日本呼吸器外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-4158
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25 巻, 4 号
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原著
  • 林 博樹, 臼田 実男, 大平 達夫, 河原 正樹, 池田 徳彦
    2011 年 25 巻 4 号 p. 352-355
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    75歳以上の縦隔腫瘍手術14例を後向きに検討を行った.術後合併症は4例に認めた.また高齢者に多い術後譫妄は,70~79歳では出現せず,80歳以上の4例中2例に認めた.在院日数は最短で7日,最高で164日,平均在院日数は30.3日であった.高齢者でも慎重に患者選択を行えば,術後合併症の頻度は変わらないのではないかと推察されるが,高齢者に特徴的な合併症である術後譫妄などの頻度は高くなると考えられ対策が必要と思われた.
  • 松本 卓子, 神崎 正人, 網木 学, 清水 俊榮, 前田 英之, 坂本 圭, 大久保 裕雄, 大貫 恭正
    2011 年 25 巻 4 号 p. 356-362
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    3D画像構築ソフトはCT付属のソフトをはじめとして実用可能なものが数種類存在する.われわれは64列multi detector-row CTで撮影した同一症例の画像をもとに3種類の方法(Advantage Workstation Volume Share4/OsiriX/CTTRY)で3D画像を構築し,それらの画像を術野で参照した手術を5例経験した.各方法の特徴・術野での操作/使用感について手術所見と対比した比較をおこなった.結果,区域レベルの血管像の構築に大差は見られず,手術において有用であると思われたが,亜区域レベルでは描出に差がみられた.
  • 竹下 伸二, 村松 高, 四万村 三恵, 古市 基彦, 西井 竜彦, 石本 真一郎, 諸岡 宏明, 伊良子 光正, 大森 一光, 塩野 元美
    2011 年 25 巻 4 号 p. 363-366
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    自然気胸に対し,近年,簡易型胸腔ドレナージキット(ソラシックエッグ®)を挿入し,外来経過観察となる症例が増加している.今回,ソラシックエッグ®の有用性の有無を検討した.対象は過去2年間,当科外来でのソラシックエッグ®挿入46症例.ソラシックエッグ®挿入前の肺虚脱度は軽度から中等度虚脱43症例,高度虚脱3症例.予定手術12症例を除く非予定手術34症例のうち外来観察のみで軽快したのは21症例(61.8%).膨張不良による入院となったのは13症例(38.2%)であり,このうち12症例(35.3%)に気漏遷延のため手術が必要であった.これらの平均外来観察期間は8.6日であった.一方,予定手術12症例では平均在院日数が8.25日で当科における入院期間の短縮が得られた.ソラシックエッグ®は軽度から中等度虚脱症例に対し有用であり,外来観察期間は7~9日間が限界で,以降の観察期間で膨張不良である場合,入院による治療が必要であると考える.
  • 安藤 耕平, 前原 孝光, 齋藤 志子, 青山 徹, 足立 広幸, 益田 宗孝
    2011 年 25 巻 4 号 p. 367-372
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    原発性自然気胸の再発が予測できるかについて検討するために,初発時に保存的治療を行った218症例を,その後再発した群(74症例)としなかった群(144症例)とに分け,再発に関わる因子について分析した.患者背景は平均年齢24.5歳,男/女199/19症例,対側の気胸の既往あり/なし21/197症例,喫煙歴あり/なし/不明93/75/50症例であった.単変量解析では,25歳未満(再発率42%),女性(63%),対側気胸の既往あり(57%),喫煙歴なし(55%)の症例で有意に再発率が高かった.多変量解析では,喫煙歴がないことのみが独立した再発の予測因子であった(p=0.006,odds比2.410).以上から,非喫煙者の原発性自然気胸は再発率が高いので,初発時でも患者の意向を考慮した上で手術を検討しても良いと考える.また,非喫煙者と喫煙者とでは自然気胸の発生のメカニズムが異なると推測される.
症例
  • 小林 祥久, 福井 高幸, 伊藤 志門, 波戸岡 俊三, 光冨 徹哉
    2011 年 25 巻 4 号 p. 373-378
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    肺塞栓症(PE)は重篤な術後合併症である.肺癌術後に発症した3例を報告する.【症例1】64歳女性.2病日に呼吸困難とショックのため他院救命救急センターへ搬送した.肺動脈造影でPEと診断しカテーテルで血栓を破砕・吸引した.抗凝固療法で血胸を合併したが22病日に退院した.【症例2】84歳男性.11病日に呼吸困難が増強し21病日に造影CTでPEと診断した.抗凝固療法を施行し36病日に退院した.【症例3】81歳男性.5病日に呼吸困難が増強し翌日CTでPEと診断した.抗凝固療法を施行し33病日に退院した.PEの症状と身体所見は非特異的であり,離床直後には無症状で数日後に発症するもの,安静時には呼吸困難がないものやショックとなるものまで様々であった.PEを常に念頭に置き,非侵襲的で迅速な心エコーと心電図の所見を参考に,Dダイマーで除外診断,造影CTで確定診断を早期に行い,適切な治療を開始することが重要である.
  • 三隅 啓三, 山下 芳典, 原田 洋明, 伊藤 正興
    2011 年 25 巻 4 号 p. 379-382
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    症例は45歳男性.健診の胸部単純X線で1年前と比べ増大する縦隔異常陰影を指摘された.CTで前縦隔に長径38mmの被膜に被われた腫瘍を認め,右側から完全鏡視下で右半胸腺摘出術を施行した.胸腺非定型カルチノイドと診断された.術後1年経過し,無再発生存中である.胸腺カルチノイドはリンパ行性,血行性転移が多い腫瘍とされるが,進行例が多く,本症例のように病期が早期の症例に関する報告は少ない.本症例では,画像上,被膜外浸潤がなく,リンパ節転移陰性と診断したため,縦隔リンパ節郭清は省略した.晩期再発の可能性も考慮し,長期間の経過観察が必要と考える.胸腺の切除範囲およびリンパ節郭清の程度・意義についての検討が今後必要と思われた.
  • 加藤 毅人, 成田 久仁夫, 大原 啓示
    2011 年 25 巻 4 号 p. 383-387
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    症例は28歳女性.右下部側胸壁の膨隆を自覚し当院を受診.胸腹部CT,MRI上は胸部骨性胸郭外壁から腹腔側に連なる多房性嚢胞を認め,血管腫が疑われた.手術では先ず腫瘍胸壁部の直上を肋骨に沿って皮膚切開した.比較的薄い被膜から成る腫瘍を前鋸筋,外腹斜筋および肋間筋から剥離し,さらに創を腹壁へ延長して肋骨弓を離断し開腹すると,腹腔側腫瘍は嚢胞成分が主体で,一部胸壁腫瘍と連なるようにして腹膜外に在り,肝臓を圧迫していたため,これを腹膜と共に摘出した.病理診断は筋肉内血管腫で,胸壁と腹壁の腫瘍は起源が同一であった.皮膚の血管腫に比べ,深部軟部組織に生じる血管腫は稀であり,さらに胸腹壁に連なる巨大な血管腫は他に例を見ない.その発生機序を,胸腹壁腫瘍の発生頻度や画像所見から類推すると,下位肋間筋より発生した後に腹腔内へ進展していったものと推測された.
  • 岩渕 裕, 長束 美貴, 井上 達哉, 内村 智生
    2011 年 25 巻 4 号 p. 388-391
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    乳癌術後30年目に孤立性肺転移が出現した1例を経験した.症例は71歳女性.41歳時に左乳癌の診断で定型的乳房切除術を受けた.術後5年目以降は外来受診を自己判断で中断していた.2010年1月頃より咳嗽,喀痰が出現したため当院呼吸器内科を受診し,胸部CT検査で右肺S10に孤立性腫瘤影を認めた.胸腔鏡下に肺部分切除を行い,病理組織学的検査で乳癌からの転移と診断された.乳癌は,他臓器癌に比べて再発転移するまでの期間が長い症例が少なくない.しかし,術後30年以上経って再発した症例は極めて稀である.
  • 岡 壮一, 山田 壮亮, 浦本 秀隆, 竹之山 光広, 花桐 武志
    2011 年 25 巻 4 号 p. 392-396
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    気管・気管支に発生する平滑筋腫は,比較的稀な疾患である.気管分岐部より発生した平滑筋腫に対して切除および気管支再建術を施行した1例を経験したので報告する.症例は,57歳,女性.6ヵ月前から労作時呼吸困難および乾性咳嗽を自覚した.喘息として治療されたが,同症状は次第に増悪したため,近医で施行した胸部CTで気管分岐部の腫瘍を指摘され当科へ紹介となった.気管支鏡検査にて,気管分岐部より左主気管支内腔に突出する腫瘤性病変を認めた.同部位の気管支鏡下生検では,中度から高度の異形成を認めたが,悪性腫瘍を否定できなかったため,気管分岐部切除,Montage法による再建術を施行した.術後の病理診断は平滑筋腫と診断された.術後は良好に経過した.
  • 橋本 昌樹, 松本 成司, 近藤 展行, 田中 文啓, 長谷川 誠紀
    2011 年 25 巻 4 号 p. 397-400
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    肺葉外肺分画症は稀な疾患で多くの場合,小児期に発見されることが多い.しかし中には無症状で成人期に発見され,手術により診断される症例も散見される.症例は41歳,男性.主訴は胸部異常陰影.検診にて胸部異常陰影を指摘された.精査の結果,後縦隔腫瘍を疑われ,当科紹介となる.神経原性腫瘍を疑い,手術を施行した.腫瘍は血管新生が豊富で縦隔内より索状物でつながっており,索状物内には血管の存在が疑われ,血管用自動縫合器にて切離した.摘出標本には軟骨や未熟な肺胞構造を認め,正常肺とは共通の胸膜を有しておらず,肺葉外肺分画症と診断した.稀ではあるが成人発見の肺葉外肺分画症は,後縦隔腫瘍と画像診断されることもしばしば認められ鑑別疾患として念頭に置く必要があると思われる.
  • 徳永 義昌, 近藤 健, 長 博之, 中川 達雄, 神頭 徹
    2011 年 25 巻 4 号 p. 401-405
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    症例は71歳女性,低ガンマグロブリン血症を伴う口腔内扁平苔癬の加療中に前縦隔腫瘤を指摘された.胸部CTで腫瘤は胸腺両葉に非連続性に2個認められ,左側病巣はCTガイド下針生検にて胸腺腫と診断され,胸腺胸腺腫摘出術により,両腫瘍はtype Aとtype ABの多発胸腺腫と診断された.術後13ヵ月の時点で胸腺腫の再発はなく,扁平苔癬による口腔内の疼痛はわずかに軽減しているが,低ガンマグロブリン血症の改善は認めていない.
  • 橋詰 直樹, 穴山 貴嗣, 久米 基彦
    2011 年 25 巻 4 号 p. 406-412
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    症例は41歳女性.朝より呼吸困難,背部痛が出現したため近医受診.胸部造影CTにて左胸腔内出血,および左舌区末梢に径30mmの腫瘤を認めたため,肺動脈造影検査を施行したところ,A4,5を主体とするPulmonary Arteriovenous Malformation(以下PAVM)を認めた.カテーテルによる肺動脈塞栓術を試みたが,末梢の肺動脈に到達することが困難であり,時間経過とともに血胸が進行し,血圧低下とともにショック状態を来したため,当科へ緊急搬送され左舌区切除術を施行し救命し得た.PAVMの胸腔内破裂による血胸は報告が少ないが,血胸を来す鑑別診断のひとつとして念頭に置く必要がある.
  • 長阪 智, 伊藤 秀幸, 桑田 裕美, 清家 彩子, 北沢 伸祐, 森田 敬知
    2011 年 25 巻 4 号 p. 413-417
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    穿通性気管気管支損傷の頻度は非常に稀であるが,致命的な外傷である.今回我々は,自殺目的の刺創による気管気管支損傷に対し,挿管・自発呼吸下に胸骨正中切開にて修復を行い良好な経過をたどった1例を経験した.一般的に,分岐部損傷を認め換気が保てない場合,または人工呼吸器が不可欠の場合,損傷部を超えた片肺換気が必要であり,手術時は後側方切開にての修復術を行うように推奨されている.文献的考察を踏まえ報告する.
  • 西田 沙貴, 小田 誠, 松本 勲, 田村 昌也, 早稲田 龍一, 渡邊 剛
    2011 年 25 巻 4 号 p. 418-423
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,女性.3年前に子宮体癌を疑われ準広汎子宮全摘術,S状結腸切除術を施行された.病理診断および精査の結果,原発性肺腺癌の腹腔内転移と診断された.その後の経過で,計6レジメンの化学療法と計100Gyの放射線治療が施行された.転移巣の制御は良好であったが,原発巣の増大傾向を認めたため,手術目的に当科紹介となった.手術は,肺門部において,肺動脈および上葉気管支と周囲組織との強固な癒着を認めたため,これらを一括して鉗子にてクランプした後に切離し,断端を3-0vicryl糸にて縫合して閉鎖した.断端は有茎傍心膜脂肪織にて被覆した.術後の病理診断で,低分化肺腺癌と診断された.術後さらに補助化学療法を追加し,術後9ヵ月間再発転移は認めていない.高容量化学放射線療法による炎症にて肺門部の処理が困難な症例に対しては,肺門部一括処理および有茎傍心膜脂肪織による気管支・肺動脈切離断端の被覆が有用であると考える.
  • 呉 哲彦, 三崎 伯幸, 吉田 千尋, 張 性洙, 石川 真也, 横見瀬 裕保
    2011 年 25 巻 4 号 p. 424-428
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    ソマトスタチンアナログ製剤であるオクトレオチドが効果を認めた肺癌術後乳糜胸例を経験した.症例は61歳男性で右上葉肺癌に対し完全胸腔鏡下右肺上葉切除ならびにリンパ節郭清を施行後乳糜胸を併発した.中心静脈栄養による絶食のもと,乳糜胸発症2日目よりオクトレオチドの皮下投与を開始した.投与開始4日目より1日3回投与に増量し,その4日目より胸水が著減した.胸膜癒着術を追加し乳糜胸を治癒せしめた.オクトレオチド投与による重篤な副作用は認めなかった.オクトレオチドは術後乳糜胸に対する治療法として一選択肢になると考えられた.
  • 奥田 昌也, 住友 伸一, 松本 和也, 中野 貴之, 飯森 俊介, 住友 亮太
    2011 年 25 巻 4 号 p. 429-432
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    症例は52歳女性.主訴は遷延する咳嗽.既往歴:総胆管結石症・子宮筋腫.家族歴:なし.6ヵ月間継続する咳嗽のため近医を受診し,胸部CTで右底幹に存在する腫瘍とその末梢の閉塞を指摘され,気管支鏡検査を施行.右底幹の腫瘍は表面に顆粒状変化を伴い,茎部を有する腫瘍で,生検で診断に至らず当院紹介となった.硬性気管支鏡下に切除を試みたが,鉗子で把持出来ず,根部の確認が十分に出来なかったことから開胸手術にコンバートし,右気管支底幹管状切除を行った.病理組織検査結果は気管支線維上皮ポリープで断端に腫瘍の遺残は見られなかった.まれな気道内腫瘍である気管支線維上皮ポリープを経験したので報告する.
  • 岡田 悟, 西村 元宏, 島田 順一
    2011 年 25 巻 4 号 p. 433-437
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    症例は64歳の女性.近医受診時に胸部X線写真で異常陰影を指摘され,胸部CTで大動脈弓から左主肺動脈の左側に接する境界明瞭な5.0×3.5cmの腫瘤陰影を認めた.ダイナミックCTでは腫瘍の中央部と辺縁部に血管腔と同程度の強い造影効果を示した.血管腫,Castleman's disease,神経原性腫瘍,胸腺腫などを鑑別診断に考え,胸腔鏡下に手術を施行した.腫瘍は易出血性で,横隔神経を巻き込んでいたためこれを合併切除した.病理組織学的診断はcapillary hemangiomaであった.縦隔血管腫はまれな疾患であり,術前に正確に診断された症例は少ない.今回われわれは,多血性の前縦隔腫瘍に対して胸腔鏡下手術を施行し,縦隔血管腫と診断した症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
  • 千葉 眞人, 塩野 知志, 安孫子 正美, 岡崎 敏昌, 矢吹 皓, 佐藤 徹
    2011 年 25 巻 4 号 p. 438-441
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    症例は58歳男性.胸腺腫に対し拡大胸腺胸腺腫摘出術を施行.病理診断は正岡分類II期,WHO分類type ABの胸腺腫であった.術後1ヵ月目より放射線治療を追加したが,3ヵ月目に全身倦怠感を生じ,血液検査の結果,著明な貧血を呈していた.赤芽球癆と診断しプレドニゾロン内服を行ったが改善せず輸血を繰り返した.シクロスポリンを導入し貧血の改善を認めた.赤芽球癆は胸腺腫にしばしば合併するが,胸腺腫摘出術後に発症をみることは稀である.術後経過観察において赤芽球癆の可能性も念頭に置く必要がある.
  • 川野 理, 矢野 智紀, 佐々木 秀文, 森山 悟, 彦坂 雄, 藤井 義敬
    2011 年 25 巻 4 号 p. 442-446
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,男性.検診CTで右上葉に12×12×7mmの結節を指摘された.原発性肺癌が疑われた.右鎖骨上に8mmのリンパ節を認め,PETで集積を認めた.肺結節および鎖骨上リンパ節の確定診断のため,右鎖骨上リンパ節生検,胸腔鏡下右肺上葉部分切除を行った.病理診断の結果,ともに腺癌でpT2aN3M0と診断した.肺門および縦隔リンパ節には転移を認めず,右上葉肺癌が右鎖骨上リンパ節へスキップ転移したと考えられた.標準外科療法の適応外と判断し,化学療法(CBDCA+PTX)を施行した.治療開始から8ヵ月で葉間に再発をきたしたため右肺全摘術を施行し,術後化学療法(CBDCA+GEM)を施行した.右肺全摘術から1年3ヵ月で右鎖骨上リンパ節転移再発を認めたため放射線療法を施行,外来通院にて化学療法(S-1)を継続中である.小型肺癌の鎖骨上リンパ節スキップ転移は稀な病態であり治療に難渋したが,その後再発所見なく治療開始から4年6ヵ月現在生存中である.
  • 水上 泰, 河崎 英範, 比嘉 昇, 饒平名 知史, 石川 清司
    2011 年 25 巻 4 号 p. 447-450
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    症例は75歳男性.5年前より近医で縦隔腫瘤を指摘されていた.今回,その精査治療目的で当院へ紹介となった.胸部CTで気管分岐下背側に約8cm大の境界明瞭な腫瘍を認めた.MRIではT2強調像で高信号を呈し,嚢胞性病変が疑われた.右小開胸にて手術を施行した.嚢胞壁の一部が左房へ強固に癒着していたため,嚢胞壁を切開すると内部に75個の小結石を認めた.一部遺残した嚢胞壁はレーザーで焼灼した.小結石の分析結果は炭酸カルシウムであった.嚢胞壁の病理組織診断は気管支性嚢胞であった.気管支嚢胞内に結石を認めた極めて稀な症例を経験したので報告する.
  • 鈴木 仁之, 真栄城 亮, 井上 健太郎, 近藤 智昭
    2011 年 25 巻 4 号 p. 451-455
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    気管支嚢胞は多くは無症状で経過し,一部には感染や呼吸不全を併発する症例も見られるが,長期間に渡って拡大・縮小を観察しえた症例は非常に稀である.症例は49歳,男性.28歳時に背部痛および発熱にて近医受診し,上縦隔腫瘍と診断されたが,短期間で腫瘍が縮小したため外来フォローとなった.その後も健診で度々胸部異常陰影を指摘され,不明熱と背部痛を認めていたが,放置していた.49歳時より,発熱と背部痛を頻回に認めるようになったため,当院受診となった.CTにて食道左側と主気管支に接する類円形腫瘤影を認めたため,手術を施行した.腫瘍は左肺上葉に強固に癒着していたため左肺上葉の一部とともに腫瘍を摘出した.病理組織学的に気管支嚢胞と診断した.気管支嚢胞は,感染を繰り返し,腫大することで周囲臓器への癒着や圧迫症状が出現するため,早期の外科的切除が望ましいと思われる.
  • 山木 実, 則行 敏生, 下田 清美, 向井 勝紀, 米原 修治
    2011 年 25 巻 4 号 p. 456-459
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    肺門リンパ節に認められた原発不明リンパ上皮腫様癌の一例を経験したので報告する.症例は64歳男性,検診の胸部X線検査で右肺門の腫大を認め精査となった.胸部CTでは中下葉間に35mm大の楕円形の腫瘤影を認め,PET検査では,同部位にSUVmax:7.6の異常集積を認めた.他の部位には病変を認めなかった.確定診断目的で開胸生検を行った.腫瘤は,右肺中下葉間に存在するリンパ節(11i)であった.標本ではリンパ上皮腫様癌と診断された.全身検索にて他病巣を指摘できず,原発不明肺門リンパ節癌と考えられた.補助化学療法を行い,術後8ヵ月現在無再発生存中である.検索した限り原発不明肺門リンパ節癌で,組織型がリンパ上皮腫様癌であった症例の報告は無く,非常に稀な症例であると考えられたため,若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 月岡 卓馬, 山本 良二, 高濱 誠, 中嶋 隆, 多田 弘人
    2011 年 25 巻 4 号 p. 460-464
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/08/09
    ジャーナル フリー
    症例は62歳女性.右乳癌術前精査中に胸部CTにて左S1+2に28×26mm大の腫瘤陰影を認めた.気管支鏡検査を施行したところ左B1+2と考えられる気管支が左主気管支より直接分岐する分岐異常を認め,同気管支より生検を施行し腺癌と診断した.左原発性肺癌(cT1bN0M0)と診断し左上葉切除,リンパ節郭清を施行した.術中,肺動脈の背側を左上葉に進入する索状物を認めた.上下葉間は不全分葉で上区とS6間を形成する際に前述の索状物を肺組織とともに自動縫合器にて切離したところ,索状物が左B1+2であったことが判明した.左B1+2が左主気管支から直接分岐し肺動脈の背側を走行する解剖学的特徴が認められた.気管支分岐異常の頻度は0.4~0.6%であり,左B1+2分岐異常の発生頻度は全気管支分岐異常の0.02~0.2%と稀である.左B1+2分岐異常では気管支が肺動脈の背側を走行する場合があることを念頭に置く必要がある.
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