日本呼吸器外科学会雑誌
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22 巻, 4 号
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原著
  • 西 英行, 鷲尾 一浩, 間野 正之
    2008 年 22 巻 4 号 p. 616-619
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    1993年1月より2007年8月までに当院で診断・加療された胸膜中皮腫79例のうち手術症例22例を対象とし,手術適応や術式について検討した.22例の性別は男性21例,女性1例で,平均年齢は61.9歳であった.組織型は,上皮型11例,肉腫型3例,二相型2例,線維形成型6例であった.International Mesothelioma Interest Group(IMIG)分類による術後病期は,I期11例,II期3例,III期8例であった.手術の2年生存率は52.8%,5年生存率44.0%であった再発形式は,リンパ節再発3例,前縦隔2例,心嚢内1例,対側肺1例,肝転移1例であった.T因子による検討では,T1-2がT3より有意に予後良好であった.III期症例の手術療法と化学療法の検討では予後に有意差は認められなかった.早期症例は手術適応と考えられた.III期症例に対する手術の位置づけと手術症例に対する新たな戦略を検討する必要があると考える.
  • 山田 勝雄, 加藤 真司, 関 幸雄, 平松 義規, 重光 希公生, 伊藤 正夫
    2008 年 22 巻 4 号 p. 620-624
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    7例の非結核性抗酸菌(NTM)症に対し,肺葉切除2例,肺区域切除2例,肺部分切除3例の外科的処置を試行し良好な結果を得た.特に,肺部分切除は胸腔鏡下に行い,手術侵襲としても低く,術後の残存呼吸機能も十分保たれ,術後の入院期間も3日と満足のいく結果であった.術後の経過観察期間は平均20.7ヵ月であり,現時点で再燃・再発が確認された症例は無く十分治療効果があったと考える.これまで国内外を含め外科治療の適応基準は存在するが,明確なエビデンスに基づいたものはない.今回,7症例のうち5症例がこれまでの外科治療の適応基準に合致しなかった.これまでの適応基準に合致しない症例の中にも外科治療の適応があると考えられる例が存在する.今後,症例を集積・検討し,新たな手術の適応基準を作成することが必要と考える.
  • —積極的縮小手術の有用性
    大倉 英司, 尹 亨彦
    2008 年 22 巻 4 号 p. 625-630
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    1999年1月から2005年12月の間に当科で手術を施行した非小細胞肺癌324例の患者を80歳以上の高齢者群(26例)と79歳以下の非高齢者群(298例)の2群に分けて,術前背景因子・手術成績・予後について比較検討した.術前合併症,肺機能などの術前状態および縮小手術,術後合併症,在院日数については両群間に差はなかった.唯一有意差があったのは,リンパ節郭清範囲であり,高齢者群には有意に多く縮小郭清を行っていた(p<0.0001).高齢者の5年生存率(47.1%)は非高齢者群(70.4%)と比較して予後不良の傾向にはあるが有意ではなく,局所再発の頻度も高くなかった.高齢者に対する積極的縮小手術,特に縮小郭清は選択されうる治療法となることが示唆された.
  • 石本 真一郎, 大森 一光, 村松 高, 四万村 三惠, 古市 基彦, 竹下 伸二, 根岸 七雄
    2008 年 22 巻 4 号 p. 631-635
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    当科にて手術施行した肺アスペルギローマの16症例について検討した.13例(81.3%)に基礎疾患を認め,最も多かったのは結核で5例,次に白血病が4例で,気管支拡張症,間質性肺炎,肺癌,全身性エリテマトーデス(SLE)が各1例であった.特に基礎疾患を認めなかったのは3例であった.呼吸器症状は喀血・血痰が7例(43.8%)で最も多かった.この症例をsimple aspergillomaとcomplex aspergillomaに病型分類すると,術式は,simple aspergillomaでは肺葉切除が3例,部分切除が2例,complex aspergillomaでは肺葉切除が5例,区域切除が4例,胸郭成形術+空洞切開+筋肉弁充填術が2例であった.また,術後在院日数,手術時間,出血量では,いずれにおいても有意にsimple aspergillomaで少ない値となった.さらに,胸郭成形術+空洞切開+筋肉弁充填術は大きな術後合併症も無く,癒着が高度な症例では有効な術式と考えられた.
症例
  • 高橋 祥司, 高木 啓吾, 秦 美暢, 田巻 一義, 加藤 信秀, 笹本 修一
    2008 年 22 巻 4 号 p. 636-640
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    主気管支腔内を中枢側進展し,一側無気肺による急性呼吸不全を来たした右上葉肺癌に対し,全身麻酔硬性気管支鏡下腫瘍debulkingを施行し,その後待機的根治切除を行った2例を経験した.いずれも低分化型腺癌で,右主気管支の腫瘍を硬性外筒でcore outし,無気肺を改善させてから,待機的に右上葉管状切除術を施行した.症例1は46歳,男性,病理病期III b期(p-T4N2M0)で,現在術後39ヵ月で無再発生存中であり,症例2は79歳男性,病理病期II b期(p-T3N0M0)で,術後日常生活に復したが術後5ヵ月で腫瘍死となった.硬性気管支鏡下腫瘍debulkingは,QOLの一時的な改善のみならず,肺癌に対するその後の集学的治療をすすめる上で有用であった.
  • 上神 慎之介, 平井 伸司, 三井 法真, 松浦 陽介, 濱中 喜晴
    2008 年 22 巻 4 号 p. 641-644
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    症例は54歳女性.2005年6月会社の健診にて胸部異常陰影を指摘され当院呼吸器内科に紹介となった.胸部CT検査で右中葉胸膜直下に辺縁不整な10mm大の結節影を認められたがPET検査は陰性であったため経過観察されていた.しかし2006年1月のCT検査で肺癌の可能性も否定できず確定診断,治療目的で当科に紹介となり胸腔鏡下手術を施行した.迅速病理検査で血管腫と診断され,病理組織学的検査で毛細血管腫(capillary hemangioma)と最終診断された.術後経過良好で合併症もなく軽快退院となった.肺の孤立性の毛細血管腫についての報告は極めて稀であり文献的考察を加えて報告する.
  • 本望 聡, 有倉 潤, 山崎 弘貴, 青木 裕之, 永瀬 厚
    2008 年 22 巻 4 号 p. 645-648
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    自然気胸に対して,病側に胸腔鏡下手術を施行直後,両側性の再膨張性肺水腫が発生した.著しい呼吸機能の低下を認めたが,人工呼吸器による呼吸管理と,シベレスタットナトリウムとウリナスタチンの投与,およびステロイドパルス療法により,重症化することなく速やかに軽快した.
  • 四方 裕夫, 河野 美幸, 神野 正明, 松原 純一
    2008 年 22 巻 4 号 p. 649-653
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    86歳の女性.動悸と胸部圧迫感と発熱,咳嗽があり食道裂孔ヘルニアに起因する症状と診断され当科に紹介入院となった.胸部X線写真で縦隔に拡大した胃泡と水平面を示す胃液の存在を認めた.巨大な食道裂孔ヘルニア(voluminous hiatus hernia)とバリウム検査で判明した.高齢であり腹腔鏡下手術を選択し,胸腔へ脱出していた横行結腸の一部,全胃,食道胃接合部を腹腔内へ整復し,Modified Nissen fundoplicationの手術を行った.術後4日目に食事開始して10日目に合併症もなく退院した.2年後他疾患での死亡まで再発は認めなかった.呼吸器外科医にとって横隔膜ヘルニア,横隔膜弛緩症,外傷性横隔膜ヘルニアなどに時々遭遇することがあり食道裂孔ヘルニアに通じておくことは重要と考える.
  • 及川 武史, 野本 靖史, 木下 孔明, 平田 剛史
    2008 年 22 巻 4 号 p. 654-660
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    緊張性気胸により完全気道閉塞となった気管支腫瘍を経験したので報告する.症例は30歳男性.以前より喘息を指摘されていたが咳嗽が悪化したため近医受診.胸部レントゲン写真上に異常陰影を指摘されたため,当センター呼吸器内科に紹介され入院となった.入院後の気管支鏡にてポリープ状巨大気管支腫瘍が左上区支末梢より発生し気管へ突出していることを確認し,生検を行いfibroepithelial polypと診断した.初回治療では気管に突出している部分の腫瘍のみを気管支鏡にてスネアリングおよびレーザー焼灼した.その後,追加治療を計画していたが,突然の呼吸停止を認めた.気管内挿管施行後の気管支鏡では腫瘍が気管を閉塞しており,胸部X線写真では左緊張性気胸となっていた.呼吸器外科に転科後,左上葉切除術を施行し気管支腫瘍を摘出した.現在まで約2年の経過観察を行っているが無再発生存中である.
  • 橋本 修, 山口 明, 岡田 信一郎
    2008 年 22 巻 4 号 p. 661-665
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性.ゆでた毛蟹の足をはさみで短く切り,蟹肉を片側から吸いながら食べているうち,殻ごと気道内に吸い込んでしまった.胸部CTで,蟹足片が気管下端から左主気管支にかけて誤嚥されているのを認めた.気管支鏡で局所麻酔下,全身麻酔下に長時間,摘出を試みたが,毛蟹の足の棘(とげ)が気管支壁に刺さり摘出不可能であった.やむを得ず,開胸下に蟹足片を摘出することにした.左側臥位とし,French-window thoracotomy法で右開胸を行い,気管分岐部直上で気管を約2cm横切開した.鉗子で蟹足片をつかんで摘出しようとしたが固定されて動かないため,はさみで蟹足片を細切して摘出した.急性の気管・気管支内異物は通常気管支鏡下に摘出可能なことが多いが,異物が強固に気管・気管支壁に固定されて動かない場合には開胸手術が必要になることがある.
  • 山本 澄治, 花岡 俊仁, 多田 明博, 大谷 弘樹, 福原 哲治, 小林 一泰, 佐伯 英行
    2008 年 22 巻 4 号 p. 666-671
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    症例は68歳女性.慢性副鼻腔炎の既往がある.2003年11月,胸部CT検査にて右S9に5cm大の結節影とS8に小結節影を指摘された.2004年4月,CTにて右S9の腫瘤は増大し,内部に空洞と液面形成を認めた.また,両肺野に新たな小結節の増加を認めた.気管支鏡検査にて悪性所見なく,確定診断目的に開胸下右下葉切除術を施行し,diffuse large B-cell lymphoma(DLBL)の診断を得た.肺原発悪性リンパ腫は既存の肺構造を破壊することなく病変が広がる特徴があり空洞形成を呈することは稀である.しかし,自験例を含め空洞形成をきたした症例は数例ありいずれもDLBLであった.肺原発悪性リンパ腫のうち大部分が低悪性度のmucosa-associated lymphoid tissue(MALT)lymphomaであり,より悪性度の高い稀なDLBLでは壊死傾向を示し空洞形成をきたす可能性が考えられた.
  • 山下 眞一, 吉田 直矢, 諸鹿 俊彦, 宮脇 美千代, 河野 洋三, 中城 正夫, 川原 克信
    2008 年 22 巻 4 号 p. 672-676
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,男性.20年前より右下肺野の異常陰影を指摘されるも放置.1994年,前医にて偽リンパ腫の診断受けるが未治療で経過観察されていた.今回病変の拡大認めたためTBLB施行しMALTリンパ腫と診断され化学療法を予定されていたが,右気胸と胸水貯留のため緊急入院し手術を行った.術後経過は良好であった.肺原発MALTリンパ腫は比較的予後良好な疾患であるが診断確定後は集学的治療と厳重なフォローが必要と思われる.
  • 松田 英祐, 岡部 和倫, 八木 隆治, 杉 和郎
    2008 年 22 巻 4 号 p. 677-681
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    肺アスペルギローマは既存の肺内空洞病変にアスペルギルス菌体が定着,増殖することで成立するとされる.既存病変としては結核によるものが最も多い.今回我々は既存病変の明らかでない,比較的若年の男性に発生した原発性アスペルギローマと考えられる1例を経験したので報告する.症例は50歳,男性.咳を主訴に近医を受診した.胸部レントゲンにて肺膿瘍と診断され,当院へ紹介となった.右上葉に壁不整な空洞性病変を認め,気管支鏡検査にて肺アスペルギルス症と診断した.他肺葉に病変を認めず,右上葉切除術を行った.病理学的には拡張した気管支からなる空洞と内部にアスペルギルス菌塊を認め,肺アスペルギローマと診断した.本症例は既存の肺疾患を認めず,原発性肺アスペルギローマと考えられた.
  • 高橋 剛士, 阪本 仁, 小阪 真二
    2008 年 22 巻 4 号 p. 682-685
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,女性.最大径14mm大の肺腺癌に対して胸腔鏡下に左肺上区域切除術を行った.第3病日に激しい咳嗽が突然出現し,胸部単純X線写真で左肺の透過性低下および左横隔膜上にair spaceが認められた.気管支鏡検査で気管支全体が反時計回りに90°捻転していることが判明した.第7病日に再開胸を行い,残存下葉および舌区の捻転の解除を行った.再手術約4年半経過するが,再捻転は認めていない.頻度は比較的低いが,肺切除術において術後肺捻転は常に留意すべき合併症の一つである.
  • 古屋敷 剛, 中里 宣正, 須田 一晴, 関 恵理奈, 大塚 弘毅, 輿石 義彦, 呉屋 朝幸
    2008 年 22 巻 4 号 p. 686-690
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    縦隔型胚細胞腫瘍を発症したダウン症の1例を報告する.症例は20代後半の男性.ダウン症の経過観察中に胸部異常陰影を指摘された.胸部CTにて前縦隔に9.0×7.0×5.0cmの腫瘍を認め,CT下針生検所見から胚細胞腫瘍と診断した.術前化学 治療(BEP)を2コース施行後,胸骨正中切開・拡大胸腺全摘術・心膜合併切除術を施行した.病理組織所見ではセミノーマと奇形腫の混合型胚細胞腫瘍と診断された.大部分が化学治療によって変性していたが,一部にviableな成熟奇形腫成分を認めた.現在治療後4年経過し腫瘍の再発を認めていない.縦隔型胚細胞腫瘍はクラインフェルター症候群の合併が報告されているが,検索した限りダウン症に合併した報告はなく,貴重な症例と考えられた.
  • 張 性洙, 中野 淳, 奥田 昌也, 三崎 伯幸, 石川 真也, 山本 恭通, 黄 政龍, 横見瀬 裕保
    2008 年 22 巻 4 号 p. 691-695
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    シェーグレン症候群に合併した結節性肺アミロイドーシスの2例を経験した.症例1は67才男性.健診で左肺下葉に石灰化を伴う径15mmの結節影を指摘された.肺過誤種を疑い核出術を施行しAAアミロイドーシスと診断した.元来dry eyeを認めており,抗SS-A抗体陽性,Lip biopsyによりシェーグレン症候群と診断した.症例2は42才女性.健診で胸部異常影と肝機能障害を指摘.シルマーテスト,SAXONテスト,Lip biopsy,抗SS-A, -B抗体陽性よりシェーグレン症候群と診断した.また両肺に多発する結節影を認め小開胸肺生検を施行,ALアミロイドーシスと診断した.2症例とも全身検索で他部位にアミロイド沈着を認めず結節性肺アミロイドーシスと診断した.シェーグレン症候群には種々の肺病変の合併が知られているが,肺アミロイドーシス合併の報告は極めてまれであり文献的考察を加えて報告する.
  • 高橋 剛士, 阪本 仁, 宮本 信宏, 小阪 真二
    2008 年 22 巻 4 号 p. 696-700
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    症例は81歳女性.2001年7月胸部異常陰影を指摘され,当科を紹介された.胸部CTにて上行大動脈左壁に接する腫瘤陰影,および上行大動脈右壁に接する腫瘤陰影を認めた.腫瘍マーカーでは,NSE=11.7ng/ml(cut off値=10.0ng/ml)のみ高値を示した.前縦隔腫瘍の診断で2002年1月左右の前縦隔腫瘍摘出術および拡大胸腺摘出術を行った.右前縦隔の腫瘍には壊死組織のみで悪性所見は認められなかった.左前縦隔の腫瘍には神経線維基質を伴った円型の細胞が数珠状に配列しているのが認められた.神経系免疫染色に陽性を示し神経芽腫,Ewing肉腫,未熟神経外胚葉性腫瘍(=primitive neuroectodermal tumor,以下PNET)など神経原性腫瘍と考えられた.MIC-2染色には陰性を示したことから,Ewing肉腫およびPNETは否定的であり,81歳と高齢ではあるが神経芽腫であると考えられた.計46Gyの放射線治療を術後に追加したが,左胸腔内へ再発および多発骨転移のため術後約4年後に死亡した.
  • 平井 伸司, 濱中 喜晴, 三井 法真, 上神 慎之介, 松浦 陽介
    2008 年 22 巻 4 号 p. 701-704
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    43歳,女性.健診で縦隔腫瘍を疑われ当院受診,胸部CT,血液生化学的諸検査などが施行された.CA19-9の高値(108U/ml),前縦隔に約3×4cmの隔壁を有する嚢胞性病変が認められ,手術が施行された.腫瘍は左前縦隔に存在し,胸腺左葉と連続しており,左上葉,左縦隔胸膜とも強固に癒着していた.左上葉の部分切除と癒着した縦隔胸膜とを一塊にして胸腺摘出術を施行した.病理診断は膵組織を伴う成熟型奇形腫であった.術前上昇していたCA19-9は術後正常化し,腫瘍内産生が示唆された.成熟型奇形腫は診断時に無症状であっても周囲組織と強固な炎症性癒着を起こし,合併切除が必要になることがあり,注意を要すると考えられた.
  • 篠原 博彦, 土田 正則, 橋本 毅久, 佐藤 征二郎, 武内 愛, 竹重 麻里子, 林 純一
    2008 年 22 巻 4 号 p. 705-708
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    症例は65歳女性,44歳時より慢性腎不全に対し透析を導入されていた.41歳時に右乳癌に対し根治的切除術および放射線治療,化学療法を施行された.その後前胸部に皮膚潰瘍が出現し,保存的に加療されていたが63歳頃より肋骨が露出し,出血と骨髄炎を認めるようになったため手術を行った.第2・3・4肋骨と胸骨の一部を切除し,広背筋皮弁を充填した.胸壁の補強は特に行わなかった.術後は筋皮弁の感染や壊死を認めず,軽快退院した.現在まで骨髄炎の再燃は認めていない.乳癌術後の放射線治療により皮膚潰瘍が生じ,時には胸壁深部に到る骨髄炎を引き起こすことが知られている.壊死組織の十分なデブリードメントと血行豊富な筋皮弁充填を行うことにより,良好な経過を得ることができた.
  • 池田 岳史, 佐々木 正人, 平井 誠也, 木村 雅代
    2008 年 22 巻 4 号 p. 709-712
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の男性,2006年7月18日,心臓を著明に圧排する左前縦隔の巨大腫瘤性病変の精査のため当科入院.入院翌日に多量の左胸腔内出血,縦隔の著明な右方偏位を認めたため緊急手術を施行した.術後病理組織検査にて悪性孤立性線維性腫瘍Malignant solitary fibrous tumor(SFT)の診断を得た.周囲組織に浸潤を伴う巨大腫瘍を認め肉眼的には完全切除と判断したが,6ヵ月後に局所再発および右肺転移を認め,局所再発巣に対して2007年1月再手術を施行した.浸潤型のSFTは完全切除が困難であり術後の補助化学療法の検討が必要であると考える.SFTに対して確立された抗癌剤治療は未だ存在しておらず,今後,有効な抗癌剤治療の開発が望まれる.
  • 石川 将史, 川上 賢三, 木曾 末厘乃
    2008 年 22 巻 4 号 p. 713-719
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    症例は60歳女性.2002年5月頃より右背部痛を自覚.精査にて第3-5胸椎右側の躯幹直立筋内および右肺上葉に腫瘍陰影を認めた.背部腫瘍の生検では確定診断が得られず,右肺の腫瘍は肺癌が疑われ同年11月 右上葉切除・リンパ節郭清術を施行.針生検による術中迅速病理診断では腺癌との報告であったが,永久病理標本では類上皮血管内皮腫(Epithelioid Hemangioendothelioma)との診断であった.その後背部腫瘍が増大し,2003年6月胸膜炎を発症.胸水細胞診陽性であった.背部腫瘍の再生検でEHEと診断され,肺の腫瘍は転移と考えられた.同年8月髄膜炎症状を呈して死亡した.EHEは特殊な形態を呈する血管内皮細胞由来の境界悪性の腫瘍である.多彩な病態と興味深い経過を辿った軟部組織原発のEHEの1例を報告する.
  • 井上 政昭, 西川 仁士, 鬼塚 貴光, 宗 哲哉, 能勢 直弘
    2008 年 22 巻 4 号 p. 720-724
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    多発肋骨骨折を合併する鈍的胸部外傷の手術適応と時期に関しては多くの議論がされている.多発肋骨骨折に伴う疼痛や胸郭変形は生命予後には直接関与しないが,その後の生活に影響を与える可能性が考えられる.そのため手術適応を決定するときにはこれらの因子も考慮する必要があると考えられる.また肋骨整復術に伴う皮膚切開創は,若年患者においては精神的な苦痛を強いる可能性が考えられる.我々はこれらの因子を考慮して疼痛の改善と胸郭変形の改善を目的に,小皮膚切開下にステンレスプレートを使用し肋骨整復術を行い良好な結果を得ることが出来た.
  • 八木 隆治, 上田 和弘, 田中 俊樹, 神保 充孝, 濱野 公一
    2008 年 22 巻 4 号 p. 725-728
    発行日: 2008/05/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    肺腫瘤に対する生検,マーキング,あるいはセンチネルリンパ節同定などの目的で肺穿刺を行う機会が増加しつつある.今回われわれはCTガイド下マーキングによる脳空気塞栓症と思われた1例を経験したので報告する.症例は77歳,男性.右S6に15mm大のスリガラス陰影を認め,胸腔鏡下生検の予定であった.肺内病変であったため手術直前にVATSマーカーを用いたCTガイド下肺穿刺を行った.腹臥位とし胸膜より約3cmの深さにマーカー留置した.咳嗽,血痰を認めなかったが移動時にふらつきを認めた.直ちに頭低位としCTを撮影したところ左室,肺動脈内にair像を認めた.意識状態に変化を認めず,頭低位として酸素投与を行い直ちに症状は軽快した.肺穿刺を行う際は常に空気塞栓の可能性を念頭におく必要がある.
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