり生検を行ったが壊死組織であり, 病理診断を得るに到らなかった.胸腺カルチノイドの肺転移再発または, 原発性肺腫瘍の疑いで11月7日右下葉切除, 縦隔リンパ節郭清を行った.最終病理診断は胸腺カルチノイドの肺転移であった.
  • 横手 薫美夫, 長田 博昭, 塚田 久嗣, 栗栖 純穂, 平 泰彦, 山手 昇
    1998 年 12 巻 1 号 p. 74-79
    発行日: 1998/01/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    縦隔膿瘍は, 早期の対応が遅れると炎症の進展が急速であるため, 死亡率も高くなり, 致命的疾患の一つとされている.我々は7例の縦隔膿瘍を経験したので, その診断, 治療方法および成績を検討した.対象内訳は頸部からの炎症波及によるものが5例, 異物誤嚥による食道穿孔, 気管内挿管に伴うもの各1例であった.胸部単純写真で縦隔拡大を認めたものは2例のみであり, 全例胸部CTにて膿瘍の局在を確認した後, 縦隔ドレナージを行った.この内1例では初回ドレナージ後に後縦隔まで膿瘍が波及し, 開胸下に再ドレナージを要した.この経験から開放ドレナージでは不十分と考え, 以後の症例では当初から閉鎖吸引ドレナージを行う方針とし, 再ドレナージを必要とした症例はなくなった、本症に対しては, 術前CTによる正確な診断と早期からの閉鎖吸引ドレナージが肝要である.
  • 清水 治子, 山口 豊, 斎藤 幸雄, 馬場 雅行, 吉田 成利, 安川 朋久, 久 伸輔, 鈴木 実, 高橋 好行, 柴 光年, 藤澤 武 ...
    1998 年 12 巻 1 号 p. 80-84
    発行日: 1998/01/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    症例は16歳, 女性.主訴は胸部異常陰影.1996年5月, 学校健診の胸部X線写真にて左中肺野に縦隔に接する腫瘤影を指摘され, 紹介受診, 精査加療目的にて入院.術前行った肺動脈造影, 大動脈造影では異常動脈は確認されなかったが, 肺分画症, 縦隔腫瘍などを疑い8月15日に手術を施行した.腫瘤は左上葉S3と前縦隔の間に存在し, 有茎性に肺門部と連続していた.茎部には左肺動脈主幹から流入する動脈と左上肺静脈への還流静脈が確認された.内部は嚢胞が大部分を占め, 正常気管支との交通はなく, 肺葉外肺分画症の診断にて摘出術を施行した.
    同部位に発生する肺葉外肺分画症は比較的稀で術前診断の面からも興味ある症例であり報告した.
  • 妻鳥 元太郎, 尾関 雄一, 青木 輝浩, 渡辺 真純, 田中 勧, 相田 真介, 高木 啓吾, 尾形 利郎
    1998 年 12 巻 1 号 p. 85-91
    発行日: 1998/01/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    肺転移を切除した稀な胃癌5例について, 原発巣と転移巣を臨床病理学的に比較するとともに免疫組織化学的に糖鎖抗原 (SLX, CA19-9) の発現を検討した.再発転移形式で分類すると, 肺の転移巣再切除が可能と思われたのは3例であった.これらは肺を主たる標的臓器として転移巣を形成する傾向があったと考えられ, 共通点は転移巣の病理組織が分化型 (腸型) であり, CA19-9が陽性を示したことであった.このうち1例に5年生存が得られた.この1例は原発巣よりも転移巣でSLXの減弱がみられた.胃癌の結節状肺転移の形成や予後に糖鎖抗原が関与している可能性が示唆された.
  • 神谷 勲
    1998 年 12 巻 1 号 p. 92-96
    発行日: 1998/01/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の男性で, 肺結核の経過観察中, 胸部X線写真にて左上肺野に腫瘤陰影の出現を認め経皮肺生検にて肺癌と診断され肺部分切除を施行した.切除肺の病理学的検査にて腫瘤は活動性肺結核と肺癌の合併と判明した.一般に高齢の肺結核患者は肺癌を合併する頻度が高いため, 定期的な喀痰検査, 胸部X線写真, 胸部CT等の検査を施行して, 結核病巣の変化に注意し, 疑わしい画像変化の出現した時には経気管支鏡肺生検や経皮肺生検等の積極的な検査を行い肺癌合併の早期発見に努めるべきである.
  • 近藤 大造, 重光 希公生, 伊藤 靖
    1998 年 12 巻 1 号 p. 97-102
    発行日: 1998/01/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    極めて予後不良とされる重篤な急性肺血栓塞栓症を肺切除術後急性期に合併した2例を救命し得たので報告する.
    症例は2例とも50歳代, 女性であった.術後数日目, 突然の呼吸困難, 血圧低下にて発症, 数時間内に肺動脈造影にて診断し, t-PA (tissue plasminogen activator) の肺動脈内注入を施行した.1例は4時間後に肺動脈圧が正常化したが, もう1例は5日後であった.
    2例とも, t-PA使用直後肺切除術部に, 大量出血を生じ低血圧となった.また, 下肢の静脈造影にて深部静脈血栓を認め, 1例は, 下大静脈フィルターを留置した.
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