日本呼吸器外科学会雑誌
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17 巻, 6 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 原田 洋明, 西尾 渉, 岡田 守人, 阪本 俊彦, 内野 和哉, 坪島 顕司, 坪田 紀明
    2003 年 17 巻 6 号 p. 626-630
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    原発性肺癌手術におけるcard sized thoracotomy併用下Vldeo Assisted Thoracic Surgery (VATS) の意義を検討した.本VATS法は, 指は入るが手の入らないcard sizeのaccess thoracotomyを通して, 従来の器具や自家製改良機器を用いて主要部分を直視下で行う方法である.98年から, 2001年までの4年間に, 標準葉切除219例中の131例 (63%), 拡大区域切除術の127例中の94例 (74%) に本VATS法が遂行された.本VATS法は本法導入前の臨床IA期肺癌に対する, 後側方切開法に比較して, 手術時間が短縮され, 出血量も少ない事が判明した.また術後2ヵ月目の肺機能においてもその損失が有意に少なく本法の低侵襲性が確認された.したがってcard sized thoracotomy併用下VATSは手術のqualltyを損なう事なく標準葉切除, ならびに拡大区域切除において適応可能であり, かつminlmum invasive surgeryの利点を十分に有すものと考えられた.
  • 田村 昌也, 村田 智美, 飯野 賢治, 太田 安彦
    2003 年 17 巻 6 号 p. 631-634
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    当科で経験した特発性血気胸治療例14例について検討した.平均年齢は31.2歳 (21~63歳) で, 女性は1例のみであった.気胸初発例, III度の高度虚脱例が多くを占めた.出血源は10例が肺尖部の癒着断裂による出血であり, 2例は肺嚢胞表面の血管からの出血であった.発症からそれぞれ5日, 6日が経過していた症例にVATSを試みたが, 血腫の排出と視野の確保に難渋したため, 開胸術に移行した.また発症から15日経過していた症例に対してVATSを完遂したが, 術後, 気漏遷延により, 再手術となった.気漏遷延例を除く平均術後ドレーン留置期間, 平均術後入院期間, 術後鎮痛剤の使用日数の上で, VATSは開胸術に優っていた.出血量, 空気漏の持続, 肺再膨張の程度などを総合的に判断し, 迅速に手術適応を決定する必要がある.また発症早期であれば, 胸腔鏡下手術は第一選択として施行されるべきであると考える.
  • 高岡 和彦, 木村 文平, 時光 昭二, 相河 明規
    2003 年 17 巻 6 号 p. 635-639
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    原発性肺癌645例中, 80歳以上の高齢者27例 (4.2%) を対象として背景因子, 合併症, 術後生存率などを検討した.病理病期は1期が19例, 術式は1葉切除が21例, リンパ節郭清はND1が14例であった.術前の合併症は24例に認め, 術後合併症は12例に認めた.また, 手術死亡2例, 在院死亡1例を認めた.累積5年生存率は47.8%で70歳台の累積5年生存率40.8%と比べて有意差は認めなかった.病理病期別累積5年生存率では, IA期66.8%であった.80歳以上の高齢者に対して縦隔郭清を省略し縮小手術とする割合が多かった.今後, 80歳以上の高齢者肺癌1期症例に対しては術前の全身状態が良好であれば縮小手術の適応が拡大されると思われる.
  • 術後問質性肺炎予防に向けて
    矢野 篤次郎, 古賀 聡
    2003 年 17 巻 6 号 p. 640-643
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    目的: 肺切除後の間質性肺炎合併の一因として手術侵襲に伴う炎症反応が考えられ, その予防としてステロイド術直前投与の功罪について検討した.
    方法: 対象は完全切除された原発性肺癌41症例.間質性肺炎合併危険因子と想定される (1) 男性,(2) 重喫煙Brinkmann Index 600以上,(3) CTにて間質性陰影の存在を2項目以上有している症例 (24例) に対し, 術直前にメチルプレドニゾロン125mgを静脈内投与した.
    結果: ステロイドの功として抗炎症効果をCRP (C-reactive protein) にて検討した所, ステロイド投与群 (以下, ス群) では術後1日目3.4mg/dl, 3日目8.5mg/dl, 7日目1 .9mg/dl, 非投与群 (非ス群) ではそれぞれ4.1mg/dl, 13.3mg/dl, 2.0mg/dlと術後3日目でス群で有意に低値を示した.一方, 罪として創傷治癒を含めた負の作用を総合的に術後平均在院日数で検討した所, ス群では14.0日, 非ス群13.1日と差を認めなかった.さらに, 無再発生存期間に関しても両群間に差はなかった.
    結論: 術直前ステロイド投与は術後早期にのみ抗炎症効果を誘導することが示唆され, 負の作用は明かではなかった.
  • 肺切除後に酸素投与は必要か?
    矢野 篤次郎, 古賀 聡
    2003 年 17 巻 6 号 p. 644-647
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    目的: 肺切除後に酸素投与を行わない周術期管理の妥当性について検討した.
    方法: 対象は原発性肺癌で肺葉切除術を施行した35症例.術前に, 禁煙および気管支拡張剤吸入を用いた喀痰排出訓練.手術は, 全例後側方切開, 第5または第6肋骨床開胸下に行い, 閉胸時に肋間神経を切断.術翌日早朝より自力坐位にてネブライザー吸入喀痰排出.術後2日目に尿道カテーテルおよび硬膜外カテーテルを抜去し, 歩行開始.酸素投与は術後1日目朝より中止し, 経皮的酸素飽和度測定を行い, 投与の有無を決定.
    結果: 35例の術後1日目から7日目の経皮酸素飽和度の平均値は全て96%以上で, 術後1日目以降に酸素投与を必要としたのは1例のみであった.全例で術後2日目には鎮痛用の硬膜外カテーテルを抜去し, 歩行開始出来た.疼痛は経口非ス消炎鎮痛剤のみで対処可能で, 退院時に鎮痛薬を要したのは6例のみであった.
    結論: 酸素投与を行わない周術期管理は早期離床を促進し, 術後在院日数短縮につながる可能性がある.
  • 浜口 伸正, 湯浅 康弘, 山井 礼道, 谷田 信行, 藤島 則明
    2003 年 17 巻 6 号 p. 648-652
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は70歳女性.直腸癌術後の外来経過観察中, 胸部単純X線写真にて異常陰影を指摘された.胸部CTにて右肺S3に1.0cm大の円形腫瘤を認めた.気管支鏡下のキュレットによる擦過細胞診にて確定診断がつかず, 直腸癌による肺転移を疑い, 胸腔鏡補助下に肺部分切除術を施行した.腫瘍は白色, 弾性軟で被膜に覆われていた.HE染色では大小の血管腔の周囲に円形の核を有する小型円形の腫瘍細胞が密に配列していた.免疫組織化学的染色ではα SMA陽性, Vimentin陽性, CAM5.2陰性, Desmin陰性, Chromogranin陰性, Synaptophysin陰性であり肺グロームス腫瘍と診断した.肺グロームス腫瘍の報告例は本症例が13例目, 本邦では5例目であり文献的考察を加え報告する.
  • 伊藤 靖, 高橋 毅, 鈴木 一也, 数井 暉久
    2003 年 17 巻 6 号 p. 653-656
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は42歳, 男性.悪性胸膜中皮腫に対して右胸膜肺全摘術施行後4ヵ月経って気管支断端瘻と膿胸を発症した.開窓して, 82日後に根治術を施行した.胸腔内を掻爬した後, 右下腹壁動静脈を茎とする遊離腹直筋弁と右胃十二指腸動静脈を茎とする有茎大網弁を作成した.大網を胸腔内に誘導して瘻孔を閉鎖した上で, 大網の左胃十二指腸動静脈と腹直筋弁の右下腹壁動静脈を顕微鏡下に吻合し, 血流の良好な部分をドップラーで確認して, 気管支断端を被覆した大網の上に重ねて充填した.術後経過は良好で, 根治術後4年以上経過して, 膿胸の再発は認めていない.遊離腹直筋弁と大網の併用は, 断端部の補強と, 死腔を減少させる上で有効な方法である.
  • 梶本 政樹, 天白 宏典, 馬瀬 泰美, 佐藤 友昭
    2003 年 17 巻 6 号 p. 657-661
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は71歳, 男性.1997年11月に肺癌に対し, 他院にて左肺上葉切除術施行.病理結果は, 大細胞癌で気管支断端に病変が残存していたため, 化学療法を追加し外来通院とされていた.2002年6月より左前胸部の蜂窩織炎の診断にて, 抗生剤投与にて加療されるも改善せず, カリフラワー状の皮膚病変を来し, 細胞診にてclass V (大細胞癌), 肺癌の胸壁転移と診断され, 治療目的に同年8月当科に紹介となった.胸部CT検査にて左前胸壁に60×60×42mmの腫瘤性病変を認め深部は心膜と接し, 肋骨は部分的に融解していた.皮膚潰瘍の治療, 疼痛の軽減を含めたQOLの改善目的に, 外科的切除を予定した.しかしながら, 心膜への浸潤が懸念されることから手術に先行し, 化学療法, 放射線療法を施行し腫瘍の縮小化を図り, 9月27日胸壁全層切除, 胸壁再建術 (Marlex mesh, 有茎腹直筋皮弁) を施行した.手術場にて抜管し呼吸状態も安定していたが, 術後7日目より発熱認め, 胸腔ドレーン排液培養にてMRSA検出され, 胸部CTにてmesh周囲に膿胸併発と診断した.抗生剤投与, 胸腔ドレーンからの洗浄施行するも改善せず, 術後11日目mesh除去, 胸腔内洗浄を施行した.その後順調に経過し, 11月15日退院となった.切除困難と考えられた胸壁転移性腫瘍に対し集学的治療にて完全切除することができた.
  • 松田 英祐, 梅森 君樹, 須藤 学拓, 牧原 重喜
    2003 年 17 巻 6 号 p. 662-665
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    胸壁原発神経原性腫瘍の2例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.神経原性腫瘍は胸部では後縦隔に多く見られるが, 胸壁に発生するものは比較的稀であり, 現在までに本邦において58例が報告されているにすぎない.神経原性腫瘍は, 画像上良悪性の鑑別が一般的に困難であり, また悪性の場合, 化学療法や放射線療法の有効率は低いとされている.従って神経原性腫瘍が疑われる場合は, 積極的な切除が必要であると思われた.
  • 福島 光浩, 小泉 潔, 中島 由貴, 宮本 哲也, 榎本 豊, 山岸 茂樹, 岡田 大輔, 川島 徹生, 平井 恭二, 原口 秀司, 田中 ...
    2003 年 17 巻 6 号 p. 666-671
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    12歳, 女性.難治性胸水の精査で右胸腔内腫瘍を疑われ, 開胸したところ縦隔発生成熟奇形腫の右胸腔内穿孔と診断された症例を経験した.奇形腫は縦隔腫瘍の中で発生頻度の高い腫瘍の一つであり, 稀ではあるが周囲臓器へ癒着穿孔を来たし重篤な合併症を引き起こすことで知られている.胸水貯留を呈する場合に, 胸部単純X線写真のみで貯留胸水の中に腫瘍性病変を見出すのは容易ではなく診断が遅れる可能性がある.難治性胸水を認めた場合は常に腫瘍性病変を念頭に入れて追加検査を進める必要がある.また縦隔奇形腫は腫瘍が良性であっても, 他の臓器への破裂, 穿孔が致命的な結果をもたらすことがあり, 診断後なるべく早期に摘除することが望ましい.
  • 西 英行, 間野 正之
    2003 年 17 巻 6 号 p. 672-676
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は43歳, 男性.事務管理職に従事しており, 明らかな石綿暴露歴はない.2002年7月に発熱, 胸痛にて近医受診し, 右肺炎および右胸水の貯留を指摘され, 当院に紹介入院となった.胸部CT写真において右中葉に肺炎および胸水の貯留が認められた.胸腔穿刺で得られた胸水は淡血性で, 細胞診はclass II, 一般細菌・抗酸菌の培養は陰性であった.肺炎, 膿胸の診断にて抗生剤を投与開始したが, 効果を認められず, 外科的に胸腔ドレナージ術を施行した.術中の胸膜生検にてDesmoplastic malignant mesotheliomaの診断となった.staging施行し, IMIG分類T1aN0M0Stage Iaの診断にて, 右胸膜・肺全摘術を施行した.術後16ヵ月の現在, 無再発生存中である.
  • 神山 育男, 堀之内 宏久, 木村 吉成, 小山 孝彦, 後藤 太一郎, 山本 学, 井上 芳正, 大塚 崇, 堀口 速史, 山内 徳子, ...
    2003 年 17 巻 6 号 p. 677-682
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は17歳女性.主訴は労作時呼吸困難と左胸背部痛.胸部X線写真では左側の完全無気肺を呈し, 気管支鏡下生検でmucoepidermoid carcinomaと診断された.開胸手術に先だって全身麻酔下に気管支鏡による観察を行い, 高周波スネアを用い腫瘍の一部を切除した.腫瘍末梢側を観察したところ, 腫瘍は左主気管支の縦隔側から発生し, 腫瘍基部は左主幹に限局していたため, 手術は左主気管支管状切除を行った.術中迅速病理にて気管支断端に腫瘍組織は認められず, 左主気管支を端々吻合して気管支の再建を行った.切除標本では左主気管支より発生し内腔に突出する腫瘍で, 組織学的にmucoepidermoid carcinoma (Conlan分類grade II) と診断された.断端および壁外への浸潤は認めなかった.術後は良好に経過し, 左肺は含気性を取り戻し, 呼吸困難は消失した.本症例では術前に気管支鏡を行い, 切除範囲を確認することにより, 肺葉を切除することなく治癒切除することができた.
  • 永島 明, 田嶋 裕子, 吉松 隆, 大崎 敏弘
    2003 年 17 巻 6 号 p. 683-685
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    肺癌の小腸転移の予後は非常に不良で, 長期生存例はきわめて稀である.我々は肺癌小腸転移に対して外科切除後, 長期生存が得られた症例を経験したので報告する.症例は72才男性, 小腸の腸重積によるイレウスと診断された.7ヵ月前に肺癌にて手術を受けており, 肺癌の小腸転移を疑った.開腹し, 腸重積を解除後, 粘膜面に存在する腫瘍を含め回腸部分切除術を施行, 病理学的にも肺癌の小腸転移と診断された.術後経過は順調で6年4ヵ月現在, 非担癌生存中である.
  • 大澤 久慶, 椎久 哉良, 馬渡 徹, 渡辺 敦, 安倍 十三夫
    2003 年 17 巻 6 号 p. 686-690
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は69歳, 男性で, 1964年肺結核に対する虚脱療法として骨膜外パラフィン充填術をうけていた.その後特に著変なく経過していたが, 2002年5月農作業中, 突然はげしい咳噺と共にパラフィン片を喀出した.パラフィン充填腔が肺穿破したことによって生じた術後晩期合併症と診断し手術を行った.手術所見で充填腔の一部が欠損しており肺瘻を認め, 同部を介してパラフィンが喀出されたと考えられた.パラフィンの除去と肺瘻部の閉鎖, 大・小胸筋弁の充填を行い, 術後は感染などの合併症を認めず順調に経過した.
    パラフィン充填術後晩期合併症として, 皮下脱出や充填腔拡大の報告は散見されるが, 本症例のような空洞穿孔によるパラフィンの喀出は非常に希な合併症であり報告する.
  • 白橋 幸洋, 井内 敬二, 松村 晃秀, 田中 壽一, 田村 光信, 後藤 正志
    2003 年 17 巻 6 号 p. 691-696
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は66歳, 女性.右中葉原発の肺癌 (低分化型乳頭腺癌) に対し右上中葉切除術 (ND2a, pTIN0M0) が施行された.以後, 約3年の経過で残存下葉の一部 (S6) が徐々に破壊され, 非結核性抗酸菌症 (NTM), 更にアスペルギルスの感染を来し空洞化した.内科的治療の効果がなく, 全身状態の悪化を来たしはじめたため, 空洞の浄化を図るべく空洞切開を施行した.約6ヵ月間で空洞は浄化し, 栄養状態, 全身状態の改善を得られたため, 大網充填術を施行した.大網は腔内を充填するのに十分な量があり, 多数の瘻孔の閉鎖に有効であった.空洞切開創にあたる胸壁の欠損部は広背筋弁で補填した.術後経過は良好で, 呼吸機能の低下は軽度であり社会復帰した.
  • 浜口 伸正, 谷田 信行, 山井 礼道, 湯浅 康弘, 藤島 則明
    2003 年 17 巻 6 号 p. 697-701
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    急速に増大し, 右中下葉の無気肺を生じた右巨大気腫性肺嚢胞症例に対し嚢胞内吸引療法で嚢胞の増大進行を防止し無気肺を改善させた後, 安全に胸腔鏡下ブラ切除術を行った症例を経験した.症例は43歳の男性で呼吸困難, 胸痛を訴え, 当院紹介, 緊急入院となった.入院時の胸部X線・CT写真にて胸腔の約1/2を占める右巨大気腫性肺嚢胞および右中葉の無気肺を認めた.入院翌日には右巨大気腫性肺嚢胞は急速に増大し, 胸腔の2/3を占めるようになり中葉のみならず, 下葉も無気肺になった.右巨大気腫性肺嚢胞に対し減圧のため局所麻酔下に右前胸部第2肋間で小開胸し嚢胞内にバルーンカテーテルを挿入し嚢胞内吸引療法を行った.巨大肺嚢胞は胸腔の約1/3に縮小し, 呼吸困難は消失し, 中下葉の無気肺は改善した.その後胸腔鏡下に巨大ブラ切除術を施行することができた.術後経過は良好で, 術後第25病日に軽快退院した.
  • 沖津 奈都, 近藤 和也, 滝沢 宏光, 咸 行奎, 本田 純子, 吉田 光輝, 先山 正二, 沖津 宏, 門田 康正
    2003 年 17 巻 6 号 p. 702-707
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は28歳女性.2000年11月より全身倦怠感, 左眼瞼下垂が出現した.近医にて画像上, 前縦隔及び右胸腔内 (前胸部, 横隔膜上) の腫瘤, 右胸水貯留を認め, 12月8日入院となった.入院8日後, 急速に呼吸状態が悪化し, 人工呼吸管理となった.重症筋無力症の急性増悪としてAnbenonium 20mg/dayの投与と二重濾過血漿分離交換法を行うも人工呼吸器離脱には至らなかった.経皮的針生検にて胸腺腫との診断を得, 正岡臨床病期分類StageIVaと考えられた.術前化学療法を1クール行い, 2001年2月14日拡大胸腺摘出術を施行した.術後Anbenonium及びPrednisolone (PSL) の投与, 免疫吸着療法を行うも著変なく, 4月26日よりTacrolimus (FK-506) 3mg/dayを開始した.投与後より徐々に呼吸状態は改善し5月28日呼吸器より離脱した.術後前縦隔へ計50Gy照射を行った.2003年4月現在, 胸腺腫再発の兆候認めずFK-5063mg/day, Anbenonium 25mg/day, PSL 5mg隔日投与にて筋無力症状はほぼ消失している.
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