日本呼吸器外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-4158
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22 巻 , 2 号
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原著
  • 井坂 珠子, 神崎 正人, 大和 雅之, 岡野 光夫, 大貫 恭正
    2008 年 22 巻 2 号 p. 118-128
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肺気漏モデルをラットで作成し,フィブリン製剤,シート状フィブリン製剤,フィブリン製剤+吸収性組織代用性合成繊維布を用いて気漏を閉鎖し,術後閉鎖部位の組織学的所見,走査型電子顕微鏡での超微細形態を比較検討した.フィブリン製剤は,全例気漏閉鎖部位と胸壁の癒着はなかったが,シート状フィブリン製剤,フィブリン製剤+吸収性組織代用性合成繊維布では癒着を認めた.いずれの方法も中皮細胞は認めなかった.胸膜肥厚は胸膜欠損部に線維芽細胞が進展し,線維芽細胞から産生された細胞外マトリックスにより構築されていた.既存の組織修復材は胸膜表面を肥厚させ,胸膜を補強していた.しかし,組織生体親和性の向上,炎症反応の制御,癒着防止,肺の伸縮性に追従する柔軟性などさらなる組織修復材の開拓が必要であると考えられた.
  • 野田 雅史, 佐渡 哲, 桜田 晃, 星川 康, 遠藤 千顕, 岡田 克典, 松村 輔二, 近藤 丘
    2008 年 22 巻 2 号 p. 129-134
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    当院呼吸器外科にて最近7年間で外科治療を施行した80歳以上の超高齢者気胸手術症例7例を対象とし,背景,術前治療,術前因子,外科治療の詳細,術後合併症,予後等を検討した.結果は全例7例男性,基礎肺疾患は慢性肺気腫6例,間質性肺炎1例であった.術前合併症は悪性腫瘍,糖尿病,結核後遺症,重症高血圧等を有していた.手術は3例で通常分離肺換気麻酔下手術,2例で硬膜外局所麻酔併用下手術,2例で経皮的心肺補助法(Percutaneous Cardio Pulmonary Support:以下PCPS)併用全身麻酔下手術を施行した.全身麻酔手術を施行した5例中3例では重篤な術後合併症をきたした.うち1例は術後1週間目にうっ血性心不全増悪と急性呼吸不全により失った.超高齢者難治性気胸は,可能な限りの内科的治療を施行した上で,詳細な術中術後リスク評価をもとに手術の必要性,危険性を十分インフォームドコンセントした上で手術を行うことが肝要である.
  • 魚本 昌志, 蜂須賀 康己, 片岡 正文, 川真田 修, 林 同輔, 井上 文之, 田中 紀章
    2008 年 22 巻 2 号 p. 135-141
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    TissueLinkTM(以下TL)は,肝切除を目的に開発された装置で,生理食塩液を凝固媒介とするモノポーラ凝固装置である.我々は,TLを肺嚢胞処理に試用し,その良好な結果を報告している.さらにTLの臨床導入に向けて多施設臨床前向き観察研究を施行したので結果を報告する.小嚢胞:48名(60病変),大嚢胞:27名(31病変)にTLを用いた温熱効果による収縮が施工された.合併症は術後気漏を小嚢胞で3名認めたのみであった.気漏の原因は,嚢胞の見落としが1名,処理不良が1名,原因同定不明が1名であった.小嚢胞に対してはTL処理のみで嚢胞は消失し術後の合併症もわずかであった.大嚢胞に対しては合併症はなく,特に,従来ならば葉切除を考慮する巨大嚢胞に対し嚢胞の縮小および壁の肥厚化が可能で自動縫合器による嚢胞切除が容易であった.以上よりTLは,肺嚢胞処理における新しい装置として導入しうるものと考えられた.
  • 卜部 憲和, 朝井 克之
    2008 年 22 巻 2 号 p. 142-145
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1995年7月から2005年8月までに胸腔鏡下手術を行った原発性自然気胸364例における術後2年間の再発率を検討した.2000年11月までに手術を行った自動縫合器による単純切除の前期症例群(PGA(-)群)164例と,2000年11月から2005年8月までに自動縫合器にPGAフェルトを装着し切除線被覆を行った後期症例(PGA(+)群)201例において,術後2年間の累積再発率を検討した.術後2年間の再発率はPGA(-)群で9.2%,PGA(+)群で2.0%であり,統計学的有意差をもってPGA(+)群の再発率は低かった.以上より本法はPGA(-)群をhistorical controlとするretrospective studyであり今後さらなる検討が必要と考えるが,自然気胸に対する胸腔鏡下手術における再発率低下に有用な方法のひとつと考えられた.
  • 金田 浩由紀, 齊藤 朋人, 馬庭 知弘, 南 健一郎, 齊藤 幸人, 今村 洋二
    2008 年 22 巻 2 号 p. 146-150
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    文献による検討では,肺切除術後の胸腔ドレーンは水封管理が持続吸引管理と比較して同等か,優れていると考えられる.われわれは肺切除術後に標準的に水封管理としているが,気瘻が多すぎる場合には水封管理での問題が発生し,本来気瘻閉鎖に有利に働く水封管理から持続吸引管理に変更せざるを得ない症例がある.今回,水封管理で問題となった症例について検討した.2006年1月から10月までに行った肺切除術90例を対象として後ろ向きな検討を行った.閉胸後は-10cm H2Oで吸引を開始し,胸部X線写真にて残存肺の再膨張を確認するまでの約30分間続け,その後水封管理としている.経過中9例(10%)が水封管理から持続吸引管理への切り替えが必要であった.切り替えた理由の内訳は皮下気腫の増大5例,肺の拡張促進3例,排液の吸引1例であった.術後気瘻の多い症例では,皮下気腫の増大や肺虚脱に注意が必要である.
症例
  • 村田 智美, 清水 淳三, 荒能 義彦, 村上 眞也
    2008 年 22 巻 2 号 p. 151-154
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    横隔膜原発の脂肪腫はきわめて稀である.今回われわれは,検診にて指摘され,画像上診断が困難であり,手術にて横隔膜原発の脂肪腫と診断された1例を経験した.症例は43歳女性.胸部CTでは,左横隔膜上に約3cm大の境界明瞭なsolidな腫瘤が見られ,脂肪組織よりも高いCT値を示し,MRIではT1強調像でlow,T2強調像でlow~highの混在する腫瘤であり,典型的な脂肪腫とは異なる画像を示していた.横隔膜由来のsolidな腫瘍と診断し腫瘍摘出術を行った.病理診断はspindle cell lipomaであった.
  • 椎野 王久, 齊藤 紀子, 山本 達生, 村山 史雄
    2008 年 22 巻 2 号 p. 155-159
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,男性.集団検診で胸部異常陰影を指摘され当科受診となった.胸部CT上,両側肺に多発結節を認め,珪肺の診断で経過観察となった.3年後の胸部CT上,右S2の結節のみ増大を認めた.気管支鏡下擦過細胞診は陰性であったが肺癌を否定できず,胸腔鏡下右上葉部分切除術を施行した.病理診断ではprogressive massive fibrosis(以下PMF)であった.珪肺結節が増大するPMFと肺癌との鑑別は,画像診断では困難なことが多く,他の検査によっても肺癌が否定し得ない場合,胸腔鏡下肺生検を施行し診断を確定する必要がある.
  • 佐々木 正人, 池田 岳史, 木村 雅代, 平井 誠也, 井隼 彰夫, 田中 國義
    2008 年 22 巻 2 号 p. 160-163
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    右気管支中枢までおよぶ原発性肺癌にて低栄養状態および局所の炎症のために直接縫合や分岐部形成術が危険と判断し,縫合不全回避のため有茎広背筋弁による気管支断端閉鎖術を行い,有効であった症例を経験したので報告する.症例は,65歳,男性.入院時検査データ上,白血球およびCRPの著明な上昇,血中アルブミン値,コリンエステラーゼ値の低下を認めた.入院時胸部X線および胸部CTにて右肺の無気肺,肺炎像および右主気管支の中枢に腫瘤陰影を認めた.精査中に患側からの浸出物の健側肺への流入が原因で換気維持が困難となり,緊急手術となった.起始部で右主幹を切断すると,黄白色の腫瘍が気管分岐部にポリープ状に突出するように認められた.右肺摘除術の後,右気管支断端を有茎広背筋弁により閉鎖した.術後合併症を認めず,経過良好にて退院した.
  • 土岐 善紀, 本間 崇浩, 津田 基晴, 峠 正義, 仙田 一貴, 一木 克之, 杉山 茂樹, 三崎 拓郎
    2008 年 22 巻 2 号 p. 164-168
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Kleinfelter症候群の13歳の男子中学生に発症した縦隔原発混合型胚細胞性腫瘍に対し,術前後の化学療法と根治的手術を行い良好な結果を得た.混合型非セミノーマ腫瘍は胚細胞性腫瘍の中でも予後不良とされているが,根治的手術とシスプラチンを中心とした術前後の集学的治療が長期予後の鍵であると考えられた.
  • 上原 浩文, 加地 苗人, 加藤 達哉
    2008 年 22 巻 2 号 p. 169-174
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    FDG-PET(18F-fluorodeoxyglucose-positron emission tomography)は肺結節性病変の質的診断に有用とされているものの,偽陰性,偽陽性には注意する必要がある.今回我々は,胸部CTにて30mm以上(cT2)の充実性陰影を呈しながらFDG-PET陰性であった肺腺癌の2例を経験した.2例はともに,粘液産生型肺胞上皮癌であり,豊富な粘液産生によりCT画像上では充実性成分を主体としていたにもかかわらずFDGは低集積となっていた.FDG-PET陰性の充実性病変の診断にあたっては,粘液産生肺胞上皮癌である可能性を考慮し,慎重に考える必要がある.
  • 鈴木 秀海, 黄 英哲, 星野 英久, 斎藤 幸雄, 藤澤 武彦
    2008 年 22 巻 2 号 p. 175-179
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は25歳女性であり,健康診断の胸部Xpにて右肺尖部の異常影を指摘され,当科紹介となった.術前の生検では確定診断を得られなかったが,画像所見より腕神経叢下幹由来の神経原性腫瘍を強く疑った.胸腔鏡下に腫瘍生検を行い,術中迅速病理検査にて神経鞘腫と診断されたため,Door open(胸骨部分切開+第三肋間開胸)およびTMA(Transmanubrial approach)を併用した開胸下に被膜内腫瘍摘出術を施行した.術後は第IV,V指尖の異常知覚のみで他の機能障害を認めなかった.胸腔内に進展した腕神経叢由来の神経鞘腫は稀であり,診断ならびにその治療方法,特に機能温存に留意した術式について検討を行った.
  • 川瀬 寛, 宮本 正樹, 木下 桂一, 樋田 泰浩, 大竹 節之, 加賀 基知三, 平野 聡, 森川 利昭, 近藤 哲
    2008 年 22 巻 2 号 p. 180-185
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    9歳男児,交通外傷によりJCS200で当院へ救急搬送された.搬入時,前胸部から頚部にかけ広範囲にわたり皮下気腫を認め,血液ガス分析ではpCO2 124.0torr,pO2 61.5torrであった.胸部CT上,気管分岐直後の右主気管支の連続性が追えず,右主気管支断裂を疑った.重度の呼吸不全を伴っていたため人工肺(ECMO)下での緊急手術を行った.右後側方開胸で確認すると,右主気管支の完全断裂を認めた.端々吻合を行ったが,他に中枢側に気管分岐部損傷を認めた.術中に酸素化能の低下を認め,手術継続は不可能と判断した.初回術後2日目に胸骨正中切開によるアプローチで損傷部の気管形成を行い44日目に歩行退院となった.重度の呼吸不全を伴った小児気管支断裂症例に対し,CTでの診断からECMO下での2度の手術まで,迅速かつ集学的な治療により救命可能であった.
  • 前田 純, 東山 聖彦, 尾田 一之, 岡見 次郎, 塚本 吉胤, 小山 光博, 児玉 憲
    2008 年 22 巻 2 号 p. 186-192
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胸腺癌のうちでもわずか1.7%を占めるに過ぎないとされている胸腺粘表皮癌(Thymic Mucoepidermoid Carcinomas)を,すでに報告済みの1例1)に加えて新たに1例を経験したので2例を報告する.症例1は58歳男性.胸腺粘表皮癌(低分化型)に対し胸腺全摘+リンパ節郭清左上葉合併切除術を施行した.術後6ヵ月で左副腎,術後8ヵ月で空腸転移再発を認め,現在全身化学療法施行中である.症例2は既報告例で53歳男性.胸腺粘表皮癌(高分化型)に対し胸腺亜全摘+リンパ節郭清術施行した.初回術後57ヵ月で胸腔内播種をきたし,その後2度にわたる切除手術,胸腔内温熱化学療法,放射線療法施行するも全身転移にて93ヵ月で永眠された.胸腺粘表皮癌の多くは病理学的に高分化型で胸腺癌の内でも悪性度は低いとされているが,低分化型は悪性度も高く極めて予後不良とされており分化度が臨床経過や悪性度を反映していると考えられた.
  • 福森 和彦, 高木 啓吾, 秦 美暢, 大塚 創, 田巻 一義, 笹本 修一, 渋谷 和俊, 馬場 雅行, 宮本 忠昭
    2008 年 22 巻 2 号 p. 193-197
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は66歳男性,右上肺野腫瘤影を指摘され精査したところ,右S2末梢の35mm大の扁平上皮癌と右B7入口部の結節型内視鏡的早期扁平上皮癌を認めた.同時性多発肺癌と判断し,右S2扁平上皮癌に対して,右上葉切除および縦隔リンパ郭清を行い病理病期II B(pT3N0M0)であった.術後3ヵ月目に右B7入口部扁平上皮癌に対して61.2GyEの炭素イオン線照射を行い,CRとなった.術後5年3ヵ月,無再発生存中である.多発肺癌に対し,重粒子線治療は局所制御能に優れ,第二癌の根治的治療法のひとつとして有効と思われた.
  • 大竹 節之, 森川 利昭, 加賀 基知三, 樋田 泰浩, 木下 桂一, 近藤 哲
    2008 年 22 巻 2 号 p. 198-201
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は19才男性.2001年7月近医にて胸壁腫瘍の診断で腫瘍,胸壁(右第5,6肋骨)合併切除,再建術を施行された.以後特に通院せず,2005年4月,健診にて胸部異常陰影を指摘され,再発の疑いにて当科紹介となった.胸部CTでは,内部不均一な腫瘍が前回の切除部を中心に第2肋骨下縁から第6肋間まで胸壁に沿って存在し,胸腔内に突出していた.経皮的針生検にてデスモイド腫瘍と診断し,腫瘍を含む第2から第7肋骨および,肺の上,中,下葉の部分切除を行った.胸壁再建には,胸壁欠損部をComposix Mesh(Bard社製) で被覆し,右第9肋骨を第5肋骨欠損部に移植した.さらにその上に前鋸筋を有茎で被覆した.術後は順調に経過し,術後20病日に退院した.術後1年10ヵ月経過した現在再発なく,移植した肋骨も固定良好でスポーツも可能である.
  • 小林 宣隆, 宮澤 正久
    2008 年 22 巻 2 号 p. 202-205
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は52歳男性.1年間の米国アリゾナ州滞在後に胸部X線検診にて異常を指摘された.胸部CT上,左肺S8に境界明瞭な25mm大の腫瘤影を認め腫瘍性病変も否定しきれず胸腔鏡下生検(肺部分切除)を施行,術後病理診断で肺コクシジオイデス症と確定した.肺コクシジオイデス症は最近その報告例が増加傾向にあるもののいまだまれな輸入真菌症の1種であり,胸腔鏡下生検(肺部分切除)にて確定診断した貴重な症例と考えられた.
  • 松村 勇輝, 塩野 知志, 加藤 博久, 佐藤 徹, 金内 直樹
    2008 年 22 巻 2 号 p. 206-210
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例;72歳女性.50年前に胸部X線にて左肺尖部の異常影を指摘されたが,当時は手術不能とされ放置していた.本年2月頃から左背部痛と左鎖骨上の腫瘤が増大してきたため受診.CTにて左第1肋骨を主座とする9cmの腫瘍を認め,生検で骨巨細胞腫と診断された.術前に腫瘍栄養動脈の塞栓術を行い,手術を施行.手術では前方,後方からアプローチし第1肋骨および第2肋骨の一部を含めた腫瘍摘出術を行った.
  • 藤原 俊哉, 片岡 和彦, 松浦 求樹, 妹尾 紀具
    2008 年 22 巻 2 号 p. 211-216
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は32歳女性,咳,胸痛を主訴に近医受診し,胸部X線検査上,縦隔の異常影を指摘された.CTでは前縦隔に内部均一な腫瘤を認めた.胸腺腫との術前診断にて,胸骨正中切開,拡大胸腺摘出術を施行した.肺への浸潤,肺転移巣を認めたため,肺部分切除を追加した.病理組織学的には,線維性隔壁に境される結節性病変を呈し,大型のH細胞,R-S細胞を認めた.免疫染色ではCD15(+),CD30(+)であり,Classical Hodgkin's lymphoma,Nodular sclerosis type,CS II A,PS II A(L+)と診断された.ホジキンリンパ腫はリンパ節に原発することが多く,胸腺原発例の報告は散見されるが比較的まれである.本症例は術後放射線治療を行い,術後10ヵ月無再発生存中である.適切な治療を施せば予後良好な疾患であり,今後の厳重な経過観察が必要である.
  • 福原 謙二郎, 明石 章則, 冨田 栄美子
    2008 年 22 巻 2 号 p. 217-220
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は53歳男性.発熱,右胸背部痛にて近医を受診.胸部X線写真,CTにて右上葉に10cm大の腫瘤を認め,内部に壊死を疑わせるlow densityと少量のairを認めた.気管支鏡検査を2回行ったが診断確定に至らず.肺癌を疑い右上葉切除,壁側胸膜合併切除術を行った.術中迅速組織診では悪性所見はなく,大半が壊死組織で一部に多核巨細胞を認めるもチール・ニールゼン染色は陰性であった.切除標本の病理組織所見はWegener肉芽腫症(以下WG)の診断基準に合致していた.術後炎症反応が高値遷延し,上下肢の疼痛,筋力低下も出現.C-ANCA値が216EUと高値で,下腿に血管炎による皮疹も出現.診断基準に基づき限局型WGと診断した.内科へ転科しステロイド,エンドキサン療法にて症状軽快した.WGでは,肺病変は空洞を伴う多発性陰影を呈することが多く孤立結節を呈することは稀であるが,早期の治療開始により予後改善も期待される疾患であり,鑑別疾患の一つとして念頭に置く必要がある.また,C-ANCA測定も診断に有用である.
  • 根津 賢司, 高橋 広, 松岡 欣也, 佐川 庸, 岡本 憲省, 日浅 浩成
    2008 年 22 巻 2 号 p. 221-225
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は56歳女性で,左足底部違和感,歩行困難,腰痛を主訴に当院神経内科を受診した.胸部X線検査にて左上縦隔に約6cm大の腫瘍陰影を認め,胸部CTおよびMRIにて左後縦隔傍椎体(Th3-5)領域に半球状のextrapleural sign陽性の腫瘤を認め,腫瘍は椎間孔内を通り,脊柱管内まで侵入し,腫瘍により胸髄は著明に圧排されていた(Dumbbell型).血管造影にて左第4肋間動脈より不均一な強い濃染像を認めた.手術は後側方切開,第4肋間開胸にてアプローチし,栄養血管を処理しつつ胸腔内の腫瘍を摘出後仮閉胸し,腹臥位にて椎弓切除し,硬膜外腔に存在する腫瘍を摘出した.病理診断にて血管脂肪腫と診断された.術後は痙性麻痺も消失し,リハビリにて術後2ヵ月で歩行も順調に回復し,現在術後2年で再発も認めない.縦隔原発血管脂肪腫の報告例は本例を含めこれまで3例のみであり,いずれも脊柱管内進展を認め極めて稀な症例であった.
  • 馬庭 知弘, 齊藤 幸人, 齊藤 朋人, 金田 浩由紀, 南 健一郎, 今村 洋二
    2008 年 22 巻 2 号 p. 226-230
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は27歳男性.2004年,職場の検診で胸部異常陰影を指摘された.自覚症状なし.胸部造影CTでは35×28mmの前縦隔腫瘤を認め,腫瘤に接する左腕頭静脈から上大静脈にかけ,造影欠損を認めた.手術は血管内への穿孔を疑い,一時的に上大静脈の右心房流入部と左右の腕頭静脈を血行遮断し,左腕頭静脈から上大静脈にかけて血管を切開し展開した.奇形腫は血管内に穿孔しており,腫瘍が浮遊している状態であった.腫瘍と左腕頭静脈を合併切除した.奇形腫は隣接臓器への穿孔の頻度が高く,検診発見,無症状の奇形腫でも周辺大血管を含む隣接臓器への穿孔を念頭に術式を決定する必要がある.
  • 赤山 幸一, 宮田 義浩, 伊関 正彦, 山木 実, 山口 剛, 山本 英喜, 古賀 理恵, 柴田 諭, 吉岡 伸吉郎, 浅原 利正
    2008 年 22 巻 2 号 p. 231-235
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は20歳代,女性.2002年3月,左胸壁腫瘍に対し,左第1肋骨から第5肋骨までの広範囲胸壁切除を行った.切除が広範囲でMeshの縫着部位に乏しく,背側胸郭で胸郭動揺の危険性がないため,胸壁再建は行わなかった.病理組織学的検査でデスモイド腫瘍と診断され,また切除断端陽性であったため,放射線治療とタモキシフェンによるホルモン療法を開始した.術後2日目より左上肢の外転を試みると,肩甲骨が胸腔内に陥入し肋骨にブロックされ,上肢の可動性が失われた.放射線治療終了後に肩甲骨の胸腔内陥入を防止するため,meshを肩甲骨に巻きつけるようにして肩甲骨を固定した.その後陥入はなく,また術後5年目の時点で再発を認めていない.胸壁の広範囲切除後の上肢外転障害に肩甲骨固定術は有用な方法である.
  • 田中 宏和, 川辺 正和, 渡辺 裕介, 中出 雅治
    2008 年 22 巻 2 号 p. 236-240
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例はシェグレン症候群を合併する多発性筋炎(Polymyositis,以下PM)と診断された56歳の男性.無症候性縦隔気腫出現後に両側気胸を発症したため持続胸腔ドレナージを開始した.約1ヵ月間,気漏が持続したため,胸腔鏡を用いて一期的に両側気漏箇所を切除し気胸は改善した.多発性筋炎における無症候性縦隔気腫の報告は稀であり,自験例は多発筋炎が合併した気胸に対する2例目の手術報告である.
  • 森川 洋匡, 田中 亨, 濱路 政嗣, 上野 陽一郎
    2008 年 22 巻 2 号 p. 241-244
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    57歳,男性.主訴は発熱.繰り返す肺炎の既往あり.肺炎と診断され抗生物質の投与を受けたが胸部X線上異常陰影は消失しなかった.胸部CT上左肺下葉には最大径6cmの腫瘤影と下行大動脈より分岐し腫瘤影へ注ぐ異常血管が認められた.大動脈造影検査では大動脈より肺底区へ流入する拡張した異常血管がみられたが,還流静脈を同定することは出来なかった.以上の検査結果より肺底動脈体動脈起始症と診断し手術を施行した.手術所見では正常肺と異常肺の境界が不明瞭なため,胸部下行大動脈より左肺下葉へ流入している異常動脈を切離し左肺下葉切除術を行った.切除標本の所見は肺内で約6cmまで拡大し血栓を伴った異常血管が左肺底区へ流入していた.繰り返す肺炎や改善しない胸部異常陰影がある症例では本疾患の可能性も考慮した精査と診断がつけば検査結果を考慮した術式での手術が必要と考えられた.
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