日本呼吸器外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-4158
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22 巻, 7 号
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原著
  • 原 祐郁, 鈴木 光隆
    2008 年 22 巻 7 号 p. 976-980
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2009/06/04
    ジャーナル フリー
    DNMは比較的その発生頻度は低いものの,一旦発症すると急速かつ重篤な経過をたどることで有名である.今回,過去10年間に経験したDNM10例を対象に臨床的検討を行いその治療戦略,特に外科的手技について考察した.対象は男性8例と女性2例,平均年齢62.6(41~75)歳.感染の波及範囲はEndoらの分類に従うとType Iが4例,Type II Aが2例,Type II Bが4例であった.全例に頸部からの初発感染巣に対するドレナージと気管切開が施行された.Type II A,II Bではさらに縦隔への操作が加えられ,うち3例は頸部からのアプローチのみで,1例は経胸腔的に,2例は両者からのアプローチで縦隔ドレナージが施された.この10例の経験から経胸腔的アプローチによる縦隔胸膜の切開と掻爬はすべての症例において必須ではないが,頸部操作のみでは不十分と判断した場合には躊躇せず行うべきで,そのタイミングを逸しないことが重要であると考えられる.
  • 棚橋 雅幸, 森山 悟, 鈴木 恵理子, 羽田 裕司, 吉井 直子, 丹羽 宏
    2008 年 22 巻 7 号 p. 981-986
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2009/06/04
    ジャーナル フリー
    HDRAに基づく術後補助化学療法を施行したIII期非小細胞肺癌39例を検討した.HDRAは切除した原発巣,転移巣を3次元組織培養しコハク酸脱水素酵素活性で判定した.感受性はCDDP,CBDCA,PTX,CPT-11,GEM,DOCについて検討した.男性28例,女性11例.平均年齢64.8歳.組織型は腺癌27例,扁平上皮癌8例,その他4例であった.HDRA陽性薬2剤投与群14例の3年/5年生存率は85.1/85.1%,陽性薬1剤投与群+陰性薬2剤投与群25例の3年生存率は46.9%で5年生存例はなく陽性薬2剤投与群の予後が有意に良好であった(p=0.01).III期非小細胞肺癌に対する術後補助化学療法においてHDRA陽性薬剤を2剤投与することで予後の向上が期待できると思われた.
  • 奥田 昌也, 張 性洙, 中野 淳, 三崎 伯幸, 石川 真也, 山本 恭通, 黄 政龍, 横見瀬 裕保
    2008 年 22 巻 7 号 p. 987-991
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2009/06/04
    ジャーナル フリー
    目的:孤立性肺動静脈瘻に対する外科療法につき検討した.対象と方法:1999年4月から2007年12月までに香川大学医学部付属病院で肺動静脈瘻と診断され,外科的切除を施された6例.男性1例・女性5例.VATSによる切除2例,開胸による切除4例.1例が区域切除,5例が自動縫合器による部分切除であった.結果:5例で肉眼的に異常血管が同定でき,視認できなかった1例は超音波画像診断および触診で同定した.合併症を認めず安全に切除できた.全例で局所再発はみとめなかった.結論:治療適応のある肺動静脈瘻は経カテーテル治療を中心にした治療戦略を立て,全身麻酔可能な治療適応のある孤立性の症例で,より根治性の高い治療法を選択する場合や造影剤アレルギーなどの経カテーテル治療が不可能である場合に外科的治療を選択する必要がある.
  • —CT検診の臨床診断への影響—
    沢田 茂樹, 小森 栄作, 末久 弘, 豊崎 良一, 見前 隆洋, 山下 素弘
    2008 年 22 巻 7 号 p. 992-996
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2009/06/04
    ジャーナル フリー
    肺病変の組織診断は時として得ることが難しく,画像診断で肺癌を強く示唆する場合は組織診断なしに手術を行うことがある.このように組織学的に未確診であるが画像診断で肺癌を疑われ手術を受けた516例を対象に術後病理組織を検討した.また我々の地方で導入されたCT検診の術前未確診率に対する影響を検討した.1997~2005年の間に当院で肺癌もしくは肺癌疑いで1039例に手術を行った.このうち術前組織学的に未確診例が516例あった.全手術に対する術前未確診率の年次変化を見ると1999年以前は約28%であったが2000年以降は50~59%に上昇し,この時期は我々の地方でのCT検診の導入の時期と一致しCT検診により多くの小病変が発見され術前未確診率が上昇したと考えられた.未確診例中,良性の割合は平均13%であったが年を追うに従って低下傾向にあった.理由として肺小病変に対する治療方針の変化が考えられた.
  • 戸田 重夫, 河野 匡, 文 敏景, 吉屋 智晴
    2008 年 22 巻 7 号 p. 997-1000
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2009/06/04
    ジャーナル フリー
    従来から胸腔内手術後は胸腔ドレーン留置が行われるが,当科では肺切除を伴わない胸腔鏡下縦隔腫瘍術後には胸腔ドレーンを原則として留置していない.1999年11月から2005年10月に当科で施行した胸腔鏡下縦隔腫瘍手術111例(完全切除103例,部分切除8例)を対象としその妥当性を検討した.胸腔ドレーン留置基準は①肺切除を伴う場合②術後出血の危険があると術者が考えた場合③胸水等のドレナージが必要な場合とし,111例中100例で胸腔ドレーンを留置しなかった.100例中1例に中等度の肺虚脱の為胸腔ドレーンを挿入したが,その他に合併症は認めなかった.胸腔鏡下縦隔手術後の胸腔ドレーン留置は選択された患者には省略可能である.
症例
  • 大倉 英司, 尹 亨彦
    2008 年 22 巻 7 号 p. 1001-1006
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2009/06/04
    ジャーナル フリー
    18F-fluorodeoxyglucose positron emission tomography(FDG-PET)は良悪性の鑑別,病期診断,治療の効果判定などに使用されてきたが,最近では悪性腫瘍の再発診断にも用いられている.68歳,男性.検診でCEAの高値を指摘され肺腺癌の診断で2005年2月に右上葉切除+ND2aを施行した.術後20ヵ月にCEAの上昇を認めた.全身検索を施行したが,再発巣は認めなかった.その後もCEAは上昇し続けたため,FDG-PETを施行し,右第2胸椎の肋横突起間接付近に異常集積を認めた.これを基に再度CTを撮影し同部位に径2cmの軟部陰影を認めた.CTで増大傾向を確認した後,胸壁切除術を行った.病理組織は肺腺癌であり,胸壁断端再発と診断した.術後局所再発の早期診断,早期治療にFDG-PETが有用であった.
  • 平安 恒男, 古堅 智則, 上原 忠大, 饒平名 知史, 照屋 孝夫, 河崎 英範
    2008 年 22 巻 7 号 p. 1007-1011
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2009/06/04
    ジャーナル フリー
    症例は47歳,女性.左前胸部のつっぱり感を主訴に来院.画像上,左側大胸筋後面に3×6cmの腫瘤性病変を認めた.術中迅速病理検査にてデスモイド腫瘍の診断を得たため,腫瘍が接している大胸筋と小胸筋,鎖骨骨膜を含めて切除した.術後2年目にCT検査で,切除部位近くに腫瘤性病変出現と増大傾向を指摘されたため,デスモイド腫瘍再発の診断にて再手術を施行した.腫瘍は腋窩部,腕神経叢近くまで浸潤発育していた.神経損傷を避けるため,手術は可及的切除にとどめ,術後に放射線療法を追加施行した.再手術後3年8ヵ月,再発を認めていない.デスモイド腫瘍の手術に際し,完全切除を目指すことは重要であるが,今回の症例の様に術後のQOLを著しく低下させる可能性がある場合は,他の治療法との併用を考慮にいれながら可及的切除にとどめる選択肢も必要と思われた.
  • 高田 昌彦, 宮本 良文
    2008 年 22 巻 7 号 p. 1012-1016
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2009/06/04
    ジャーナル フリー
    胸骨骨折は外傷性骨折の中では比較的まれである.多くは保存的に治療できるが,転位が大きく強い疼痛がある場合,手術適応となる.一方,まれに保存的治療の経過中に偽関節を呈し,疼痛などの症状が遷延することがある.胸骨偽関節について,開心術のための胸骨切開後の報告例は散見するが,胸部外傷後の報告はほとんどない.今回我々は16歳男性の胸部外傷後の胸骨偽関節に対し,プレート固定と自家骨移植を用いた術式で,良好な結果を得た.胸骨を固定するためのプレートとしてロッキングプレートを選択した.自家骨移植を併用した胸骨のプレート固定術は,胸骨偽関節の治療方法として有用であった.
  • 上林 孝豊, 入江 朋子, 中務 博信, 高木 幸夫
    2008 年 22 巻 7 号 p. 1017-1021
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2009/06/04
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,男性.発熱,咳嗽を主訴に近医を受診し,右下葉の肺炎の診断にて抗菌剤の内服で加療された.約3週間の抗菌剤投与にもかかわらず改善傾向を認めないため,胸部CTと気管支鏡が施行され,右下葉の内部壊死を伴う9×6cm大の肺腺癌と診断された.肺癌および肺炎の加療目的にて入院となるも,入院後5日目に右側背部痛の出現と右側胸水の急激な増加を認めたため胸腔ドレーン挿入と胸部CTを施行したところ腫瘍の穿孔およびそれにともなう膿胸が疑われた.外科切除なしでは改善困難と考え,翌日手術(中下葉切除)を施行した.腫瘍の内部および臓側胸膜は広範囲に壊死に陥り,2ヵ所に穿孔部を認めた.
  • 国内外28報告例を加えて
    河岡 徹, 深光 岳, 森田 克彦
    2008 年 22 巻 7 号 p. 1022-1026
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2009/06/04
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,女性.胸部CTで右上葉に異常影を指摘され入院となった.FDG-PETでは同部に集積が見られ,Standardized uptake value(SUV)は5.23と高値であり,delayed scanで増加していた.診断かつ治療目的にて右上葉切除術を施行し,病理組織学的検査で肺MALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫と診断された.FDG-PETを施行した原発性肺MALTリンパ腫は本例を含み29例報告されているが,25例で集積を認めており,肺MALTリンパ腫では高い確率でPET陽性となる.肺MALTリンパ腫をFDG-PETのみで肺癌と鑑別することは困難であるが,転移の精査,再発診断,放射線治療や化学療法時の治療効果判定などを行う際には有用と考えられる.
  • 境 雄大, 小倉 雄太, 木村 大輔, 對馬 敬夫, 福田 幾夫
    2008 年 22 巻 7 号 p. 1027-1032
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2009/06/04
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.高血圧症で治療中であった.胸部X線写真で左上肺野に異常陰影を指摘され,近医で精査を行い,肺癌(腺癌)と診断された.術前評価T1N0M0,Stage IAであった.胸部X線での心胸郭比は55%で,心電図では不完全右脚ブロックを認めた.全身麻酔下に左開胸を行い,肺門部の剥離を開始すると徐脈,心室性期外収縮が出現し,心停止した.開胸心マッサージとカテコラミン静注で心拍動が再開した.手術を中止し,閉胸した.心エコーでは心機能は良好であったが,心室中隔の非対称性肥厚があり,非閉塞性肥大型心筋症と診断された.一時的ペースメーカーを留置後,初回手術の44日後に全身麻酔下に左開胸で左上葉切除術を行ったが,術中に循環動態の変動はなかった.病理組織診断は中分化腺癌でT1N2M0,Stage IIIAであった.術後の経過は良好で,21日目に退院した.術後6年を経過し,心イベント,肺癌の再発所見はなく,良好に経過している.
  • 和田 啓伸, 門山 周文, 坂入 祐一
    2008 年 22 巻 7 号 p. 1033-1037
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2009/06/04
    ジャーナル フリー
    症例は30歳代,男性.統合失調症で入院中だったが,自宅外泊中に自殺企図で約100mlの灯油を飲んで,当院に搬送された.初診時の理学所見,画像所見は異常なかったが,入院6時間後より頻呼吸,喘鳴,低酸素血症が出現し,右下肺野に浸潤影を認め,灯油誤嚥による化学性肺炎と診断し,直ちに人工呼吸管理を開始した.抗生剤を使用し肺炎像は収束していったが,中葉に肺膿瘍を疑わせる径6cmの腫瘤影が残存したため中葉切除を行った.術後経過は順調で,第30病日に前病院へ転院となった.近年の抗生剤の発達により,肺膿瘍に対する手術適応は限られているが,症例を選択すれば有効な治療手段になり得ると思われた.
  • 大坂 喜彦, 渡邉 幹夫, 菊地 健
    2008 年 22 巻 7 号 p. 1038-1041
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2009/06/04
    ジャーナル フリー
    症例は41歳男性,胸部X線写真で,右上肺野に散布性粒状影を伴う空洞陰影を認めた.喀痰より抗酸菌を認め培養検査でMycobacterium abscessus(以下M. abscessus)が同定された.IPM/CS,AMK,CAMによる化学療法および右肺上葉切除術を施行した.現在経過観察中であるが,術後24ヵ月現在再発なく良好な経過である.M. abscessusは本邦では希な非結核性抗酸菌症の一つであるが,病巣が限局している場合には病巣が広がる前に手術を行うことも必要と考えた.
  • 井貝 仁, 中川 達雄, 大畑 惠資, 松岡 智章, 亀山 耕太郎, 奥村 典仁
    2008 年 22 巻 7 号 p. 1042-1045
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2009/06/04
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,女性.7年前に肝MALTomaに対して肝部分切除術が施行された.その後,当院血液内科でRituximab療法を施行されフォローアップされていた.2007年2月,胸部CTで約2年前より指摘されていた左肺上葉の多発小結節影の一部に増大傾向が認められた.またFDG-PETで同部位と咽頭,頸部リンパ節に異常集積像が認められた.以上よりMALTomaの再発が疑われた.咽頭,頸部リンパ節の生検は困難であるとの理由から,診断・治療目的で2ヵ月後に胸腔鏡補助下左肺上区切除術が施行された.得られた組織の免疫組織学的所見より,肺MALTomaとの診断を得た.MALTomaは稀な疾患であり,その報告例も少ない.比較的予後良好とされているが当症例のように術後数年間経過した後に再発する症例もあり厳重な経過観察が必要であると考えられた.
  • 村田 智美, 松本 勲, 谷内 毅, 吉田 周平, 小田 誠, 渡邊 剛
    2008 年 22 巻 7 号 p. 1046-1049
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2009/06/04
    ジャーナル フリー
    患者は80歳女性.1997年他院にて子宮内膜間質肉腫に対して子宮全摘術および両側付属器切除術を施行された.今回病歴聴取時には子宮筋腫と卵巣嚢腫に対して手術を施行したとのことであった.2007年に検診の胸部単純X線写真にて右上肺野に径2.5cmの境界明瞭な結節を指摘された.胸部CTスキャンでは右肺S3に径2.5cmの造影効果のある境界明瞭な結節を認めた.FDG-PETにて集積を認め,肺悪性腫瘍が疑われた.腫瘍を含む肺部分切除を行い,術中迅速病理診にて,肺原発肉腫の可能性があると診断されたため,右肺上葉切除とリンパ節郭清を施行した.永久標本での病理診断にて子宮内膜間質肉腫の肺転移と診断された.子宮腫瘍標本の再評価でも子宮内膜間質肉腫と診断された.子宮内膜間質肉腫の肺転移は比較的稀であり文献的考察を加え報告する.
  • —30歳以下の本邦報告39例の検討—
    笠井 由隆, 桝屋 大輝, 孫野 直起, 吉松 昭和, 鈴木 雄二郎
    2008 年 22 巻 7 号 p. 1050-1054
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2009/06/04
    ジャーナル フリー
    症例は22歳,男性.健診で胸部異常影を指摘され,精査加療目的で当科に紹介入院となった.胸部CT検査では,右下葉に径4cm大の分葉状の比較的境界明瞭な腫瘤影を認めた.気管支鏡検査では,右B10aに内腔をほぼ閉塞するような腫瘤を認め,生検で肺腺癌と診断された.全身検索にて明らかなリンパ節転移や遠隔転移を認めず,cT2N0M0と判断し,右下葉切除術および縦隔リンパ節郭清(ND2a)を施行した.摘出標本では右下葉に径4cm大の境界明瞭な腫瘤を認め,末梢気管支に著明なmucoid impactionを認めた.術後病理組織診断で粘表皮癌(低悪性度)pT2N0M0との診断を得た.本症例は,粘表皮癌の中でも比較的稀な末梢発生であり,加えて著明なmucoid impactionを伴っている点で興味ある症例と考え報告するとともに,本邦における30歳以下の肺粘表皮癌39例を集計し,その臨床的特徴について検討を加えた.
  • 渡辺 直樹, 和久 利幸
    2008 年 22 巻 7 号 p. 1055-1060
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2009/06/04
    ジャーナル フリー
    症例は44歳の女性である.上大静脈症候群にて紹介来院された.左側進行性乳癌と,胸部CTにてSVCを閉塞する縦隔腫瘍を認めた.乳腺の針生検にて浸潤性乳管癌の診断を得た.乳癌縦隔リンパ節転移の診断にて,Paclitaxel,さらにFEC100のレジメンにて化学治療を行い,同時に縦隔への放射線治療を開始した.乳癌がCRであったにもかかわらず,縦隔の腫瘍は全く反応しなかったことから縦隔病変は胸腺腫であることを疑い,縦隔腫瘍摘除術を行った.縦隔腫瘍はType B3の胸腺腫であることが病理診断にて確認された.
  • 大成 亮次, 沖元 達也, 木村 厚雄, 奥道 恒夫
    2008 年 22 巻 7 号 p. 1061-1066
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2009/06/04
    ジャーナル フリー
    肺結核症と肺癌の合併頻度は高率とされているが,画像診断での両者の鑑別は困難である.症例は56歳の男性で,咳嗽にて発見された活動性肺結核症に対しINH+RFP+EBにて多剤併用による化学療法を行った.9ヵ月間の初期治療にて両側肺のびまん性線状影は縮小した.左S5の空洞性病変のみ増大したため,審査開胸を行った.肺生検にて扁平上皮癌と診断され上葉切除術(ND2a)を施行した.活動性肺結核症においては,肺癌の合併を念頭においた画像による経時的な観察と評価の繰り返しが重要で,診断困難な肺病変に対しては積極的な審査開胸が必要である.
  • 水谷 尚雄, 萱野 公一
    2008 年 22 巻 7 号 p. 1067-1071
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2009/06/04
    ジャーナル フリー
    若年女性には稀な初発で同時両側性気胸となった原発性自然気胸に対し一期的に両側の胸腔鏡下手術を施行した一例を経験した.患者は初潮前の14歳の女性.低身長に対して,他院で成長ホルモンを投与中であった.1ヵ月ほど前に胸痛が出現したが自然に軽減していた.4日前からの咳嗽を主訴に近医を受診し両側気胸と診断され当院へ紹介.胸部X線写真上右がKircherの虚脱度III度,左がII度であった.同日,両側胸腔ドレナージを施行し,翌日胸部X線で肺の膨張を確認後に胸部CT検査を施行.両肺尖部に限局したブラを認めたが,瀰漫性肺疾患は認めなかった.原発性自然気胸と診断して入院3日目に側臥位で両側胸腔鏡下手術を施行した.摘出標本の病理検査では胸膜直下のブラと診断され,隣接肺実質にも気腫性変化を認めた.翌日にドレーンを抜去し,術後4日目に退院した.
  • 市成 秀樹, 峯 一彦, 種子田 優司, 河野 文彰, 柴田 紘一郎
    2008 年 22 巻 7 号 p. 1072-1076
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2009/06/04
    ジャーナル フリー
    症例;63歳,男性.2000年胸部X線検診では異常所見は指摘されなかったが,2001年検診で異常陰影を指摘され,肺癌疑いで2002年2月当科へ紹介された.胸部X線写真および胸部CTで右上肺野,縦隔側に6cm大の腫瘤を認め,胸部MRIでは神経原性腫瘍も疑われた.CEA 7.1ng/mlと高値で,腹部は内視鏡,CTともに異常なし.2002年2月20日胸腔鏡下に右上葉切除術を施行,術中病理診断でmucinous cystic tumorの診断であった.悪性病変を完全に否定できないとの診断であったため,ND2aのリンパ節郭清を追加した.術後最終病理診断はmucinous cystadenocarcinomaであった.術後経過は良好で術後約6年の現在無再発通院中である.本疾患は比較的稀であり,本邦では13例の報告を認めるのみであった.今回文献的考察を含め報告する.
  • 鹿田 康紀, 金子 聡
    2008 年 22 巻 7 号 p. 1077-1079
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2009/06/04
    ジャーナル フリー
    77才男性.2007年12月に健康診断を受診しPSA高値を指摘され,膀胱鏡下に生検を行い前立腺癌の診断となった.全身精査の胸部CTにて左肺下葉S10に径10mmの小結節影を認め,肺転移が疑われた.前立腺癌の病期確定のために2008年1月21日,胸腔鏡下左肺下葉部分切除術を施行した.腫瘤割面は弾性軟で黄白色調を呈していた.術中迅速診断の結果は肉芽腫病変で,悪性所見は認めなかった.病理組織診断で切除標本にフィラリア虫体を認め,乾酪壊死を伴う肉芽腫を形成しており,確定診断となった.肺犬糸状虫症はフィラリアに感染した犬の血液を吸った蚊が媒体となりヒトへと感染する.画像上は孤立性円形腫瘤を呈するため,原発性肺癌や転移性肺癌との鑑別が問題となる.気管支鏡検査やCTガイド下生検では確定診断を得られることは難しく,確定診断には胸腔鏡下肺部分切除術を行うことが有用である.
  • 大角 明宏, 寺西 潔, 北村 将司, 長澤 みゆき, 神頭 徹
    2008 年 22 巻 7 号 p. 1080-1083
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2009/06/04
    ジャーナル フリー
    非常に稀な肺原発の腫瘍である淡明細胞腫の1例を経験した.症例は60歳の女性で,検診で胸部異常陰影を指摘された.診断および治療目的で胸腔鏡下右肺部分切除を行った.病理所見では,淡明な胞体を有する細胞が胞巣状に密に増殖し,間質には毛細血管が増生し,類洞様血管に囲まれていた.特殊染色はPAS陽性,免疫染色ではMelan A陽性であり,淡明細胞腫と診断した.病理学的には腎の淡明細胞癌の転移も完全には否定できなかったが,腹部CT上明らかな腎病変がないことから肺原発の淡明細胞腫と考えられた.
  • 和久 利彦, 渡辺 直樹
    2008 年 22 巻 7 号 p. 1084-1087
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2009/06/04
    ジャーナル フリー
    奇静脈葉のある71歳の男性が右自然気胸で近医へ入院となったが,皮下気腫・縦隔気腫の増悪,左肺の虚脱も認めたため発症後第6病日に当院へ転院となった.胸部CT検査では著明な皮下気腫,縦隔気腫とともに虚脱した奇静脈葉を認めた.胸腔内へ空気漏れが継続することや,進行性に増大する縦隔気腫による血管系の圧迫が原因の頻脈と呼吸状態の悪化が認められたため同日緊急手術を施行した.奇静脈葉の巨大なブラが上縦隔に強固に癒着するとともに破裂をきたし,上縦隔と胸腔内へ空気漏れをしていた.癒着を剥離し肺嚢胞切除をした.異所性奇静脈および奇静脈葉の存在を確認し胸腔ドレーン挿入や胸腔鏡下手術を安全に施行するためにも術直前に胸部CTを施行することは肝要である.奇静脈葉に胸膜の癒着が認められるときは胸腔鏡下手術では技術的に難しく安全のためにも開胸手術へ変更するべきである.
  • 中根 茂, 明石 章則, 福原 謙二郎, 冨田 栄美子
    2008 年 22 巻 7 号 p. 1088-1093
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2009/06/04
    ジャーナル フリー
    我々は,気管から左主気管支にかけて発生した顆粒細胞腫(GCT)の一切除例を経験したので文献的考察を加え報告する.40歳男性で,肺炎を発症した.胸部CTにて気管内腔に突出し後縦隔へ進展する腫瘤を認めた.気管支鏡にて気管~左主気管支に突出する腫瘤を認め,生検にてGCTと診断された.術前の胸部CT三次元再構築像にて腫瘍の進展範囲を評価し,気管・左主気管支楔状切除にて完全切除し得た.腫瘍は30×23×17mmで,周囲臓器への浸潤は認めなかったが膜様部より腔外へも進展していた.GCTはSchwann細胞由来の良性腫瘍であるが,気管~主気管支発生は稀である.多発発生や再発の報告もあり,長期間の経過観察が必要である.
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