日本呼吸器外科学会雑誌
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26 巻, 2 号
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原著
  • 井上 匡美, 南 正人, 澤端 章好, 新谷 康, 中桐 伴行, 奥村 明之進
    2012 年 26 巻 2 号 p. 114-118
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    我々は3溝で断面積を31-33%拡大し,ウロキナーゼ抗血栓加工を施した新たなポリウレタン製スリット型ドレーン(UKスリムドレーン)を評価した.5・10・15 cmH2Oにおける吸引量は,19Frで234±9.2・391±9.5・527±13 ml/分,24Frで407±3.6・686±6.7・883±6.7 ml/分であった.血栓形成試験で4時間以上血栓形成を認めなかった.スリット・チューブ移行部の引張限界強度は19Frで16.8±0.9 kgf,24Frで21.3±2.6 kgfであった.次に,呼吸器外科手術20例を対象にUKスリムドレーン24Frの術後使用における認容性試験を施行した.留置日数は2-7日(中央値4日).最大疼痛レベルはPrince Henry Pain Scale1-3(中央値2)であった.ドレーン追加を要する肺瘻または胸水の吸引不良は認めなかった.UKスリムドレーン24Frは呼吸器外科手術で使用できる.
  • 宇佐美 範恭, 谷口 哲郎, 石川 義登, 川口 晃司, 福本 紘一, 厚田 幸子, 中村 彰太, 横井 香平
    2012 年 26 巻 2 号 p. 119-124
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    肺活量や1秒量の対標準値を計算する際,BaldwinやBerglundの式などの欧米人を対象とした正常予測式がわが国でも広く用いられている.一方日本呼吸器学会肺生理専門委員会は2001年に日本人の正常予測式を提示している.今回実際の切除症例を用いて二つの方法で術後予測呼吸機能を比較してみたところ,肺活量も1秒量も日本人の正常予測式で算出した方が有意差をもって低く算出された.今後,標準式として日本人の正常予測式が導入されていく場合,従来よりも術後予測値が少なく計算されることを考慮して手術適応を検討する必要がある.
  • 西 英行, 間野 正之, 清水 信義
    2012 年 26 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    【目的】これまでに我々は,本邦における胸膜中皮腫に対する外科治療の現状を報告してきたが,さらに追加,検討したので報告する.【対象】2003~2007年までの5年間の中皮腫による死亡4860例のうち病理学的な診断が行われていた症例は805例であり,このうちの胸膜中皮腫679例を対象として,手術が行われた131例について検討した.【結果】男性122例,女性9例で診断時平均年齢は62歳.組織型は,上皮型64例,二相型31例,肉腫型24例であった.病期は,I ・ II 期33例,III 期62例,IV 期13例であった.術式は胸膜肺全摘術が89例,胸膜切除・剥皮術が6例,腫瘍切除が36例に行われていた.補助療法は63例に行われていた.手術症例の生存期間中央値は12.0ヵ月であった.Cox回帰による多変量解析では,年齢,組織型,補助療法が予後因子であった.【結論】補助療法の有効性が示唆された.
症例
  • 迫田 京佳, 武田 雄二, 光岡 正浩
    2012 年 26 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は37歳,女性.検診にて胸部X線写真上右肺門部に前縦隔腫瘍を疑う異常影を指摘された.胸部CTおよびMRI検査で,多房性胸腺嚢胞および腫瘍性病変の合併を疑い,胸腔鏡補助下胸腺・胸腺腫瘍摘出術を施行した.腫瘍の一部が中葉中枢側に浸潤していたため,中葉を合併切除した.術後病理診断は多房性胸腺嚢胞に合併した胸腺類基底細胞癌;basaloid carcinomaであった.術後放射線療法を追加し,現在術後2年が経過するも無再発生存中である.胸腺発生のbasaloid carcinomaは低悪性度群に分類されるものの非常に稀な疾患で,これまでに自験例を含め37例が報告されているのみである.診断,治療,生物学的特性に関する文献的考察を加えて報告する.
  • 内藤 敬嗣, 阿部 大, 深澤 基児, 武士 昭彦
    2012 年 26 巻 2 号 p. 137-142
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    低肺機能や全身状態の悪い患者における肺瘻と気管支瘻に対しては侵襲的な外科処置が困難であることが多く,難治性になりえる.病悩期間が長期化することにより,さらに消耗して死亡する症例も見られる.今回我々は,非結核性抗酸菌症による難治性気管支瘻に対してポリグリコール酸シート(以下PGAシート)を用いた気管支塞栓術が有効であった1例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.症例は82歳女性.発熱を主訴に当院内科を受診し,胸部CTで右上葉に空洞性病変を認めたため精査目的に入院となった.非結核性抗酸菌症と診断され,内服加療を開始したところ,右気胸を発症した.胸腔ドレーンを留置して加療したが,気漏が改善せず,難治性気管支瘻の診断となり当科紹介となった.PGAシートを用いた気管支鏡下気管支塞栓術を行い,気漏の改善を認めた.術後再発所見がなく経過している.
  • 新関 浩人, 宮坂 大介, 菊地 健司, 村上 慶洋
    2012 年 26 巻 2 号 p. 143-147
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は,65歳女性.背部痛と微熱を主訴に発症し,近医で上縦隔膿瘍を指摘された.保存療法が無効であったため,発症から10日目に紹介となった.CTでT1/T2の両側にリング状に造影される多房性膿瘍を認めた.MRIのT2-WIでは,T1/T2椎体と椎間板がhigh intensityを示し,化膿性脊椎炎に併発した縦隔膿瘍と考えられた.神経症状や骨破壊像はなく,上縦隔膿瘍をドレナージし,脊椎炎は保存的に加療する方針となった.手術は,頚部襟状切開と胸腔鏡を併用し,頚部と胸部から十分ドレナージできたことを確認した.膿瘍腔からは,streptococcus intermediusが検出された.術後37病日に退院し,1年時点で再燃を認めない.
    縦隔膿瘍の原因として,稀ではあるが化膿性脊椎炎も考慮すべきと考えられた.診断にはMRIが有用であり,手術適応として神経症状を有する例,膿瘍形成を認める例などが報告されている.
  • 設楽 将之, 幸 大輔, 山田 健
    2012 年 26 巻 2 号 p. 148-152
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    近年診断技術と治療成績の向上により重複癌が増加している.患者は55歳女性,左乳腺過誤腫にて通院中に左D領域乳癌が発見された.術前PET-CTにて甲状腺峡部と右肺上葉に異常陰影を認め,甲状腺乳頭癌・肺腺癌の原発癌と診断した.肺以外は体表の癌であり,一期的手術が可能と判断した.はじめに胸腔鏡下に右上葉切除(ND2a-1)を行い,次いで甲状腺峡部切除術,左乳房部分切除術と左センチネルリンパ節生検を行った.手術時間は5時間38分,術後経過は良好で,7日目に退院した.肺癌を含む同時性3重複癌に対しては,重複癌が体表のものであれば一期的手術も十分可能である.
  • 大瀬 尚子, 井上 匡美, 南 正人, 澤端 章好, 門田 嘉久, 奥村 明之進
    2012 年 26 巻 2 号 p. 153-156
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    低栄養状態の腹膜透析患者に発症した心臓外科術後のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による無瘻性膿胸に対し,Teicoplanin(TEIC)による全身投与と局所洗浄の併用が奏効した症例を経験したので報告する.症例は59歳男性.慢性腎不全に対し腹膜透析を施行していた.冠動脈バイパス術後に縦隔炎を発症し大胸筋弁充填術を施行した.しかし,右無瘻性膿胸を発症し,胸腔鏡下膿胸腔掻爬ドレナージ術を施行した.一旦改善するも再燃し,MRSAに菌交代したため開窓術を施行したが膿胸腔の浄化は得られなかった.TEICの全身投与と胸腔内洗浄を開始したところ,1週間後には無菌化した.その後,筋弁充填と胸郭成形による膿胸根治術を施行し治癒せしめた.
  • 牧野 崇, 笹本 修一, 秦 美暢, 高木 啓吾
    2012 年 26 巻 2 号 p. 157-161
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    70歳男性.Chronic obstructive pulmonary disease(以下COPD)を合併した低肺機能の肺癌に対し肺葉切除術を施行した.Hugh-Jones分類 II 度で1秒量0.77 Lの重症COPDに合併した肺腺癌(C-T2N0M0)に対して,まず術前呼吸リハビリテーションおよびTiotropiumbromideの吸入を行い,3週間後に1秒量が0.81 Lに改善した.術後予測1秒量は予測値の33%であったが,無効肺容量の減少効果を期待して,左上葉切除術を施行した.術後3ヵ月の1秒量は0.77 Lであり極端な低下を認めず,術後3年10ヵ月の現在,呼吸機能は安定している.一般には肺葉切除の非適応と判断された重症COPD合併肺癌に対して,呼吸リハビリの併用と手術によって無効肺容量を減少させることによって肺機能を維持することができた1例を経験した.
  • 本野 望, 保坂 靖子, 富樫 賢一
    2012 年 26 巻 2 号 p. 162-166
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,女性.検診発見の右肺病変の精査中に,左第9肋骨に最大径25 mmの腫瘤を認めた.CT検査では境界明瞭な溶骨性変化を伴う腫瘤像を呈し,MRI検査ではT1強調像で低信号,T2強調像で高信号を呈し,画像所見から軟骨肉腫を疑い手術を施行した.腫瘍は左第9肋骨肋軟骨接合部から発生していたが,横隔膜と腹膜の間隙に進展していた.腫瘍から十分な距離をとり,左第8・9肋骨と横隔膜をen bloc切除しポリテトラフルオロエチレンシートによる胸壁再建術を施行した.病理組織学的診断は軟骨肉腫,Grade 2で完全切除であった.肋骨原発軟骨肉腫の発生部位として骨軟骨接合部の前胸部は最多であるが,腫瘍が横隔膜下に存在した例は稀であり,文献的考察を含めて報告する.
  • 今井 一博, 南谷 佳弘, 齋藤 元, 三井 匡史, 福井 哲矢, 小川 純一
    2012 年 26 巻 2 号 p. 167-170
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は58歳男性.検診で,両側胸部異常陰影を指摘された.CTガイド下生検で左S1+2に径27 mm,扁平上皮癌,右S1に径45 mm,腺癌と診断され,両側同時多発肺癌と考えられた.左扁平上皮癌に対し左肺部分切除術施行.術後鎮痛としてフェンタニル 1.25 mg+ドロペリドール5mgでの経静脈的自己調節鎮痛法を行った.続いて第8病日に右腺癌に対し右上葉切除術を施行.麻酔法,術後鎮痛は同様であるが,閉創時に0.75%ロピバカイン10 mlを創部に滴下する創部浸潤麻酔を追加した.術後12時間まで,Numeric Pain Rating Scaleを用いた評価では創部浸潤麻酔を追加した右側手術が優れ,患者の満足度が高かった.
  • 元石 充, 片岡 瑛子, 大塩 麻友美, 澤井 聡, 榎堀 徹, 五十嵐 知之
    2012 年 26 巻 2 号 p. 171-174
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は乳癌・胃癌・腎癌の既往のある75歳女性.胸部CTで右肺下葉に異常陰影を認めるとのことで当科に紹介となった.胸部CTで右S8に8mm大の小結節影を認めた.retrospectiveにみると3年前の胸部CTで同部に3mm大の結節影を,2年前の胸部CTで4mm大の結節影を認めていた.増大傾向を認めており転移性肺腫瘍を疑われたため手術を行った.術中迅速組織診で腎癌肺転移と診断された.術後永久標本において豊富な淡明細胞質を有する細胞が薄壁性の類洞様血管を伴ってシート状に配列しており,免疫染色ではPAS・MelanA陽性,CD10・HMB45陰性であり淡明細胞腫と診断された.肺原発淡明細胞腫は比較的稀な腫瘍である.腎細胞癌肺転移との鑑別を要するが実際に腎細胞癌の既往を有する症例の報告は我々が検索した限り認められなかった.本症例の経過を若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 梶浦 耕一郎, 先山 正二, 鳥羽 博明, 滝沢 宏光, 監崎 孝一郎, 近藤 和也
    2012 年 26 巻 2 号 p. 175-179
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    肺動脈分岐異常は肺切除術においてはしばしば遭遇する.今回我々はいわゆる縦隔型右A8の右肺下葉切除の症例を経験したので報告する.症例は77歳,女性.顔面基底細胞癌と子宮頸癌の術後フォローCTで,右肺S10に増大する胸部異常陰影を認めた.手術はS10の腫瘤を胸腔鏡下に部分切除し,迅速で原発性肺腺癌であったため,胸腔鏡下右肺下葉切除(ND2a-1)を施行した.術前MDCTで認識できていた縦隔型A8は上肺静脈と下肺静脈の間を通り,中間気管支幹の縦隔側を走行してS8に分布していた.縦隔型A8は非常に稀と思われ,術中損傷をきたさないように注意が必要であった.
  • 常塚 啓彰, 加藤 大志朗, 寺内 邦彦, 下村 雅律, 一瀬 かおり, 島田 順一
    2012 年 26 巻 2 号 p. 180-183
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    画像診断の進歩に伴い微小な肺腫瘍が指摘される機会が増え,術前にマーキングを行うこともある.様々なマーキング方法の中で当院ではリピオドールを用いている.末梢の腫瘍は直接把持し自動縫合器で切離することができるが,中枢の深部病変では区域切除術や葉切除術を行う必要があり単純な部分切除術を行うことは困難なことも多い.もし部分切除を無理に行おうとすると切離線に過剰な緊張がかかり胸膜が裂けたり,残肺に変形をきたすことなどが懸念される.そこで高齢者などの耐術能の低い患者の深部病変に対し容易に部分切除を行う方法を考案した.通常のマーキングは腫瘍のみの1ヵ所に行うが,腫瘍と胸膜直下の2ヵ所にマーキングを行うダブルマーキング法と当院で呼んでいる方法を症例とともに紹介する.
  • 須藤 学拓, 佐野 史歩, 植木 幸一, 玉井 允, 上田 和弘, 濱野 公一
    2012 年 26 巻 2 号 p. 184-188
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は84歳,男性.前立腺癌術後の経過観察中に胸部CTにて後縦隔に腫瘍性病変を指摘された.確定診断および治療の目的に手術が施行された.完全胸腔鏡下に病変を完全切除した結果,MALTリンパ腫と診断された.切除部位に術後補助放射線治療を行い現在無再発生存中である.胸膜原発のMALTリンパ腫は極めて稀であり,今後のさらなる症例集積が重要と考えられた.
  • 下山 武彦, 木村 文平
    2012 年 26 巻 2 号 p. 189-196
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    胃癌の肺転移は癌性リンパ管症や癌性胸膜炎で発症することが多く,手術の適応となることは極めて稀で予後も不良であるが,一部で予後良好である報告も散見される.今回結節性陰影を呈した胃癌肺転移の4手術例を報告する.症例1は77歳男性.胃癌術後10年目に右S6に孤立結節影を認め,S6区域切除を施行.症例2は76歳男性.胃癌術後3年7ヵ月目に右下葉に結節影を認め,右下葉切除を施行.症例3は80歳男性.胃癌術後1年6ヵ月目に右上葉に3ヵ所の結節影が出現,その後10ヵ月で新たな転移巣を認めず,右上葉切除を施行.症例4は55歳男性.胃癌切除後6年10ヵ月目に左上葉に結節影を認め,左上葉切除を施行.症例1は術後4年8ヵ月,症例2は術後1年4ヵ月,症例3は術後2年2ヵ月で原病死した.症例4は術後1年3ヵ月目で再発を認めていない.胃癌肺転移手術症例の中には予後良好なものもあり,今後も検討を重ねて切除を考慮すべきである.
  • 斎藤 勢也, 仁木 俊助, 田中 隆, 川上 行奎, 香川 典子
    2012 年 26 巻 2 号 p. 197-202
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は74歳女性.41年前,横隔膜ヘルニアにて開胸手術を受けた.以前より胸部X腺にて左胸腔内の巨大な腫瘤を指摘されていたが,慢性膿胸の診断にて経過観察を受けていた.数年後,咳嗽・血痰が出現し,労作時呼吸困難が強くなり,次第に安静時にも呼吸困難感が出現したために,HOT療法を受けていた.その後食物の通過障害も強くなり,対側縦隔まで増大するようになった慢性出血性膿胸を経験した.左胸膜肺全摘術と共に24×15×15 cm,2880 gの被包化された血腫を摘出した.術後は縦隔の変位も改善し,HOT療法も必要が無くなり,QOLの改善が得られた.
  • 足立 広幸, 山本 健嗣, 齋藤 志子, 利野 靖, 益田 宗孝
    2012 年 26 巻 2 号 p. 203-207
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,女性.右頚部リンパ節腫脹を主訴に来院.胸部CTで前縦隔に55 mm大の内部不均一な造影効果を有する腫瘤と右頚部,縦隔リンパ節腫大を認め,前縦隔腫瘍(胸腺腫疑い),頚部・縦隔リンパ節転移の診断で手術を施行した.病理組織診の結果,大細胞神経内分泌癌(LCNEC)と小細胞癌が混在する胸腺原発低分化神経内分泌癌と診断された.術後8ヵ月で再発を来たし化学療法を施行したが術後34ヵ月に永眠された.胸腺原発の低分化神経内分泌癌は極めてまれな疾患であり,文献的考察とともに報告する.
  • 伴 秀利, 安光 勉, 梁 徳淳
    2012 年 26 巻 2 号 p. 208-213
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は76歳男性.血痰を主訴に受診し画像診断にて左上葉に腫瘤を認めた.精査にて確定診断に至らなかったが,画像上急激に増大したため肺癌を強く疑い切除術を施行した.病理診断は低分化腺癌を主体とした多形癌で病期はpT2N0M0のため,UFT内服による化学療法を追加した.しかし,術後3ヵ月で縦隔再発を来たし,切除および50 Gyの放射線治療を行い,その後CBDCA+PTXによる化学療法を3クール施行した.初回手術後16ヵ月目に,上行結腸および肝臓に腫瘍を認め,結腸癌とその肝転移として結腸切除および肝生検を施行したが,肺癌の組織像に類似し,免疫染色により既往肺癌の組織共々hCG陽性であることが判明し,肺多形癌の転移再発と診断した.その3ヵ月後に胃壁の転移病巣からの出血により死亡した.hCG産生肺多形癌は稀な予後不良の疾患であり,術前診断と補助療法の確立が望まれる.
  • 鮫島 譲司, 田尻 道彦, 小島 陽子, 永島 琢也, 大森 隆広, 益田 宗孝
    2012 年 26 巻 2 号 p. 214-219
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    胸腔内結石は稀な疾患で,外科的切除された胸腔内結石の本邦報告例は21例である.今回われわれは胸腔鏡下に摘出した4例を経験したため,報告する.症例1は64歳男性で,検診で胸部異常影を指摘,CTでは右肺下葉S6の胸膜直下に径10 mmの結節を認めた.胸腔鏡下に観察すると,S6とS10の区域間線上に白色平滑な結石がはまり込んでいた.症例2・3・4は右肺下葉の原発性肺癌の手術時に偶然胸腔内に遊離した結石を認め,いずれも摘出し胸腔内結石と診断した.結石の中心の核はすべて脂肪壊死組織を伴っていた.肺野末梢,特に横隔膜上の小結節の鑑別診断として,胸腔内結石を考慮する必要がある.
  • 松井 千里, 河野 朋哉, 田久保 康隆, 寺田 泰二
    2012 年 26 巻 2 号 p. 220-224
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,男性.健康診断で胸部X線写真上右中肺野に辺縁が明瞭な円形陰影を指摘されたが,放置していた.その後咳嗽があり,当院を受診.胸部CTでは,右前胸壁の肋間筋を貫く脂肪濃度の腫瘤を認め,胸腔鏡補助下に手術を施行した.病理検査ではintramuscular lipomaであり,砂時計型の経胸壁型脂肪腫と診断された.胸壁の内側と外側に進展する経胸壁型の脂肪腫は極めてまれであり,胸腔内側の切除ラインを決定する上で,胸腔鏡は非常に有用であった.
  • 松浦 陽介, 渡 正伸
    2012 年 26 巻 2 号 p. 225-229
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は92歳女性.労作時呼吸困難に対し胸部X線写真が施行され,左気胸の診断にて当科へ紹介となった.胸腔ドレナージによる保存的加療では改善が得られず,手術の予定となった.術前精査での胸部CTにて,左肺上葉に画像診断上原発性肺癌と考えられる結節影が指摘された.その他肺野には気胸の原因となるような病変は指摘されず,手術にて腫瘍を含めた楔状切除を施行した.病理診断にて原発性肺癌と診断され,また,術中所見と合わせすでに癌性胸膜炎を来たしているものと判断された.術後エアリークは消失していたが,術後2日目からエアリークが再発し,最終的に癒着療法を施行した難治性気胸の1例であった.原発性肺癌に併発した気胸についての報告は散見されるが,癌性胸膜炎を来たした段階で気胸の手術が施行された報告はなく,また,癌性胸膜炎により気胸が難治性であった可能性も疑われるため,若干の文献的考察を加え報告する.
手技の工夫
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