日本呼吸器外科学会雑誌
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15 巻, 1 号
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  • 笹本 修一
    2001 年 15 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    開胸手術56例で経皮的酸素飽和度 (SpO2) 測定を術前から術後に行い, 夜間の一過性低酸素血症 (hypoxemic episode A: SpO2の90%未満への低下が最低で10秒間持続する低酸素血症) の頻度, 好発時期, リスクファクター, 合併症につき検討を行った.さらに簡易式無呼吸レコーダーで7症例の, 無呼吸のタイプを検討した.術後は酸素投与により, SpO2の平均は術前より高値であったが, hypoxemic episode Aは62.5%に発症した.これを予測する有用なリスクファクターはなく, 好発時期は術後第3病日であった.hypoxemic episode Aが多発した高齢者3例に術後譫妄が発症し, その関与が疑われた.無呼吸レコーダーの測定では閉塞性無呼吸を85.7%に認め, より重篤なhypoxemic episodeに関与していた.開胸術後に, 予測不可能な夜間hypoxemic episodeが発症する可能性を考慮した術後管理が必要であろう.
  • 佐藤 之俊, 土屋 繁裕, 奥村 栄, 三好 立, 飯島 京太, 中川 健, 折野 公人
    2001 年 15 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    肺悪性腫瘍手術時において, 新しく開発された合成ハイドロゲル剤 (ADVASEALTM) の肺断端処理における被覆・補強効果と適応を検討した.対象は1999年8~12月までに開胸にて肺切除を行った患者のうち28例.肺切除終了時に, 空気漏出部位とその程度を記録した後, 本剤にて漏出部を被覆した.有効性を閉胸直前のシーリングテスト結果とドレーンの空気漏出期間で評価し, 安全性は作動不良の有無と因果関係が否定できない人体への影響で評価した.全適用箇所はstaple線38箇所, 縫合線17個所, 癒着剥離部10箇所, 切開部32箇所であった.Staple線領域と癒着剥離領域では全例で空気漏出が消失し, 縫合線領域でも82.3%で消失した.有効率は92.9%であった.合併症は, 遷延した肺痩5例, 発熱3例, 肺炎1例, そして肝障害1例であった.本剤は肺切除時のとくにstaple線, 癒着剥離ならびに縫合線の各領域における適用で同部からの空気漏出防止に効果的である.
  • Tru-Close Thoracic Ventの有用性についての検討
    坂本 和裕, 沖田 将人, 土田 知史
    2001 年 15 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    当院で1年間に簡易型気胸ドレナージキット (ソラシックベント) を使用した自然気胸患者のべ63例を対象に, その有用性を検討した.年齢は16-76 (平均31.9) 歳, 男性54例, 女性9例, 右23例, 左40例, 初発42例, 再発21例であった.初発42例中30例 (71.4%) は外来通院のみで改善した.再発例では術前の入院期間短縮に有効であった.全例 (63例) 中4例に持続吸引が必要となり, うち排液による閉塞, 強度肺痩によりそれぞれ1例はトロッカーに交換した.チューブの折れ曲がりによる閉塞や自然抜去は認めず, 1例で軽度の再膨張性肺水腫を起こした以外に重大な合併症も認めなかった.外来でのソラシックベント挿入期間はのべ291日で, その間の入院期間の節約が可能であった.ソラシックベントは初発自然気胸症例においては外来治療として, また再発症例においては入院手術までの間の外来ドレナージ管理として有用と考えられた.
  • 船越 康信, 前田 元, 早川 正宣, 澤端 章好, 奥村 好邦
    2001 年 15 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    近年, 抗酸菌症合併の肺癌症例が増加する傾向にある.1990年以降の10年間に当院にて活動性の抗酸菌症治療中に発見された肺癌手術症例を10例経験した.内2例は非定型抗酸菌症であった.10例の平均年齢は61歳 (47-68歳) で, 全員男性であった.10例全員に喫煙歴を認めた (B.I.550-2, 000).肺癌の組織型は扁平上皮癌7例, 腺癌3例であった.内4例に術前後に重複癌を認めた.臨床病期はIA期4例, IB期2例, IIB期1例, IIIA期3例であり, いずれも十分な抗結核薬治療を行った後に手術を施行した.手術は肺葉切除7例, 肺葉切除+胸壁合併切除1例, 肺全摘1例, 部分切除1例であった.術後抗酸菌症の再燃は認めず, 死亡は手術死1例, 癌死4例の計5例であった.抗酸菌症罹患者は肺癌発生の頻度が高いとされ, 常に両者の合併を念頭に置いて治療しなければならない.
  • 岩丸 有史, 小山 孝彦, 神山 育男, 後藤 太一郎, 山本 学, 井上 芳正, 大塚 崇, 堀口 速史, 山内 徳子, 安彦 智博, 澤 ...
    2001 年 15 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は10歳, 男児.他院で縦隔腫瘍の診断を受けたのち当院へ転院となった.CTガイド下生検では奇形腫の診断であったが, AFP, hCG, hCG-βが上昇していたため悪性成分の存在を疑い, CDDP, VP-16, ブレオマイシンによる化学療法を3コース施行した.化学療法施行後に各腫瘍マーカーは正常範囲となり, 引き続き胸骨正中切開にて腫瘍摘出を行った.腫瘍は周辺臓器には浸潤しておらず, 完全摘出が可能であった.組織診断はplacental site trophoblastが証明された事からgerm cell tumor, combined typeと診断された.術後6コースのPEB化学療法が追加された.現在再発転移の徴候なく外来通院中である.この患者はまた, 術前の染色体検査によりKlinefelter症候群であると診断された.縦隔原発の胚細胞性腫瘍や胎児性癌は同症候群に合併することがあり, その原因は遺伝的な素因ならびに異常なホルモン状態が原因と考えられている.
  • 水渡 哲史, 吉津 晃, 澤藤 誠, 堀口 速史, 山畑 健, 中田 博
    2001 年 15 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は46歳, 女性.入社時検診で胸部の異常を指摘されて当科受診した.左胸腔内に肺紋理を認めず, 縦隔は右に偏位していた.手術ではS6に茎を持つ巨大肺嚢胞によって左胸腔内は占められており, 嚢胞を摘出すると左肺は再膨張した.
    術後労作時の呼吸が楽になり, 肺機能検査は改善した.10年前から嚢胞を指摘されていたため長期間肺は虚脱していたと考えられ, 手術により肺機能の改善がえられたことは興味深い.
  • 大熊 利之, 岩谷 和法, 池上 克徳, 本郷 弘昭
    2001 年 15 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は69歳男性.約3年前に早期胃癌の診断にて幽門側胃切除術, 左肺上葉肺腺癌の診断で左肺上葉切除術を受けている.胸部X線写真上, 右中肺野の異常陰影を指摘され当科受診となった.腫瘍は増大傾向にあり, 悪性が疑われ右肺下葉切除術を施行した.病理診断は原発性肺平滑筋肉腫であった.また同時に残胃にも癌を認めたため右肺下葉切除術後32日目に残胃全摘術を施行した.今日, 重複癌は報告例も多いが, 重複癌の中に肺癌と原発性肺平滑筋肉腫を含む報告例はわれわれが調べた範囲ではない.極めて稀であると考えられるため若干の文献的考察を加え報告する.
  • 桂 浩, 井内 敬二, 松村 晃秀, 末岐 博文, 田中 壽一, 大倉 英司, 森 隆
    2001 年 15 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は63歳男性.持続する咳嗽を契機に胸部単純X線で異常影を指摘され, 胸部CTで前縦隔腫瘍が疑われ紹介された.経皮生検で胸腺カルチノイドを疑い, 1999年9月腫瘍摘出術を行った.腫瘍は胸腺左葉を主座としてほぼ全体におよび, 左胸腔内へ突出, 少量の胸水を認めたが, 胸壁, 血管への浸潤はなかったため, 腫瘍摘出術を行った.H-E染色, 免疫組織染色でIgG, κ型の髄外性形質細胞腫と診断した.術後約10ヵ月の現在, 再発, 多発性骨髄腫への転化などは認めていない.形質細胞性腫瘍の中で, 髄外性形質細胞腫は大部分が上咽頭, 喉頭発生で, 縦隔発生は極めて稀である.なかでも本例のように胸腺発生と思われる報告は, 過去には見あたらなかった.
  • 松本 英彦, 小川 洋樹, 豊山 博信, 柳 正和, 西島 浩雄, 下高原 哲朗, 愛甲 孝
    2001 年 15 巻 1 号 p. 47-53
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は48歳, 男性.胸部異常陰影を主訴に当科へ紹介となる.右S2の胸壁浸潤肺腺癌+左副腎転移と診断され, 右上葉切除+胸壁合併切除+ND2aリンパ節郭清を施行した.術後病理病期はp-T3N0M1Stage IVで低分化腺癌であった.術前に7.6ng/mlと高値を呈した血清CEAは正常化したが術後2年目の腹部CTで左副腎の腫瘍がやや増大し, 内部に壊死性の変化を疑われ, さらにCEAの再上昇を来したため, 肺癌術後4年10ヵ月目に腹腔鏡下の左副腎摘出術を行い肺の原発巣からの転移と診断された.術後CEAは再び正常化した.同時性の副腎転移を伴った原発性肺癌の治療については確立された方針はみられないが, 本症例のように治癒に導ける可能性もあることより, 適応を慎重に検討すれば切除の意義があると思われた.
  • 吹野 俊介, 深田 民人, 岡田 耕一郎, 玉井 伸幸, 目次 裕之
    2001 年 15 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    初回手術より12年後に再発したsolitary fibrous tumor of the pleura (以下SFTとする) の1手術例を経験したので報告する.症例は, 74歳男性, 主訴は胸部X線写真異常陰影, 現病歴は1988年に右肺S2の良性有茎性, 腫瘍径4.6cmのSFTの切除術を受けた.以後経過良好であったが, 2000年にSFTの再発を認め, 胸腔鏡下に腫瘍を切除した.腫瘍は, 2個存在し, ともに有茎性で, 右横隔膜の胸膜より最大径4.8cm, 右S10の胸膜より最大径0.8cmのものであった.病理組織学的所見は, ともに良性のSFTで前回の切除標本と同様であり, SFTの再発と確定診断した.SFTは, 組織学的に良性であっても, 長期間の胸部X線写真による経過観察と, 再発巣には, 早期に完全切除をおこなうことが重要である.またdynamic CT, dynamic MRIは, SFTの診断治療に有効な検査であると考えられた.
  • 本邦報告例の検討
    服部 良信, 入山 正, 渡邉 浩次, 根木 浩路, 加納 秀記, 杉村 裕志, 杉村 修一郎
    2001 年 15 巻 1 号 p. 60-66
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    まれなACTH産生胸腺カルチノイドの2手術例を経験した.症例1は29歳の男性.1990年9月副甲状腺機能亢進症で副甲状腺摘出術を施行.1991年5月前縦隔腫瘍を指摘され, 血中ACTHが高値で, 8月拡大胸腺摘出を施行した.縦隔リンパ節転移を認めた正岡分類IVbの胸腺カルチノイドで, 多発性内分泌腺腫瘍症を合併していた.術後放射線照射と化学療法を施行した.再発のため1997年3月と1999年4月に化学療法を施行し, 現在経過観察中である.症例2は28歳の男性.1999年7月浮腫, 呼吸困難, 胸痛が出現した.左縦隔腫瘍と胸水を認め, 血液検査でACTHの高値を認めた.8月腫瘍摘出術を施行し, 病理は胸腺カルチノイドであった.術後放射線照射と化学療法を施行し, 現在経過観察中である.本邦で報告されたACTH産生胸腺カルチノイドは20例で, われわれの2例を加えて検討した.
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