日本呼吸器外科学会雑誌
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12 巻, 4 号
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  • M. M. R. Bhuiyan, 中元 賢武, 岡本 卓, 杉田 礼典, 亀山 耕太郎, 林 栄一, 小関 萬里, 前田 昌純
    1998 年 12 巻 4 号 p. 454-460
    発行日: 1998/05/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    家兎心肺自己血潅流モデルでトロンボキサンA2合成酵素阻害剤OKY-046のフラッシュ効果と機能温存効果を検討した.in vivo, 30cm落差の前潅流 (50ml/kg) で, EP、液単独滴下を対照群 (Grp1, N=10), OKY-046 (0.1mmol) 添加を実験群 (Grp2, N=10) とし, 8℃18時間保存後機能評価した.
    前潅流 : Grp1, 2のPAPは10.7±1.0cmH2O, 9.5±0.33cmH2Oで, Grp2の方が有意に低値であった (p<0.005).
    再潅流 : PAPは10秒間隔の全ての点でGrp2が1に比較し有意に低かった (P<0.01~0.04).Grp2のPAP (Y) と潅流時間 (X) が負相関し (Y=0.058X+21.0, r=0.486, p<0.01), W/D比はGrp1, 2各々6.47±0.33, 5.62±0.27でGrp2が有意に低かった (p<0.001).pO2はGrp1, 2各々97.0±25.2torr, 144.6±8.1torrでGrp2が有意に高かった (p<0.001).OKY-046にフラッシュ効果と機能温存効果が認められた.
  • 太田 三徳, 桑原 修, 前田 元, 稲田 啓次
    1998 年 12 巻 4 号 p. 461-467
    発行日: 1998/05/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    気管支形成術では一般にテレスコープ吻合を避けて気管支断端の軟骨輪を一致させる縫合が行われている.しかし気管支断端は口径差があるために軟骨輪間に縫合糸をかけると自然に1軟骨輪が重なるテレスコープ吻合となる.
    我々は1991年以降の形成術症例29例中14例の気管支形成症例に積極的にこのテレスコープ吻合を行ってきた.
    組織型は扁平上皮癌6, 腺癌4, カルチノイド2, 腺様嚢胞癌1, 神経線維腫1でこの内5例に術前放射線化学療法が施行された.気管支形成術の6術型が行われ, 気管支吻合部に肉芽増生, 狭窄, 縫合不全を認めなかった.主要な術後合併症として膿胸2, 乳び胸1がみられたが保存的あるいは手術的治療で軽快した.テレスコープ吻合はこれまでの吻合法に劣らず安全であり, 気管支形成術の術式の1つになりうると考えられた.
  • 今までの成果と今後の問題点
    向田 尊洋, 市場 晋吾, 青江 基, 岡部 和倫, 山下 素弘, 伊達 洋至, 安藤 陽夫, 清水 信義
    1998 年 12 巻 4 号 p. 468-473
    発行日: 1998/05/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    我々は今までに犬凍結保存同種気管移植に関して様々な報告を行ってきた.今回は臨床応用に向けて今までの成果をまとめるとともに, 今後の問題点について述べる.成果として, (1) Program Freezerを使わない簡易凍結保存法 : 簡便で費用がかからず, 運搬が容易で, 臨床応用可能な有用な方法である. (2) 再生上皮由来 : donor由来の上皮は約20日で脱落し, recipient由来の上皮が吻合部よりmigrationし, 約50~60日で移植気管はrecipient由来の上皮によって覆われる. (3) 抗原性 : 凍結保存によってMHC class IIの発現が抑制されるが, そのためには1~3ヵ月以上の凍結保存が望ましいことなどを報告した.問題点としては, (1) 心臓死donorから摘出する場合の死後許容時間, (2) 凍結保存期間の限界, の2点が考えられ現在検討中である.凍結保存同種気管移植の手技的及び基礎的な問題はほぼ解決されたと思われ, 臨床応用される日も近いと考えている.
  • 野中 誠, 門倉 光隆, 谷尾 昇, 山本 滋, 片岡 大輔, 高場 利博
    1998 年 12 巻 4 号 p. 474-481
    発行日: 1998/05/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    右上葉切除後の中葉支口は扁平なものから円形のものまで様々あり, 如何なる症例が術後に扁平化しやすいかを検討した.23例を対象とし, 内視鏡メジャーを用いて, 中葉支入口部の短長径比と面積を術前後に求めた.術前に中葉支口が円形~楕円形であった11例のうち, 術後もほぼ同様であったA群6例に対して, 半月状に変形したB群5例では術前から小口径であったり上葉支断端が長く残存していた.術前から半月状~三か月状であった12例のうち, 術後さらに扁平化がみられるも軽度であったC群3例では, 扁平化が著しかったD群9例と比較して短長径比が大きかった.術前の中葉支入口部が円形~楕円形の場合には上葉支分岐根部で縫合すれば扁平化は軽度であるが, 半月状~三か月状の場合には上葉切除後に中葉支入口部の扁平化は免れず, 術前中葉支口の短長径比が45%以下の症例では, 術後に中葉支口の強度 (30%以下) 扁平化をきたす恐れがあるものと考えられた.
  • 櫛部 圭司, 根津 邦基, 東条 尚, 高浜 誠, 谷口 繁樹, 北村 惣一郎
    1998 年 12 巻 4 号 p. 482-487
    発行日: 1998/05/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    高リスクを伴い開胸術の施行が困難と判断された末梢性のcTIN0M0肺癌12例に対し胸腔鏡下肺部分切除を施行した.cTlN0M0肺癌の胸腔鏡下肺部分切除の適応としては, 胸部CT上腫瘍の最浅部の距離が胸膜から2cm以内であること, そして低肺機能 (FEV1.0800ml以下), 低左心機能 (EF0.3以下), ECOGのperformance status scaleでIII度以上の高齢者 (80歳以上) のいずれかを満たす症例を対象とした.術後ドレナージ期間は2日から10日で平均5.4±3.1日であった.肺瘻のため7日以上のドレナージを必要とした症例は4例あり, うち3例はCOPD合併例であった.術後の在院期間は6日から19日で平均12±3.8日で全例軽快退院した.平均観察期間は34ヵ月で, 平均生存期間中央値 (MST) は35ヵ月, 5年生存率は63.7%であった.死亡原因は癌死2例 (局所再発1例, 脳転移1例), 呼吸不全死1例 (COPDにて術後3年) であった.局所再発は2例 (17%) に認められた.胸腔鏡下肺部分切除術は, 高リスクを伴い開胸術の施行が困難と判断される末梢性のT1肺癌に対し選択し得る一術式と考える.
  • 小野 裕逸, 対馬 敬夫, 高橋 誠司, 大出 華子, 一関 一行, 畑中 亮, 福島 松郎, 鈴木 宗平
    1998 年 12 巻 4 号 p. 488-493
    発行日: 1998/05/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    肺葉切除を施行した26症例に対し, 超音波パルスドップラー法にて肺切除術前後の心機能を右室後負荷, 右室拡張機能の面から検討した, 右室流出路における右室駆出血流速波形から得られる, AT, AT/PEPは, 術翌日にいずれも有意 (p<0.001) に減少し, 右室後負荷増加の所見であったが, 手術2週後には術前値にほぼ復していた.三尖弁弁輪部での右室流入血流速波形から得られるDHT (msec) は術前の112±16から, 術翌日122±21と有意 (p<0.05) に延長し, 手術2週後においても同様に延長していた.DCも術後に低下が認められており, 肺切除後には右室拡張機能障害を生ずることがわかった.肺切除後の心合併症として上室性不整脈があり, 今後, 術後心機能と不整脈発生との関連についての検討を要する.
  • 藤田 信弘, 杉 和郎, 田中 俊樹, 松岡 隆久, 縄田 浩一, 上田 和弘, 金田 好和, 江里 健輔
    1998 年 12 巻 4 号 p. 494-498
    発行日: 1998/05/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    非嚢胞性肺気腫に対する肺容量減少術におけるXeガス洗い出しSPECT (single-photon emissioncomputed tomography) を利用した, 切除部位と切除範囲の決定が妥当であるか否かを, 10例の非瘻胞性肺気腫患者を対象に検討した.XeSPECT洗い出し3分相でも残気の見られる部位をWO3として, 肺容量減少術におけるtarget areaとした.FEV1.0術前646±50mL/secから術後763±68mL/sec (p=.029), 動脈血酸素分圧は術前71.4±3.7mrnHgから術後77, 8±2.6mmHg (p=.069), 6分間歩行距離も術前293±44mから術後359±51m (p=.013) と, それぞれ改善した.Xeガス洗い出しSPECTに基づき決定されたWO3はtargetareaとして妥当であることが示された.
  • 森田 琢也, 立花 秀一, 川上 万平, 折野 達彦, 中尾 圭一, 時津 浩輔, 橋本 隆彦, 佐々木 進次郎
    1998 年 12 巻 4 号 p. 499-505
    発行日: 1998/05/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    胸腺嚢胞は比較的まれな腫瘍とされていたが, 近年, 集団検診の普及や画像診断技術の進歩とともに報告例は増加している.今回我々は胸腺嚢胞の6切除例を経験し嚢胞内貯留液を中心に検討した.胸腺嚢胞は当教室における全縦隔腫瘍摘出例の5.2%, 先天性嚢胞の35%であり, 前胸部圧迫感の1例を除き無症状であり, 重症筋無力症等の合併はなかった.腫瘍は CT 上 water density を示し, MRIではT1で低信号, T2で液性成分に特徴的な高信号を呈した.ガリウムシンチは集積を認めず, タリウムシンチでは欠損像を呈した.確定診断と治療のため全例に手術を施行した.病理所見では悪性例はなく, 再発を認めず, 予後良好であった.嚢胞内容液成分の検討では, 腫瘍マーカーのCA125が高値を示し, 総蛋白0.1~2.0mg/dl, ナトリウム141~150meq/dl, LDH 3~20 U/l の範囲内であった.この結果より経皮的穿刺吸引は術前診断の手助けとなり, 画像上悪性所見に乏しい場合には内容液の吸引除去のみの治療洪本考々うる.
  • 平田 哲, 八柳 英治, 山崎 弘資, 杉本 泰一, 森山 博史, 越湖 進, 小久保 拓, 笹嶋 唯博, 久保 良彦
    1998 年 12 巻 4 号 p. 506-510
    発行日: 1998/05/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    呼吸器外科周術期におけるInterleukin-6 (IL-6) の変動とその意義につき検討した.肺癌切除30例のほか計67例を対象とし, 周術期のIL-6, 顆粒球エラスターゼ (PMN-E) および急性相蛋白 (CRP, IAP) の測定をおこない手術侵襲の評価を行った.術前術後合併症のない症例では, IL-6, PMN-E は第1病日に上昇しピークを形成し, 以後漸減した.開胸を伴った術式ではIL-6の値に差は認めず, 鏡視下手術では試験開胸に比較し有意に低値であった.麻酔導入時にメチルプレドニゾロン250mg/body 静注した群では非投与群に比べIL-6は約65%減少し, CRP, IAP も投与群で有意に低値となった.以上より呼吸器外科において, IL-6の経時的な測定は周術期管理の侵襲のモニターとして有用であり, また過大侵襲が予測される症例においてはステロイド投与が患者管理において有用と考えられた.
  • 薄田 勝男, 斎藤 泰紀, 高橋 里美, 半田 政志, 吉田 浩幸, 島田 和佳, 羽隅 透, 佐藤 伸之, 佐藤 雅美, 佐川 元保, 藤 ...
    1998 年 12 巻 4 号 p. 511-518
    発行日: 1998/05/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    肺癌肺切後の気管支断端瘻が原因で膿胸となった肺癌9例を対象として, 保存的治療の方法およびその適応を検討した.術式は, 7例が右下葉切除, 1例が左下葉切除, 1例が右上葉管状切除 (one stoma type) であり, リンパ節郭清は8例でR2bを, 1例でR1を施行した.保存的治療で6例 (67%) が気管支断端瘻確認後14~67日 (平均31.5日) に瘻が治癒した.いずれも (1) 残存肺葉の再膨張が期待できること, (2) 気管支壊死が限局していること, (3) 対側肺の吸引性肺炎が無いか軽度であった.気管支切断端に限局した気管支瘻による膿胸は, 膿胸腔のチューブドレナージ (患側が下となる側臥位) ・体位ドレナージにて対側の吸引性肺炎を予防し, 有効な抗生物質の投与と高カロリー栄養法により保存的に根治可能であった.残る3例 (33%) では, 気管支切除端から中枢の気管支にかけて広範に気管支壊死を認め, 対側肺吸引を引き起こし保存的治療が奏功せず観血的治療を考慮しなければならなかった.
  • 松岡 勝成, 伊東 政敏, 上野 陽一郎, 五十部 潤, 小林 孝暢, 近藤 展行
    1998 年 12 巻 4 号 p. 519-523
    発行日: 1998/05/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    アスペルギルス膿胸は稀な疾患であるが, アスペルギルス膿胸治療後の経過観察中に真菌による化膿性脊椎炎を発症した1例を経験したので報告する.症例は68歳, 男性で45年前に発症した血胸を基礎疾患としてアスペルギルス膿胸となった.肺剥皮術, 開窓術, 大網被覆術を行い, 抗真菌薬内服にて外来経過観察中, 突然下肢麻痺をきたし, 腰部MRI・ミエログラフィーにて化膿性脊椎炎と診断された.近医整形外科にて脊椎固定術を行ったところ, 膿からPenicilium属の真菌が検出された.化膿性脊椎炎は好中球減少時などの免疫力低下状態に頻発する.本例も膿胸に対する数度の手術が侵襲となり免疫力低下状態を形成したものと思われ, 胸部術後の合併症として真菌などの弱毒菌による化膿性脊椎炎も考慮する必要があると思われた.
  • 小阪 真二, 池上 直行, 松倉 規, 玉田 二郎
    1998 年 12 巻 4 号 p. 524-528
    発行日: 1998/05/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    有瘻性アスペルギルス膿胸に対して左胸膜肺全摘術を施行し, 術後の術側全膿胸に対し抗真菌剤の胸腔内注入を施行し, 治癒せしめたので報告する.
    症例は68歳, 女性.人工気胸後の慢性膿胸で経過観察されていたが, 食思不振, 全身倦怠感が著明となり, 胸部X線写真にて鏡面像を認めたため, 有瘻性膿胸の診断で入院した.瘠瘻著明であり, 一期的手術には耐えられないと判断し, まず膿胸腔開窓術を施行し, 全身状態の改善を待ち, 胸膜肺全摘術を施行した.術後, 術側胸水よりアスペルギルスが検出されたため, 週1回計7回amphotericin-B 10mgの胸腔内注入を施行したところ, 著効し, 培養が陰性化した.術後7年再発を認めていない.
  • 目黒 浩昭, 小檜山 律, 阿部 典文, 竹元 伸之, 宮田 道夫
    1998 年 12 巻 4 号 p. 529-534
    発行日: 1998/05/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    症例は56歳, 男性.高分化腺癌 (左S3) に対し左上葉切除, R2aリンパ節郭清を施行.術中, 全くの分葉不全肺であったが上肺静脈の走行は, 標準的と思われた.
    術後, 徐々に胸部X線写真上の残存左下葉のうっ血所見が増強, 肺動脈造影で左側では造影剤は左肺動脈にうっ滞し静脈相への移行が見られなかった.残存左下葉潅流障害と診断し, 術後6日目に残存肺全摘除術を施行した.その結果, 本例では, 下肺静脈が欠損し, 下葉からのdrainage veinが肺内で上肺静脈に潅流し, 1本の肺静脈として左房に流入していた.
    本例のような単一肺静脈の例は文献上稀であるが, 肺葉切除の際に, その存在を認識されずに肺静脈処理が行われた場合, 残存肺はうっ血をきたし摘除を余儀なくされる.術中の, 上下肺静脈の確認は慎重にすべきである.
  • 川野 勧, 尾高 真, 塩谷 尚志, 武山 浩, 秋葉 直志, 落合 和徳, 鷹橋 浩幸, 山崎 洋次
    1998 年 12 巻 4 号 p. 535-538
    発行日: 1998/05/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    横隔膜子宮内膜症を病理学的に確認できた月経随伴性気胸を経験したので報告する.症例は44歳の女性で, 月経に伴い繰り返し気胸を発症するため, 精査に加療を目的として入院した, 入院時の胸部X線写真で右肺に脱気率20%の気胸を認めた.1996年6月に手術を施行した.胸腔鏡下に胸腔内を観察したところ, 右肺には異常所見を認めなかったが, 横隔膜の腱様部に多数の小孔を認めたため, 第6肋間に小開胸を追加し同部位を切除した.切除部の病理組織学的所見として, 子宮内膜に類似する管腔構造とその周囲の子宮内膜間質細胞が明確に確認され, 横隔膜に発症した子宮内膜症が気胸の原因と考えられた.
    横隔膜子宮内膜症において, 本症例のように子宮内膜組織が腺構造まで明確に観察できた症例はまれである.本症例は横隔膜子宮内膜症の原因が空気腹腔経由説であることを支持するものである.
  • 竹島 茂人, 千先 康二, 丸井 努, 渡辺 真純, 尾関 雄一, 田中 勧
    1998 年 12 巻 4 号 p. 539-542
    発行日: 1998/05/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    症例は32歳, 女性.感冒様症状の為, 近医受診.近医での胸部単純X線写真で, 左上肺野に伏針を指摘され, 当科入院となった.腰痛で針治療の既往歴はあったが, 上半身には治療歴や外傷の痕はなく, 針が刺入したことを示唆する所見もなかった.透視下に全身を検索したが他部位には伏針は認めなかった.将来症状が出現する可能性が強い為, 手術を施行した.手術は針のみの摘出は考えず, 側方開胸で術中透視を使用し針を確認しながら肺部分切除術を施行した.術後経過は順調であった.針は長径約3.5cmで縫い針と考えられたが, 針刺入の原因は不明であった.若干の文献的考察を加え報告する.
  • 服部 良信, 杉村 修一郎, 入山 正, 渡辺 浩次, 根木 浩路, 松田 昌浩
    1998 年 12 巻 4 号 p. 543-548
    発行日: 1998/05/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    非機能性上皮小体嚢腫は希な疾患であり, なかでも縦隔内に発生するものは極めて希である.今回我々は縦隔内非機能性上皮小体嚢腫の手術経験を得たので報告する.症例は51歳の男性で, 胸部単純X線写真で右上縦隔の異常陰影を指摘された.血液検査では肝機能異常を認める以外異常なく, 甲状腺ホルモン, 上皮小体ホルモン, 腫瘍マーカーの上昇も認めなかった.CTとMRIで気管右側に直径3cmの境界明瞭な嚢胞性腫瘤を認めた.腋窩前方切開で腫瘤を摘出した.内容液の上皮小体ホルモンは24000pg/mlと高値を示し, 病理組織学的には上皮小体嚢腫であった.
  • 山岡 憲夫, 内山 貴尭, 中村 昭博, 森永 真史, 田川 努, 山本 聡, 松本 桂太郎, 山口 博一郎, 山内 秀人
    1998 年 12 巻 4 号 p. 549-556
    発行日: 1998/05/15
    公開日: 2009/11/11
    ジャーナル フリー
    高度の気管狭窄に対し, 緊急的にV-VECMOによる呼吸補助下に処置, 手術を行った3例を経験した.方法は局所麻酔下に鼠径部にPCPS回路を経皮的穿刺で挿入した.症例1は78歳男性, 左下葉肺癌が急速に気管へ進展し重度の呼吸困難を呈したためV-VECMO下に麻酔導入し左肺全摘を行った.症例2は57歳女性, 気管結核で高度の気管狭窄 (内腔3mm) を呈し, V-VECMOにて無換気下 (20分間) に狭窄部をバルーンで拡張後金属ステント挿入した.症例3は75歳男性, 食道癌の気管浸潤に対し, V-VECMO下にDumonチューブ挿入した.3例とも術後症状は消失した.V-VECMOにて無換気時 (10-20分間) にも動脈血のSaO2は95%以上と良好で, 血行動態も安定し術中術後の合併症はなかった.V-VECMO下の呼吸補助は緊急時も導入可能で, 無換気で処置を行うことができ, 努力性呼吸を呈するような高度の気道狭窄例に対して安全で有用な方法と考えられた.
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