日本呼吸器外科学会雑誌
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20 巻, 5 号
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原著
  • 村岡 昌司, 赤嶺 晋治, 土谷 智史, 蒲原 涼太郎, 森野 茂行, 持永 浩史
    2006 年 20 巻 5 号 p. 700-705
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2008/03/11
    ジャーナル フリー
    術前未確定診断の肺腫瘤性病変に対するに対する術中針生検(NAB)の有用性と安全性を検討した.術中NABを行った197例を対象とし合併症・正診率を評価した.また肺癌であった182例(NAB群)の再発と予後を確定診断後に手術した肺癌症例469例(POD群)と比較した.NABの悪性診断の感度は94%,正診率93.9%であった.NAB偽陰性の11例中9例は腺癌でうち6例は細気管支肺胞上皮癌であった.11例の平均腫瘍径は21mm,1例を除きIA期であった.NABによる重篤な合併症は認めなかった.NAB群で癌性胸膜炎による再発は5例(2.7%)でPOD群(10例,2.3%)と有意差はなく,早期の播種症例はなかった.IA期の5年生存率は91.2%でPOD群(81.5%)と差はなかった.肺癌確定診断のためのNABは合併症も少なく安全で,播種や予後増悪の可能性は極めて低い.
  • 庄村 遊, 高橋 豊, 今井 幸弘
    2006 年 20 巻 5 号 p. 706-714
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2008/03/11
    ジャーナル フリー
    FDG-PET検査の肺癌診断への臨床応用は病変の良・悪性鑑別において重要であるといわれている.われわれは同検査での定量指標であるStandardized uptake value(SUV)にこだわらず,胸部X線やCT検査結果を踏まえた定性的評価,すなわち視覚診断をおこなっている.今回,当科で手術した26例を対象に,CT検査上径3cm以下の肺結節性病変(Clinical T1症例)のFDG-PET検査について検討した.病理診断は悪性22例,良性4例で,それぞれのSUV値は3.62±3.88,2.33±1.49であった.SUV≧2.5を悪性とした場合のPETSUV診断およびわれわれのPET視覚診断の感度,特異度,正診率は,45%,75%,50%および86%,25%,77%で,感度,正診率においてPET視覚診断が有意に高い値を示した.Clinical T1症例の場合,FDG-PET検査において定量指標のSUVのみで良・悪性の鑑別をおこなうのは困難で,胸部X線やCT検査結果を併せたFDG-PET検査の視覚的診断である定性的評価を要すると考えられた.
  • 米谷 文雄, 大岩 加奈, 中川 知己, 増田 良太, 井上 芳正, 西海 昇, 岩崎 正之, 井上 宏司
    2006 年 20 巻 5 号 p. 715-718
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2008/03/11
    ジャーナル フリー
    我々は1994年より胸部外傷に対して積極的に胸腔鏡下手術を行ってきた.2005年6月まで34件の胸部外傷に対し胸腔鏡下手術を行った.年令は6から90歳(平均40.7歳),受傷原因は刺創21例,交通外傷11例,転落外傷2例であった.34例中2例は出血コントロール不良のため,標準開胸に切りかえた.胸腔鏡下手術を完遂できた32例の術式は,部分切除14例,止血7例,肺縫合もしくは修復術5例,審査胸腔鏡5例,気管支縫合術1例であった.鈍的外傷では(1)横隔膜破裂,血管損傷に対する審査胸腔鏡(2)持続する胸腔内気瘻(3)6時間で500ml以上の血胸,鋭的外傷では(1)刺創(2)汚染に対する胸腔洗浄,を手術適応とした.胸部外傷に対する手術療法はあくまで緊急開胸手術が主体であるが,その中に胸腔鏡下手術でも充分対応できる症例は存在する.
  • 田中 浩一, 岡田 邦明, 川村 秀樹, 加藤 治文
    2006 年 20 巻 5 号 p. 719-723
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2008/03/11
    ジャーナル フリー
    2003年7月から2005年6月までの2年間に当院で外科的切除を行った原発性肺癌62例に対し,重複癌の有無,臨床的背景,病理所見等を検討した.重複癌症例は24例(38.7%)存在し,平均年齢は66.6歳であった.内訳は異時性重複癌16例,同時性重複癌8例.二重癌19例,三重癌3例,四重癌2例.重複癌の臓器は,胃10病巣,大腸8病巣,乳房5病巣,肺3病巣,食道,腎臓,肝臓,舌,前立腺各1病巣であった.肺癌の発見方法では重複癌症例の22例(91.7%),非重複癌症例の31例(81.6%)が無症状での画像検査による発見であった.肺癌腫瘍径に差は認めなかったが,重複癌症例では全例リンパ節転移陰性であったのに対し,非重複癌症例にはリンパ節転移陽性が9例(23.7%)存在した(p<0.05).また1994~2003年の10年間に当院で胃癌切除を受けた1640例の術後調査において,2003年7月からの2年間で9例の肺癌罹患が確認された.これは全国肺癌罹患集計値をもとに算出した推測数6.53人よりも多く,胃癌切除既往患者は一般人よりも肺癌に罹患しやすい可能性が示唆されたが,今後全国規模での疫学調査よる検討が必要である.
症例
  • 坂部 龍太郎, 向田 秀則, 山下 芳典, 多幾山 渉
    2006 年 20 巻 5 号 p. 724-728
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2008/03/11
    ジャーナル フリー
    拡大胸腺摘出術後にCyclosporin Aを投与し,貧血を改善することができた赤芽球癆合併胸腺腫の1例を報告する.症例は75歳,男性.労作時呼吸困難を主訴に受診し,高度の貧血を指摘された.骨髄検査にて赤芽球無形成を認め,胸部CTにて前縦隔に4cm大の充実性腫瘍を認めた.赤芽球癆合併胸腺腫と診断し,輸血にて貧血を改善した後,拡大胸腺摘出術を施行した.病理組織学的にWHO分類type B1,正岡分類II期の胸腺腫と診断された.術後1ヵ月経過しても貧血の改善が認められなかったため,Cyclosporin Aの投与を開始したところ,網状赤血球の上昇と貧血の改善を認めた.術後12ヵ月経過した現在,外来にて経過観察中で,貧血の進行や胸腺腫の再発は認めず良好に経過している.
  • 月岡 卓馬, 井上 清俊, 岩田 隆, 泉 信博, 水口 真二郎, 森田 隆平, 末廣 茂文
    2006 年 20 巻 5 号 p. 729-734
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2008/03/11
    ジャーナル フリー
    52歳男性.主訴は繰り返す喀血および呼吸器感染症.喀血に対し気管支動脈塞栓術を施行した際,左胃動脈,左下横隔動脈より左肺舌区域に流入する異常血管および右内胸動脈,右下横隔動脈より右肺中葉に流入する異常血管を認め,両側肺葉内肺分画症と診断された.貧血なく呼吸機能が良好であっため一期的に左腋窩開胸,左肺舌区域切除術,および右腋窩開胸,右肺中葉切除術を施行した.両胸腔内は繰り返す炎症のため癒着が強固であったが,両肺に流入する異常血管を確認し結紮切離した.術後29日目に軽快退院となり,術後3ヵ月経過したが喀血の再発は認めていない.両側肺葉内肺分画症の報告例は自験例を含め9例であった.しかし一期的切除術を施行された症例は自験例のみであった.
  • 阿部 二郎, 高橋 徹, 松田 安史, 羽隅 透, 菅間 敬治, 斎藤 泰紀
    2006 年 20 巻 5 号 p. 735-740
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2008/03/11
    ジャーナル フリー
    肺小細胞癌の集学的治療により寛解し,長期生存の得られたLambert-Eaton筋無力症の一例を経験した.本症例は原因不明の脱力により発症し,原発巣不明の小細胞癌の縦隔リンパ節転移に合併していた.右開胸を行い,右肺上葉に微小な原発巣を発見.完全切除を行った後,術後縦隔照射と全身化学療法を追加した.術後早期にproGRPは正常化したものの,抗VGCC抗体価は高値のままであった.抗VGCC抗体価が持続的に高値であるにもかかわらず,筋無力症状は軽快し,発症から6年間無再発生存している.このことからLambert-Eaton筋無力症の病因として,抗VGCC抗体のみが関与しているのでは無いということが示唆された.
  • 別所 俊哉, 有本 潤司, 西村 治
    2006 年 20 巻 5 号 p. 741-744
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2008/03/11
    ジャーナル フリー
    症例は29歳男性で,検診にて胸部X線異常陰影を指摘され当院を受診した.胸部CT検査で胸壁から胸腔内に突出する半球状低濃度の腫瘍性病変を認め,MRIのT1,T2強調画像で脂肪組織と同程度の強信号域を示した.腫瘍は有茎性で,胸腔鏡下に摘出した.病理組織学的診断は良性脂肪腫で,胸腔内胸壁型脂肪腫と診断された.切除1年後の現在再発を認めない.胸腔内胸壁型脂肪腫は有茎性である場合も少なくなく,その場合胸腔鏡下切除のよい適用と考えられた.
  • 澤田 貴裕, 佐藤 雅美, 高橋 里美, 小池 加保児
    2006 年 20 巻 5 号 p. 745-750
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2008/03/11
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,女性.住民検診で心陰影に重なる左胸部異常陰影を指摘され,肺腫瘍の疑いで検査を進めたが確定診断が得られなかった.その後の検査で陰影が確認できなくなり,経過観察していたが,胸部CTにて石灰化を伴う結節影が再び確認され,胸腔内を移動していることがわかった.このため,胸腔内結石症と診断し,胸腔鏡下手術にて摘出した.径13mm大の表面平滑,白色の可動性を有する結石であった.同時に径1.5mm大の小結石も認め,摘出した.前者は壊死性変化を伴う脂肪組織,また後者は炭粉と思われる黒色の粒子状物質を核として,いずれもその周囲を線維組織が層状に被包し硝子化したものであり,胸腔内結石症と診断された.胸腔内結石症の本邦報告例は13例のみと非常に稀であり,文献的考察を加えて報告した.
  • 青島 宏枝, 小山 邦広, 池田 豊秀, 清水 俊榮, 和知 尚子, 前 昌宏, 村杉 雅秀, 大貫 恭正
    2006 年 20 巻 5 号 p. 751-755
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2008/03/11
    ジャーナル フリー
    53歳男性.健診にて胸部異常陰影を指摘され当院受診した.胸部CT上,5.1×1.5cm大の不均一な強い造影効果を有する縦隔腫瘍を認めた.動脈造影にて腫瘍はhypervascularであり左気管支動脈からの栄養血管を認め,引き続き動脈塞栓術を施行した.その後,胸腔鏡下に縦隔腫瘍摘出した.病理組織学的診断は,hemangiomaであった.縦隔血管腫は易出血性で術中の剥離操作が困難であることが報告されているが術前の動脈塞栓術により出血は少量で胸腔鏡下に摘出し得たので,文献的考察も加えて報告する.
  • 月岡 卓馬, 井上 清俊, 岩田 隆, 水口 真二郎, 森田 隆平, 末広 茂文
    2006 年 20 巻 5 号 p. 756-759
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2008/03/11
    ジャーナル フリー
    症例は64歳男性.陳旧性脳梗塞による左半身不全麻痺を認めた.全身倦怠感,高血圧に対し精査を施行したところ,高ACTH血症を認めた.また胸部X線像,胸部CT像上右S6に腫瘤性病変を認め,気管支鏡下生検で肺腺癌(C-T2N0M0 stage IB)と診断した.右下葉切除,縦隔リンパ節郭清術を施行した.腫瘍細胞のACTH免疫染色で陽性像を呈したことからACTH産生肺腺癌(p-T2N0M0 stage IB)と診断した.術後,血中ACTH値は低下し,降圧薬の減量が可能であった.術後6ヵ月経過したが再発および血中ACTH値の再上昇は認めていない.肺腫瘍による異所性ACTH産生は肺小細胞癌,カルチノイドによるものがほとんどである.ACTH産生肺腺癌は極めて稀な疾患で,報告例は自験例を含め5例で切除例としては2例目であった.
  • 椎名 祥隆, 高橋 研
    2006 年 20 巻 5 号 p. 760-763
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2008/03/11
    ジャーナル フリー
    アルコール性肝硬変患者に合併した肺放線菌症の1手術例を経験したので報告する.症例は,喀血を主訴としたアルコール性肝硬変加療中の63才,男性.胸部CTで左肺S6に辺縁不整,5cm大の腫瘤影を認めた.気管支鏡検査では悪性細胞陰性で細菌培養も常在菌のみであった.肝硬変はChild-Pugh分類Aで,喀血が頻回になったことと肺癌を否定できないため,術前に輸血を行い貧血を是正した後に左下葉切除を施行した.術中病理所見は肉芽腫性炎であった.左肺は広汎に癒着していた.一度は止血された剥離面からの再出血に難渋し,術中に輸血を必要とした.術後は肝硬変の増悪はなく経過は良好であった.切除標本の病理組織所見では慢性炎症と肉芽形成および膿瘍を認め,細菌の染色,形態より肺放線菌症と診断された.現在は外来通院しているが再発は認めていない.
  • 鈴木 仁之, 田中 啓三, 金光 真治, 徳井 俊也
    2006 年 20 巻 5 号 p. 764-767
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2008/03/11
    ジャーナル フリー
    Basedow病に胸腺過形成が合併する原因については,いまだ明らかにはされていないが,甲状腺機能亢進症により二次的に胸腺過形成が生じるという説や,ある種の免疫機構の関与を示唆する説がある.今回我々は,Basedow病に合併した胸腺過形成の2例を経験したので報告する.1例は甲状腺機能亢進症の遷延と,胸腺については腫瘍性病変の存在が否定できなかったために,甲状腺亜全摘と胸腺摘出術が施行された.もう1例では甲状腺機能は徐々に正常化したが,腫瘍の縮小を認めないため,生検が施行された.2例とも腫瘍性病変は認めず,胸腺過形成と診断された.しかし組織学的にはリンパ様過形成と真性過形成との違いが確認され,両者における胸腺過形成の背景因子ないし発生メカニズムの違いが示唆された.
  • 大石 久, 星川 康, 岡田 克典, 佐渡 哲, 鈴木 聡, 松村 輔二, 近藤 丘
    2006 年 20 巻 5 号 p. 768-772
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2008/03/11
    ジャーナル フリー
    血清(1→3)-β-D-グルカン値の測定による深在性真菌症の血清学的診断は,広く利用されているが,その測定値は真菌症以外の種々の因子による影響を受け,偽陽性を示すことがある.我々は肺リンパ脈管筋腫症の患者に対し,脳死両側肺移植術を施行した.術翌日の血清(1→3)-β-D-グルカン値は2964 pg/mlと異常高値を示した.原因を検討した結果,術中の人工心肺中のポンプ吸引使用により,ガーゼに浸み込んだ血液が体内へ送血されたことが原因である可能性が疑われた.それを踏まえ,我々は生理食塩水とガーゼを使用した(1→3)-β-D-グルカン値の実験的測定を行ったところ,ガーゼから生理食塩水への(1→3)-β-D-グルカン成分の溶出を示唆する結果を得た.ガーゼの大量使用,および人工心肺中にポンプ吸引を行った症例では血清(1→3)-β-D-グルカン値の異常高値を示す可能性があり,注意を要すると考えられた.
  • 鈴木 喜裕, 石井 治彦, 石和 直樹, 小川 伸郎, 伊藤 宏之
    2006 年 20 巻 5 号 p. 773-776
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2008/03/11
    ジャーナル フリー
    malignant mesotheliomaは一般に予後不良であり根治が困難である.われわれは胸膜肺全切除術を施行し5年生存が得られた症例を経験したので報告する.症例は52歳女性.主訴は右胸痛.アスベストの暴露歴はなし.1998年12月,上記主訴で前医を受診し右胸水貯留を認め,1999年1月,胸腔鏡下胸膜生検施行した.その結果malignant mesothelioma in situと診断され,当センターにて諸検査で手術可能と判断し,1999年3月3日,右胸膜肺全切除術を施行した.術後病理診断はmalignant mesothelioma, T2N0M0 stage I(IMIGによるTNM Classification)であった.術後経過も良好で,術後6年になるが無再発生存中である.malignant mesotheliomaの根治には早期診断が不可欠である.よって原因不明の胸水を診た場合には積極的に胸腔鏡下胸膜生検を施行し診断をつけるべきであると考える.またin situ の状態は胸膜肺全切除術による腫瘍の完全切除による根治が期待できる.
  • 板谷 徹, 閨谷 洋, 朝井 克之, 高橋 毅
    2006 年 20 巻 5 号 p. 777-780
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2008/03/11
    ジャーナル フリー
    粘表皮癌は比較的稀な疾患であるが,血痰や喀血をきたしやすい.今回術前に大量喀血によって健側片肺挿管による気道確保を要した手術例を経験したので報告する.症例は15歳女性.咳嗽と血痰を主訴に受診.胸部単純X線写真にて左下葉の無気肺を認め入院となった.入院後,症状が増悪し,胸部CTにて左肺の完全無気肺と左下葉内に3cmの腫瘤を認めた.気管支鏡を施行したが,気道からの出血量が多く観察は困難であった.出血のコントロールのため右肺の片肺挿管と気管支動脈塞栓術を行い,左肺下葉切除を施行した.腫瘍は病理組織学的に低悪性度の粘表皮癌と診断された.粘表皮癌は易出血性の腫瘍であるが,本症例のように気管内挿管や血管塞栓術を要するほどの大量出血をきたした症例の報告はない.
  • ─肺移植対象疾患での胸膜癒着術に関する考察─
    阪口 全宏, 中村 憲二, 高橋 修, 須崎 剛行
    2006 年 20 巻 5 号 p. 781-785
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2008/03/11
    ジャーナル フリー
    肺リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis: 以下,LAM)による難治性気胸の1例を経験した.症例は31歳女性で,21歳時,結節性硬化症と腎血管筋脂肪腫と診断されていた.1998年,26歳時に,近医での右気胸に対する胸腔鏡下手術の際,LAMと診断されホルモン療法を受けていた.経過中,両側に気胸を繰り返し発症し,胸腔ドレナージで対処され,また肺移植が検討されていた.2003年10月,左気胸が再発し,手術目的に当科へ紹介され,胸腔鏡下手術で3ヵ所のブラを切除した.2004年2月,左気胸が再発し,再手術を行う前に肺移植医に意見を求めた上で,肺瘻のルーピングと化学的胸膜癒着術を併用し,18ヵ月気胸の再発はない.将来,肺移植を考慮する必要も生じうるLAMに合併する難治性気胸の手術で,胸膜癒着術の併用によってQOLを損なわない処置ができたと考えている.
  • 川邉 正和, 中出 雅治, 田中 宏和, 渡辺 裕介
    2006 年 20 巻 5 号 p. 786-789
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2008/03/11
    ジャーナル フリー
    上縦隔の横隔神経に発生した神経鞘腫の1例を経験した.症例は54才,女性.2005年7月,感冒にて近医を受診し,胸部CTで上縦隔に境界明瞭な腫瘤陰影を認めた.縦隔腫瘍(神経原性腫瘍)の術前診断で摘出術を施行した.摘出腫瘍は52×37×30mmの右横隔神経から発生した神経鞘腫で,被膜を切開し横隔神経を温存し摘出し得た.横隔神経鞘腫は自験例を含め19例しかなく稀な疾患であり,中でも頚部,上縦隔のものは極めて少ない.若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 橘 啓盛, 池谷 朋彦, 高橋 伸政, 村井 克己, 青山 克彦, 星 永進
    2006 年 20 巻 5 号 p. 790-794
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2008/03/11
    ジャーナル フリー
    症例は38歳女性.月経に一致した左気胸を発症し当センターを紹介された.月経22日後に行った胸腔鏡下手術にて,肺瘻の部位や気腫性嚢胞は確認できなかったが,左胸腔内の臓側,壁側胸膜にびまん性に多発する褐色の結節を認めた.病理学的に臓側,壁側胸膜ともに子宮内膜組織を認め,月経随伴性気胸と診断した.術後第3病日に月経が開始し右気胸を併発したが胸腔ドレナージにより改善した.後にホルモン療法を施行し,術後1年の経過では気胸の再発を認めていない.本症例は月経直前に手術を施行したため脱落する前の病変が観察されたと考えられた.発症機序は腹腔からの子宮内膜組織の侵入と臓側胸膜病変の脱落による気胸発症と推測された.壁側胸膜に子宮内膜組織を認めることはまれであり,月経随伴性気胸の発症機序を考えるうえで,本症例は興味深く貴重な症例と思われた.
  • 坂巻 靖, 城戸 哲夫, 安川 元章, 友國 晃
    2006 年 20 巻 5 号 p. 795-798
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2008/03/11
    ジャーナル フリー
    胸腔鏡下に胸腺腫摘出術を施行後4ヵ月で重症筋無力症(post-thymomectomy myasthenia gravis; PTMG)を発症したため,発症後4ヵ月時点で一側胸腔鏡下手術により遺残胸腺摘出術を完遂した症例を経験した.症例は37歳女性で,前縦隔腫瘍を左胸腔鏡下胸腺左葉切除術にて完全摘出し,重症筋無力症非合併の正岡I期胸腺腫との診断を得たが,5ヵ月後,筋無力症状と血中抗アセチルコリン受容体抗体価の異常高値からPTMGと診断された(病型はOsserman IIB).診断の3ヵ月後,右胸腔鏡下に遺残胸腺を周囲脂肪組織とen blocに摘出し,術後6ヵ月で寛解が得られた.重症筋無力症を合併しない非浸潤性胸腺腫では,比較的多様な術式選択が許容されると考えられるが,本症例のような予期せぬPTMGにも配慮し,再手術を含め,万一の発症に備えた対応が重要と考えられる.
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