日本呼吸器外科学会雑誌
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14 巻, 4 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 相良 勇三, 福島 鼎, 林 孝二
    2000 年 14 巻 4 号 p. 495-500
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    肺アスペルギローマの手術例71例に検討を加えた.71例を病型によりsimple aspergillomaとcomplex aspergillomaの2つに分類した.simple aspergillomaは10例で, 全例肺葉切除術を行い重篤な術後合併症は認められず, 再発も認めなかった.complex aspergillomaは61例で肺葉切除術, 肺全摘除術, 肺区域切除術, 気管支遮断術, 空洞切開+筋肉充填+胸郭成形術が行われ, 1例は術中に出血死した.complex aspergillomaのうち肺切除術を行った症例は, 術後合併症が多く発生し追加手術を必要としたが, 再発は認められなかった.空洞切開+筋肉充填+胸郭成形術を行った症例は重篤な術後合併症の発生は少なかったが, 再発を認める症例が多かった.空洞切開+筋肉充填+胸郭成形術は術後合併症が少ないのでハイリスクの症例に考慮すべき術式と考える.
  • 田中 良太, 雨宮 隆太, 朝戸 裕二, 清嶋 護之, 河野 修三, 吉見 富洋, 鏑木 孝之, 戸川 真一, 輿石 義彦, 呉屋 朝幸
    2000 年 14 巻 4 号 p. 501-506
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    珪肺症合併気胸7例 (8病変) に対して胸腔鏡下手術を施行した.全例が男性の石材業従事者で平均従事期間は41±4年間である.年齢は55歳から82歳 (平均65±9歳), 患側は右4病変, 左4病変, 1例は両側手術例であった.虚脱の程度は8病変中6病変 (74%) が3度と高度であった.8病変の内訳は待機的療法 (安静および胸腔ドレーン挿入のみ) で1週間以上肺瘻が持続した初発4病変と再発4病変であった.その術式は胸腔鏡下手術4病変, 胸腔鏡補助下小開胸手術4病変 (うち2病変にPGAフェルトを使用) であった.待機的療法群8例との比較で治療開始後のドレーン留置期間, 在院日数は比較的短く再発率は手術療法群25% (2/8), 待機的療法群75% (6/8) と比較的低率であったが統計学的有意差は認めなかった.待機的療法に抵抗性の症例に対し積極的に手術を考慮するべきであると考えた.
  • 松岡 隆久, 金田 好和, 林 雅太郎, 田中 俊樹, 佐伯 浩一, 坂野 尚, 上田 和弘, 藤田 信弘, 江里 健輔
    2000 年 14 巻 4 号 p. 507-511
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    肺塞栓症は比較的稀な疾患であるが, 食生活や日常生活の欧米化とともに本症の発症頻度は増していると思われる.今回, 我々は肺癌術後に発症し救命し得なかった1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は68歳, 女性.主訴は胸部X線写真上の異常陰影.胸部CTにて右上葉に腫瘤を認め, 右上葉切除+R2a郭清施行.第3病日にトイレ歩行の際, 軽度の息切れとともにSao2の低下を認めたが安静により改善.この2時間後, 突然喘鳴を認め, 呼吸停止・心停止を来した.心肺蘇生を行ったが1時間後に死亡.剖検所見では, 右胸腔内の少量の胸水及び右肺動脈の区域動脈の全てに新鮮赤色血栓及び白色血栓による閉塞を認めた.肺塞栓症はよく知られている合併症であるが経験することは比較的稀である.肺癌術後においても致死的合併症となりうる本症を念頭におき慎重に術後管理をする必要があると思われる.
  • 相良 勇三, 福島 鼎, 林 孝二
    2000 年 14 巻 4 号 p. 512-516
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    耐性肺結核に対する, 胸腔鏡下手術の有用性に関して検討を行った.気道病変のある症例は除外した.症例は3例で, 入院時は全例排菌陽性であったが, 病巣は1葉に限局していた.抗結核薬による治療で排菌が陰性になってから, 胸腔鏡下肺葉切除術を行った.3例とも, 合併症なく治癒した.胸腔鏡下で耐性肺結核の手術を行う場合, 術後合併症予防の点より, 気道病変が存在せず, 術前の排菌が陰性化しており, 癒着が少なく, 術後に遺残腔の発生が予想されない症例を選択すべきであると考える.このような症例に対し, 結核の経験豊富な内科医が十分な抗結核薬による治療を行い, 結核及び胸腔鏡手術の経験豊富な外科医が適切な適応のもとに手術を行えば, 早期離床, 創縮小による精神的負担の軽減などの点より, 胸腔鏡下手術は耐性肺結核に対して有用な術式になりうるものと考える.
  • 安孫子 正美, 佐藤 徹, 高橋 伸政, 金内 直樹
    2000 年 14 巻 4 号 p. 517-521
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    極めて稀な前縦隔発生のhemangiopericytomaを, 胸腔鏡下に摘出した症例を経験したので報告する.症例は脳梗塞後遺症や糖尿病を有する80歳の男性で, 感冒で近医を受診した際に胸部X線写真上左肺門部の異常影を指摘された.胸部CTで内部が良く造影され, 辺縁が比較的整である前縦隔腫瘍を認めた.経皮針生検を施行しhemangiopericytomaの診断を得た.明らかな浸潤所見を認めず, 合併症を有する高齢者であることを考慮して, 胸腔鏡下摘出術を施行した.腫瘍は弾性軟で, 比較的血管増生の見られる薄い被膜を有し, 周囲組織への浸潤は認めなかった.腫瘍径は65×50×47mm, 重量は99.7gであった.割面は淡褐色充実性で, H-E染色では小血管様構造の間に紡錘形細胞が密に増殖していた.鍍銀染色では, 紡錘形細胞が個々に網目状の好銀線維に囲まれていた.術後1年2ヵ月現在再発の兆候は認めていない.
  • 内藤 善久, 高橋 博人, 齋藤 泰紀, 久保 裕司
    2000 年 14 巻 4 号 p. 522-528
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は37歳, 男性.検診で胸部異常影を指摘.CTで前縦隔から大動脈, 左肺動脈に接する腫瘤影及び左胸壁にも腫瘤を認め, 穿刺吸引細胞診によりmixed-type thymomaと診断された.IVa期浸潤型胸腺腫の診断で腫瘍縮小を目的にAdriamycin90mg, Cysplatin90mg, Prednisolone350mgの全身化学療法を2クール施行するも十分な腫瘍縮小が得られなかった.Lipo-PGE1を併用してAdriamycin90mg, Cisplatin90mgの左内胸動脈動注を2回施行し, 著明な腫瘍縮小を得, 腫瘍切除可能と判断し, 腫瘍原発巣及び胸膜播種病変を可及的に切除した.胸腺腫の治療は外科的切除・放射線療法が有効とされているが, 本症例のように術前内胸動脈動注が, IVa期浸潤型胸腺腫の治療法として有用であると考えられた.
  • 佐藤 修二, 山下 誠, 鈴木 英之, 秋葉 直志, 吉村 邦彦, 山崎 洋次
    2000 年 14 巻 4 号 p. 529-533
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は51歳の女性である.検診の胸部X線写真で異常陰影を指摘された.血清CA19-9は1, 140U/mlであった.胸部CTでは右S6からS2にかけて腫瘤を認め, 気管支鏡下擦過細胞診で腺癌と診断した.右肺全摘術およびリンパ節郭清 (R2a) を施行した.病理組織所見は高分化乳頭型腺癌であった.CA19-9の免疫組織化学染色ではほぼすべての腫瘍細胞の細胞質が陽性に染色された.
    本症例は術後4ヵ月目の胸部CTで対側肺転移が明らかとなったが, 術前のCTを再検討すると, すでに対側肺に小転移巣が存在していた.CA19-9は術後正常範囲内まで低下したが再上昇し, 術後13ヵ月目に肺・骨・脳転移で死亡した.CA19-9は血行性転移と関連があると報告されている.高値である場合には転移の有無を慎重に検討すべきである.
  • 四方 裕夫, 松原 純一, 渡 正伸, 石井 修, 菅原 由至, 渡橋 和政, 末田 泰二郎, 松浦 雄一郎
    2000 年 14 巻 4 号 p. 534-539
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    サルコイドーシスは炎症性肉芽腫性病変を主病変とし, 悪性新生物の発生頻度が高いとされる.症例は66歳の男性で, 心房細動に対するMaze手術を4年前に受け, サルコイドーシスと診断されていた.術後4年目に右肺上葉に睡瘤が指摘され, TBLBで扁平上皮癌と診断された.CTで縦隔・肺門リンパ節腫大を認め, サルコイドーシスによる変化も否定出来ないが, 転移が疑われた.咳嗽・発熱などの症状強く, 手術を施行したが, 術前病期はstage IIIBであった.術後病理病期はstage IBで, 腫大したリンパ節はすべてサルコイドーシスによるものであった.炎症性肉芽腫病変に生じた悪性腫瘍の病期診断には画像診断に加えてリンパ節生検が必要と考える.
  • 川口 剛史, 高濱 誠, 櫛部 圭司, 東条 尚, 根津 邦基, 谷口 繁樹
    2000 年 14 巻 4 号 p. 540-544
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は58歳, 女性.1996年6月, 乾性咳嗽および左肩痛を主訴に来院した.左上肺野に胸壁に接する7.0×4.5cmの腫瘤が認められた.経皮針生検で確定診断は得られなかったが, 短期間に急速に増大したため, 悪性腫瘍を疑い同年8月に手術が施行された.手術は腫瘍を含むS3部分切除術, 第3肋骨を含む胸壁合併切除術を施行した.病理組織診断の結果は, 胸膜原発平滑筋肉腫であった.術後放射線療法を50Gy追加したが, 1年10ヵ月後に全身転移にて死亡した.胸膜原発平滑筋肉腫は非常に稀であり, 我々の検索した限りにおいては, 本症例は本邦初の報告である.
  • 西田 勉, 富野 晴彦, 佐藤 陽子
    2000 年 14 巻 4 号 p. 545-549
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    右中葉気管支より発生した非軟骨性気管支内過誤腫の1手術例を経験したので報告する.症例は57歳, 女性.胸部痛にて近医を受診し, 胸部X線にて異常を指摘され当院内科を紹介された.右中葉無気肺を認めたため, 気管支鏡を施行したところ, 中間気管支幹を閉塞する腫瘤を認めた.生検組織像で気管支粘膜下にmyxomatous tissueを認めたことから粘液腫を疑い, 右中下葉切除を施行した.
    腫瘤は弾性軟で, 中葉支を完全に閉塞し, 中間気管支幹より下葉支にいたる3.0×1.7×1.2cmの大きさであった.病理組織では, 大小の不完全分葉を示したmyxoid conective tissueを主成分とし, ごく一部で軟骨と脂肪織への分化を示しており, 非軟骨性気管支内過誤腫と診断された.本例の様な組織形態はまれであり, 過誤腫が間葉系の新生物であるとする見解を示唆する所見と考えられるのではないかと思われた.
  • 坪田 典之, 谷口 清英
    2000 年 14 巻 4 号 p. 550-554
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    人工呼吸管理中に気胸を発症し, 手術を施行した2例を経験した.症例1は69歳の男性, 筋萎縮性側索硬化症に肺気腫を合併しており, 呼吸筋の麻痺のために人工呼吸管理をしていた.人工呼吸管理開始1年7ヵ月後に突然右気胸を発症した.胸膜癒着療法で軽快せずに手術を施行し, 軽快した.症例2は77歳の男性, 肺気腫に多発性気腫性嚢胞を合併した低肺機能症例であった.肺結核加療中に肺炎を併発し, 人工呼吸管理開始当日に左気胸を発症した.手術により気胸は軽快したが, 呼吸不全は継続し死亡退院した.人工呼吸管理中での気胸発症の危険因子は気腫性肺病変の存在, 肺炎の合併および人工呼吸管理の長期化と推察された.人工呼吸管理中であっても気胸を発症した際には積極的に手術すべきである.但し症例2のようなpoor risk症例においては, より早期の手術実施の判断と, より低侵襲な手術法の選択が重要と考えられた.
  • 中村 広繁, 牧原 一彦, 谷口 雄司, 目次 裕之, 石黒 清介, 応儀 成二
    2000 年 14 巻 4 号 p. 555-561
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    異なる進展形式を有するdumbbell型腫瘍3例の胸腔鏡下手術を報告した.症例1は62歳女性でEden III型, 症例2は40歳男性でEden IV型, 症例3は12歳女性でEden II型であった.症例1, 3は整形外科による後方経路からの脊柱管内腫瘍の切除を先行した後, 胸腔鏡下に残存腫瘍を摘出した.症例2は胸腔鏡下手術のみで摘出した.症例3は術後に髄液漏を合併した.病理はすべて良性の神経鞘腫であった.Dumbbell型腫瘍においてEdenI型は胸腔鏡手術が困難で, IV型は胸腔鏡のみでも施行可能である.II, III型はまず整形外科や脳神経外科による脊柱管内操作を優先し, 神経損傷の危険を回避した後, 胸腔鏡下に椎間孔を開放するように残存腫瘍を完全切除することが望ましい.しかしながら, 特にII型は硬膜を切開するため, 術後の髄液漏に注意を要する.
  • 狭間 研至, 明石 章則, 前畠 慶人
    2000 年 14 巻 4 号 p. 562-567
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    びまん性肺気腫に対し, 独自に考案したY字型ストッパー付き高拡散型チップをNd: YAGレーザーに用いたVolume reduction surgery (VRS) を行った症例を経験したので報告する.症例は75歳男性.内科的治療にても呼吸困難が増強し, 胸腔鏡下に二期的に両側のVRSを行った.気腫肺を自動縫合器で切除し, 切除困難部位の気腫肺に対するレーザー焼灼に, 初回左側手術では接触型ジャンボチップを, 右側手術では, Y字型ストッパー付き高拡散型チップを使用した.Y字型ストッパーは焼灼面との距離を約1cmで一定に保ちレーザーチップの先端に焼灼物等が付着しにくく, 術中操作の妨げにならない利点がある.高拡散型チップは1回の焼灼面積が従来のチップの約25倍と広く, 焼灼時間の短縮, 過焼灼による胸膜損傷の予防が可能である.接触型ジャンボチップと比べて, Y字型ストッパー付き高拡散型チップは, VRSの手術時間および術後胸腔ドレーンの留置期間の短縮に有用と思われる.
  • 文献報告例を加えた9例の検討
    藤永 一弥, 高尾 仁二, 高林 新, 金光 真治, 蔡 銘, 島本 亮, 下野 高嗣, 田中 國義, 新保 秀人, 矢田 公, 並河 尚二
    2000 年 14 巻 4 号 p. 568-572
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    胸腺上皮性腫瘍である胸腺癌は比較的希な疾患で, 特に類基底細胞癌は今までに8例が文献報告されているに過ぎない.今回我々は胸腺類基底細胞癌と考えられた症例を経験したので報告する.症例は68歳, 女性, 近医での気管支喘息の治療中に撮影された胸部X線にて右肺門部に異常陰影を認めたため当科へ紹介された.精査後, 胸腺腫の診断にて拡大胸腺胸腺腫摘出術ならびに心膜合併切除術を施行した.病理学的に類基底細胞癌と診断された.胸腺類基底細胞癌は, 胸腺癌組織分類では低悪性度組織型に分類され, 完全切除できれば予後は比較的良好と考えられている.本症例は術後縦隔への外照射を行い, 術後2年5ヵ月現在, 再発の兆候は認めていない.
  • 池田 康紀, 梅津 英央, 苅部 陽子, 小林 哲, 関 哲男, 嶋田 晃一郎
    2000 年 14 巻 4 号 p. 573-578
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は48歳女性, 1995年に右下葉の異常陰影精査目的で入院.胸部CTにて右下葉に結節陰影を認めたが, 左S5にも微小陰影が発見された.右下葉の結節はその後自然退縮したため, 両陰影とも経過観察となった.1年後のCTでは右下葉の陰影は完全に瘢痕化していたが, 左S5の陰影は若干増大し, さらに右上葉に新たに微小陰影が出現した.精査を勧めたがその後来院せず, その後1999年になり来院.CT撮影したところ左S5の陰影は約1cmの結節影に変化していたため再度入院した.肺針生検にて左S5の陰影は腺癌と診断され, 左上葉切除 (リンパ節郭清ND2a) を施行した.病理診断で, 腫瘍径は12×13mmであったが胸膜浸潤の程度がp2であり, T2N0M0, stage IBの腺癌であった.また摘出肺の腫瘍近くに径4mmの異型腺腫様過形成 (AAH) が存在することが判明した.
  • 石川 紀彦, 石川 智啓, 川瀬 裕志, 澤 重治
    2000 年 14 巻 4 号 p. 579-582
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2011/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は72歳, 男性.受診後2日間にわたる約400mlの喀血を認め, 1999年8月6日入院となった.胸部X線写真では異常は認められなかった.胸部CT検査では, 下行大動脈に接して塊状, あるいは網状の出血を疑わせる浸潤影を認めた.気管支鏡検査では, 左下葉枝からの出血と軽度の気管支拡張症を認めた.気管支拡張症による喀血を疑い, 8月10日に気管支動脈塞栓術を施行した.その後安定していたが2週間後に約200mlの再喀血を認めたため, 翌日手術を施行した.下行大動脈に嚢状瘤があり, これに左下葉が強固に癒着していた.喀血の原因は胸部大動脈瘤肺内穿破と診断した.癒着した肺を部分切除し, ついで瘤の中枢側及び末梢側にカニューションし一時的バイパスを作製した.瘤の上下で大動脈を遮断し瘤を島状に切除し, パッチ閉鎖した.縫合部の補強目的にゴアテックスシートでパッチ部を被覆した.術後経過は良好で9月24日に退院した.
  • 新里 研吾, 下川 新二, 渡辺 俊一, 酒瀬川 浩一, 丸古 和央
    2000 年 14 巻 4 号 p. 583-586
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    胸腔鏡下手術は待機的に行われることが多い.今回我々は, 血気胸を伴った胸腔内異物症例において, 胸腔鏡下緊急手術にて異物摘出を行った.症例は47歳, 男性.外傷により背部筋層内にガラス片が刺入し, 近医にて一部を摘出された.翌日, 右気胸と遺残ガラス片の胸腔内突出が認められ, 当科へ転送された.先ず, 局所麻酔下に脱気用チューブを挿入したところ, 約180mlの血液流出を見た.その後, 全身麻酔を導入し, ガラス片2個を胸腔鏡下に, 残る2個を背部より用手的に摘出した.臓側胸膜に明かな損傷を認めず, 血気胸は胸壁穿通性外傷によって生じたと判断した.術後経過は良好であった.症例を選択すれば, 緊急手術であっても胸腔鏡下手術は安全かつ低侵襲で有用な治療手段と考えられる.
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