日本呼吸器外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-4158
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24 巻, 6 号
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原著
  • 月岡 卓馬, 西山 典利, 岩田 隆, 永野 晃史, 泉 信博, 水口 真二郎, 丁 奎光, 末廣 茂文
    2010 年 24 巻 6 号 p. 886-890
    発行日: 2010/09/15
    公開日: 2011/02/22
    ジャーナル フリー
    2004年1月から2008年12月に縦隔リンパ節郭清を伴う肺葉切除を施行したc-1A期非小細胞肺癌症例131症例を対象とし,術後病理学的リンパ節転移陰性群と陽性群間の臨床病理学的因子を検討した.男性72例,女性59例,平均年齢67歳.腺癌107例,非腺癌24例であった.pN0症例113例,pN1症例6例,pN2症例12例であった.リンパ節転移陰性例(n=113)および陽性例(n=18)を比較検討すると術前血中SLX値の中央値はそれぞれ21.6U/mlおよび28.5U/mlであり,リンパ節転移陽性例で有意に高値であった(p=0.001).ROCカーブから血中SLX値についてカットオフ値(26U/ml)を決定し,臨床病理学的因子について多変量解析を行うと血中SLX値のみが独立予測因子であった(リスク比:3.527,p=0.021).c-1A期非小細胞肺癌症例において術前血中SLX値陽性例は術前精査,術式選択について慎重な検討が必要と考えられた.
  • 藤田 敦, 塚田 博, 須田 一晴, 古屋敷 剛, 呉屋 朝幸
    2010 年 24 巻 6 号 p. 891-895
    発行日: 2010/09/15
    公開日: 2011/02/22
    ジャーナル フリー
    当院で行ったCTガイド下肺針生検について,腫瘍径および生検針の穿刺距離と合併症の関連を検討した.CTガイド下肺針生検を行った206例中59例に合併症が見られ,気胸が35例,喀血が28例,喀血と気胸が合併した症例が4例あった.合併症が見られた症例の平均腫瘍径は2.2±0.9cm,見られなかった症例は2.5±1.4cmで両群間に有意差は見られなかった(p=0.159).穿刺距離を測定可能な症例は100例のみであった.合併症が見られた症例の平均穿刺距離は2.4±1.4cm,見られなかった症例は1.3±1.3cmで両群間に有意差が見られた(p<0.05).穿刺距離を2cmで区切ると2cm未満の症例61例のうち8例に,2cm以上の症例39例のうち21例に合併症が見られ両群間に有意差が見られた(p<0.05).合併症を軽減するためには穿刺距離を極力短くする必要性があると考えられた.
症例
  • 吾妻 寛之, 宮澤 正久, 小林 宣隆
    2010 年 24 巻 6 号 p. 896-900
    発行日: 2010/09/15
    公開日: 2011/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は19歳,男性.血痰と胸部X線異常陰影を指摘され受診となった.胸部X線上右肺門に腫瘤影を認め,2年前のX線と比較すると明らかに増大していた.胸部CTでは右S6に38mm大の腫瘤を認め,気管支鏡下肺生検にて硬化性血管腫の診断となった.右肺下葉切除を施行,術後病理診断にて硬化性血管腫と確定した.本症例は,若年男性発生で比較的急速な増大を示し,術前診断しえたまれな1例と考えられた.
  • 橋詰 寿律, 山本 純, 島内 正起, 濱本 篤, 水渡 哲史, 深井 志摩夫
    2010 年 24 巻 6 号 p. 901-905
    発行日: 2010/09/15
    公開日: 2011/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は53歳男性.胸痛を主訴に来院.胸部単純X線写真,CTおよびMRIで前縦隔に充実性の腫瘤を認めた.FDG-PET検査で高集積を認め前縦隔腫瘍と診断し,腫瘍および心膜,両側縦隔胸膜合併切除を行った.腫瘍は心膜を貫き,心嚢内に露出していた.血性心嚢液を100ml認めたが,細胞診はclass IIであった.病理学的にデスモイド腫瘍と診断された.術後縦隔に放射線を50Gy照射したにもかかわらず外来通院中に局所再発を来たした.その後,タモキシフェンの投与を行ったが効果なく術後2年4ヵ月で腫瘍死した.
  • 三澤 賢治, 西田 保則, 三島 修, 北野 司久, 北澤 勉, 吉岡 照晃
    2010 年 24 巻 6 号 p. 906-910
    発行日: 2010/09/15
    公開日: 2011/02/22
    ジャーナル フリー
    当院では,肺葉切除・区域切除症例を対象として,CT angiographyを作成し術前に肺動静脈の同定,variationの有無を確認してきた.2009年1月より320列CTが導入され,以前に比べて詳細な画像をえられるようになり血管走行の確認が容易になったが,CT angiographyの作成は決まった条件により作成されるため,症例によっては手術に必要な血管の描出が不良となり,その走行の確認が困難な場合があった.この問題を解決する目的でWeb browserを利用したVersa WebTM(ザイオソフト社製)を導入したところ(2009年9月),術者自身が簡単にCT angiographyを作成・保存できるようになった.術前に作成したCT angiographyを用いて肺血管の詳細なmappingを行うことで,肺切除術,とりわけ上葉切除や区域切除および不全分葉症例での手術をより安全に迅速に行うことが可能と考えられた.
  • 竹内 健, 加藤 良一, 前島 新史
    2010 年 24 巻 6 号 p. 911-915
    発行日: 2010/09/15
    公開日: 2011/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は88歳男性.2006年健診で異常陰影を認め精査目的に当科を受診した.胸部CTで右上葉末梢,右肺門部と左上葉に結節影を認めた.気管支鏡で,右上葉末梢病変は非小細胞癌と診断した.FDG-PET検査で各結節影に一致して集積を認めた.右肺癌cT1bN1M0および左肺癌cT1bN0M0の重複癌と診断し,まず右上葉切除+リンパ節郭清を,3週後に胸腔鏡下左肺部分切除を施行した.リンパ節転移と考えていた右肺門部の結節は,原発性肺癌であり,3病変はすべて異なる組織型で,それぞれp-I A期であった.術後3年7ヵ月経過した現在再発を認めていない.同時性肺三重癌で組織型がすべて異なる症例は稀である.また高齢者三重癌に対して手術を2期的に施行し,良好な結果が得られた症例は今までに報告されていない.今回われわれは,同時性肺三重癌の一切除例を経験したので文献的考察を加え報告する.
  • 小野 貴史, 南谷 佳弘, 齋藤 元, 伊藤 学, 小川 純一
    2010 年 24 巻 6 号 p. 916-919
    発行日: 2010/09/15
    公開日: 2011/02/22
    ジャーナル フリー
    慢性膿胸腔に扁平上皮癌が発生した稀な1例を経験した.症例は75歳の男性,16年前に慢性膿胸にて開窓術を前医で施行された.その後開窓部の処置を継続していたが,開窓部の混濁した浸出液が増加,開窓部背側胸痛が出現したため,当院を紹介受診した.CTにて肋骨破壊を伴う膿胸開窓部の胸壁腫瘍を認め,CTガイド下生検にて扁平上皮癌の病理診断を得た.慢性膿胸に合併した胸壁扁平上皮癌と診断し,放射線照射にて治療を行った.慢性膿胸関連悪性腫瘍の多くは悪性リンパ腫であるが,約20%に扁平上皮癌の合併が報告されている.今回16年の経過を経て慢性膿胸腔に扁平上皮癌が発生した症例を経験したので報告する.
  • 深谷 建, 大泉 弘幸, 遠藤 誠, 鈴木 潤, 貞弘 光章
    2010 年 24 巻 6 号 p. 920-923
    発行日: 2010/09/15
    公開日: 2011/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は32歳男性.発熱,頚部腫脹が出現し,CTで前頚部より胸骨柄後方・上縦隔に連続する広汎な膿瘍形成を認めた.胸鎖関節炎に伴う縦隔・頚部膿瘍の診断で,胸骨柄を部分切除し,開放ドレナージを行った.その後,VAC(陰圧閉鎖療法)を導入したところ,二期的な筋弁充填を必要とすること無く,良好な肉芽再生が促進され,創治癒が可能であった.
  • 荒井 淳一, 山崎 直哉, 田川 努, 土谷 智史, 宮崎 拓郎, 永安 武
    2010 年 24 巻 6 号 p. 924-928
    発行日: 2010/09/15
    公開日: 2011/02/22
    ジャーナル フリー
    60歳男性.胸部単純写真で左下肺野に腫瘤影を指摘された.CTでは左下葉に径15cmの巨大腫瘤を認め,肺門・縦隔リンパ節腫大も認めた.CTガイド下肺生検にて肺多形癌と診断された.cT3N2M0 Stage III Aで,腫瘍の急速な増大と血痰を繰り返すため,手術を施行した.巨大な腫瘍により下葉の可動性はなく肺静脈処理を先行させることは困難であり,葉間肺動脈,下葉気管支,舌区気管支,舌区静脈の順に処理し,最後に下肺静脈をステープラで切離した.その後,右橈骨動脈ラインの圧波形が平底化し,触知不能,冷感が出現し,塞栓閉塞を疑った.術後血管造影で上腕動脈の閉塞を認め,緊急塞栓除去術を施行した.血管内腔は腫瘍栓で閉塞しており,病理診断でも腫瘍塞栓であった.肺切除術に伴う腫瘍塞栓はまれであるが,肺静脈に浸潤が疑われる症例では,術前の評価方法や術中の操作に考慮すべき点がある.
  • 高橋 亮, 中島 崇裕, 坂入 祐一, 松井 由紀子, 飯笹 俊彦, 木村 秀樹
    2010 年 24 巻 6 号 p. 929-933
    発行日: 2010/09/15
    公開日: 2011/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は60歳代,男性.前医にて直腸癌に対し手術を施行.原発巣診断時に指摘されていた右肺下葉小結節影の増大傾向を認め,CTガイド下生検により直腸癌肺転移と診断された.当科での肺部分切除術の術後経過観察中,胸部CTにて右肺下葉背側の胸膜直下および肋骨,胸壁筋層にかけて異常影を認め,FDG-PETで同部位に集積を認めた.再発と診断し,右肺部分切除および胸壁合併切除を施行した.病理所見では,肺組織内,肋骨およびその周辺軟部組織内に腫瘍を認めたが,胸膜は保たれており,CTガイド下生検による腫瘍のインプラントが疑われた.CTガイド下生検施行後は,その後のインプラントの可能性も念頭に置いた注意深い経過観察が必要であると考える.
  • 仲田 健男, 尾高 真, 矢部 三男, 神谷 紀輝, 平野 純, 森川 利昭
    2010 年 24 巻 6 号 p. 934-939
    発行日: 2010/09/15
    公開日: 2011/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は47歳の男性.主訴は易疲労感,労作時の息切れであった.精査にて赤芽球癆および低ガンマグロブリン血症と診断し,胸部CT上,前縦隔に胸腺と一致して長径87mmの境界明瞭な腫瘤性病変を認めた.本症例に対し,われわれはintension to treatによる胸腔鏡下胸腺胸腺腫切除を施行した.手術時間は255分で出血量は100mlであった.切除検体は88×53×30mm,93g.病理組織検査にてWHO分類type AB,正岡分類II期の胸腺腫と診断した.本症は術後42病日に貧血を認め輸血を行い,現在,内科的治療にて経過観察中である.赤芽球癆および低ガンマグロブリン血症を合併した胸腺腫は非常に稀である.赤芽球癆は難治性自己免疫疾患で,胸腺腫合併例に対する胸腺全摘術は,赤芽球癆に対する内科的治療の抵抗性を改善させる.さらに,胸腔鏡下手術は従来の胸骨正中切開手術と比較し,低侵襲手術であり,自己免疫疾患と関連する胸腺疾患への適応拡大が期待される.本例と同様の症例に対する,胸腔鏡手術の術後成績の蓄積が必要と考える.
  • 道免 寛充, 岩代 望, 中西 喜嗣, 小室 一輝, 石坂 昌則
    2010 年 24 巻 6 号 p. 940-944
    発行日: 2010/09/15
    公開日: 2011/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は71歳男性.幼少時より皮膚多発結節および褐色斑がみられ,von Recklinghausen病と診断されていた.6年前から自覚していた緩徐な増大傾向を示す右側胸部腫瘤の経過観察中にCT検査で右肺に2cm大のすりガラス状陰影を指摘された.2009年3月のCT検査で同陰影の増大傾向および陰影内部の濃度上昇を認め肺腺癌が疑われ当科紹介となった.まず胸壁腫瘍を全身麻酔下に摘出した.病理組織学的に脂肪腫の像で悪性所見は認めなかった.右肺病変に対して気管支鏡検査,生検を行ったところ,原発性肺腺癌と診断されたため,胸腔鏡下右肺下葉切除,系統的縦隔リンパ節郭清を行った.切除標本を肉眼的に観察すると,やや気腫性変化が目立つ背景肺の中に炭粉集中を有する2.1×1.5cm大の白色腫瘍を認めた.病理組織学的に肺腺癌,pT1b,pN0,pStage I Aと診断された.術後経過は概ね良好で現在まで再発徴候を認めていない.
  • 坂入 祐一, 門山 周文, 和田 啓伸, 山田 義人, 吉野 一郎
    2010 年 24 巻 6 号 p. 945-9448
    発行日: 2010/09/15
    公開日: 2011/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は皮下出血・発熱を認めた44歳女性.白血球増多症のため当院へ紹介され,急性骨髄性白血病と診断された.抗がん薬治療中に高熱と右肺上葉に増大する浸潤影を認め,侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)が疑われた.陰影は抗真菌治療で治癒せず,白血病治療を妨げていた.治療継続のために右肺上葉切除術を施行した.肺病変は背部で壁側胸膜と強固に癒着しており,肺と共に胸膜と筋層の一部を合併切除した.切除標本でアスペルギルス菌糸を確認しIPAと診断された.術後経過は良好で,早期に抗がん薬治療が可能となり,真菌症の再燃なく骨髄移植を行った.白血病治療中のIPAは致死的な病態であり,抗真菌薬のみならず手術も治療の選択肢となる.文献上は肺胞出血が主な術後合併症であり,骨髄機能の回復を待ち手術を行う集学的治療により白血病とIPAを効果的に治療することが可能であった.
  • 畑地 豪, 佐野 功, 原 信介, 澤田 貴裕, 永安 武
    2010 年 24 巻 6 号 p. 949-953
    発行日: 2010/09/15
    公開日: 2011/02/22
    ジャーナル フリー
    結節性筋膜炎(nodular fasciitis)は1955年にKonwalerらによってはじめて報告された線維芽細胞の増殖を主体とする反応性増殖性病変であり,偽肉腫様の形態的特徴を有する病変である1).現在は線維腫の1亜型として分類されている.多くは顔面・頭頚部や上肢の皮下に急速に増大する腫瘤として認められ,しばしば線維肉腫等の軟部組織由来の悪性腫瘍との鑑別に苦慮する疾患である.今回我々はSuperior sulcusに発生した腫瘍の部分切除を行うも確定診断に至らず,腫瘍の全切除後に診断された結節性筋膜炎の1切除例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
  • 穴山 貴嗣, 岡田 浩晋, 久米 基彦, 笹栗 志朗
    2010 年 24 巻 6 号 p. 954-958
    発行日: 2010/09/15
    公開日: 2011/02/22
    ジャーナル フリー
    肺過誤腫のほとんどは肺実質型であり気管支内過誤腫は比較的まれである.我々は繰り返す肺炎を契機に発見された気管支内過誤腫の一手術例を経験したので報告する.症例は61歳男性.7年前から計3回の繰り返す肺炎の既往があり,半年前にも肺炎を来たし近医にて内科的治療を施行された.肺炎軽快後もCTにて左S6区域に異常陰影を指摘され当科紹介となった.気管支鏡検査では左B6入口部に気管支内腔を閉塞する腫瘤を認め,生検の結果,気管支内過誤腫と診断された.気管支鏡下治療は困難と判断し左S6肺区域切除を施行した.病理所見では左B6cの気管支壁から発生しB6区域支の内腔に増殖する1.6cm大の軟骨性過誤腫であった.術後経過は順調であった.
  • 水谷 栄基, 森田 理一郎, 赤石 亨
    2010 年 24 巻 6 号 p. 959-962
    発行日: 2010/09/15
    公開日: 2011/02/22
    ジャーナル フリー
    葉間部肺動脈が嚢胞底に接していた巨大肺嚢胞の1手術例を経験したので報告する.症例は40歳男性.2009年の検診にて巨大肺嚢胞を指摘された.CT検査で右胸腔の2分の1を占める巨大肺嚢胞を認め,手術目的に当科へ紹介となった.喫煙歴なし.胸腔鏡下に観察すると,巨大肺嚢胞の底部は葉間部にあり,底部の辺縁が上葉および下葉に及んでいた.嚢胞壁を通して底部に肺動脈が透見された.嚢胞壁を切開すると,嚢胞底に葉間部肺動脈を認めた.小開胸下に嚢胞底の気漏部位数箇所を縫合閉鎖した後に,嚢胞底にポリグリコール酸シートを貼付した.嚢胞底に肺動脈が接していた稀な症例であり,肺嚢胞の処理に工夫を要した症例であった.
  • 矢吹 皓, 塩野 知志, 安孫子 正美, 岡崎 敏昌, 千葉 眞人, 佐藤 徹
    2010 年 24 巻 6 号 p. 963-966
    発行日: 2010/09/15
    公開日: 2011/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は42歳男性.2003年3月右腎細胞癌の診断にて右腎摘出術を施行した.経過観察中,胸部CTで左下縦隔に径2.5cmの腫瘤を認めた.食道粘膜下腫瘍を疑い2008年1月開腹下横隔膜縦切開による下縦隔腫瘤摘出術を施行した.病理診断は腎細胞癌のリンパ節転移であった.術後テガフール・ウラシルを内服していたが,2008年5月のCTで右肺門部リンパ節腫大が出現した.腎細胞癌の再発と診断しインターフェロン療法を施行したが,増大傾向を認めたため2008年7月胸腔鏡補助下小開胸にてリンパ節摘出術を施行した.病理診断は腎細胞癌のリンパ節転移であった.その後は約2年経過したが再発を認めていない.腎細胞癌の縦隔肺門リンパ節転移は切除により予後の改善が期待できる場合もあると考えられ報告した.
  • 松浦 陽介, 渡 正伸
    2010 年 24 巻 6 号 p. 967-971
    発行日: 2010/09/15
    公開日: 2011/02/22
    ジャーナル フリー
    ヘリカルCTの普及により,肺の小結節病変が発見される症例が増え,診断のためのCTガイド下針生検や,手術に先んじたCTガイド下マーキングが行われる機会が増加した.一方で,これらの処置では肺穿刺に伴う重篤な合併症として空気塞栓症が広く認識されてきている.当科ではこれまで,CTガイド下針生検およびCTガイド下マーキングで各々1例ずつ,処置後の心腔内空気栓が発生した.1例目は56歳男性,左上葉肺癌の術後経過観察中に,右肺S6に肺癌が疑われる陰影が指摘され,CTガイド下針生検を施行した.2例目は75歳女性,扁桃癌の治療歴あり.右肺S9/10の肺転移巣に対し手術の予定となり,術前CTガイド下マーキングを施行した.2例とも,処置後のCTで心腔内空気栓が確認されたため,姿勢保持のまま経時的にCTを行い,その消失が確認された.重篤な空気塞栓症は回避できたが,肺穿刺の適応については熟慮が必要と考えられるため報告する.
  • 西井 竜彦, 村松 高, 四万村 三恵, 古市 基彦, 大森 一光, 塩野 元美
    2010 年 24 巻 6 号 p. 972-975
    発行日: 2010/09/15
    公開日: 2011/02/22
    ジャーナル フリー
    大血管手術以外の周術期に発症した非常に稀な脊髄梗塞の1例を経験したので報告する.症例は70歳男性,左肺癌に対して硬膜外併用全身麻酔下に,左上葉切除およびリンパ節郭清を施行した.術後3時間後より,右下肢,右手関節以下の麻痺が認められた.硬膜外カテーテルの影響が考えられたため,直ちに硬膜外注入を中止した.翌日になりさらに麻痺が進行し,頭部・脊椎MRIが施行されたが,診断がつかなかった.術後第3病日に施行された頚胸髄MRIでC1からTh2までの広範囲の脊髄梗塞が認められた.ステロイド,高浸透圧性利尿剤の投与で麻痺の改善傾向を認めたため,27病日リハビリ病院転院となった.
  • 牟田 文彦, 永松 佳憲, 岩崎 泰憲, 樫原 正樹, 西 達矢, 白水 和雄
    2010 年 24 巻 6 号 p. 976-979
    発行日: 2010/09/15
    公開日: 2011/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は59歳男性,胸部CTで右S8に最大径3.0cmの腫瘤性病変と右S2に最大径1.0cmの小結節を認めた.右S8の腫瘤は右肺癌と診断した.肺内転移疑いのS2の小結節は確定診断に至らず,それに対し胸腔鏡下肺部分切除術を行い,術中細胞診で悪性所見がなかったため,右下葉切除術(ND2a)を施行した.術後病理所見ではS8の腫瘤は右肺癌(中分化型腺癌)p-T1N0M0 stage I A,S2の病変は肺クリプトコッカス症の診断であった.炎症か癌かを術前に区別できない病巣を伴う肺癌に対しては外科的生検による鑑別が必要である.
  • 蘆田 良, 重光 希公生, 横山 幸房
    2010 年 24 巻 6 号 p. 980-986
    発行日: 2010/09/15
    公開日: 2011/02/22
    ジャーナル フリー
    肺癌により大量喀血を来たし気道確保が困難となり,経皮的心肺補助法(PCPS)併用下に手術を行い救命し得た1例を経験したので報告する.症例は59歳男性.左肺門部癌に対し,手術待機中に大量喀血した.この気道内出血による呼吸不全に対し経皮的心肺補助(PCPS)を設置した上で左上葉切除+気管支形成術を施行した.術中の抗凝固剤にメシル酸ナファモスタットを使用した.PCPSからの離脱は術直後に円滑に行えた.術後5日に人工呼吸器から離脱できた.術後14日にPCPSカテーテル留置側の左下肢に深部静脈血栓症を併発したため,下大静脈フィルターを留置した.その後の経過は良好で術後29日に退院した.術後1年現在,無再発生存中である.
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