1976年9月から1998年12月までに, 当院において術前胸部CTにてc-N2 (縦隔リンパ節の短径≧10mm) と診断され, 縦隔鏡検査を施行した原発性肺癌200例中, 陰性であった症例は67例であった.うち引き続き根治術を行った59例の既往歴および採取リンパ節の病理組織所見, ならびにc-N2症例の縦隔鏡検査成績をretrospectiveに検討した.縦隔鏡検査の陽, 陰性の別と, 術前CTでの腫大縦隔リンパ節station数との関連をみると, 縦隔鏡陽性例の方が, 腫大station数が有意に多かった.59例のp-n因子の内訳はn0: 31例, n1: 18例, n2: 10例で, CTにてc-N2と診断された症例の83.1% (49/59) において, 縦隔鏡検査を施行することによりN2の診断を否定できた.n0, n1例のうち, 9例で閉塞性肺炎, 4例でそれぞれ肺結核, 肺非定型抗酸菌症, 塵肺, 間質性肺炎を合併していた.また, 採取リンパ節の病理組織学的検索にて, 珪肺性変化を6例, サルコイド反応を3例, 結核性変化を1例認めた.その他の26例 (53.1%) では, 術前にリンパ節腫大を来しうる誘因を有していなかった.n2例のうち, 縦隔鏡到達可能域 (#1, 2, 3, 4, 7浅部) での偽陰性例は2例で, c-N2, 縦隔鏡施行例のsensitivityは97.7%, specificityは100%, accuracyは98.4%, negative predictive valueは94.9%, positive predictive valueは100%であった.以上より, c-N2でただちに手術非適応としたり, 導入治療を行うことは妥当ではない.非到達域の存在という弱点も有するが, 質的診断には縦隔鏡検査が有用である.
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