日本呼吸器外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-4158
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23 巻, 1 号
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原著
  • 高尾 仁二, 庄村 心, 樽川 智人, 渡邉 文亮, 島本 亮, 山田 典一, 村嶋 秀市, 藤本 源, 小林 裕康, 田口 修, 新保 秀 ...
    2009 年 23 巻 1 号 p. 2-7
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/06/11
    ジャーナル フリー
    当科では1998,9年の2年間に施行した呼吸器外科手術212例中3例(1.4%)で術後症候性肺血栓塞栓症(PE)が発生したことより,予防対策として手術症例全例に弾性ストッキング着用,間欠的拍動性空気式足底圧迫装置の使用,ポータブル式持続低圧吸引機の導入による術翌日からの歩行開始を2000年1月より施行した.この結果,以後8年間の902例ではPEは発生せず(P<0.01),その有用性を確認した.尚,2004年6月から1年間,PEのリスク分類と術前深部静脈血栓症(DVT)スクリーニングのためのプロトコールを導入した.この結果,DVTのスクリーニングには可溶性fibrinよりD-dimerが有用であることが示された.一方,今回のリスクレベル判定法では,悪性疾患の75%が最高リスクと判定され,周術期ヘパリン使用を推奨するためのリスク層別化法としては改善の必要があると考えられた.
  • —完全モニター視下手術の早期成績—
    大泉 弘幸, 金内 直樹, 加藤 博久, 遠藤 誠, 武田 真一, 鈴木 潤, 深谷 建, 千葉 眞人, 貞弘 光章
    2009 年 23 巻 1 号 p. 8-12
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/06/11
    ジャーナル フリー
    2004年以後,当科で完全胸腔鏡下肺区域切除術の予定で手術を施行した28例について検討した.2例が開胸に移行したが,その内1例は腫瘍学的理由による開胸肺葉切除への予定的変更例である.それ以外の27例中,予定外開胸例は出血による小開胸への変更1例で,胸腔鏡下区域切除の完遂例は26例96%であった.出血量は5~305ml(中央値98ml),手術時間は147~313分(中央値222分)であった.完遂26例中17例(65%)で術後肺瘻を認めず,胸腔ドレーン留置期間は1~7日(中央値1日)であった.術後合併症は皮下気腫,気管支潰瘍が各1例で重篤なものを認めず,術死,院内死を認めなかった.完全胸腔鏡下肺区域切除術は,現時点では高い熟練度と時間を要する手術手技であるが,術後早期成績としては受容可能であると考えられた.
  • 一瀬 淳二, 河野 匡, 吉屋 智晴, 文 敏景
    2009 年 23 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/06/11
    ジャーナル フリー
    稀な輸入真菌症であるが,近年報告例が増加傾向にある肺コクシジオイデス症を約2年間に5例経験したので報告する.全例男性,年齢27~65歳.5例中3例はカリフォルニア州に約1ヵ月,1例はアリゾナ州に約2週間,1例はネバダ州,ユタ州に約2週間滞在した.全例が健診で胸部異常陰影を指摘され当院を受診した.CTでは4例が胸膜に接する境界明瞭な孤立性の充実性結節であり,1例はいくつかの境界明瞭な充実性結節が融合していた.5例中4例は胸腔鏡下肺部分切除,1例は開胸S6区域切除を行い,病理所見より肺コクシジオイデス症と診断した.検体の取り扱いに注意を要するため,渡航歴,症状,画像所見より術前に本症の可能性を考慮することが重要と思われる.
  • 志熊 啓, 大政 貢, 豊 洋次郎, 奥田 雅人, 瀧 俊彦
    2009 年 23 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/06/11
    ジャーナル フリー
    目的:急性膿胸・胸膜炎術後の残存死腔を胸部レントゲン所見をスコア化することでその術後経過の評価を行った.方法:当院にて急性膿胸または胸膜炎にて手術を行った17例(膿胸群10例,胸膜炎群7例,7例中4例が結核性胸膜炎)を対象とした.胸部レントゲンによる残存死腔をスコア化することで術後6ヵ月までの肺拡張の改善度の評価を行った.結果:膿胸・非結核性胸膜炎群ではいずれも術後の肺拡張は良好であった.一方,結核性胸膜炎群の術後の肺拡張は良好とはいえなかった.結語:結核性胸膜炎以外の膿胸・胸膜炎では積極的に郭清術を施行することが重要と考えられた.結核性胸膜炎を疑う症例では掻爬目的ではなく,むしろ術中検体採取による確定診断をつけることの方が重要と考えた.
  • 深澤 敏男, 奥脇 英人
    2009 年 23 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/06/11
    ジャーナル フリー
    胸壁腫瘍の胸腔鏡下3切除例を検討した.画像所見では,2例はCT上腫瘍辺縁明瞭平滑・立ち上がり明瞭で,1例はこの逆であった.前者は胸膜を切開し,直下に腫瘤の被膜を認めた.後者は胸膜直下に厚い筋層を認め,筋層の下に腫瘤を認めた.前者は胸膜直下の発生で,これに対し後者は肋間筋内の発生で,比較的珍しいものと思われた.両者ともに胸腔鏡下摘出が可能であるが,筋肉内発生例は,術中の視野が悪いので,手技に慎重さを要し,胸壁側からのアプローチも,選択枝の1つになり得るものと思われた.画像所見を検討した上で慎重に術式を選択すべきと思われる.
症例
  • 林 亨治
    2009 年 23 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/06/11
    ジャーナル フリー
    症例は肺気腫による慢性呼吸不全のため在宅酸素療法中の81歳の男性で,繰り返す左自然気胸に対しOK-432による胸膜癒着術を行ったが不成功であったため,手術目的にて当科紹介となった.開胸手術が懸念される程の低肺機能症例であったが,術中PCPS(Percutaneous Cardiopulmonary Support):V-V bypass(Veno-veno bypass)を使用し,安全に手術を完遂することができた.またヘパリンコーティングされた回路を用いることで,ACT値を低く設定することができ,止血に難渋することもなかった.ヘパリンコーティング回路を用いたPCPSは低肺機能症例の手術において有用な呼吸補助手段であると思われた.
  • 武市 悠, 河野 匡, 文 敏景, 吉屋 智晴, 一瀬 淳二
    2009 年 23 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/06/11
    ジャーナル フリー
    症例は87歳,男性.85歳時に左下葉肺癌に対し,胸腔鏡下左下葉切除術とリンパ節郭清(ND1)を施行した.病理は大細胞癌であった(p-T2N0M0,stage I B).経過観察中に右上葉に結節影が出現し,胸腔鏡下右肺部分切除術を施行した.病理は高分化型腺癌であった.術後合併症認めず,術後9日目に退院となった.現在2回目の手術から3年1ヵ月経過し,元気に存命中である.高齢者肺癌であっても,肺葉切除で良好な予後が得られており,また異時性多発肺癌では完全切除ができれば,手術が推奨されている.そんな中,超高齢者異時性多発肺癌患者においては,症例毎の慎重な検討の元,低侵襲である胸腔鏡下手術,縮小手術は治療の選択肢の1つとなり得る.
  • 末久 弘, 小森 栄作, 澤田 茂樹, 山下 素弘
    2009 年 23 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/06/11
    ジャーナル フリー
    右側大動脈弓は発生頻度約0.1%とされる稀な先天性奇形である.右肺癌に伴った2例を経験したので,若干の文献的考察を交えて報告する.症例1は61歳,男性.検診の画像診断を契機に右肺癌と診断された.症例2は69歳,男性.胃癌術後のフォローアップ中に右肺癌を疑われた.2例とも心奇形は認めず,左鎖骨下動脈が下行大動脈から分岐するStewart-Edwardsらの分類type Bに相当した.症例1はさらにKommerell憩室を伴っていた.肺の気管支,動静脈は正常に分岐しており,型どおりの肺葉切除を施行し得た.発生学的には,右反回神経は右側大動脈弓を反回するので,術中の確認を要する.また,大動脈弓や下行大動脈が妨げとなり上縦隔リンパ節郭清操作が困難であるが,標準左側肺癌に準じた上縦隔リンパ節郭清を慎重に行うことで対処できると考えられる.
  • 中村 幸生, 松村 晃秀, 桂 浩, 阪口 全宏, 伊藤 則正, 北市 正則
    2009 年 23 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/06/11
    ジャーナル フリー
    肺胞蛋白症加療中に縦隔リンパ節結核を合併した1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.症例は69歳男性.68歳時より特発性肺胞蛋白症の診断で当院内科にてGM-CSF吸入療法をうけていた.2007年5月肺胞蛋白症の経過観察で施行された胸部CT検査にて左前胸壁直下縦隔側の腫瘤を指摘され,当科紹介受診となった.悪性の可能性を否定できなかったことから手術を施行した.縦隔に2個の腫瘤をみとめこれを摘出した.病理組織診断では,腫瘤はリンパ節で中心壊死を伴う類上皮肉芽腫の所見であった.腫瘤の培養検査で,Mycobacterium tuberculosisの発育を認めたため縦隔リンパ節結核と診断した.術後経過は良好で,術後20日目よりisoniazid,rifampicinの2剤で抗結核化学療法を行い,現在術後3ヵ月になるが結核症および肺胞蛋白症の再燃を認めていない.
  • 永島 琢也, 諸星 隆夫, 山本 健嗣, 五来 厚生, 津浦 幸夫
    2009 年 23 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/06/11
    ジャーナル フリー
    症例は58歳女性.約1年前に右乳腺葉状腫瘍の手術歴がある.乳房手術時より右肺上葉に小結節影を認めていたが,その後増大傾向を示した.さらに新たな肺内結節影も出現し,多発結節影を呈した.これらの結節はいずれも境界明瞭で内部が均一な結節影であり,乳腺葉状腫瘍術後であることから転移性肺腫瘍が疑われた.手術にて肺腫瘍・肺門リンパ節を摘出したが,いずれも病理学的に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫と診断され,両側肺門リンパ節腫脹も認めたことから,サルコイドーシスと診断した.サルコイドーシスにおいて肺野末梢に結節影を示す場合,辺縁に樹枝状影を伴うことが多く,本例のように境界明瞭な結節影を呈する症例は稀である.しかし,肺内リンパ節に病変がおよんだ場合には,本例のような腫瘤影を呈すことがある.そのため,末梢肺野の境界明瞭な結節影を示す症例で,特に悪性腫瘍の既往歴がある場合には,本疾患との鑑別を念頭に置く必要がある.
  • 西川 敏雄, 井上 文之, 石井 泰則, 高橋 正彦
    2009 年 23 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/06/11
    ジャーナル フリー
    気胸を合併した両側肺動静脈瘻の1例を経験したので報告する.症例は38才,女性.2007年12月胸痛を自覚したため近医を受診,右自然気胸との診断にて当院紹介初診となった.CTでは右肺の虚脱および数個のブラと両側肺尖部の蜂巣状陰影を認めた.保存的加療にて気胸の改善を認めなかったため手術を施行した.右肺尖部のブラの近傍には多数の拡張した網目状の血管と鎖骨下動静脈と連続した太い血管を認め,開胸下にてブラおよび血管部の肺部分切除術を施行した.病理組織所見では多発するブラと,ブラの表面の拡張した動静脈を認め肺動静脈瘻との診断であった.術後検査では左肺尖部の陰影も肺動静脈を流入,流出血管とする肺動静脈瘻と考えられた.肺動静脈瘻は比較的稀な疾患ではあるが常に念頭においておくべきであり,また治療に関しては流入,流出血管や瘻の存在する部位,形状などだけでなく合併疾患の有無も考慮したうえで行うことが重要であると考えられた.
  • 森山 重治, 三好 健太郎, 多田 明博, 黒崎 毅史
    2009 年 23 巻 1 号 p. 58-61
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/06/11
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.肺癌の診断で胸腔鏡補助下左上葉切除を行ったが,左A8+9がA3と同じレベルで主肺動脈から分岐し,上肺静脈と上葉気管支の間を通って下行する分岐異常症例であった.A4+5の縦隔型と誤認して結紮切離したが,葉間操作の時分岐異常に気づき,開胸に移行せず,胸腔鏡補助下に血行再建した.左肺底区動脈が主肺動脈から分岐する変異は非常に稀で,本症例は本邦で3例目である.
  • 須田 健一, 庄司 文裕, 米谷 卓郎, 矢野 篤次郎, 前原 喜彦
    2009 年 23 巻 1 号 p. 62-65
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/06/11
    ジャーナル フリー
    症例は48歳男性.20年前に右肋骨腫瘤を指摘されていた.受診1ヵ月前より持続する右胸痛あり.胸部単純写真にて,右上肺野に境界明瞭な円形のスリガラス陰影を認めた.胸部CT検査では,右第2肋骨に辺縁が骨で覆われた最大径10cmの腫瘤があり,内部のCT値は筋肉より軽度高値であった.MRIでは,腫瘤の内部はT1強調画像にて低信号,T2強調画像にて低~高信号が不均一に混在し,造影後は全体的に増強された.以上より,疼痛を伴う線維性骨異形成が最も考えられ,右胸壁腫瘍切除および再建術を施行した.切除標本の病理学的検索では,不規則な形の線維骨形成および紡錘形細胞の増殖を認め線維性骨異形成の診断であったが,悪性所見は認められなかった.
  • 森山 重治, 三好 健太郎, 黒崎 毅史, 多田 明博
    2009 年 23 巻 1 号 p. 66-70
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/06/11
    ジャーナル フリー
    61歳,男性の右肺摘除後気管支断端瘻に対して開腹により有茎大網弁を作成し,気管支鏡下に異物鉗子を用いて大網を気管支内に誘導し,2ポート胸腔鏡下に気管支断端に固定した.気管支鏡と胸腔鏡を併用することにより,開胸することなく有茎大網弁充填を行い,気管支瘻閉鎖に成功した.本術式はこれまでに報告がなく,残存肺の癒着剥離を必要としない肺摘除後の気管支断端瘻に対して,低侵襲で有用な術式と考えられる.
  • 本山 秀樹, 藤本 利夫, 山科 明彦, 森木 利昭, 千原 幸司
    2009 年 23 巻 1 号 p. 71-74
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/06/11
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,男性.近医にて偶然,胸部レントゲン写真上の異常陰影を指摘され,当院に紹介された.CTにて右S1に境界明瞭な12×11mmの結節影が確認された.気管支鏡では診断が得られず,良性腫瘍を疑うものの悪性腫瘍も否定できないため,右S1区域切除術を施行.病理検査でコンゴーレッド染色陽性の好酸性無構造物が認められ,肺アミロイドーシスと診断した.全身疾患はなく,他の部位にアミロイドの沈着もなく,アミロイド国際分類の限局性結節性肺アミロイドーシスと診断した.肺の結節影の鑑別診断にこの疾患を考える必要があると思われる.
  • 榎本 豊, 齋藤 祐二, 谷村 繁雄, 前田 昭太郎, 片山 博徳, 小泉 潔
    2009 年 23 巻 1 号 p. 75-80
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/06/11
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,女性.75歳時に右乳癌に対し,乳房切断術を受け,その2年7ヵ月後に膵頭部癌に対し,膵頭十二指腸切除術を受けた.膵癌術後,約8ヵ月の胸部CTで左S10に原発性肺癌を否定できない腫瘤を指摘され,診断治療目的で当科紹介となった.肺以外の病変がないことから,手術適応とされた.腫瘍の術中迅速穿刺吸引細胞診の結果,膵癌肺転移の診断であった.このため,VATS左肺部分切除術で手術を終了した.切除可能であった膵臓癌孤立性肺転移は稀で本邦では数例の報告を認めるのみである.原発性肺癌や他の腺癌と鑑別が困難とされるが術中迅速穿刺細胞診が有用であった.
  • 坂口 泰人, 河野 朋哉, 大野 暢宏, 寺田 泰二
    2009 年 23 巻 1 号 p. 81-85
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/06/11
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.2ヵ月前より労作時呼吸困難を自覚し,胸部CTにて上縦隔から大動脈弓をはさむように前縦隔と中縦隔に進展し,気管を右側に圧排する脂肪濃度の巨大腫瘍を認めた.精査にて多発性骨髄腫の合併を認めたが,腫瘍による呼吸器症状が出現していることから,多発性骨髄腫の治療に先行し縦隔腫瘍摘出術を施行した.多発性骨髄腫のため,胸骨は脆弱で骨髄からの完全止血が困難であり,血小板減少症に対しては血小板輸血が必要であった.しかし,腫瘍は比較的しっかりとした被膜に覆われており,胸腔鏡を併用して一塊として切除でき,病理診断で脂肪腫様脂肪肉腫の診断を得た.多発性骨髄腫に合併した稀な縦隔脂肪肉腫の切除症例を経験したので報告する.
  • 古川 公之, 諏澤 憲, 竹尾 正彦, 山本 満雄
    2009 年 23 巻 1 号 p. 86-89
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/06/11
    ジャーナル フリー
    症例は74歳男性.咳嗽,血痰を主訴に近医受診し,胸部単純X線において左肺上葉無気肺を認め当院紹介となった.気管支鏡検査で左主気管支をほぼ閉塞する腫瘍を認め,生検より扁平上皮癌が疑われた.またfluorine 18 fluorordeoxyglucose-positron emission tomography(FDG-PET)でも左主気管支の腫瘤に集積を認めた.そのため左袖状上葉切除術,リンパ節郭清を行った.腫瘍はB1+2より発生しており,割面は灰白色で腫瘍径は20×18×15mmであった.病理組織学的所見では腫瘍は複数の成分で構成され,扁平上皮癌,腺癌,骨肉腫の成分が混在する真の肺癌肉腫と診断した.
  • 柳田 正志, 戸田 省吾
    2009 年 23 巻 1 号 p. 90-92
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/06/11
    ジャーナル フリー
    症例は20歳,男性.前胸部痛を主訴に当院外来受診.疼痛部に一致した前胸部に腫瘤を認め,精査を行ったが確定診断がつかず生検術を施行.術中の迅速細胞診・組織診では確定診断を得られず,術後に結核性胸骨骨髄炎と診断される.確定診断後,抗結核薬の多剤併用療法を開始.9ヵ月経過した現在も再発なく経過観察中である.結核性病変のうち骨関節結核はまれであるが,中でも結核性胸骨骨髄炎はさらにまれである.その治療方法には様々な意見があり,未だ確立された治療方法がない.結核性胸骨骨髄炎について文献的考察を加えて報告する.
  • 中尾 将之, 石井 源一郎, 菱田 智之, 吉田 純司, 西村 光世, 永井 完治
    2009 年 23 巻 1 号 p. 93-96
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/06/11
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性.10年前に上顎洞癌に対する手術の既往がある.2006年2月,胃癌の術前精査中に両肺結節を発見.胃癌手術後に右肺結節を切除し,病理学的には扁平上皮癌で上顎洞癌の肺転移と診断された.経過観察中に左肺結節の増加・増大を認めた.臨床的には上顎洞癌の肺転移と考えられたが,他臓器に再発・転移を認めず,患者本人も手術を希望したため,左肺下葉+舌区切除を施行した.診断は腺癌と小細胞癌の同時性多発肺癌であった.小細胞癌を含む同時性多発肺癌を合併した3重複癌症例は検索し得る限り報告されておらず,稀な症例と考えられた.悪性疾患の既往歴・併存を伴う患者の経過中に肺多発結節を認めた場合,転移性肺腫瘍のみではなく原発性肺癌,さらには同時性多発肺癌の可能性も考慮する必要がある.
  • 前田 愛, 山下 素弘, 小森 栄作, 澤田 茂樹, 栗田 啓
    2009 年 23 巻 1 号 p. 97-100
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/06/11
    ジャーナル フリー
    血痰を主訴とした20代男性の左肺下葉肺分画症に対して,胸腔鏡下手術で治療したので報告する.症例は造影CTにて胸部下行大動脈から左肺下葉へ直接分岐する異常血管を認め,肺分画症の診断で当院に紹介となった.入院後胸部3D-CTにて肺葉内肺分画症と診断し,胸腔鏡補助下に左下葉非定型的区域切除を施行した.近年,肺分画症に対する胸腔鏡手術の報告は散見されるが,肺葉内肺分画症に対して胸腔鏡補助下に区域切除を施行した症例の報告は少ない.肺分画症は胸部3D-CT等の画像診断により,術前に流出入血管の走行を十分に確認できることが多く,良性疾患であることから術後呼吸機能の低下を最小限にとどめるためにも,胸腔鏡補助下非定型的肺区域切除術は有用であると考えられた.
  • 城台 環, 上田 純二, 加藤 雅人
    2009 年 23 巻 1 号 p. 101-104
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/06/11
    ジャーナル フリー
    先天性第VII因子欠乏症は第VII因子の量的・質的異常による出血性素因を示す稀な疾患である.先天性第VII因子欠乏症を伴った肺癌に対して,左肺摘除術を施行した症例を経験した.症例は65歳男性.左肺扁平上皮癌(T4N1M0,Stage III B)に対し,左肺摘除術を予定した.しかし,術前の凝固機能検査でプロトロンビン時間の延長(16.9秒),トロンボテストの低下(37.4%),第VII因子活性の低下(47%)を認め,先天性第VII因子欠乏症を伴う左肺癌と診断した.出血に留意した丁寧な手術操作を心がけるとともに,術中に遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa,注射用ノボセブン®)の投与を行い,安全に左肺摘除術を施行しえた.
  • 松田 佳也, 八柳 英治, 草島 勝之, 藤井 正範, 佐藤 啓介
    2009 年 23 巻 1 号 p. 105-109
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/06/11
    ジャーナル フリー
    病理組織学的にcongenital cystic adenomatoid malformation(CCAM)と診断された成人男性における多発肺嚢胞の1例を経験したので報告する.症例は,26歳,男性.2005年4月の検診時に胸部X線写真で異常影を発見され近医を受診.その後,経過観察されていたが改善がみられなかったため当院紹介となった.呼吸器内科における精査にても確定診断には至らなかったが,感染・破裂の可能性に加え本人の希望もあり,手術目的にて当科紹介となった.手術は胸腔鏡補助下右下葉切除術を施行した.病理診断にてCCAM,Stocker分類のI型と診断された.術後経過は良好で,現在再発の兆候なく外来経過観察中である.CCAMの成人発見例は稀であるが,感染・破裂の危険性に加え悪性腫瘍合併の報告もあることから外科的切除が第一選択と考える.成人における多発肺嚢胞症例に対しては本疾患も念頭におき,治療方針を決める必要があると思われた.
  • 松岡 英仁, 八田 健
    2009 年 23 巻 1 号 p. 110-112
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/06/11
    ジャーナル フリー
    症例は57歳女性.作業中,ゴム紐で前頚部が頭側に絞め上げられ救急搬送された.自覚症状は軽度であったが,直ちに16列Multidetector-row Computed Tomography(MD-CT)を撮影し気管に全周性の断裂と併発する中等度の縦隔気腫を認めたため,緊急手術を施行した.麻酔導入時の気管支鏡検査で咽頭・喉頭部に重度の浮腫と出血を認め,観察中に窒息となったため前頚部皮膚を切開して気管断裂部に挿管して気道を確保した.気管は輪状軟骨と第1気管輪との間で膜様部を7mm残してほぼ完全断裂しており,輪状軟骨は前壁正中で切断されていた.修復は3-0PDSを用いて膜様部の3針を気道内で結紮し,輪状軟骨の前壁頭側は3針甲状軟骨にかけて計14針で非テレスコープ形に結節縫合した.術後は誤嚥や肺炎等の合併症を認めず軽快退院した.
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