日本呼吸器外科学会雑誌
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14 巻, 2 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • びまん性悪性胸膜中皮腫に対する合理的術式の試み
    小檜山 律, 阿部 典文, 目黒 浩昭, 石田 博徳, 岡田 晋一郎, 長野 真, 宮田 道夫
    2000 年 14 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    びまん性悪性胸膜中皮腫は治療抵抗性の予後不良な疾患である.手術が唯一根治的ではあるが, 侵襲も大きいため適応は制限されている.今回4例の本症患者に対し, 術式に工夫を加えた胸膜肺全摘術を施行し, 安全性, 確実性の両面から満足できる結果を得た.まず皮膚切開を, 通常の後側方切開をやや背側下方へずらし, その尾側端をそのまま延長させて前方で肋骨弓を横切り, 肋骨弓下へと到る切開とした.これにより良好な術野が確保され, 特に通常は困難とされる横隔膜面の処置が容易, 確実となった.第二に心膜や横隔膜の再建に有茎広背筋弁を使用した.その利点は異物を用いないこと以外に, 気管支断端の予防的被覆や, 臨機応変に他の重要臓器の被覆にも応用できる点であった.以上に留意して行った4例の本術式の平均手術時間は6時間25分, 出血量は1, 260mlであり, 侵襲は許容範囲であった.術式に工夫を加えることで, 手術適応をさらに拡大したい.
  • 井上 匡美, 中川 勝裕, 藤原 清宏, 福原 謙二郎, 新谷 康, 安光 勉
    2000 年 14 巻 2 号 p. 105-109
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    胸腺腫切除例について術前診断と治療, 予後因子に関しretrospectiveに検討した.対象は1977-98年の胸腺腫手術例39例.術前診断は針生検または吸引細胞診を施行した32例中26例 (81.3%) でなされた.一期的切除が困難な症例に対する術前治療は10例に施行され奏功率は80%であった.進行度は正岡I期13例, II期7例, III期15例, IVa期4例であった.10生率はoverallで80%, I-II期100%, III期72.7%であった.完全切除32例で90.7%, 不完全切除7例で33.3%であった (p<0.0001).術前治療施行例では66.7%であった.単変量解析で進行度 (p=0 .0059) と根治性 (p=0.0014) が予後因子であった.以上の結果より, 浸潤型胸腺腫に術前治療は有効で, 完全切除が困難な症例でも集学的治療により比較的良い予後が期待できると考えられる.また, 胸腺腫切除例では進行度と根治性が予後因子であった.
  • 山岡 憲夫, 内山 貴堯, 田川 努, 山本 聡, 田口 恒徳
    2000 年 14 巻 2 号 p. 110-116
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    原発性肺癌の術後残存肺に発生した肺癌の再発や第2次癌, 肺化膿症に対し残存肺全摘 (completion pneumonectomy: CP) を行った11例を経験した.術後重篤な合併症や術死はなく, 全例とも軽快退院した.これらの術前後の心肺機能の比較よりCPの手術適応として, 術前の一側肺動脈閉塞試験で全肺血管抵抗が600dyne.sec.cm-5/m2以下で, 術後予測肺活量が35%以上, 術後予測1秒量450ml/m2以上あればCPは可能と考える.また, 手術を行う際に癒着が高度と思われる場合は胸骨正中切開で開胸し, 心嚢内で肺血管の処理を行えば血管の損傷を抑えられる.気管支断端は胸膜などの被覆が望ましい.CP例の5年生存率は37.5%で, 2次性肺癌や肺化膿症に長期生存例を認めた.
  • 城戸 哲夫, 福嶌 五月, 木村 一隆, 福井 伸哉, 小川 達司
    2000 年 14 巻 2 号 p. 117-122
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    集学的治療により長期生存がえられている縦隔原発悪性リンパの2手術例を経験したので報告する.胸部X線で異常陰影の指摘を受け, CT検査で前縦隔の巨大な腫瘍が発見された.入院後, 針生検でdiffuse large B cell lymphoma with sclerosis (DLBCLS) と診断され, CHOPを主体にした化学療法が施行された.化療後, 放射線治療 (Co60, 50Gy) を行い, その結果, 腫瘍は著明に縮小した.今後の治療方針の決定を目的に残存腫瘍に対して手術を施行し, 2症例とも腫瘍を全摘出した.術後の病理組織診断では, 腫瘍内にviableな腫瘍細胞は認められずpathological CRと診断された.術後8年, 4年の現在, 再発徴候は認められず健存である.文献的考察から, 縦隔原発DLBCLSに対する治療は, 正確な組織亜系診断, 化学放射線療法の先行, 治療反応例に対する残存腫瘍の可及的全切除であると考えられる.
  • 朝倉 奈都, 沖津 宏, 清家 純一, 田渕 寛, 津田 洋, 佐尾山 信夫, 吉田 冲
    2000 年 14 巻 2 号 p. 123-127
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の男性.糖尿病性腎症により1998年4月に近医入院し血液透析を開始した.入院時より左胸水貯留を認め, 胸水検査を行うも原因同定には至らなかった.同年10月頃より熱発及び胸水の増加を認め, 膿胸の疑いにて胸腔ドレーンを挿入, 膿性の排液よりCryptococcus neoformansが得られた.血中Cryptococcus neoformans抗原, クリプトコッカス抗体は共に陰性で, 髄液検査, 頭部CTを含め, 他臓器には異常を認めず, クリプトコッカス膿胸と診断された.抗真菌剤の全身投与及び胸腔内洗浄による治療にも膿胸の改善はなく, 手術目的にて当科紹介となり, 1998年12月18日左肺剥皮術, 有茎筋弁充填術を施行した.術後特に合併症なく経過し, 術後約9ヵ月の現在, 再発の徴候は認めていない.
  • 西村 元宏, 河内 秀幸, 西山 勝彦
    2000 年 14 巻 2 号 p. 128-132
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    検診時の胸部異常陰影で発見され, 術前診断を行い得た成人肺葉外肺分画症の一切除例を報告する.
    症例は41歳女性.検診で胸部異常陰影を指摘された.血清CA19-9は81.9U/mlと高値であった.胸部CTで左下肺野に境界の比較的明瞭な長径80mmの腫瘤を認め, 内部はモザイク状に造影された.MRIでは大動脈より直接起始する異常流入動脈を認めた.血管造影では大動脈から腫瘤に流入する動脈と腫瘤より半奇静脈に還流する静脈を確認し, 肺分画症と診断した.手術では左肺下葉下面に存在する分画肺に胸部大動脈から流入する2本の異常動脈と半奇静脈へ流出する1本の還流静脈を認め, これを結紮処理して分画肺を切除した.分画肺の割面では嚢胞部分にクリーム色の粘稠な貯留液を認め, アスペルギルスを検出した.CA19-9の免疫組織染色で分画肺の気管支上皮に陽性所見を得た.血清CA19-9は手術後46日目には10.8U/mlと正常化した.
  • 金子 隆幸, 小林 広典, 生田 義明, 原田 洋明
    2000 年 14 巻 2 号 p. 133-139
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    外傷性頸部気管損傷の2手術例を経験した.症例1は, 乗用車運転中, 軽乗用車と正面衝突し, 受傷した.来院時, 呼吸困難と皮下気腫があり, 胸部CTにて縦隔気腫を認めたため, 緊急気管支鏡を行い, 気管裂傷と診断した.気管支ファイバーに沿わせて気管内チューブを挿管し, 保存的治療を行ったが, 3日後の気管支鏡で気管穿孔が判明した.全身麻酔下に頸部を正中切開すると輪状軟骨が融解壊死し, 穿孔していた.穿孔部を前頚筋にて閉鎖したが, 披裂軟骨の脱臼に気づかなかったため, 術後に声帯癒着を生じ, 5ヵ月後, 喉頭形成術を施行した.症例2は, バイクで走行中, 横に張られたロープで, 頸部を受傷した.来院時は, 嗄声のみで呼吸困難はなかった.受傷後7日目, 呼吸困難が出現し, 気管内チューブを挿管したところ, 換気不能となり, 緊急気管切開したところ, 気管の完全断裂に気づいた.手術は気管吻合を行った.2症例とも社会復帰できた.
  • 櫻井 照久, 尾浦 正二, 吉増 達也, 有本 潤司, 三好 新一郎, 内藤 泰顯
    2000 年 14 巻 2 号 p. 140-143
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2011/02/23
    ジャーナル フリー
    気管および肺の重複癌3例を経験した・症例は男性が2例, 女性が1例で, 重喫煙者であり, 気管癌ならびに肺癌の組織型は, いずれも扁平上皮癌であった.気管癌に対する手術は, 気管管状切除および端々吻合術を2例に, 喉頭気管切除・永久気管瘻造設術を1例に施行した.肺癌に対する治療は, 右下葉切除を1症例に, レーザー照射を1症例に, マイクロターゼ焼灼術を1症例に施行した.1症例は, 気管癌術後4年9ヵ月経過した現在無再発生存中で, 他の2例はそれぞれ気管癌術後1年11ヵ月と9ヵ月で気管癌死した.気管と肺の重複癌は極めてまれであり文献的考察を加え報告する.
  • 櫻井 照久, 尾浦 正二, 吉増 達也, 中村 恭子, 松山 健次, 太田 文典, 内藤 泰顯
    2000 年 14 巻 2 号 p. 144-147
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は54歳女性で, 検診時胸部X線検査で, 胸部異常陰影を指摘された.胸部X線検査にて, 左上縦隔に腫瘤陰影を認め, 気管は右方に著しく圧排されていた.CT検査にて, 左甲状腺から左後縦隔に連続する比較的均一な巨大な腫瘍を認めた.腫瘍は, 右後縦隔にまで進展し, 腫瘍の下端は, 気管分岐部付近まで達していた.甲状腺シンチグラムにて, 腫瘍に一致する集積像を認め, 縦隔内甲状腺腫を疑った.頚部襟状切開に胸骨縦切開を加えたアプローチを行い, 腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は, 12×7×7cm大で, 組織学的には, adenomatous goiterと診断された.このような対側縦隔に進展するような巨大な後縦隔内甲状腺腫は極めてまれであり, 若干の文献的考察を加え報告する.
  • 庄司 剛, 田中 康一, 三浦 隆, 中城 正夫, 河野 洋三, 在永 光行, 内田 雄三
    2000 年 14 巻 2 号 p. 148-151
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    背部刺創による脾損傷が腹腔内出血を全く来さず緊張性血胸のみを来した興味ある外傷性横隔膜ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は20歳, 男性.1996年7月, ガラス戸に倒れ込んだ際にガラス片が背部に刺さり, 呼吸困難となったため近医を受診.胸腹部X線, CT検査にて左血胸と診断され, 当科へ緊急入院となった.来院時, 緊張性血胸によるプレショック状態であり, 緊急手術を施行した.左低位後側方切開にて開胸すると, 胸腔内に約3, 000mlの血液を認めた.出血源を検索すると, ガラス片により損傷を受けた脾臓が, 横隔膜裂傷部より胸腔内へ脱出嵌頓した状態で出血していた.しかし, 腹腔内出血は全く認めなかった.脾摘を行い, 横隔膜は直接縫合し修復した.術後経過は良好で, 術後12日目に軽快退院した.
  • 酒瀬川 浩一, 下川 新二, 渡辺 俊一
    2000 年 14 巻 2 号 p. 152-155
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は33歳, 女性.検診の胸部レントゲン写真で縦隔異常陰影を指摘され当科に入院した.精査にて右上縦隔に嚢胞性腫瘤が存在し, 胸腔鏡下手術を行った.先ず, バルーンカテーテルにて嚢胞内容液を胸腔内に流出させないように吸引後, 嚢胞壁を可及的に切除した.病理診断は心膜嚢胞であった.術後経過は良好で, 術後9日目に退院した.心膜嚢胞に対する胸腔鏡下手術は, 低侵襲で有用な治療法である.その際, 本バルーンカテーテルを用いて予め内容液を吸引することで, 手術操作が安全かつ容易になる.
  • 神崎 正人, 大貫 恭正, 池田 豊秀, 櫻庭 幹, 西内 正樹, 舘林 孝幸, 小山 邦広, 兼安 秀人, 村杉 雅秀, 新田 澄郎
    2000 年 14 巻 2 号 p. 156-161
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    重症冠状動脈病変を有する肺癌肺切除症例では致命的なischemic eventの発生が危惧され, 手術適応, 術式の選択, 周術期管理には注意を要する.今回, 重症虚血性心疾患合併原発性肺癌2例に対し大動脈内バルーンパンピング (以下IABP) を併用し安全に肺切除を行い, 良好な結果を得たので報告する.症例1は食道癌の放射線照射後食道狭窄に対する胸骨前頚部食道・胃吻合術々後の3枝病変例で, 症例2はステント留置後2枝病変例で, 左室駆出率23%であった.両症例ともscheduled IABP下に肺切除を施行した.抗凝固療法に伴う出血量の増大に注意することで, 冠血行再建が困難な高度冠状動脈病変を有する肺癌症例において, IABPを挿入することでiscemic eventを回避した肺切除は可能である.
  • 大熊 利之, 岩谷 和法, 池上 克徳, 本郷 弘昭, 藤本 久夫
    2000 年 14 巻 2 号 p. 162-166
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は68歳女性.検診にて胸部X線写真上, 左肺門部の異常陰影を指摘された.自覚症状は特になかった.腫瘍は軽度増大傾向にあり, 開胸下に腫瘤摘出術を施行した.腫瘤は薄い線維性被膜に被われ, 暗褐色, 弾性硬, 充実性であり, 臓側胸膜, 縦隔胸膜に被われておらず, 周囲への浸潤も認められなかった.病理診断は免疫組織学的に第8因子関連抗原が陽性であり, 類上皮血管内皮腫であった.類上皮血管内皮腫は極めて稀な腫瘍であり, 我々が調べた範囲では肺門部に発生した例は見ない.肺門部異常陰影の際に, 本疾患も鑑別疾患の一つとして考慮すべきであると考えられた.
  • 諸江 雄太, 泉 陽太郎, 加藤 良一
    2000 年 14 巻 2 号 p. 167-171
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は85歳, 女性.乾性咳嗽にて近医を受診し, 胸部単純X線写真上異常陰影を指摘され当院に紹介入院となった.胸部単純X線写真にて気管を圧排する右縦隔腫瘍を認め, 造影CT, 造影MRでは右中縦隔に長径約7cmの造影効果を有する腫瘍を認めた.気管支鏡検査では, 気管の右方よりの外圧性の圧排, 狭窄を認めた.良性の神経原性腫瘍を疑い, 胸腔鏡補助下に摘出手術を行った.腫瘍は奇静脈の頭側, 気管の右外側に位置し, 表面は平滑であった.腫瘍内部に迷走神経が入り込んでいたため, 迷走神経から発生した腫瘍と診断し, 迷走神経を合併切除した.病理組織学的に神経鞘腫と診断された.術後気管の圧排, 狭窄は解除され咳嗽も軽快して退院した.本邦では迷走神経から発生した縦隔腫瘍の報告は比較的少ないので, 文献的考察を含め報告した.
  • 橋本 博史, 尾関 雄一, 佐藤 光春, 出口 博之, 小野 克明, 原口 秀司, 田中 勧
    2000 年 14 巻 2 号 p. 172-177
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    von Recklinghausen病に合併した悪性神経鞘腫の肺転移に対し, 胸腔鏡下切除を施行し得た1例を経験したので報告する.
    症例は32歳の女性で, 小児期よりvon Recklinghausen病と診断され, 1994年12月に右下腿の悪性神経鞘腫に対して, 術前化学療法, 放射線治療の後, 広範囲腫瘍摘出術を施行した.1997年9月の胸部X線写真で右中肺野にcoin lesionを認め, 転移性肺腫瘍の診断で1997年11月に胸腔鏡下肺部分切除術を施行した.術後の病理組織診断は, 悪性神経鞘腫の肺転移であり, 断端に肉腫細胞を認めず, 術後1年9ヵ月の現在までに新たな肺転移の出現を認めていない.悪性神経鞘腫の転移臓器としては肺が最も多く, その予後は著しく不良であるが, 本症例は比較的予後が期待できると考えられた.
  • 田川 努, 内山 貴尭, 山岡 憲夫, 山本 聡, 松本 桂太郎, 田口 恒徳
    2000 年 14 巻 2 号 p. 178-181
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    II期の胸腺腫2例に対し, 胸骨吊り上げ胸腔鏡下拡大胸腺胸腺腫摘出術を行い有用であった.左右分離肺換気下に仰臥位とし, 頚部と上腹部を伸展位にした.剣状突起部正中に約6cmの切開をおき胸骨裏面を剥離し, 次に頚部に襟状切開を約5cmおき胸骨裏面に血管テープを通し胸骨を吊り上げた.頚部創より左右の胸腺上極を切離し, 左腕頭静脈にテーピングを行い, 胸腺静脈を処理した後, 胸腺を左腕頭静脈より剥離した.胸腺左右上極を把持し, 下方へ牽引しながら大動脈, 上大静脈, 心嚢, 両側胸膜より胸骨下部に向かい剥離し, 最後に胸骨下部操作孔より胸腺と腫瘍を取り出した.胸膜側の胸腺の切除範囲は左右の横隔神経まで行った.手術時間は199分, 271分, 出血量40g, 130g, 鎮痛剤は1例でドレーン挿入中のみ使用し, 2例ともに第15病日退院した.手術関連の合併症はなく, 術後約2年経過しているが再発徴候はない.
  • 陳 豊史, 辰巳 明利
    2000 年 14 巻 2 号 p. 182-185
    発行日: 2000/03/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は, 74歳男性.右側胸部の疼痛を伴い増大する腫瘍に対し診断的切除を行った.腫瘍はnon-Hodgkin's lymphoma, diffuse large cell typeであり, 術後放射線照射を追加した.経過観察中の術後約3年半後, 左側胸部に前回と同様の腫瘍が出現したため, 切除を行い病理所見と臨床経過から再発と診断した.術後に化学療法と放射線照射を追加し, 初回術後約4年になるが経過良好で他病変の出現も認めていない.本例では結核や膿胸の既往はなかったが, EBウイルス抗体価の上昇を認めた.またin situhybridization法による検索では再発腫瘍組織中のEBウイルスの存在は証明できなかった.胸壁原発悪性リンパ腫は, 慢性結核性膿胸や慢性胸膜炎を基礎疾患として有する場合がほとんどであるが, 本例は先行する基礎疾患がなく, 極めて稀な胸壁原発悪性リソパ腫と考え報告した.
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