日本呼吸器外科学会雑誌
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21 巻, 1 号
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原著
  • 宮崎 拓郎, 田川 努, 中村 昭博, 山崎 直哉, 橋爪 聡, 松本 桂太郎, 田口 恒徳, 森野 茂行, 林 徳真吉, 永安 武
    2007 年 21 巻 1 号 p. 2-6
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    1990年から2005年に手術を施行した悪性胸膜中皮腫は11例で,男性8例,女性3例,平均年齢は53.4歳であった.明らかなアスベスト暴露歴を有したのは4例であった.7例に咳,胸痛,呼吸困難などの自覚症状を有し,確定診断に4例の胸腔鏡下生検を行った.手術術式は胸膜肺全摘を9例に行った.今回の我々の検討では,手術,化学療法,放射線療法による集学的治療が生存に寄与する結果を得られず,2年生存率は19.2%であった.治療成績の向上には早期診断が重要で,そのためには原因不明な胸水貯留には胸腔鏡下生検が有用であり,かつ適切な手術の選択と効果的な化学療法や放射線療法の確立が望まれる.
  • ─患者の心理的要因を中心に─
    小阪 真二, 高橋 剛士, 阪本 仁, 宮本 信宏
    2007 年 21 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    胸骨正中切開におけるサスマタ型皮膚切開(以下サスマタ切開)の有用性を美容的観点から患者へのアンケートと患者の夏期の着衣状況にて評価した.アンケートの結果,および傷の肥厚性瘢痕の程度には有意差を認めなかったが,サスマタ切開の方が有意に胸部の露出部の長さが長く,前胸部が見える服を着ていた.アンケートの服を着るときに「傷が気になるか」の答えには有意差がなく,患者は無意識に創部が隠れる服を選択したと考えられた.皮膚切開を選択する場合,美容的に優れた切開を選択するべきで,できる限り小さい創で行うことはもちろんであるが,創の方向,位置,衣服で隠せるか否かも重要と考えられる.サスマタ切開は上縦隔にアプローチする呼吸器外科手術においては十分な術野を得られ,またその手術創が衣服に隠れるため,美容的にも有用であると考えられた.
  • 羽隅 透, 佐藤 伸之, 太田 伸一郎, 佐藤 雅美, 遠藤 千顕, 近藤 丘, 鈴木 弘行, 大泉 弘幸, 千田 雅之, 対馬 敬夫, 佐 ...
    2007 年 21 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    原発性非小細胞肺癌完全切除例の遠隔転移巣に対する外科治療後の予後をretrospectiveに検討した.対象は1998~2003年の期間に原発巣切除と同時あるいは異時性に一臓器のみに認められた数個以内の初遠隔転移巣とした.症例は35例.転移部位は脳,肺,副腎,胸壁がそれぞれ17,10,6,2例,原発巣病理病期(同時転移は考慮せず)はI,II,III期がそれぞれ16,14,5例であった.転移巣術後の2年生存率は全体で68.0%(中間生存期間43.1ヵ月),原発巣病理病期別ではI,II,III期がそれぞれ86.5,53.0,60.0%であった.pN因子別比較ではpN0,pN1-2がそれぞれ82.9,50.3%と有意にpN0症例が予後良好であった.単発あるいは少数個の遠隔転移巣に対する外科治療の有効性はリンパ節転移を認めない原発肺癌早期症例において存在し,その予後の向上に寄与する可能性が示唆された.
  • ─日本胸腺研究会アンケート調査報告─
    塩野 裕之, 奥村 明之進, 安元 公正
    2007 年 21 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    現在,医科診療報酬点数表に,重症筋無力症に対する内視鏡下胸腺摘出術に該当する項目がない.そこで本邦における現状を把握することを目的に,日本胸腺研究会参加施設および会員へのアンケート調査を行った.回答のあった101施設中,基本的に内視鏡手術を行っている施設は18施設(18%)で,32施設(32%)では,基本的に正中切開法を行っているが場合により内視鏡手術も行うと答えた.内視鏡下手術のアプローチ法はさまざまだが,ほとんどの施設で内視鏡用クリップや超音波メス,胸壁吊り上げ器機などを併用していた.2004年の胸腺摘出術総数は241例で,77例(32%)に内視鏡下手術が行われた.また71%の施設が,医科点数表に内視鏡下胸腺摘出術の項目が必要と答えた.
症例
  • 大成 亮次, 吉岡 伸吉郎, 西亀 正之, 向井 勝紀, 多久和 輝尚, 宮田 義浩, 浅原 利正
    2007 年 21 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    肺動静脈奇形(Pulmonary Arteriovenous Malformation,以下PAVM)を有するRendu-Osler-Weber病の一家系で,4例のPAVM治療例を経験したので報告する.症例1(45歳,女性)は左舌区の孤発性PAVMに対し開胸下舌区域切除術を,症例2(16歳,男性)は右S9及びS10に限局した多発性PAVMに対し胸腔鏡下肺楔状切除術を,症例3(19歳,女性)は両側多発性PAVMに対し経カテーテル塞栓術を,症例4(22歳,男性)は左S9に限局した孤発性PAVMに対し胸腔鏡下肺楔状切除術を施行した.PAVMは無症状であっても治療の適応となることが多く,治療の第一選択は経カテーテル塞栓術である.しかし,破裂や塞栓物質の逸脱などの偶発症の危険が予知される場合は,肺実質温存を念頭においた手術が適応となる.各治療法の長所と短所を充分検討したうえで,患者の希望に沿うよう治療法を選択するべきである.
  • 田中 宏和, 川邉 正和, 渡辺 裕介, 中出 雅治
    2007 年 21 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    症例はneurofibromatosis 1型(NF1)を合併しない76歳の男性.最大径13cmの後縦隔腫瘤が心,肝,肺,下大静脈などの周囲臓器を圧迫していたため摘出術を行った.摘出腫瘤はmalignant peripheral nerve sheath tumor (MPNST)で,肺に多発転移を伴う膵癌を合併していた.非NF1症例におけるMPNSTと膵癌合併例の報告は自験例が初めてである.
  • 中島 大輔, 住友 伸一, 松岡 勝成, 毛受 暁史, 三崎 伯幸, 中島 成泰, 前田 亮
    2007 年 21 巻 1 号 p. 34-37
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    縦隔発生の脂肪肉腫は稀である.その中で分化型脂肪肉腫は,時間依存性に,もしくは再発を繰り返すうちに脱分化をきたし,予後不良となることがある.今回,脱分化をきたし,巨大化した(径17×15×10cm大)縦隔原発脂肪肉腫の症例を経験した.腫瘍の大部分が脱分化した成分であったため,初回切除時には孤立性線維腫と診断されたが,再発巣の詳細な病理学的検討により,脱分化型脂肪肉腫の診断にいたった.
  • 狩集 弘太, 酒瀬川 浩一, 渡辺 俊一, 中村 好宏, 福森 和彦, 坂田 隆造
    2007 年 21 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,女性.2004年10月28日,突然の胸背部痛が出現し,胸部CTで急性大動脈解離と診断,同日,当院心臓血管外科で上行大動脈人工血管置換術を施行した.術後第2病日に抜管したが,低換気による呼吸不全で翌日再挿管となった.胸部X線写真では高度な右横隔膜挙上を認め,術中の横隔神経損傷による右側横隔膜麻痺と診断した.以後,循環動態は安定していたが,陽圧換気を要し,難治性肺炎も合併した.11月29日,呼吸器外科で横隔膜麻痺に対し,横隔膜縫縮術を施行した.弛緩した横隔膜を認め,ナイフ無しの自動縫合器を用い胸腔鏡下に横隔膜の縫縮を行った.術後,著明な横隔膜の低下が得られ低換気も改善し術後3日目に抜管した.その後,炎症所見も改善し術後10日目に軽快退院した.本症例のように片側横隔膜麻痺で人工呼吸器から離脱できない場合,胸腔鏡下横隔膜縫縮術は,低侵襲で有用な術式である.
  • 桝屋 大輝, 後藤 正司, 中島 尊, 劉 大革, 石川 真也, 山本 恭通, 黄 政龍, 横見瀬 裕保
    2007 年 21 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    症例1は19歳女性.動悸を自覚し,甲状腺腫大および前縦隔腫瘤を指摘された.甲状腺腫大は機能検査からバセドウ病と診断され,抗甲状腺剤を開始した.前縦隔腫瘍はCT下吸引細胞診からは胸腺腫も否定できなかったが,画像診断も踏まえ胸腺過形成が強く考えられた.甲状腺機能亢進症に伴う胸腺過形成と判断し経過観察とした.抗甲状腺剤内服から3ヵ月後には胸腺の縮小を認めた.症例2は52歳女性.前縦隔腫瘤を指摘された.画像上,胸腺はびまん性肥大であり,甲状腺の軽度腫大も認めた.甲状腺機能検査を行い,バセドウ病の診断を得た.甲状腺機能亢進症に伴う胸腺肥大と判断し,バセドウ病の治療を開始した.3ヵ月後には胸腺の縮小を認めた.甲状腺機能亢進症に合併した胸腺肥大では,外科的処置の前に抗甲状腺剤の投与による画像上の経過観察も可能と考えられる.無用な手術を回避するためにも呼吸器外科医は,この病態を知っておく必要がある.
  • 竹内 幸康, 田中 康博
    2007 年 21 巻 1 号 p. 48-51
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    降下性壊死性縦隔炎は迅速で適切な処置を怠ると急速に重篤化し致命的となる.症例は67歳の女性.12年間,慢性腎不全のために週3回血液透析されていた.発熱および咽頭痛,右頚部腫脹が出現し,近医で急性扁桃腺炎として入院加療されていた.4日後に呼吸状態の急速な増悪のため気管切開され,その2日後に降下性壊死性縦隔炎のために当院耳鼻科に救急搬送された.CTでは右頚部から気管周囲さらに心嚢周囲に及ぶ膿瘍が進展していた.翌日当科を紹介され頚部膿瘍切開排膿および胸腔鏡下縦隔ドレナージ術を施行.術後46日目に軽快退院した.胸腔鏡下縦隔ドレナージ術は,慢性腎不全患者の降下性壊死性縦隔炎に対しても低侵襲で有用と考えられた.
  • 林 亨治
    2007 年 21 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,男性,魚を食べた後より咽頭の違和感を覚え,20日後より嚥下痛,さらに2日後より呼吸困難が出現したため,当院救急外来を受診した.嗄声,吸気延長,頻呼吸を認めることより,急性喉頭蓋炎による上気道狭窄を疑いボスミン吸入を行った.しかし呼吸困難が増悪したため輪状甲状間膜切開後,緊急気管切開を行った.抗生剤等の治療により一旦は軽快したが,入院12日目に炎症反応の増悪を認め,CTで下行性壊死性縦隔炎と診断した.気管分岐部より上方に膿瘍が限局していたため,同日頚部アプローチによる縦隔膿瘍ドレナージを行った.術後経過は良好で術後30日目に軽快退院となった.気管分岐部より上方に限局した縦隔炎では頚部からの縦隔膿瘍ドレナージによる治療を選択肢の一つにすべきである.また頚部の炎症は常に下行性壊死性縦隔炎へ移行する可能性を考え,早期発見に努めることが重要である.
  • ─再発例の文献的考察─
    小林 宣隆, 宮澤 正久, 青木 孝學
    2007 年 21 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は67歳の男性.1995年10月,右胸水貯留を伴う胸膜腫瘍の診断のもと腫瘍摘出術を施行,術後病理診断にて胸膜孤立性繊維性腫瘍solitary fibrous tumor of the pleura(以下SFT)の診断となった.2003年6月の胸部CTで右房・右室沿いに2つの腫瘤性病変を認め,いずれも短期間で増大した.SFT再発の疑いにて2004年8月再手術を施行,一部心膜を合併切除するかたちで腫瘍を摘出した.術後病理診断でいずれの腫瘍もSFTの診断となった.再発病変に関し組織学的に明らかな悪性化の所見はなく,再発形式は断端再発と考えられた.SFT再発例の文献報告例では組織学的に良性と判断された症例においても複数回の再発例があり,今後も厳重な経過観察が必要と考えられる.
  • 蜂須賀 康己, 魚本 昌志
    2007 年 21 巻 1 号 p. 64-69
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    肺膿瘍破裂にて膿気胸を生じ,胸腔鏡下手術を施行した,まれな症例を経験したので報告する.症例は63歳の男性.肝硬変と糖尿病の既往歴があり,血糖コントロール目的で当院へ入院した.入院後,咳と発熱を認め,CTにて左肺下葉の肺膿瘍と診断され,抗生剤が投与された.入院から10日後,突然呼吸困難をきたし,CTにて左下葉の膿瘍破裂による膿気胸と診断した.治療として胸腔鏡下膿胸腔掻爬および膿瘍腔ドレナージ術を施行し,さらに術後3週目に難治性気管支瘻に対し,気管支鏡下に気管支充填術を施行した.膿胸と肺膿瘍は著明な改善を認めたが,肝障害が進行し,肝不全に至り,術後48日目に死亡した.肺膿瘍破裂はまれな病態であるが,自験例のように,重篤な合併症を有する症例に起こりうることを留意して,早期に低侵襲な手術を施行するべきと思われた.
  • 長田 陽子, 高濱 誠, 木村 通孝, 川口 剛史, 櫛部 圭司, 東条 尚, 谷口 繁樹
    2007 年 21 巻 1 号 p. 70-75
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,女性.主訴は左側胸部の疼痛および腫脹.胸部CTにて左側胸壁に肋骨破壊を伴う長径7cmの腫瘤を認め,201Tlシンチで腫瘍に一致した強い集積を認めた.経皮的針生検では確定診断が得られず腫瘍の急速増大を認め,胸壁限局性であったため手術を施行した.術中迅速組織診断にて悪性リンパ腫が疑われ胸壁腫瘍・胸壁合併切除術及び胸壁再建術を施行した.術後病理組織診断にて胸壁原発のdiffuse large B cell lymphoma, Ann Arbor病期 Stage IVXと診断され術後化学・放射線療法を施行した.治療より47ヵ月経過し再発なく経過観察中である.本症例は誘因となる基礎疾患を有さない稀な胸壁原発の悪性リンパ腫であり,手術を先行した集学的治療により寛解を得たので報告する.
  • 三浦 奈央子, 塚本 修一, 石田 照佳
    2007 年 21 巻 1 号 p. 76-79
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,男性.高度呼吸困難(Hugh-Jones分類IV度)が生じたため近医受診.胸部レントゲン・CTにて右胸腔を全て占める巨大な腫瘍を認め,精査加療目的に当院紹介となった.CTガイド下生検にて軟骨肉腫が疑われ,手術施行となった.手術は仰臥位にて,胸骨正中切開に右前側方切開を加え,第4肋間開胸で行った.腫瘍はゼラチン状で黄色調を呈しており,胸膜肺全摘術施行した.腫瘍総重量は8kgで,病理学的検査では粘液型悪性線維性組織球腫と診断された.術後,呼吸困難は改善(Hugh-Jones分類I度)し,経過良好にて自宅退院となった.現在明らかな再発は認められていない.胸腔を全て占拠するほどの粘液型悪性線維性組織球腫は非常に稀であり,若干の文献的考察を含め報告する.
  • 橋本 毅久, 岡本 竹司, 青木 正, 土田 正則, 林 純一
    2007 年 21 巻 1 号 p. 80-84
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    移植患者に胸部異常影が出現した場合には感染症の可能性を考えるとともに悪性疾患との鑑別も問題となる.症例は2回の生体腎移植を受けた53歳女性.免疫抑制剤とステロイド剤の内服にて経過中に胸部X線写真上異常影を指摘された.CTでは右S2に径10mmの充実性結節影を認めた.経過観察されたところ僅かに増大し,FDG-PETでstanderdized uptake value(SUV)1時間値3.7,2時間値4.2と悪性を疑わせる所見であった.胸腔鏡下肺部分切除を行い病理所見で肺クリプトコッカス症と診断された.腫瘤影を呈する肺クリプトコッカス症は画像上肺癌と類似することがある.本症例は増大傾向を示し且つFDG-PET陽性であったことからも肺癌との鑑別が困難であった.
  • 武内 愛, 青木 正, 橋本 毅久, 土田 正則, 林 純一
    2007 年 21 巻 1 号 p. 85-88
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    診断目的の胸腔穿刺部に一致して胸壁腫瘤を形成した悪性胸膜中皮腫の一例を経験した.症例は57歳男性.胸部レントゲン異常を指摘され,近医で穿刺による胸水検査,胸膜生検を行われたが確定診断に至らず精査目的に入院した.入院時穿刺部胸壁に腫瘤を形成していた.腫瘤切除に引き続いて診査胸腔鏡を行い,二相性悪性胸膜中皮腫と診断した.穿刺経路以外に浸潤を認めず,臨床病期はIMIG-TNM分類でT3N0M0 stage IIIであり,右胸膜肺全摘術を施行した.
  • 田中 亨, 中山 英, 寺田 泰二
    2007 年 21 巻 1 号 p. 89-92
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    骨形成を伴う転移性骨腫瘍は,前立腺癌と乳癌に多く,大腸癌では稀である.症例は73歳女性.既往歴として,2000年11月に大腸癌のため横行結腸切除を受けた.その後,2001年11月に左S8の肺転移に対し胸腔鏡下肺部分切除術を,2003年10月に肝転移に対しradiowave frequency ablation(RFA)を施行され,外来で経過観察されていた.2004年3月に胸痛が出現し,胸部X線写真で左胸部に異常影を指摘された.CTでは左第6肋骨に石灰化を伴う腫瘤を認め,骨腫瘍が疑われた.2004年4月に胸壁腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は左第6肋骨の中腋窩線を中心に長さ約8cmに渡って認められた.腫瘍断端から十分距離を取るため,約20cmの肋骨を切除しMarlex meshにて胸壁再建を行った.病理組織学的には,大腸癌の肋骨転移と診断された.現在再発なく,外来にて経過観察中である.
  • 長 博之, 大久保 憲一, 五十部 潤, 上野 陽一郎
    2007 年 21 巻 1 号 p. 93-97
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は,69歳男性.主訴は呼吸困難.CTで右肺上葉結節影,気管分岐部下腫瘤影(径6cm)が認められ,FDG-PETでそれぞれ集積あり,右肺上葉原発肺癌・縦隔リンパ節転移を疑った.気管分岐部下腫瘤に対し縦隔鏡・胸腔鏡検査を施行し,悪性所見はなかった.引き続き開胸にて,右肺上葉結節はadenocarcinomaと診断され,右肺上葉切除及び気管分岐部下腫瘤摘出を含むND2aリンパ節郭清術を施行した.右肺上葉結節は肺癌(pT2N1M0),気管分岐部下腫瘤はCastleman病と診断された.Castleman病はPET検査陽性で,肺癌縦隔リンパ節転移と鑑別困難である.このような縦隔リンパ節病変を合併した肺癌では病期診断に注意を要する.
  • 宮崎 拓郎, 田川 努, 中村 昭博, 山崎 直哉, 橋爪 聡, 松本 桂太郎, 田口 恒徳, 森野 茂行, 畑地 豪, 芦澤 和人, 安倍 ...
    2007 年 21 巻 1 号 p. 98-102
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は31歳,男性.生来健康であった.嚥下時の違和感が出現し持続するため近医受診した.胸部単純写真にて気管の右方偏位,CTにて上縦隔腫瘍を指摘され,精査加療目的に当科紹介となった.術前に確定診断を得ることができず,手術を施行したところ微小甲状腺癌の縦隔リンパ節転移であり,甲状腺左葉切除,左頚部郭清,縦隔腫瘍切除,左反回神経切除と再建,気管8リング合併切除再建を行った.術後経過は良好で,気管縫合不全や狭窄などの合併症はなく軽快退院した.現在術後12ヵ月経過したが,明らかな再発を認めず外来にて経過観察中である.縦隔腫瘍の鑑別疾患として,甲状腺癌の縦隔リンパ節転移も念頭においた精査が必要であると思われた.
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