症例は71歳, 男性.1997年11月に肺癌に対し, 他院にて左肺上葉切除術施行.病理結果は, 大細胞癌で気管支断端に病変が残存していたため, 化学療法を追加し外来通院とされていた.2002年6月より左前胸部の蜂窩織炎の診断にて, 抗生剤投与にて加療されるも改善せず, カリフラワー状の皮膚病変を来し, 細胞診にてclass V (大細胞癌), 肺癌の胸壁転移と診断され, 治療目的に同年8月当科に紹介となった.胸部CT検査にて左前胸壁に60×60×42mmの腫瘤性病変を認め深部は心膜と接し, 肋骨は部分的に融解していた.皮膚潰瘍の治療, 疼痛の軽減を含めたQOLの改善目的に, 外科的切除を予定した.しかしながら, 心膜への浸潤が懸念されることから手術に先行し, 化学療法, 放射線療法を施行し腫瘍の縮小化を図り, 9月27日胸壁全層切除, 胸壁再建術 (Marlex mesh, 有茎腹直筋皮弁) を施行した.手術場にて抜管し呼吸状態も安定していたが, 術後7日目より発熱認め, 胸腔ドレーン排液培養にてMRSA検出され, 胸部CTにてmesh周囲に膿胸併発と診断した.抗生剤投与, 胸腔ドレーンからの洗浄施行するも改善せず, 術後11日目mesh除去, 胸腔内洗浄を施行した.その後順調に経過し, 11月15日退院となった.切除困難と考えられた胸壁転移性腫瘍に対し集学的治療にて完全切除することができた.
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