日本呼吸器外科学会雑誌
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18 巻, 5 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 樋口 隆男, 山本 聡, 江夏 総太郎, 濱田 利徳, 二宮 浩範, 三好 立, 平塚 昌文, 白石 武史, 岩崎 昭憲, 白日 高歩
    2004 年 18 巻 5 号 p. 606-611
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    マイクロ波凝固療法 (Microwave Coagulation Therapy: MCT) は, 悪性肝腫瘍に対して高頻度に実施されているが, 肺腫瘍に対する臨床応用の報告は少ない.今回我々は, 犬の正常肺を対象にマイクロ波凝固を施行し, 正常肺組に及ぼす影響と安全かつ確実な凝固壊死範囲を得るためのMCTの至適条件を検討した.雑種犬を全身麻酔下に開胸, 正常肺実質に対して出力を20W, 40W, 60W, 焼灼時間を5秒, 15秒, 30秒, 60秒の各設定でマイクロ波凝固を施行した.摘出した焼灼肺に割面を入れ, 肉眼的凝固壊死部の最大直径を計測した.さらにH-E染色にて病理学的検討を行った.凝固壊死範囲は, 出力および焼灼時間の延長とともに拡大傾向を示した.10mm以上の凝固壊死範囲を得られた設定は, 40W60秒の13.5mm, 60W30秒の13mmであった.60W60秒の設定においても約23mmの最大凝固壊死範囲を得られたが, 炭化した組織が電極に付着し, 凝固壊死組織脱落による空洞形成を認めた.今回の基礎的実験において, 10mm以上の安全かつ確実な凝固壊死範囲を得るためには, 40W60秒, もしくは60W30秒の設定が至適条件と考えられた.
  • PGAフェルトとPDS糸を使用したブラ切除断端被覆の工夫
    武井 秀史, 西井 鉄平, 前原 孝光
    2004 年 18 巻 5 号 p. 612-615
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    自然気胸に対する胸腔鏡下手術後の気胸再発を防止する目的で, PGAフェルトとPDS糸を併用しブラ切除断端の被覆法を行っている.本法の有用性について検討した.2002年6月から2003年7月の間に行った初回手術37症例39側を対象とする.胸腔鏡下にブラ切除を行った後, staple line両端をPDS糸で結紮し, この糸にPGAフェルトを通し, 糸をガイドにして断端周囲の被覆を行った.年齢の中央値は24歳であった.平均手術時間は60。6分, 術後胸腔ドレナージ期間は平均1.1日, 術後在院日数は平均1.6日であった.有意な術後合併症は認めなかった.術後平均12ヵ月の観察期間で再発は認めていない.PGAフェルトとPDS糸を使用した切除断端被覆法は簡便で術後再発予防に有用な方法と言える.
  • 高橋 伸政, 佐藤 徹, 安孫子 正美, 金内 直樹
    2004 年 18 巻 5 号 p. 616-618
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    1981年から1997年までに施行された肺癌切除例496例における他臓器重複癌は72例 (14 .5%) であった.他臓器癌発生部位は, 胃36例, 大腸13例, 喉頭6例, 食道, 膀胱, 乳腺各4例, その他14例であった.重複癌は肺癌単発と比べ, 年齢 (p=0.01), 癌家族歴 (p=0.006), 扁平上皮癌の割合 (p=0.01) で, それぞれ有意差を認めた.肺癌単発と肺癌先行重複癌の5年生存率はそれぞれ49.0%, 78.6%, 10年生存率38.5%, 40.6%で有意差を認めなかった.
  • 小間 勝, 古武 彌宏, 太田 三徳
    2004 年 18 巻 5 号 p. 619-626
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は67歳女性.喘息発作が出現したため当院を受診し, 精査により奇形腫または血管腫が疑われた.胸腔鏡下手術を試みたが腫瘍は横隔神経を巻き込み右腕頭静脈から上大静脈にかけて強く癒着していたため第5肋間で開胸した.横隔神経を巻き込んでいた腫瘍の術中迅速病理診断を施行したところ良性の血管周皮腫と診断された.腫瘍を一部残したが横隔神経を温存し, 右腕頭静脈を切離, 上大静脈を部分切除し腫瘍を摘出した.病理組織学的検査では, 血管内皮類似の異型細胞が血管腔を形成し第8因子関連抗原およびVimentin陽性, Epithelial membrane antigen (EMA), DesminおよびCytokeratin陰性であることから血管内皮細胞腫 (Hemangioendothelioma) と診断された.本腫瘍の縦隔発生は稀で1963年以後報告例は自験例を含め35例であった.
  • 吉川 智, 松村 晃秀, 奥村 明之進, 田中 壽一, 田村 光信, 佐々木 秀文, 後藤 正志, 井内 敬二
    2004 年 18 巻 5 号 p. 627-630
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    前縦隔に平滑筋腫が発生することは非常にまれである.今回我々は, 前縦隔に発生した平滑筋腫の1切除例を経験したので報告する.症例は53歳の男性.検診にて胸部異常陰影を指摘された.胸部CT, MRIで前縦隔に充実性腫瘤を認め, 胸腺腫を疑い, 腫瘍および胸腺の摘出術を施行した.腫瘍は4.0×3.0×2.5cm, 20gで薄い被膜に覆われていた.発生母地は不明であったが, 病理組織学的診断は平滑筋腫であった.術後4ヵ月現在, 再発徴候を認めていない.自験例は前縦隔に発生した平滑筋腫の本邦2例目の報告である.
  • 山田 典子, 加藤 明, 坂尾 幸則, 櫻木 徹, 夏秋 正文, 伊藤 翼
    2004 年 18 巻 5 号 p. 631-636
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    我々は肺癌の大動脈浸潤の術前診断法として血管内超音波 (intravascular ultrasound, IVUS) を導入している.大動脈浸潤が疑われた原発性肺癌患者11例にIVUSを施行し, うち8例に手術が行われた.検査に伴う合併症は認めなかった.CT, MRIで浸潤所見なしと判断された1例は, IVUSでは浸潤が疑われ, 術中および組織学的所見でも下行大動脈外膜への浸潤を認めた.一方CT, MRIで浸潤が疑われた7例はIVUSでは浸潤所見陰性で, 術中所見でも全て浸潤を認めなかった.CT, MRIによる大動脈浸潤の診断は, 腫瘍との接触面積や動脈の変形などの間接的な所見で行われており, 全体では過大評価が多かったが1例に過小評価を認め, 正診率は30%弱と満足のいくものではなかった.一方IVUSは手術所見を反映した正診率の高い (8/8: 100%) 診断法と考えられた.大血管浸潤を疑う肺癌症例にIVUSは有用かつ安全な方法であると考えられる.
  • 矢島 澄鎮, 卜部 憲和, 朝井 克之
    2004 年 18 巻 5 号 p. 637-640
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は69歳男性.2000年より間質性肺炎のため当院通院中, 2003年1月20日左気胸のため入院.胸腔ドレナージのみで軽快し1月30日在宅酸素療法を導入し退院した.2月7日再発し入院, 胸腔ドレナージ行うも肺瘻改善せず, 3月4日肺瘻閉鎖術を施行した.第3病日再発したため, 再度3月18日肺旗閉鎖術を施行したが, 責任病巣は初回手術とは異なっていた・術後肺瘻は消失したが第2病日再発した.血液検査で第XIII因子は低値であったため, 第6病日より血液凝固XIII因子製剤を5日間投与したところ肺瘻は消失し, 第17病日胸腔ドレーンを抜去し第22病日退院し以後現在まで再発していない.第XIII因子が欠乏した間質性肺炎を合併している難治性気胸例において血液凝固XIII因子製剤投与が有効であったので報告した.
  • 時津 浩輔, 梅本 真三夫, 北野 司久
    2004 年 18 巻 5 号 p. 641-646
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    患者46歳, 男性.肺結核病巣の穿破による緊張性気胸から呼吸不全をきたし同時に膿胸となった.直ちに抗結核化学療法を開始し, 外科的処置として持続吸引による胸腔ドレナージ, さらに開窓術も加えたが, 高熱が続き, 全身態が悪化し, ステロイドの使用を余儀なくされた.排菌が再燃し, 病状のコントロールは困難を極めた.結核空洞穿破による多発性瘻孔の症例であり, さらに排菌中であることから有茎性大網法の適応と考えた.根治術を行うにあたり有茎性大網弁の作成は呼吸機能の減少を極力避ける目的で腹腔鏡下に行った.術後経過は良好で, 患者は酸素投与を必要としなくなり社会復帰した.有茎性大網法は活動期の結核病巣穿破性膿胸に有効であるとともに腹腔鏡下に有茎性大網弁を作成する手技は全身状態不良な患者に対して侵襲性の少ない有用な方法と考えられる.
  • 松田 英祐, 梅森 君樹, 須藤 学拓, 牧原 重喜
    2004 年 18 巻 5 号 p. 647-650
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は71歳, 男性.1987年に腎細胞癌にて左腎摘出術を受け, 1998年肺転移にて右S10と左S4の胸腔鏡下部分切除術を受けている.外来経過観察中の2000年3月より右上葉に異常影出現し, 増大傾向を認めたため, 2001年2月胸腔鏡下肺部分切除術を行い, 迅速病理診断にて原発性肺癌と診断し, 右上葉切除術 (ND2a) を行った.現在術後2年5ヵ月, 両癌とも再発なく経過良好である.
  • 井上 匡美, 武田 伸一, 澤端 章好, 小間 勝, 徳永 俊照, 前田 元
    2004 年 18 巻 5 号 p. 651-654
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    肺全摘術後の急性膿胸は難治性の重篤な合併症である.肺癌に対する左肺全摘術後に発症し嫌気性菌を起因菌とした急性無瘻性膿胸に対し, 再開胸掻爬術に引き続きクリンダマイシンを用いた胸腔持続洗浄を行い治癒せしめた症例を経験したので報告する.症例は60才, 男性.肺化膿症をともなった左肺扁平上皮癌の診断で左肺全摘術を施行.術後7日目にドレーンを抜去したが, 術後11日目に肺化膿症の起因菌であった嫌気性菌 (Bacteroides) による皮下膿瘍と膿胸を発症し再胸腔ドレナージを施行.術後36日目に再開胸し胸腔鏡併用下掻爬術を行い, その翌日からクリンダマイシンによる2週間の胸腔内持続洗浄と5日間の全身投与を行い膿胸は治癒した.肺全摘後の急性無瘻性膿胸に対する再開胸掻爬術とそれに続く胸腔持続洗浄は, 確実に感染をともなったフィブリン塊を除去でき効果的な治療手段のひとつと思われる.
  • 二俣 健, 堀口 速史, 安彦 智博, 加藤 良一
    2004 年 18 巻 5 号 p. 655-659
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は20歳, 男性.バイクで走行中, 右折中の乗用車に衝突.X-P及びCTで深頚部気腫・縦隔気腫と両側肺挫傷を認めた.気管支鏡検査で肺挫傷によると思われる気道内出血と下部気管より右上幹に至る膜様部・軟骨輪移行部を縦走する気管・気管支損傷に加え, 下部気管前壁に損傷した軟骨の突出を認めた.即日手術では肺挫傷による気道内出血及び低酸素血症のため術中管理が困難と考え呼吸状態の改善を待ち受傷5日目に手術を行った.右後側方開胸すると気管分岐部より6軟骨輪口側から右上幹入口部にかけ膜様部・軟骨輪移行部が裂け, さらに分岐部より2~3軟骨輪口側の気管軟骨が骨折し気管内腔へ突出していた.軟骨部損傷部を楔状切除し, 膜様部損傷部と共に一期的に縫合閉鎖した・鈍的外傷による気管分岐部付近の損傷で, 気管・主幹の膜様部の縦方向の損傷と気管の横方向の断裂の合併は比較的まれな損傷であるため若干の文献的考察を加え報告した.
  • 滝沢 昌也, 田畑 茂喜, 斉藤 裕
    2004 年 18 巻 5 号 p. 660-665
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    肺癌に対する肺切除術後の合併症として極めてまれな食道胸膜瘻, 膿胸の症例を経験した.症例は60歳, 女性.右下葉原発の肺癌に対し右下葉切除, 縦隔郭清術を施行した.糖尿病を有する症例であったため, 気管支胸膜瘻合併の予防目的に有茎肋間筋にて気管支断端を被覆した.第11病日に右膿胸を発症し胸腔ドレナージ, 洗浄を開始した胸水中に食物残渣を認め, 食道造影検査にて食道胸膜瘻と診断した.気管支胸膜瘻は認めなかった.保存的治療のみでは瘻孔は閉鎖せず, 発症後25日目に手術による瘻孔の縫合閉鎖と膿胸腔への有茎広背筋弁充填を行った.術後の食道造影検査では瘻孔がわずかに残存しており, 内視鏡下に瘻孔へのフィブリン糊注入を行った.注入後20日目の食道造影検査にて瘻孔の閉鎖が確認され, 経口摂取を開始した.その後膿胸も治癒し, 発症後136日目に退院した.
  • 桑原 元尚, 上田 仁, 本廣 昭, 岡本 龍朗, 坂田 敬, 犬束 浩二, 岩崎 昭憲, 白日 高歩
    2004 年 18 巻 5 号 p. 666-669
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    78歳男性呼吸困難で近医受診し, 胸部X線写真で左気胸を指摘され入院した.胸腔ドレーン挿入後気漏が持続するため入院後5日目に分離肺換気麻酔下に胸腔鏡下左肺部分切除術を行なった。
    術後ドレーンからの気漏は消失し全身状態も良好だったが, 術後1日目の胸部X線写真上, 右横隔膜下に腹腔内遊離ガス像を認めた.上部消化管内視鏡では特に異常は指摘されず, 腹部CTで右横隔膜下と肝門部にガス像を認めた.自覚症状はなかったが消化管穿孔を念頭に置き絶飲食, 抗潰瘍薬投与で管理した.腹腔内遊離ガス像は徐々に吸収され術後2週間で退院となった.経過により気腹症と診断した.
    気胸に対する胸腔鏡手術後に発症した気腹症の1例を経験した.
  • 森 毅, 吉岡 正一, 岩谷 和法, 渡邉 健司, 小林 広典, 門岡 康弘, 川筋 道雄
    2004 年 18 巻 5 号 p. 670-675
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    重症筋無力症症例に胸腺摘出術を行い, 2例の気管切開に関連した創感染を経験した.
    症例1は68歳, 女性.歩行困難で発症.1997年5月クリーゼを生じ, 気管内挿管した.免疫吸着後, 胸骨縦切開下に拡大胸腺摘出術を施行.人工呼吸より離脱できず, 術後11日目に気管切開を施行.その後, 創感染を認め, 持続吸引・間欠洗浄を施行.徐々に感染消退し, 1ヵ月後に人工呼吸から離脱できた.
    症例2は60歳, 男性.1993年胸腺腫摘出術を受けた.2002年8月クリーゼに陥り, 気管切開を受けた.免疫吸着後, 胸骨縦切開下に拡大胸腺胸腺腫摘出術を施行.当初は良好に経過したが, 3週間後に創感染を生じた.同部の掻爬等を行い, 4ヵ月後に治癒に至った.
    当科の胸腺摘出後創感染はすべて気管切開例で生じており, 気管切開の施行には十分な検討すべきであり, 避けられない場合は厳重な気管切開管理が必要と考えられた.
  • 岩田 剛和, 柴 光年, 高野 浩昌, 安田 美緒, 佐藤 行一郎, 北村 伸哉, 山地 治子, 藤澤 武彦
    2004 年 18 巻 5 号 p. 676-681
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    胸部外傷に伴う気管支損傷を経験したので報告する.症例1は20才男性.整備中の車が胸部に落下し受傷した.右気管支上幹の完全断裂を来し, 緊急入院となった.他臓器損傷は軽微.発症23時間後に手術施行した.右肺上葉は挫傷高度であったため肺葉切除となった.経過良好にて術後19病日退院した.症例2は20才男性.10tの重量物に挟まれ受傷.右気管支上幹完全断裂にて緊急入院となった.他臓器損傷は軽微.受傷9時間後に手術施行した.肺挫傷は比較的軽度で肺動脈 (truncus superior) の損傷無く, 端々吻合にて右上幹を再建した.経過良好にて術後21病日退院した.外傷性気管支損傷は気管分岐部近傍の主気管支横断裂が多数を占め, 本例の如く右上幹が引き抜かれるように損傷することは稀である.また外傷性気管気管支断裂は他臓器損傷を合併することが多く死亡率も高いとされるが, 本2症例のように他臓器の損傷が軽微な場合は救命の可能性があり, 積極的な外科療法がなされるべきと考える.なお, 術式の選択は肺損傷の程度を考慮して決定するべきである
  • 林 明男, 池田 直樹, 東条 尚, 山本 良二, 多田 弘人
    2004 年 18 巻 5 号 p. 682-686
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    気管用ダブルルーメンチューブ使用により第2-5気管軟骨膜様部に損傷を来たした症例を経験したので報告する.症例は48歳女性.身長156cm, 体重48kg.右肺癌cT4N1M0に対し化学療法4コース施行後に右肺中葉切除及び右胸腔内温熱療法を施行した.挿管チューブは左用35Frダブルルーメンチューブ (ポーテックス社製ブルーライン・気管支内チューブ) を使用.挿管は容易であったが至適位置での固定が困難で, やむを得ずチューブを強く押し込んだ形で固定した.術中は左片肺換気を行い明らかな異常は認めず, 抜管後退室した.術後1日目に前胸部皮下気腫を認め増強傾向であったため術後2日目に胸部CT及び気管支鏡を施行.気管周囲に著明な縦隔気腫像を認め, 第2気管軟骨輪部を中心に膜様部が非薄化し裂傷が疑われた.同日緊急手術でこれを修復し, 初回手術後14日目に退院した.文献的考察を加え報告する.
  • 石川 将史, 青木 稔, 今村 直人, 毛受 暁史, 大竹 洋介
    2004 年 18 巻 5 号 p. 687-693
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は71歳男性の糖尿病患者.19歳時に肺結核症にて胸膜外合成樹脂球充填術を受け, 以後経過に異常を認めなかった.52年を経過して左腋窩を中心として左胸壁に皮下腫瘤が出現した.胸部CTでは膿胸及び膿胸腔と交通をもつ胸壁膿瘍を認めた.当初起炎菌は不明であった.感染の範囲が広かったため, 再発の危険性を減少させる目的で, 2期的に手術を行った.まず合成樹脂球除去, 膿胸腔及び胸壁膿瘍郭清術を行い, 開窓とした.開窓中に, 術前採取した膿の抗酸菌培養で結核菌陽性が判明したため, 結核性慢性穿通性膿胸と診断し, 化学療法を開始した.初回手術から約1ヵ月後, 左肺剥皮術を行った.以後約2年を経過しているが, 膿胸の再発を認めていない.本症例は胸膜外合成樹脂球充填術後の晩期合併症に対する外科治療が成功した1例である.結核治療の歴史の一端を垣間見る興味深い1例であると考えられた.
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