日本呼吸器外科学会雑誌
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23 巻, 4 号
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原著
  • 菅原 祟史, 新井川 弘道, 鈴木 聡
    2009 年 23 巻 4 号 p. 584-589
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    高齢者気胸は保存的治療に委ねるべきとする考えが根強い地域医療において,呼吸器外科の参入が高齢者気胸の治療にもたらした効果を検証した.参入から2年間に外科的治療を受けた65歳以上の気胸症例15例(65~86歳)を対象に,治療日数および入院経路について前半と後半で比較した.外科的治療の件数は6件から9件に増加したが,気胸診断日から呼吸器外科退院日までの総治療日数は中央値で21日から9日に有意に短縮し,その内訳では呼吸器外科入院までの日数が大幅に短縮した.呼吸器外科への入院経路では他の医療機関からの直接紹介が2件から6件に増加した.同じ時期に外科治療を受けた20歳以下の気胸症例と比較しても,手術から退院までの日数には差がなかった.呼吸器外科の参入によって手術も安全で有力な治療法として地域の医療機関に浸透し,高齢者気胸の治療のチャンスが広がっただけでなく,外科的治療を決断するまでの過程が迅速になった.
症例
  • 阪口 全宏, 松村 晃秀, 桂 浩, 伊藤 則正, 中村 幸生, 北市 正則
    2009 年 23 巻 4 号 p. 590-593
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    肺腺癌の中には増殖が緩徐な症例があるといわれるが,長期経過が確認されるものは多くない.今回,20年の経過観察後確定診断できた杯細胞型肺腺癌の1切除例を報告する.症例は,44歳,男性.20年前,職場検診で左下肺野の異常陰影を指摘され,近医で肺結核の治療を受けた.以後,毎年胸部X線写真による経過観察がなされていたが,2006年陰影の大きさや形状に変化が認められた.気管支鏡検査で杯細胞型肺腺癌と診断し,左肺下葉切除術を行った.肺結核として治療を受け,その後,腫瘤影に顕著な変化がないまま長期観察されている症例の中には,進行の緩徐な肺癌が潜在する可能性を念頭におく必要がある.
  • 竹内 幸康, 大森 謙一, 須崎 剛行
    2009 年 23 巻 4 号 p. 594-597
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    症例は,26才初産婦.妊娠36週時に右自然気胸を発症し,胸腔ドレナージを施行されたが軽快しないため,手術目的で当科を紹介された.手術と出産の時期を検討した結果,まず39週時に帝王切開にて出産し,その1週間後に胸腔鏡下ブラ切除術を行った.術後4日目に軽快退院した.妊娠中に自然気胸を合併した場合,妊婦と共に胎児への影響も考慮しなければならない.特に妊娠後期の場合は,気胸の手術を先行するか出産を先行するか苦慮する.本例では出産を先行し良好な経過であった.妊娠後期の気胸の治療方針は,十分なインフォームド・コンセントのもとに決定することが重要である.
  • 池田 浩太郎, 林 明宏, 冨満 信二
    2009 年 23 巻 4 号 p. 598-601
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    診断に苦慮した肺放線菌症の1症例を報告する.患者は70歳代の男性.2006年の検診にて胸部異常陰影を指摘された.咳嗽,血痰など自覚症状は認めなかった.胸部単純X線写真において右中肺野に約3cmの淡い腫瘤影を認め,前医での胸部CTにて右中葉に径3.5cm大の腫瘤を認め,さらに気管支内視鏡,細胞診も施行されたが確定診断に至らず,開胸生検,手術目的で当院紹介となった.FDG-PET検査では,右肺中葉の腫瘤に一致して高集積を認め,さらにSUV値が遅延像で増加する悪性のパターンを示し,右中葉の原発性肺癌が疑われた.胸腔鏡補助下に小開胸を行い,病巣の針生検を施行し,術中迅速病理検査へ提出した.非腫瘍性病変,感染性病変との診断であったが,病巣の完全切除を行うため,中葉切除を施行した.病理組織検査において放線菌の菌塊と肉芽組織を認め,肺放線菌症と診断とされた.
  • 古澤 高廣, 小田 誠, 松本 勲, 谷内 毅, 斉藤 健一郎, 渡邊 剛
    2009 年 23 巻 4 号 p. 602-605
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,男性.胸部異常陰影を指摘され当科受診.胸部CT, MRI上,左上縦隔に上下に索状構造物が連続する腫瘤影を認めた.迷走神経由来の神経鞘腫と診断し胸腔鏡下手術を施行した.腫瘍は反回神経分岐部中枢の迷走神経より発生していた.鋭的に剥離を進め腫瘍を摘出した.腫瘍は病理組織学的に神経鞘腫であった.術後,嗄声は認めず第9病日に退院となった.
  • 花岡 淳, 井上 修平, 大内 政嗣, 五十嵐 知之, 手塚 則明, 北村 将司
    2009 年 23 巻 4 号 p. 606-612
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    症例1は85歳男性.20歳時に胸囲結核に対して手術療法を施行された既往があった.症例2は49歳男性.8ヵ月前まで肺結核に対して抗結核化学療法を施行されていた.両症例とも膿瘍内に腐骨を伴っており,抗結核化学療法開始1ヵ月後でも増大傾向を示した.そのため,注入したインジゴカルミン液をガイドに膿瘍郭清術および肋骨切除術を施行した.術後も抗結核化学療法を継続して行い,現在も再発を認めていない.胸囲結核症例に遭遇する機会は減少したが,胸壁腫瘤の鑑別診断にあげられることに留意しておく必要がある.治療には充分な抗結核薬の投与と適切な時期に徹底した膿瘍郭清を行うことが重要である.
  • 山口 学, 古川 欣也, 石田 順造, 岩屋 啓一, 洪 建偉, 斉藤 誠
    2009 年 23 巻 4 号 p. 613-616
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    背景:気管支閉鎖症は稀な先天性疾患であるが,近年の画像診断技術の向上に伴い報告が増加しつつある.症例:47才女性.健診にて左上肺野の腫瘍様陰影を指摘され,当院紹介受診となった.詳細は不明だが19歳時より同部に異常を指摘されていた.気管支内視鏡で左上区支を認めず,胸部CTでは左上区域の透過性亢進および左上区支のソーセージ状腫大を認め,また胸部3D CTでは左上区支の欠損を認めた.以上より左上区域気管支閉鎖症と診断した.左上肺野の腫瘤陰影は数年前より緩徐な増大傾向があるため,感染を疑い左上葉切除術を施行した.切除検体では上区域支は索状となり左上葉支と繋がっていたが内腔の交通は認めず,末梢側気管支は嚢状に拡張し粘液貯留を認めたが,細菌は検出されなかった.結論:長期間経過観察されていた気管支閉鎖症の1切除例を経験した.
  • 柳田 正志, 戸田 省吾
    2009 年 23 巻 4 号 p. 617-620
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    症例は32歳,妊娠18週の女性.右胸部痛を主訴に通院中の産科外来受診.右胸水の診断で当科紹介となる.胸部レントゲン上,右胸腔内に液体貯留を認め,胸部CTでも同様の所見と右S5に径1cm大の結節陰影を認めた.局所麻酔下に右胸腔の試験穿刺を施行したところ血液が400ml吸引され,3時間後のレントゲンで血胸の増悪を認めたため,止血術を行うこととした.胸腔鏡下に観察すると大量の凝血塊を認め,中葉の拡張した異常血管より出血しているのが確認された.肺動静脈瘻破裂の診断で出血部位を切除し,下葉の同病変部と思われる箇所も切除を行った.経過は良好で2病日目に退院となる.術後5ヵ月目に出産し,母子ともに問題なく健康である.妊娠中に血胸で発症した肺動静脈瘻について文献的考察を加えて報告する.
  • 宮内 善広, 奥脇 英人, 松原 寛知, 國光 多望, 松岡 弘泰, 松本 雅彦
    2009 年 23 巻 4 号 p. 621-625
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    Morgagni孔ヘルニアは胸肋三角に生ずる横隔膜ヘルニアの一種である.今回胸腔鏡・腹腔鏡を併用した完全鏡視下Morgagni孔ヘルニア根治術の一例を経験したので報告する.症例:69歳,女性.咳嗽を契機にMorgagni孔ヘルニアと診断され,胸腔鏡・腹腔鏡を併用した完全鏡視下ヘルニア根治術を施行した.術後20ヵ月現在再発なく,呼吸機能は著明に改善した.考察:Morgagni孔ヘルニアは比較的稀ではあるが,近年鏡視下手術の報告が散見される.その多くがヘルニア嚢の切除を行わない腹腔鏡下手術で,胸腔鏡下手術は少数であり,本例のように胸腔鏡と腹腔鏡を併用した報告はみられなかった.それぞれのアプローチには利点と欠点があり,両者を併用することにより,完全鏡視下にヘルニア嚢の切除を伴う修復術を行うことが可能であった.本術式は低侵襲かつ術後QOLを維持しつつ,根治性の高い術式と考えられた.
  • 青木 正, 本野 望, 矢澤 正知
    2009 年 23 巻 4 号 p. 626-629
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    症例は71才男性,左肺癌に対して左上葉切除を行った.経過観察中に残存下葉の肺嚢胞と周囲のすりガラス陰影の拡大を指摘された.いずれも徐々に拡大するために異時多発肺癌が疑われた.初回手術後3年目で再手術,左S8区域切除を行った.病理診断はBronchioloalveolar carcinoma pT2N0M0 stage IBであった.肺嚢胞拡大の原因として,腫瘍細胞による肺胞壁破壊とともに肺葉切除による気管支の変形がもたらしたチェックバルブも考えられた.
  • 桐林 孝治, 草地 信也, 吉田 祐一, 西牟田 浩伸, 長尾 二郎, 横内 幸
    2009 年 23 巻 4 号 p. 630-635
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    症例は68歳男性.健康診断の胸部レントゲン写真にて右中肺野に異常陰影指摘され当科紹介,特に自覚症状はなく血液生化学的所見に特記すべき異常はなかった.胸部CT検査にて右肺S6に径25mm大,S4に径15mm大の結節性病変認めるも,有意なリンパ節腫張は認めなかった.診断的治療目的に手術を考慮し,術前全身検索目的に上部消化管内視鏡検査施行したところ,胃全体のびらんおよび体上部小彎に大きな潰瘍を認めた.生検施行にて悪性リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma)が考えられた.胸腔鏡補助下右肺部分切除術施行,術中病理では胃生検で観察された腫瘍細胞と同様であった.術前全身検索の重要性を改めて認識した症例であった.
  • 新居 和人, 奥田 昌也, 張 性洙, 石川 真也, 黄 政龍, 横見瀬 裕保
    2009 年 23 巻 4 号 p. 636-640
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    肋骨原発巨大軟骨肉腫に対して,広範囲胸壁切除術と胸壁再建術を施行した1例を経験した.77歳女性で,10年前より左前胸部の膨隆を自覚していた.当初は軟骨腫と診断され経過観察されていたが,後に軟骨肉腫と診断されたため,今回手術施行となった.grade II(Evansら1)の分類に基づく)と悪性度が高く,また腫瘍径も10cm弱と巨大であった.しかし,広範囲に胸壁切除術を行い,有茎腹直筋皮弁を胸壁欠損部に被覆することで,腫瘍の広範囲切除と胸壁再建が可能であった.術後2年が経過するが,再発なく経過良好である.
  • 宮坂 善和, 櫻庭 幹, 王 志明, 高持 一矢, 宮元 秀昭, 鈴木 健司
    2009 年 23 巻 4 号 p. 641-646
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    症例は34歳,女性.既往歴として左右気胸で手術歴があった.家族歴として父方に気胸発症者が多い特徴があった.呼吸困難のため当科初診となった.胸部CTでは右肺虚脱に加えて葉間面および縦隔面から肺底部面を中心とした肺嚢胞を多数認めた.保存的経過で改善しないため,右胸腔造影施行し肺瘻部位を確認後,手術を施行した.病理所見では特異的な所見は得られなかったが,遺伝子検査で常染色体優性遺伝疾患であるBirt-Hogg-Dubé症候群と診断された.また同時に施行した横隔膜生検で異所性子宮内膜が確認された.本症例はBirt-Hogg-Dubé症候群と横隔膜異所性子宮内膜症が合併した稀な気胸症例であった.Birt-Hogg-Dubé症候群では腎癌を始めとする多臓器腫瘍合併が多く経過観察が必要である.また女性気胸はその背景に様々な病態が存在することが多く,より注意深い基礎疾患の評価が必要である.
  • 加藤 靖文, 中山 治彦, 伊藤 宏之, 坪井 正博, 池田 徳彦
    2009 年 23 巻 4 号 p. 647-652
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    創哆開の原因にsurgical site infection:SSIがあることは周知であるが,SSI以外にも創哆開が発生することがある.SSIに起因しない骨性胸郭離開を伴う創哆開を3例経験したのでその原因を検討した.症例1:糖尿病合併例で胸壁腫瘍摘出後28日目に開胸創が全層に渡り哆開した.症例2:full doseの放射線化学療法(CRT)後で左上葉切除後13日目に著明な肺瘻を発症,手術で開胸創哆開が判明した.症例3:full dose CRT後の左下葉切除後17日目に肺瘻を発症,開胸創哆開が判明した.全例に創傷治癒遷延因子(糖尿病,CRT後)があり,全例に吸収糸を用いたZ縫合で閉胸していた.糸の切断を検討すると糸の交叉部位に切断機転が働くことが判明した.糸が切断,肋間が開き,開胸部位に癒着した肺が裂傷を起こし,肺瘻が生じたと思われた.対策は,Z縫合をやめ4針以上の単結紮で骨性胸郭を閉胸することにしてから,これらの創哆開は起こっていない.
  • 安彦 智博, 小泉 聡子, 高浪 巌
    2009 年 23 巻 4 号 p. 653-656
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    症例は69歳男性で,2007年3月に胃癌術後1年目に行った胸部CTで右S2に30×15mm大の周囲に浸潤影を伴う腫瘤影が出現したが,気管支鏡では細胞診がclass II,組織診は気管支・肺胞組織の器質化の診断であった.3ヵ月後の胸部CTでは腫瘤影が30×20mm大と増大してきたため気管支鏡を再検したが前回と同様の結果であった.FDG-PETを施行したところ,SUVmax 5.97と強い結節状集積を認め肺癌が疑われた.2007年8月胸腔鏡下右S2区域切除を施行した.病理診断は肺放線菌症であった.肺放線菌症は画像上だけでなく気管支鏡でも肺癌との鑑別が困難なため,悪性が疑われ気管支鏡で診断が確定できない腫瘤影には,本疾患を念頭に入れておく必要があると考えられた.
  • 菅谷 将一, 中川 誠, 渡橋 剛, 横井 陽子, 町田 和彦, 安元 公正
    2009 年 23 巻 4 号 p. 657-661
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    FDG-PETは腫瘤性病変の質的診断に有用である.しかしながら,良性疾患では悪性疾患に比べ臨床的有用性は未だ確立されていない.今回われわれは術前FDG-PETで陽性を示した縦隔内神経鞘腫の1例を経験したので報告する.症例は,50歳の女性.2006年の検診で胸部異常陰影を指摘されたが放置.2007年の検診で胸部異常影の増大を認めたため近医受診.胸部CTにて縦隔腫瘍と診断され手術目的で当科紹介となった.術前FDG-PETでSUV max:6.6,mean:3.9と高集積を認めた.確定診断および治療目的で胸腔鏡下縦隔腫瘍摘出術を施行し,術中迅速病理診断で神経鞘腫の診断であった.縦隔内神経鞘腫においてもFDGが高集積を示す可能性があることを念頭において,術式を含めた治療方針を決定することが重要と考えられた.
  • 江間 俊哉, 澤藤 誠
    2009 年 23 巻 4 号 p. 662-665
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    直腸癌肺転移に対し左肺部分切除と右肺中葉切除後,再発した右肺転移巣に対して化学療法施行後に右残存肺全摘除を施行した1例を経験したので報告する.症例は55歳女性.1999年,直腸癌に対し前方切除術施行.2002年,術後両側肺転移に対し,左肺S10部分切除,右肺中葉切除,右肺S6部分切除を2期的に施行.2006年残存右肺門に再発を認めたため,FOLFOX療法を計8コース施行した.上昇していたCEAは正常値に戻ったが,右肺門の腫瘍は残存した.PET検査を含む画像検査にて肺外病変を認めなかったため,右残存肺全摘除を施行した.現在,術後1年3ヵ月であるが原発巣の再発や新たな転移を認めず,外来経過観察中である.
  • 小林 尚寛, 酒井 光昭, 後藤 行延, 石川 成美, 鬼塚 正孝
    2009 年 23 巻 4 号 p. 666-669
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    症例は28歳男性.嗄声,咳嗽,右胸背部痛にて近医を受診し,上気道炎の診断で加療を受けたが改善しなかった.喉頭鏡検査で右声帯麻痺と診断され当院へ紹介受診した.胸部CTで気管右側後壁,食道,右鎖骨下動脈に挟まれる部位に23×16×25mmで内部均一な造影効果を有しない腫瘍を認めた.嚢胞性上縦隔腫瘍による右反回神経麻痺と診断し,右胸腔鏡下に腫瘍摘出術を施行した.病理組織学的診断は気管支原性嚢胞であった.術後6ヵ月の時点では嗄声が残存したが,術後1年目で嗄声は消失し,喉頭鏡所見でも声帯機能の完全回復が認められた.気管支原性嚢胞に嗄声を呈した報告は自験例を含めて6例のみであった.そのうち,完全回復したものは2例のみであった.反回神経近傍にある気管支原性嚢胞は,症状出現後の手術時期によらず不可逆性の嗄声を呈する可能性があり,無症状であっても手術を検討する必要がある.
  • 有村 隆明, 篠原 博彦, 矢沢 正知
    2009 年 23 巻 4 号 p. 670-674
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    症例は20歳女性.2005年7月上旬に感冒様症状で内服治療を受けたが改善なく,7月23日胸部X線写真で左大量胸水と縦隔の右方偏移を指摘され,紹介受診した.胸部CTでは左肺は完全に虚脱し,後縦隔に約80mm大の腫瘍が認められた.呼吸困難が強く,入院後直ちに胸腔ドレーンを挿入した所,計5,000ml淡血性の胸水排液を認めた.胸水細胞診ではClass IVと腺癌が疑われたが,胸部CT,MRIの画像所見や腫瘍マーカーでは悪性所見に乏しく,CTガイド下針生検を施行した.生検の組織診では神経鞘腫と診断されたため,縦隔腫瘍摘出術を実施した.腫瘍は縦隔から胸腔内に突出していたが脊椎管内の進展や椎体への癒着は無く,容易に腫瘍摘出が行いえた.摘出標本の組織診断も神経鞘腫であり悪性像は認められなかった.術後経過は良好で,現在まで再発は認めていない.大量胸水を伴った神経鞘腫の報告例は稀であり,その発症機序について文献的考察を加え報告する.
  • 舘 秀和, 柴田 和男, 佐野 正明, 中前 勝視
    2009 年 23 巻 4 号 p. 675-679
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/12/14
    ジャーナル フリー
    胸腺腫合併重症筋無力症に併存した肺乳頭腫の1例を報告する.症例は74歳女性.眼瞼下垂・四肢脱力感で神経内科を受診し,胸腺腫合併重症筋無力症と診断され当科に紹介された.胸部CT, MRIで胸腺右葉の腫瘤と右肺下葉S8に長径1cm大の結節を認め,前縦隔腫瘍と肺癌の合併の可能性も疑われた.胸腺腫合併重症筋無力症および肺腫瘍の診断で拡大胸腺摘出術および肺部分切除施行した.病理組織所見では胸腺腫(WHO type B)に併存した乳頭腫(mixed squamous cell and glandular papilloma)と診断された.乳頭腫は悪性化や扁平上皮癌との併存が報告されており,厳重な術後経過観察が好ましいと考えられる.
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