日本呼吸器外科学会雑誌
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16 巻, 7 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 中桐 伴行, 明石 章則, 重村 周文
    2002 年 16 巻 7 号 p. 771-775
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    目的: 径2cm以下のブラを持った自然気胸に対して, より低侵襲な針状胸腔鏡下レーザー焼灼術を行ったので, その有用性について検討した.
    方法: 1997年1月からの4年間に針状胸腔鏡下レーザー焼灼術のみを施行した58例 (needleVATS群) の結果について検討した.また同時期に肺部分切除+レーザー焼灼術を施行した32例 (VATS群) の結果を参考値として提示した.
    結論: 径2cm以下のブラによる自然気胸に対し, 針状胸腔鏡下レーザー焼灼術は従来法と同等に有用な術式であると考えた.
  • 佐藤 澄, 李 美於, 大野 暢宏, 横見瀬 裕保
    2002 年 16 巻 7 号 p. 776-778
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    肺葉切除後に起こる重篤な合併症として気管支断端瘻があるが, 諸家の報告では約2%程度である.肺葉切除における気管支処理法としてSweet法, Overholt法, 単結紮法等があり, 最近では自動縫合器も使用されてきている.我々は主に単結紮法を用い気管支処理を行ってきた.今回, 1991年9月より1997年2月までに単結紮法を施行した174例を対象として検討を行ったところ, 術前後に化学療法, 放射線療法を施行した症例を含め, 全例で術後気管支断端瘻等の合併症を認めなかった.単結紮法は (1) 簡便・低コスト,(2) 喀痰が胸腔内に排出されない,(3) 気管支断端内腔に縫合糸が露出しないため感染が発生しにくい, 等の利点がある.肺葉切除における気管支の単結紮法は全例で術後気管支断端瘻等の重篤な合併症を認めず, 有用な手技であると思われた.
  • 足立 孝, 櫻庭 幹, 村杉 雅秀, 宮野 裕, 桑田 裕美, 池田 豊秀, 大貫 恭正
    2002 年 16 巻 7 号 p. 779-783
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    縦隔発生のparagangliomaは比較的稀な疾患である.われわれは縦隔原発で, 術前に集学的治療を行ったparagangliomaの1例を経験したので報告する.症例は56歳, 女性.胸部異和感とともに咳漱出現し, 他医で検査を受けたところ縦隔腫瘍を指摘され当科紹介となる.胸部CTで中縦隔から前縦隔にかけて7×6cmの血管に富む腫瘍を認め, 腫瘍生検でparagangliomaの診断を得た.腫瘍の解剖学的位置関係から放射線治療を行い腫瘍縮小効果を得たところで, 腫瘍血管に対しプラチナコイルで血管塞栓術を追加した.手術では腫瘍の血管壁よりの剥離は困難で臨床的にはmalignantpotentialであると判断し, 結果として完全摘出に至らなかった.組織学所見で明らかな悪性所見はなく最終的にもparagangliomaと診断された.paragangliomaに対しては腫瘍摘出術以外に確立された治療法はなく, 本症例では遺残腫瘍の今後の動向を観察する必要がある.
  • 西村 謙吾, 徳島 武, 福田 幹久, 中井 勲
    2002 年 16 巻 7 号 p. 784-788
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は42歳, 女性で, 1991年より10年間毎年職場検診を受けていた.胸部X線写真にて右肺門部に腫瘤陰影を認めた.腫瘤は1991年から1993年まではほとんど変化がなく, 1993年以降の8年間は毎年徐々に増大していた.胸部CTでは, 腫瘤は中下葉気管支に接する2.5×3.5×3.0cm大の境界明瞭で均一な腫瘤であり, 造影効果があった.MRIでは, 腫瘤はT1強調像で低信号, T2強調像で高信号を示し, 造影効果があった.診断治療を兼ねて, 胸腔鏡下に腫瘤摘出術を施行した.病理組織診断は, hyaline-vascular型のCastleman'sdiseaseであった.自験例のように長期にわたって経過観察された報告はなく, 腫瘤の増大成長の過程を知る上で貴重と考え報告する.
  • 張 性沫, 奥田 昌也, 岡本 卓, 劉 大革, 亀山 耕太郎, 林 栄一, 山本 恭通, 黄 政龍, 横見瀬 裕保
    2002 年 16 巻 7 号 p. 789-792
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は46歳男性.アスベスト暴露歴あり.人間ドックにて左肺に胸膜肥厚を伴う異常結節影を指摘された.その後経過観察していたが, 4ヵ月後のCT検査で増大傾向を認めたため, TBLB, CTガイド下経皮的針生検を施行したが悪性所見は得られなかった.画像上は円形無気肺を最も疑ったが, 悪性腫瘍の存在を完全には否定しきれず審査開胸術を施行した.術中針生検による病理組織所見では炎症所見のみで悪性所見は得られず, 円形無気肺と診断した.本症例のごとく増大傾向を示し悪性疾患が否定できない円形無気肺では, 審査開胸術が必要と考えられた.
  • 高橋 伸政, 佐藤 徹, 安孫子 正美, 金内 直樹
    2002 年 16 巻 7 号 p. 793-796
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    気管支鏡下にフィブリン糊による食道気管支瘻閉鎖術後, 再発し胸腔鏡下瘻管切除術を施行した1例を経験した.症例は54歳女性.主訴は呼吸困難, 血痰及び炭酸飲料摂取時咳嗽.40歳時より血疾, 喀血を繰り返し, 食道気管支瘻を指摘されていた.1989年, 気管支鏡下に瘻管塞栓術を施行後, 症状は軽快していたが, 2000年12月, 再び血痰が出現したため胸腔鏡下瘻管切除術を施行した.手術所見は瘻管周囲の癒着は認めず, 切除標本の病理組織学的所見は, 瘻管は重層扁平上皮と筋層を有し, 炎症細胞浸潤及び繊維化は認めず, BraimbridgeI型先天性食道気管支瘻と診断した.BraimbridgeI型やII型のように, 瘻管切除術のみで完治できる症例については胸腔鏡下瘻管切除術が第一選択に成り得ると考えられた.
  • 佐藤 伸之, 坪地 宏嘉, 今井 督
    2002 年 16 巻 7 号 p. 797-800
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は46歳, 男性.1997年10月, 右上葉の浸潤影を指摘され, M. szulgaiによる感染症と診断がついた.INH, RFP, EBによる治療を6ヵ月間施行した.1999年12月, 再排菌がみられRFP, TH, CAMにて6ヵ月間治療した.2001年3月, 病巣の増悪と排菌が認められ, RFP, TH, CAM, LVFXにて治療再開するとともに, 呼吸器外科紹介となり, 手術適応として右肺上葉切除術を施行した.術後RFP, TH, LVFXによる内服治療を6ヵ月継続し, 現在まで排菌なく経過観察中である.M. szulgaiは通常の化学療法にて治癒の得られることが多いが, 治療が不十分な場合には, 排菌のコントロールに難渋する場合がある.非定型抗酸菌症に対しては十分な内服治療が必要であり, 排菌を繰り返す場合には, 時機を逸することなく, 手術を考慮すべきである.
  • 竹内 幸康, 正岡 昭
    2002 年 16 巻 7 号 p. 801-803
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2011/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は31歳, 男性.検診で左第6肋骨の腫大を指摘され当院を受診.CTで肋骨腫瘍と診断し手術を施行した.胸腔鏡下に, 第6肋骨が先端部から背方にかけて腫大し胸膜浸潤がないことを確認後, 腋窩切開を行った.胸腔鏡補助下に第6肋骨を全長にわたり剥離し全摘出した.病理組織検査の結果は線維性骨異形成症であった.胸腔鏡は病変部位, 浸潤範囲の確認に有用と考えられた.
  • 百木 義光, 杉山 章, 浪花 宏幸
    2002 年 16 巻 7 号 p. 804-807
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は64歳, 男性.腹部打撲を主訴に来院.心窩部に自発痛と軽度の圧痛を認めた.CT検査にて小腸壁の肥厚と脂肪織CT値の上昇, 軽度の液体貯留があり, この部位での炎症と考えた.保存的加療にて軽快していた.入院時の胸部レントゲン検査にて左肺下葉に径3cm大の腫瘤を認め, 気管支鏡検査による細胞診にて肺癌と診断された.腹痛と発熱が再燃した為, 腹腔内膿瘍の増悪を考え開腹術施行.壁外性に進展する小腸粘膜下腫瘍と, その周囲の膿瘍形成を認めた.小腸部分切除術および腹腔ドレナージを行った.病理検査では間葉系腫瘍の疑いとされていた.小腸切除術18日後, 左肺下葉切除術施行.術後病理検査にて大細胞癌と診断された.リンパ節転移は認めなかった.肺腫瘍組織と小腸腫瘍組織の類似性から小腸腫瘍は肺癌の転移と診断された.腹部外傷を契機に発症した肺癌小腸転移は珍しく, 報告する.
  • 後藤 正司, 古川 幸穂, 元石 充, 藤本 利夫, 岡崎 強, 松倉 規, 塙 健, 山下 直己, 松井 輝夫, 桑原 正喜, 松原 義人
    2002 年 16 巻 7 号 p. 808-812
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    気胸で発見された若年胸膜悪性中皮腫の一例を経験した.症例は29歳男性.2000年10月の検診にて左気胸を指摘されたが経過観察されていた.2001年10月, 検診にて左気胸を再度指摘され当科を受診した.胸部X線写真上, 軽度の左肺虚脱を認め, 胸部CT写真で左肺葉間に小結節陰影を認めたが, 明らかなbullaは認めなかった.11月9日, 左気胸に対して胸腔鏡手術を施行した.下葉葉間面, 上葉肺門頭側に腫瘤を認め, 壁側, 臓側, 横隔膜胸膜上に径1~2mmの小結節がびまん性に認められた.術中迅速病理にて中皮腫が疑われ, 葉間および肺門頭側の腫瘤のみを切除し, 一旦手術を終了した.術後病理標本で, びまん性悪性胸膜中皮腫の診断を得た.縦隔鏡検査及び右胸腔鏡検査によりstagingを行い, 臨床病期1b期 (IMMGによる) と診断した.悪性胸膜中皮腫に対し, 12月5日, 左胸膜肺全摘術を施行した.術後補助化学療法, 放射線療法を施行した.
  • 石川 浩之, 長谷川 誠紀, 北市 正則, 乾 健二, 和田 洋巳
    2002 年 16 巻 7 号 p. 813-815
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    13歳, 男児.前胸部腫瘤, 運動時前胸部痛を主訴に受診した.胸部X線写真では異常所見を認めなかったが, 胸部CTにて胸骨左縁に接する前胸壁に境界明瞭, 辺縁整の円形陰影を認めた.胸部MRIでは, 第2, 3肋軟骨間にT1強調像でhighintensityを示す, 腫瘤を認めた.手術は, 胸骨正中切開で行ない, 腫瘍を肋軟骨, 肋骨や胸膜など周囲組織を含め一塊に切除した.術後病理組織診にて肋間筋筋肉内脂肪腫と診断した.正常組織との境界が不明瞭な腫瘍の場合は, 胸壁との合併切除が必要と考えられた.術後より一年間経過し, 再発は認められていない.
  • 古賀 清和, 柚木 純二, 藤田 浩弥, 桜木 徹, 坂尾 幸則, 夏秋 正文, 伊藤 翼
    2002 年 16 巻 7 号 p. 816-821
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は58歳男性.主訴は右胸部痛, 嚥下障害.胸部X線写真にて異常陰影を指摘され, 右上葉肺癌 (扁平上皮癌) C-T2NOMOStageIbと診断された.また上部消化管内視鏡検査にて胸部中部食道癌1型 (扁平上皮癌) C-T3NIMOStageIIIと診断された.肺癌及び食道癌ともに切除可能と判断し同時手術を施行した.
    アプローチは右後側方切開.肺癌に対し右上葉切除, ND1+#3リンパ節サンプリングを施行した.引き続き食道癌に対し食道亜全摘+D2リンパ節郭清術, 胸骨後経路頚部食道胃管吻合術を施行した.術後の病理診断では肺癌は低分化腺癌 (#3は転移なし) p-T2NxMO, 食道癌は中分化扁平上皮癌p-T1rlbN1 (#106recL) MOであった.術後, 両側鎖骨上~縦隔に対し計50Gyの放射線治療を追加した.術後20ヵ月現在再発の兆候なく健在である.
  • 四方 裕夫, 上田 善道, 土島 秀次, 佐久間 勉, 野中 利通, 渡邊 洋宇, 松原 純一
    2002 年 16 巻 7 号 p. 822-828
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2011/02/23
    ジャーナル フリー
    62才男性が, 14年前に他施設でpseudolymphomaの診断で右肺上中葉の切除術を受けた.以後近医で定期的にfollowupされていた.術後10年頃より左下肺野に異常陰影を指摘され, 胸部CTと経気管支肺生検の繰り返すも, 確定診断に至らなかった.陰影の増大傾向を認め, 当院で胸腔鏡下生検を行った.生検組織と14年前の固定標本からDNAを抽出しPCR法で免疫グロブリンのH鎖とT細胞受容体の遺伝子の比較検討を行った.共に免疫グロブリンのH鎖の再構成バンドを認め, T細胞受容体の再構成を認めなかった.この遺伝子解析によって肺原発のB細胞リンパ腫 (BALToma) の対側肺への14年後の対側多発再発と診断し, 手術は行わず新しいプリン誘導体fludarabineを用いた化学療法を2クール施行し有効な結果を得た.しかしBALTomaは経過の長い悪性リンパ腫であり今後の厳重な経過観察が必要と考える.
  • 花岡 淳, 井上 修平, 大内 政嗣, 藤野 昇三, 手塚 則明, 澤井 聡
    2002 年 16 巻 7 号 p. 829-836
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    巨大肺嚢胞を含む両側気腫性肺嚢胞症に対し, 一期的に胸腔鏡下手術を施行し良好な結果を得た2例を報告する.症例1は53歳男性, 主訴は労作時呼吸困難.症例2は47歳男性, 右胸痛と呼吸困難を主訴に受診, 胸部X線写真で右自然気胸を認めた.両者とも胸部CTで巨大肺嚢胞を含む両側性多発性気腫性肺嚢胞が認められ, 一期的に両側に対して胸腔鏡下手術を行った.術後気漏も認めず良好に経過'両側胸腔ドレーンは症例1では術後2日目, 症例2では術後3日目までに抜去可能であり, それぞれ術後24病日と9病日に退院した.
    近年, 胸腔鏡手術器具あるいは補助材料の進歩・改良により, 胸腔鏡下手術の適応疾患は拡大されてきた.両側気腫性肺嚢胞症に対し胸腔鏡下手術は, 両側一期的手術が可能であり, また低侵襲で入院期間を短縮させることが出来うる術式と考えられた.
  • 中川 正嗣, 園部 誠, 一瀬 増太郎, 長澤 みゆき, 神頭 徹
    2002 年 16 巻 7 号 p. 837-840
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    胃潰瘍から胃気管支瘻を発症した症例を経験した.症例は60歳男性.肺炎, 貧血の診断にて近医入院加療中に上部消化管造影にて胃気管支瘻と診断され当院に紹介となった.保存的治療では改善が見られず, 左下葉切除, 噴門側胃切除, 気管支断端大網被覆, 横隔膜穿孔部縫合閉鎖を施行した.
    胃気管支瘻は報告例が少なく, またその報告例では腹部手術などで胸郭内へ移行した胃からの交通例が多い.本症例は, 胃潰瘍により経横隔膜的に気管支へ瘻孔を形成したまれなケースと考えられた.
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