日本呼吸器外科学会雑誌
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22 巻, 6 号
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原著
  • 野田 雅史, 佐渡 哲, 桜田 晃, 星川 康, 遠藤 千顕, 岡田 克典, 松村 輔二, 近藤 丘
    2008 年 22 巻 6 号 p. 856-860
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    【目的】難治性気胸の術後合併症リスク評価.【対象と方法】高齢者難治性気胸手術症例43例に対し,術前背景因子,術前臓器機能因子,術前評価可能な麻酔手術侵襲等について比較検討し,単変量解析によるリスク評価を行った.続いて多変量解析を行い,高齢気胸術後合併症リスク評価を試みた.【結果】男性41例女性2例で,術後合併症は10例(23.3%)で認められた.諸因子別網羅的解析では,全25項目中血清TP,Alb,chE,Na低値群およびPS,酸素投与群,麻酔スコア値で有意であった.すべての因子による多変量解析ではPS低値群にて有意に合併症が発生した(odds比:73.7,P=0.003).【結語】高齢者難治性気胸ではperformance status不良,低栄養状態,低Na群および酸素吸入群は全身麻酔手術ハイリスク群である.
  • 高濱 誠, 山本 良二, 中嶋 隆, 宮田 俊男, 多田 弘人
    2008 年 22 巻 6 号 p. 861-867
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    当センターにおける悪性気道狭窄に対する硬性気管支鏡下ステント留置症例をretrospectiveに検討した.2003年1月から2007年5月までに施行された硬性鏡下治療症例73例のうち悪性疾患による気道病変に対して硬性気管支鏡下ステント留置が施行された55例を対象とした.狭窄の様式は,粘膜浸潤型24例,壁外型24例,混合型7例.ステントの種類は,Dumon 12例,Dumon Y型(Y)21例,EMS 17例,Y+EMS 5例.ステント留置により,呼吸状態の改善は全例で認められ呼吸状態の悪化は認めなかった.PSは46例(86.8%)で改善した.術後人工呼吸管理を要したもの10例,肉芽形成4例,ステントの移動2例であり,術後2日以内に2例が死亡した.ステント挿入後のMSTは2.5ヵ月,平均生存期間は4.9±5.2ヵ月であった.悪性気道狭窄に対する硬性気管支鏡下ステント留置は患者のADLの改善および呼吸困難の改善に有用であったが,術前全身状態不良が多く,術後管理には注意を要する.
  • 大角 明宏, 宮本 好博, 山本 一道, 長井 信二郎, 今西 直子, 三浦 幸樹
    2008 年 22 巻 6 号 p. 868-875
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    症例1:気管支転移により中間幹が閉塞.中葉・S6区域管状切除・気管支形成を行い底区を温存した.症例2:左肺門部リンパ節転移が左下幹に浸潤・閉塞.左下葉・舌区管状切除・気管支形成を行い上区を温存した.症例3:左B1+2入口部に気管支転移,B3を救うべくcovered Ultraflex stentを留置,しかしステントを越えて腫瘍が増大し,左主気管支から底幹にかけてsilicone stentを留置.その後も腫瘍増大のため切除を繰り返したが,気管下部にまで突出し呼吸不全死した.症例4:気管支転移により左主気管支が閉塞.症例5:気管支転移により右主気管支・左底幹が閉塞.症例4・5に対して,Dumon Y stentを留置後,放射線照射を行い頻繁な切除を要しなくなった.腎細胞癌の転移による気道狭窄に対しては,可能な限り切除することが望ましいと考える.しかし切除不能あるいは耐術でない場合は,Y stentの留置後に放射線照射を行うことで気道確保が期待できる.
  • —低用量未分画ヘパリン投与の効果と安全性—
    村岡 昌司, 生田 安司, 劉 中誠, 森永 真史, 君野 孝二
    2008 年 22 巻 6 号 p. 876-880
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    肺癌手術症例における低用量未分画ヘパリン投与による術後肺血栓塞栓症予防の効果と安全性について評価を行った.3年間に経験した肺癌手術83例(男性49例,女性34例,68.9±9.2歳)に対して,術当日より低用量ヘパリンを十分に離床するまで投与した.この期間に症候性術後肺血栓塞栓症の発症はなかった.ヘパリンの投与量は1日5000単位26例,10000単位57例で,投与期間は4.8±2.6日,術後のドレーン留置期間は6.7±2.5日でヘパリン投与開始前の症例と差はなかった.術後合併症は,胸腔内出血2例,皮下血腫3例などで,胸腔内出血の2例はヘパリン10000単位/日の症例であった.肺癌手術例に対する術後肺血栓塞栓症予防を目的とした低用量ヘパリン投与の安全性について,出血に関する術後合併症増加に注意を要し,ヘパリンの至適投与量や適応および中止基準などに関して,さらに検討が必要と考えられる.
症例
  • 狩野 孝, 太田 三徳, 新谷 康, 池田 直樹, 岩崎 輝夫
    2008 年 22 巻 6 号 p. 881-885
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,女性.2006年8月,職場検診の胸部レントゲン写真において左肺尖部に腫瘤影を指摘され,左前腕しびれ感もあったため当院紹介入院となった.胸部造影CTおよびMRIにより,胸郭入口部発生神経原性腫瘍と診断し手術を施行した.左側頚部襟状切開の上,胸腔内より胸腔鏡で観察して腫瘍と左鎖骨下動脈との剥離を行い,腕神経叢より発生した直径2cmの神経鞘腫を摘出した.術前より自覚した尺側神経麻痺は,術後一旦悪化したが運動療法により改善し第12病日に退院となった.
  • 古川 公之, 諏澤 憲, 竹尾 正彦, 山本 満雄
    2008 年 22 巻 6 号 p. 886-889
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    症例は73歳女性.1998年10月左乳癌手術.2007年2月胸部CT検査で右中葉,下葉に1cm大の結節を3個認めた.血液検査では異常所見を認めなかった.しかし転移性肺腫瘍を否定できないと考え,確定診断のため胸腔鏡補助下手術を行った.術中所見では右中葉,下葉に弾性硬の腫瘤を触知し,3ヵ所肺部分切除を行った.術中迅速病理検査の結果では明らかな悪性所見はなかった.切除標本肉眼的所見では腫瘤は最大1.3×1.0cm,割面は灰白色,周囲との境界は明瞭だった.他の2個も同様の所見であった.病理組織学的検査ではアミロイドーシスであった.以上の所見より,本病変は肺アミロイドーシスと診断された.本症はまれな疾患で,結節影として検診や他疾患治療中に偶然発見されることが多い.CT検査の普及により,今後遭遇する機会が増える可能性があり,肺癌や転移性肺腫瘍などとの鑑別上,考慮しておく必要がある.
  • 中村 幸生, 松村 晃秀, 桂 浩, 阪口 全宏, 伊藤 則正, 北市 正則
    2008 年 22 巻 6 号 p. 890-893
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    乳癌術後25年目に肺転移再発を来した1例を経験したので報告する.症例は69歳女性.42歳時に右乳癌に対して乳房切除術を施行され,45歳時に乳癌の左肺転移再発を来し左肺下葉切除術を施行された.以後再発なく経過していたが,67歳時に施行された胸部CT検査にて右上肺野に異常影を指摘され,乳癌の肺転移を疑われた.前医にて内分泌療法を施行されるも増悪するため,2007年5月当科紹介となった.気管支鏡検査では右B2b内へ突出する隆起性病変を認め,気管支鏡下生検で腺癌と診断された.免疫組織染色でTTF-1陰性,ER陽性であったことから,乳癌の肺転移再発と診断した.単発性転移であり肺以外に転移巣がみられなかったことから,右肺上葉切除術を施行した.摘出標本の最終病理組織診断でも乳癌肺転移再発と診断した.術後経過は良好で,第19病日に退院し現在も無再発生存中である.
  • 北見 明彦, 神尾 義人, 鈴木 浩介, 佐藤 庸子, 門倉 光隆
    2008 年 22 巻 6 号 p. 894-898
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    他疾患の精査中に前縦隔腫瘍が発見されることはしばしばあるが,ともに手術が必要な心臓疾患と前縦隔腫瘍の合併例の報告は比較的少ない.今回われわれは術中に心嚢内播種が確認された胸腺腫と大動脈弁置換術との同時手術例を経験したので報告する.症例は73歳男性.労作時呼吸困難を主訴に他院を受診.精査の結果大動脈弁閉鎖不全と診断され,また胸部CT上前縦隔腫瘍を指摘された.腫瘍はCTガイド針生検で胸腺腫と診断された.2003年5月手術を施行.腫瘍は心嚢,左腕頭静脈への浸潤を認め,血性心嚢液,心嚢内播種も確認された.腕頭静脈,心嚢を合併切除し腫瘍を摘出したが,不完全切除に終わった.続いて大動脈弁置換術を施行した.胸腺腫の病理はWHO分類Type B3であった.術後縦隔に60Gyの放射線照射を施行した.術後33ヵ月に肺炎呼吸不全で亡くなったが,遺残腫瘍の再増大は緩徐で,また心不全症状はなくQOLは良好であった.
  • 坂口 泰人, 河野 朋哉, 中山 英, 寺田 泰二
    2008 年 22 巻 6 号 p. 899-903
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    症例は62歳男性,2005年5月に交通外傷にて右5-7肋骨骨折を受傷.同年6月上旬より労作時呼吸困難を自覚し,近医を受診し胸部レントゲン写真上,左横隔膜挙上を指摘され当科を紹介受診.頚部MRI所見から頚椎症性の左横隔神経麻痺による横隔膜弛緩症と診断し完全鏡視下横隔膜縫縮術を施行した.術後2年後も呼吸機能の改善および自覚症状の改善は継続している.
  • 舘 秀和, 矢野 智紀, 佐々木 秀文, 雪上 晴弘, 川野 理, 藤井 義敬
    2008 年 22 巻 6 号 p. 904-909
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    稀な肺衝突癌の1手術例を報告する.症例は72歳男性.検診で異常陰影を指摘された.CTにて右下葉に71×60×22mm大の含気を伴う高濃度吸収域を認め,その部位に接して22×12mm大の結節影を認めた.肺癌の疑いで,右下葉切除術を施行.病理組織所見では,扁平上皮癌と腺癌の衝突癌と考えられ,2種類の境界は比較的明瞭であった.扁平上皮癌成分と腺癌成分はともにpT2N0M0 p-stage IBであった.術後経過は良好で,外来にて経口抗癌剤内服していたが,術後10ヵ月胸腔内播種および肺内転移再発を認めた.衝突癌は予後不良例が多く,完全切除術後であっても厳重な経過観察が必要である.
  • 狩集 弘太, 中村 好宏, 吉川 弘太, 花岡 伸治, 田畑 和宏, 坂田 隆造
    2008 年 22 巻 6 号 p. 910-913
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    ウエステルマン肺吸虫症による気胸の1例を経験したので報告する.症例は76歳,男性.気胸の診断にて前医で胸腔ドレナージ施行され一旦は治癒したが,再発したため当科紹介となった.末梢血好酸球比率の上昇,好酸球性胸水を認め肺吸虫症を疑ったが,混濁した胸水と肺瘻の持続を認めたため胸腔鏡下手術を施行した.明らかな肺瘻部は不明であったが,膿苔の付着した肺を部分切除し気胸は改善した.術後,血清学的診断にて肺吸虫症と診断し,プラジカンテルの内服治療を行った.術後約8ヵ月を経過し再発を認めていない.
  • 及川 武史, 野本 靖史, 木下 孔明
    2008 年 22 巻 6 号 p. 914-919
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    小型肺腫瘤に対する術前CTガイド下マーキングは一般的に行われている.合併症として空気塞栓を発症し,脳塞栓や心筋虚血などを合併し死に至る可能性もある.我々はCTガイド下マーキング時に空気塞栓症を発症し,その後左半身麻痺が残存した1例を経験したので,考察を加え報告する.症例は59歳男性.胸部CTにて充実性陰影を伴うスリガラス陰影(mixed GGO)を指摘され,当センター紹介となった.3ヵ月間の経過観察で変化がなかったため,手術による精査加療のため入院となった.胸部CTでは術中触知不能と考えられる小型mixed GGOであるため,術前CTガイド下マーキングを施行した.手術当日,マーキング終了直後の咳嗽とともに意識レベルの低下,血圧低下および呼吸状態の悪化を認めた.頭部CTにて右脳血管内空気塞栓と心電図のST上昇が確認され,直ちに救命処置を行った.しかし,左半身麻痺は残存し,発症後4ヵ月の現在リハビリ中である.
  • 今給黎 尚幸, 小池 輝元, 渡辺 健寛, 広野 達彦
    2008 年 22 巻 6 号 p. 920-924
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    症例は65才,男性.2002年4月,検診の胸部X線で左下葉の嚢胞状病変と結節影を指摘された,当院内科で気管支拡張症に伴う炎症を疑い,経過観察していた.2003年7月の胸部CTで結節影の増大を認め,肺癌の可能性を否定し得ず8月6日手術を施行した.術中迅速病理診断では過誤腫と診断されたが,嚢胞がほぼ下葉全体を占めていたため左下葉切除術を施行した.術後病理結果はほぼ下葉全体に広がる多発性の嚢胞病変(multicystic lesion)と辺縁不規則な,異型のない成熟した平滑筋の増生巣を認め,fibroleiomyomatous hamartomaと診断した,本疾患は非常に稀であり,長期的予後について検討された報告はなく,今後も注意深い経過観察が必要と思われる.
  • 町田 雄一郎, 田中 良, 相川 広一, 薄田 勝男, 佐川 元保, 佐久間 勉
    2008 年 22 巻 6 号 p. 925-928
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    核医学検査にて悪性が疑われた肺硬化性血管腫を経験した.60歳女性で,主訴は胸部異常陰影である.脳梗塞でフォロー中であったが,胸部異常陰影を認めたために,当科を紹介となった.胸部CTで右中葉に2.8×1.8cm大の腫瘤を認め,FDG-PETで弱陽性で,201Tl SPECTで陽性であった.また,半年前の胸部CTより3.0×3.0mm大きくなっていた.気管支鏡検査を施行したところ確定診断に至らず,悪性腫瘍の可能性を否定できなかったため,診断治療目的で手術となった.術中迅速診で,硬化性血管腫と診断した.硬化性血管腫に対するRI画像の報告例は少ないため,診断に難渋した.
  • 広瀬 敏幸, 中川 靖士, 長尾 妙子
    2008 年 22 巻 6 号 p. 929-932
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    今回我々は,健診で発見され,胸腔鏡下に切除した若年者発症のMycobacterium branderiの1例を経験したので報告する.症例は22歳,男性.生来健康であった.会社の健康診断にて胸部異常陰影を指摘され近医を受診.胸部CTにて右上肺野に空洞性病変を指摘され,肺結核疑いにて当院紹介,入院となった.胸部CTでは右S1に約3cm大の空洞性病変を認め,血清アスペルギルス抗原が陽性であったため,肺アスペルギローマと診断された.右上肺野に限局した病変であり,若年齢で全身状態も良好であることより,胸腔鏡下肺部分切除術を施行した.胸壁との癒着はなく,胸腔鏡下での切除は容易であった.空洞性病変内部の膿より抗酸菌を検出し,16S rRNA塩基配列にてM. branderiと診断された.術後の化学療法は行わずに約3年経過したが,特に症状もなく,再燃も認めていない.
  • 清井 めぐみ, 吉増 達也, 太田 文典, 内藤 古真, 平井 慶充, 岡村 吉隆
    2008 年 22 巻 6 号 p. 933-938
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    術前血清KL-6値が高値を示した大腸癌肺転移の2例を経験した.症例1:75歳男性.直腸癌術後follow-up中,血清CEA値の上昇と胸部CTの異常陰影を指摘された.術前KL-6値1800 U/ml.2005年6月,胸腔鏡下肺部分切除術を施行.病理組織診断で直腸癌肺転移と診断された.症例2:68歳男性.直腸癌術後follow-up中,胸部CTにて異常陰影を指摘された.術前KL-6値4010 U/ml.2005年11月,左上葉切除術を施行.病理組織診断で直腸癌肺転移と診断された.2例とも術後に血清KL-6値の低下を認めた.当科で術前に血清KL-6値が測定された転移性肺腫瘍22例の検討では大腸癌由来11例中KL-6陽性例は4例(36%).他臓器由来の11例では陽性例はなかった.機序は不明であるが大腸癌の肺転移では血清KL-6値の上昇が生じる可能性が考えられる.
  • 冨田 栄美子, 明石 章則, 福原 謙二郎, 中根 茂
    2008 年 22 巻 6 号 p. 939-942
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    症例は58才女性.消化管出血にて入院した際に施行したCTにて,右肺S6区域に4cm大の腫瘤陰影が認められた.気管支鏡検査を施行したところ,B6bに腫瘤の突出を認めたが,生検では診断が得られなかった.診断と治療を目的としてS6区域切除を施行した.術中迅速病理検査にて硬化性血管腫と診断された.気管支内腔への突出する硬化性血管腫は非常に稀であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 水谷 尚雄, 萱野 公一
    2008 年 22 巻 6 号 p. 943-947
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    症例は42歳の女性で,胸部レントゲン検査で右気胸を認めた.胸部CTでは右上葉の孤立性の結節影と胸水貯留,臓側胸膜肥厚を認めた.初診時より続発性自然気胸を疑い,診断・治療目的に胸腔鏡を施行した.結節病変は病理診断で肺アスペルギルス症と診断され,組織培養でMycobacterium avium intracellulare complexを認めた.免疫異常は指摘されなかったが,以後も経過観察中である.自然気胸で画像診断上,異常があれば診断・治療目的に積極的にVATSを行うべきである.
  • 笠井 由隆, 山本 恭通, 張 性洙, 後藤 正司, 森 奈都美, 三崎 伯幸, 横見瀬 裕保
    2008 年 22 巻 6 号 p. 948-952
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    症例は70歳女性.甲状腺癌の術後経過観察中に胸部CTで右S8に増大傾向を示す約1cmのすりガラス陰影(ground-glass opacity:GGO)を認め,原発性肺癌を疑った.インドシアニングリーン(ICG)静注を併用した赤外光胸腔鏡(IRTS)で観察したところ,病変部分は正常肺に比べ青く描出された.部分切除を行い,術中迅速病理組織診で腺癌(野口分類C型)と診断されたため,右下葉切除術を施行した.我々はこれまでにICG静注併用のIRTSが気腫肺の検出に有用であることを動物実験並びに臨床研究で明らかにしてきたが,今回の症例で,末梢小型肺癌もICG静注併用IRTSを用いて同定できる可能性が示唆された.
  • 伊藤 祥隆, 中屋 順哉, 小田 誠
    2008 年 22 巻 6 号 p. 953-956
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,女性.主訴はチアノーゼ.他疾患治療中にチアノーゼを指摘され当院紹介となった.胸部造影CT検査では右下肺静脈へ直接流入する右A8に加え右S6胸膜直下に拡張した動静脈を認めた.肺動脈造影検査では右A8から左房へのシャント血流を認めた.肺血流シンチでは肺外臓器への核種分布が確認され,右左シャントの存在は明らかでありシャント率は42%と計算された.以上より多発肺動静脈瘻と診断し右下葉切除術を行った.術前に45.0mmHgであった動脈血酸素分圧が術後には90.6mmHgと著明なる改善を認めるなど術後経過は良好であり,19病日に退院した.
  • 宮内 善広, 小池 輝明, 大和 靖, 吉谷 克雄
    2008 年 22 巻 6 号 p. 957-962
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    気管支原発の低悪性度腫瘍に対し肺実質切除を伴わない気管支形成術を施行した3例につき検討した.症例は20~47歳の男性2例,女性1例で,0~I次気管支に発生した気管支カルチノイド2例と,粘表皮癌1例に肺実質切除を回避した気管支形成術で完全切除が可能であった.3例ともに術後重篤な合併症は認めず,また術後1年6ヵ月から15年経過し,再発なく健在である.術後早期の呼吸機能検査では,術前値を100%として比較すると3例平均で肺活量が18%,1秒量が45%,1秒率%が22%術後値の方が改善しており,FVカーブについても特に吸息時に尖鋭化し正常に近い形となった.本術式は適応を選べば,QOLを維持し根治性を損なわない術式と考えられた.
  • 宮野 裕, 池田 豊秀, 小山 邦広, 神崎 正人, 村杉 雅秀, 大貫 恭正
    2008 年 22 巻 6 号 p. 963-966
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    外傷性横隔膜ヘルニアは早期に診断・治療されることが多いが,我々は受傷後半年を経て診断された症例を経験した.症例は38歳男性.外傷による脳挫傷・下顎骨折・肋骨骨折の後,半年を経過して横隔膜ヘルニアを診断された.胸腔内の癒着が予想され胸腔鏡にて経胸的アプローチを採用したが,脱出臓器の腹腔内への整復が困難であったため,後側方開胸に変更した.癒着の有無や臓器の胸腔内脱出の程度の確認に,胸腔鏡が有用であり,癒着例や腹腔内還納の困難な症例に対し開胸に移行するのが理に適うと考えた.
  • 田村 光信, 塩野 裕之, 中西 正芳, 小田 知文, 奥村 明之進
    2008 年 22 巻 6 号 p. 967-973
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/02/02
    ジャーナル フリー
    一般に,脂肪肉腫は化学療法や放射線治療が無効で,外科切除が選択されるが局所再発が多い.今回,縦隔に広範囲に局所再発した縦隔脂肪肉腫に対して,腫瘍減量手術を施行した1例を経験した.69歳,女性.縦隔脂肪肉腫(高分化型)の摘出術を施行された.術後2年経過し軽い胸部圧迫感が出現した.胸部CTで前中縦隔に低濃度の占拠性腫瘍を認め,脂肪肉腫の局所再発と診断した.完全切除は困難と判断したが,圧迫症状の増悪を回避するために,腫瘍の減量術を施行した.腫瘍は周囲臓器を圧排していたが浸潤傾向なく,肉眼的に全摘術となった.しかし,癒着が強固な左腕頭静脈周囲に僅かな脂肪組織が残り,腫瘍の遺残を懸念し放射線治療を追加した.病理診断は,一部に脱分化を伴った高分化型脂肪肉腫であった.術後は胸部圧迫症状が消失し,再発兆候は認めない.
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