日本呼吸器外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-4158
Print ISSN : 0919-0945
ISSN-L : 0919-0945
26 巻, 7 号
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
原著
  • 林 雅太郎, 上田 和弘, 田中 俊樹, 濱野 公一
    2012 年 26 巻 7 号 p. 700-703
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/13
    ジャーナル フリー
    解剖学的肺切除術に際してリンパ節の強固な癒着により,やむを得ず肺動脈と気管支を自動縫合器で一括切離することがある.過去3年間に当科で解剖学的肺切除が行われた原発性肺癌160例の内,一括切離が5例に行われた.全例女性で,原発肺葉は全例右下葉,全例腺癌で,病理病期は全例I期であった.全例完全鏡視下に手術を開始したが,3例で開胸へ移行した.術前にリンパ節腫大を指摘されていた症例はなかったが,PET-CTでは3例で複数のリンパ節に炎症を疑わせるFDGの集積を指摘されていた.平均19ヵ月の観察期間において,一括切離に起因する有害事象を認めていない.自動縫合器を使用した肺動脈・気管支一括切離に関して否定的な報告はないが,推奨すべきとする報告もない.症例集積に基づく成績の報告が不可欠であるが,少なくとも現時点では肺動脈・気管支一括切離はあらゆる回避策を講じた上での最終手段として考えるべきである.
  • 中村 廣繁, 谷口 雄司, 荒木 邦夫, 三和 健, 藤岡 真治, 春木 朋広, 松岡 佑樹, 高木 雄三, 窪内 康晃, 大野 貴志
    2012 年 26 巻 7 号 p. 704-712
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/13
    ジャーナル フリー
    呼吸器外科のロボット手術はいまだ遅れている.当科では2011年1月から1年間で25例のロボット手術を施行して良好な結果をえた.原発性肺癌14例の術式は右上葉切除5例(楔状気管支形成1例含む),右中葉切除3例(上葉部切合併1例含む),右下葉切除2例,左上葉切除3例,左肺底区切除1例で,手術時間323.1分(コンソール時間245.7分),出血量92.1 mlであった.術後合併症は心房細動1例,胆嚢炎1例を認めた.胸腺疾患11例は重症筋無力症5例(胸腺腫合併2例),胸腺腫2例,キャッスルマン病2例,奇形腫1例,胸腺嚢腫1例で(拡大)胸腺摘出術を行った.手術時間207.4分(コンソール時間148.5分),出血量8.6 mlで,術後合併症は乳糜胸1例であった.ロボット手術の利点は3次元の高精細画像,関節を有するロボット鉗子による正確操作にあり,今後の新たな手術として手技の確立が期待される.
  • 奥谷 大介, 森山 重治
    2012 年 26 巻 7 号 p. 713-718
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/13
    ジャーナル フリー
    2009年1月から2011年12月までに岡山赤十字病院で治療した肋骨骨折を伴う鈍的胸部外傷症例167例について文献的考察を加えて報告する.受傷機転は交通事故,転倒,転落の順であった.肋骨骨折本数は平均3.3±2.4本であり,多発肋骨骨折が72.3%,両側の肋骨骨折は7.8%を占めていた.肋骨骨折本数が多いほど他の合併損傷を伴う頻度が高く,7本以上の肋骨骨折では全例に合併損傷を認めた.血胸は31.8%に合併していた.死亡症例は9例あり,受傷62日目に肺炎で死亡した1例を除いた8例は受傷後48時間以内に死亡した.来院時7例がショック状態,1例が心肺停止状態であった.死亡症例を除いた158例中83例(52.5%)では入院治療を行い,他科の併診を必要としたのは62.7%であった.救急診療はチームプレーである.救急隊と病院の連携や病院内での診療科間の連携が密な救急医療体制であることが重要である.
症例
  • 竹内 健, 青木 耕平, 福田 祐樹, 儀賀 理暁, 江口 圭介, 中山 光男
    2012 年 26 巻 7 号 p. 719-723
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/13
    ジャーナル フリー
    症例34歳,男性.胸部CT検査で,右S3に15 mm大のGGO病変を認めた.画像上肺癌(高分化腺癌)を疑い,胸腔鏡下肺部分切除を施行した.組織学的には,病変部の肺胞壁が著しく肥厚し,毛細血管が増加していた.以上からPulmonary Solitary Capillary Hemangioma(以下PSCH)と診断した.術後6年の現在再発はない.PSCHは,非常にまれな疾患であり,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 竹内 健, 青木 耕平, 福田 祐樹, 儀賀 理暁, 江口 圭介, 中山 光男
    2012 年 26 巻 7 号 p. 724-728
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/13
    ジャーナル フリー
    症例は55歳男性.2010年1月左下葉の肺炎の診断で入院し,1週間で軽快し,退院となった.退院後も浸潤影が残存したため同年4月精査目的に当院紹介され,気管支鏡検査を施行した.左B8aからPapanicolaou分類class Vの癌細胞を認めたため6月左下葉切除+リンパ節郭清を施行した.切除標本では同一肺葉内転移を認め,pT3N0M0 IIB細気管支肺胞上皮癌であった.本症例は,癌性閉塞性肺炎ではなく通常の肺炎として治療されたが,3ヵ月後に残存する浸潤影を契機に肺癌が発見された.肺炎の治療後に陰影が残存する場合には,腫瘍性疾患の可能性があり得ることも十分視野に入れて治療していく必要があると思われた.
  • 近藤 健, 徳永 義昌, 齊藤 正男, 中川 達雄
    2012 年 26 巻 7 号 p. 729-733
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/13
    ジャーナル フリー
    CTの進歩により小さな肺結節が多数発見されるようになった.それらの病変を術中に同定することは困難な場合があり,しばしばニードルマーカーが使用される.しかし,この手技に伴う空気塞栓の合併が稀に報告されている.当院ではこれまで139例のCTガイド下針マーキングを施行し,2例の空気塞栓を経験したので,考察を加えて報告する.1例目は71歳女性,網状影に加えて両肺多発粒状影を指摘された.結節の一つに対してマーキングを施行したところ,直後に意識消失を来たした.CTにて脳空気塞栓症と診断した.2例目は72歳男性,右下葉肺腫瘤と,右中葉に小結節を指摘された.この小結節にマーキングを施行したところ,直後に胸痛が出現した.CTにて冠動脈空気塞栓症と診断した.2例とも安静等により空気栓が減少し,症状も改善した.空気塞栓症は重篤な経過をたどる可能性もあり,マーキングの適応については熟慮を要する.
  • 山田 英司, 片岡 和彦, 藤原 俊哉, 松浦 求樹
    2012 年 26 巻 7 号 p. 734-738
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/13
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性で,検診発見後の胸部CTで右肺S1に50×45 mmの腫瘍を認めた.気管支鏡検査での細胞診にてadenocarcinomaと診断され,右上葉切除及び縦隔リンパ節郭清を施行した.病理学的検索で,腫瘍は境界明瞭な増殖を示し,組織学的には淡明な胞体を有する細胞が殆どを占め,充実性ないし腺腔形成を伴って増殖していた.PAS染色,ジアスターゼ消化PAS染色(d-PAS)にて腫瘍腺腔内に粘液を,腫瘍細胞の胞体内にグリコーゲンを認めた.免疫組織化学的に腫瘍細胞はケラチンAE1/AE3陽性,TTF-1,HMB45,Vimentin陰性でCD10は腫瘍腺管の腺腔面のみ陽性であった.他の臓器に腫瘍病変を認めず肺原発淡明細胞腺癌と診断した.テガフール・ウラシル(UFT)内服による術後補助化学療法を24ヵ月行い,術後6年3ヵ月経過するも無再発生存し他臓器の癌も出現していない.肺原発淡明細胞腺癌は稀な疾患であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 川口 庸, 花岡 淳, 橋本 雅之, 北村 将司, 寺本 晃治, 朝倉 庄志
    2012 年 26 巻 7 号 p. 739-745
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/13
    ジャーナル フリー
    感染を繰り返した嚢胞性病変に対し手術療法を行い,CCAMと診断された2例を経験した.【症例1】1歳,男児.最近4ヵ月の間に3度肺炎を繰り返した.胸部CTで右肺下葉に多発する嚢胞性病変を指摘された.右肺下葉切除を行い,CCAMI型と診断された.【症例2】9歳,女児.6歳時と8歳時に肺膿瘍に罹患した.胸部CTで右肺下葉に嚢胞性病変を指摘された.右肺下葉部分切除を行い,細気管支肺胞上皮癌(bronchioloalveolar carcinoma:以下BAC)を伴ったCCAMI型と診断された.
    CCAMの治療法に関しては未だ一定の見解はない.術後再発や嚢胞残存の可能性,また術後肺機能低下などの可能性を十分に考慮し,手術方法を慎重に選択する必要がある.
  • 桃實 徹, 楠本 英則, 大瀬 尚子, 林 明男, 竹内 幸康, 前田 元
    2012 年 26 巻 7 号 p. 746-752
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/13
    ジャーナル フリー
    症例は21歳男性.健診の胸部X線写真にて右下肺野に異常陰影が指摘されたため,当院を紹介された.右肺S10に45×30 mmの内部に空洞を伴う腫瘤影を認め,気管支鏡下生検にて,腺癌と診断され,高分化胎児型腺癌が疑われた.胸腔鏡下右肺下葉切除術を施行し,永久病理組織診断の結果,高分化胎児型腺癌40×30 mm pT2aN0M0,pStageIBと診断された.術後補助化学療法としてUFTを2年間内服し,現在,術後2年6ヵ月で無再発生存中である.
  • 池田 政樹, 陳 豊史, 宮田 亮, 高橋 耕治, 板東 徹, 伊達 洋至
    2012 年 26 巻 7 号 p. 753-756
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/13
    ジャーナル フリー
    頭皮血管肉腫と同時に発見された薄壁空洞を呈した肺癌の1例を報告する.症例は,頭皮血管肉腫を罹患した51歳男性で,同時に左肺下葉に,壁厚1 mm,6×8 mm大の薄壁空洞を主体とする腫瘤を認めた.頭皮血管肉腫の完全切除後,血管肉腫の肺転移と判断し,術後治療としてテセロイキンという遺伝子組み換えIL-2製剤投与にて経過観察された.その後6年間の加療中,肺病変以外の血管肉腫の再発を認めなかったが,肺病変が徐々に増大するため,診断と治療を兼ねて手術を施行し,原発性肺腺癌と診断された.
    肺の空洞性病変には,あらゆる肺疾患の可能性がある.空洞性の転移性肺病変を呈し得る疾患と同時に肺病変が発見された際には,慎重な経過観察が必要で,転移性病変として合致しない経過を示した際には,時機を逸さずに外科的生検を試みる必要がある.
  • 生田 安司, 田村 和貴, 木下 義晃, 古賀 靖卓, 坂本 篤彦, 日高 孝子
    2012 年 26 巻 7 号 p. 757-761
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/13
    ジャーナル フリー
    症例は76歳男性,右肩痛の精査で発見された胸壁浸潤を伴う右上葉の扁平上皮癌pT3N0M0. Stage IIBである.右側大動脈弓(Stewart分類Type I)を伴っていたが,その他の先天性心疾患の合併は認めなかった.手術は胸壁合併切除を伴う右上葉切除+リンパ節郭清術を施行した.縦隔リンパ節郭清において,右反回神経が大動脈弓下を反回していることを確認し,温存した.術後嗄声等の合併症は認めなかった.右側大動脈弓を伴う肺癌手術に際しては,心奇形など合併奇形の術前評価と反回神経走行に関する術前予測と術中の注意深い確認が,合併症の回避のためには重要と思われた.また症例の蓄積により,リンパ流路やリンパ節転移形式に基づくリンパ節郭清範囲の検討が必要と思われた.
  • 町野 隆介, 田川 努, 山崎 直哉, 宮崎 拓郎, 林 徳真吉, 永安 武
    2012 年 26 巻 7 号 p. 762-767
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/13
    ジャーナル フリー
    今回我々は大細胞神経内分泌癌(LCNEC)成分を含む混合型胸腺上皮性腫瘍の1例を経験した.胸腺のLCNEC成分を含む混合型胸腺上皮性腫瘍はまれであり,文献的考察を含めて報告する.症例は60歳,女性.喫煙指数=400.胸痛精査目的の胸部CTで前縦隔に13 mm大の石灰化を伴った腫瘤を認め当科紹介となった.縦隔腫瘍(胸腺腫疑い,正岡I期)の診断で胸腔鏡下胸腺胸腺腫切除術を施行した.病理診断にて混合型胸腺上皮性腫瘍(腺癌+扁平上皮癌+LCNEC),正岡I期と診断された.術後のPET/CTでは有意な集積は認めず,補助療法は行っていない.術後24ヵ月経過し再発は認めていない.胸腺の神経内分泌細胞癌は悪性度が高いと考えられており,本症例でも長期の経過観察を要するとともに,さらなる症例の蓄積と検討が必要と思われた.
  • 水谷 栄基, 森田 理一郎, 國光 多望
    2012 年 26 巻 7 号 p. 768-771
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/13
    ジャーナル フリー
    横隔膜上に発生した多発リンパ管嚢胞の症例を経験したので報告する.症例は45歳女性.慢性関節リウマチにて通院加療中であった.2010年,健康診断で左傍腎嚢胞を指摘され,精密検査のCTで右横隔膜上に多発する最大径3 cmの腫瘤様陰影を指摘された.1年後のフォローアップCTで陰影の増大を認め,当科へ紹介され,手術となった.腫瘤は横隔膜部胸膜から有茎性に連続する被膜を有する5個の嚢胞性病変であり,内部に乳糜成分と考えられる白濁液や白色調の壊死様物質を含んでいた.胸腔鏡下に腫瘤を切除した.また少量の乳糜胸水を認めた.組織学的に嚢胞壁はD2-40の免疫染色で陽性を呈すリンパ管内皮細胞で裏打ちされており,横隔膜部胸膜の漿膜下組織から発生した多発リンパ管嚢胞と診断した.
  • 神津 吉基, 馬庭 知弘, 井坂 光宏, 大出 泰久, 近藤 晴彦, 遠藤 正浩
    2012 年 26 巻 7 号 p. 772-775
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/13
    ジャーナル フリー
    症例は84歳,男性.肺腺癌の診断で左上葉切除を行なった.術前CTでの読影通り,左主肺動脈から分岐して上葉気管支の前方を下行する縦隔型肺動脈を認めた.本幹は下葉気管支前面を走行するA8bとなり下葉に流入しており,途中でA5が舌区支前面に沿って分岐していた.A8bを温存するべく,分岐部末梢で縦隔型A5を処理した.本症例は左主肺動脈よりA5とA8bが共通幹となって分岐する極めて稀な症例であった.
  • 有村 隆明, 境澤 隆夫, 西村 秀紀, 濱中 一敏, 吉田 和夫, 天野 純
    2012 年 26 巻 7 号 p. 776-781
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/13
    ジャーナル フリー
    症例は40歳女性,他疾患検査での胸部X線写真で縦隔腫大を指摘された.胸部CTでは前縦隔に59×58×38 mmの境界明瞭な楕円形腫瘤を認め,内部は造影効果のある充実成分と造影効果の無い変性部分が入り混じっていた.FDG-PETでは腫瘤に一致してSUVmax 7.5の集積を認めた.術前の針生検でA型もしくはB2型の胸腺腫と診断され,拡大胸腺摘除術を施行した.摘出標本は一部嚢胞を伴う充実性の腫瘤であり,組織学的には細胞異型の軽度な短紡錘形細胞と線維芽細胞様細胞が見られ両者間には移行が見られた.また,chromogranin, synaptophysinは陰性でneuroendocrineへの分化が無く正岡分類I期のmetaplastic thymomaと診断された.
    metaplastic thymomaは胸腺腫の亜型に属する比較的まれな疾患であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 福田 祐樹, 井上 慶明, 青木 耕平, 儀賀 理暁, 江口 圭介, 中山 光男
    2012 年 26 巻 7 号 p. 782-786
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/13
    ジャーナル フリー
    原発性胸壁腫瘍はその発生母地の多様性から組織学的に多彩であり典型的な画像所見を呈することは少なく,また経皮的針生検による正診率が低いことから治療前に疾患の鑑別を行うことは困難な場合が多いとされる.今回我々は胸壁に発生し肋骨及び胸椎横突起の骨破壊を伴い悪性病変が疑われた神経鞘腫の1手術例を経験したので報告する.症例は72歳女性.咳,喀痰を主訴に前医を受診,胸部CTにて左背部胸壁に5 cm大の腫瘍を指摘され,精査加療目的に当科紹介となった.腫瘍は左背部胸壁第4肋間を主座として左第4, 5肋骨と第4胸椎横突起の骨破壊を伴う内部やや不均一な腫瘤で,経皮針生検を施行したが確定診断には至らなかった.画像所見より悪性胸壁腫瘍を疑い手術を施行.腫瘍が脊柱管に近接しており整形外科と協力し後方アプローチで腫瘍を摘出した.病理組織学的検査で骨破壊を伴う胸壁神経鞘腫と診断された.
  • 藤永 一弥, 阪本 瞬介, 澤田 康裕, 水元 亨, 渡邊 文亮, 徳井 俊也
    2012 年 26 巻 7 号 p. 787-790
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/13
    ジャーナル フリー
    症例は39歳女性.左季肋部腫瘤・疼痛を主訴に来院.CTで左胸壁に9 cmの腫瘤と右胸腔内に4.1 cmの腫瘤を認めた. 生検にて左胸壁腫瘍は悪性孤立性線維性腫瘍と診断され,右胸腔内腫瘍は孤立性線維性腫瘍転移と診断された.手術は二期的に行う方針とし,まず左胸壁腫瘍に対し,腫瘍切除+胸壁・心膜・横隔膜合併切除+左下葉部分切除および胸壁・横隔膜・心膜再建術を施行した.術後40日目のCTでは右胸腔内腫瘍は9 cmに増大しており,手術を施行するも臓側胸膜に播種を来たし右下肺静脈中枢から心房へ浸潤しており試験開胸となった.術後病理では悪性SFTの転移と診断された.術後放射線療法および化学療法を施行するも局所再発・転移を来し初回手術より1年後に死亡された.同時性転移を来すような悪性度の高いSFTに対しては同時手術も念頭に置く必要があると思われる.また有効な化学療法の開発が望まれる.
  • 氏家 秀樹, 岡田 大輔, 中島 由貴, 秋山 博彦
    2012 年 26 巻 7 号 p. 791-795
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/13
    ジャーナル フリー
    症例は53歳男性.検診の胸部X線写真にて異常陰影を指摘.胸部単純CTにて,下後縦隔,胸椎近傍に38×25×50 mm大の腫瘤を指摘.PET-CTにて,同部位に一致して,集積亢進を認めた(SUV max 3.37).画像上,神経原性腫瘍が疑われ,診断,治療目的で手術の方針となった.胸腔鏡下縦隔腫瘍摘出術施行.後縦隔に血管の豊富な腫瘍を認め,止血に難渋したが,切除した.迅速組織診では明らかな悪性所見を認めず,永久病理組織検査でヒアリン血管型Castleman病の診断となった.現在追加治療なく外来にて観察中である.縦隔腫瘍は主にCTやMRIで診断がなされるが,近年付加的画像診断として,FDG-PETが用いられている.PET-CTにて異常集積を認めた,Castleman病を経験したので,画像的特徴に関して,文献的考察を加えて報告する.
  • 鈴木 繁紀, 堀尾 裕俊, 羽藤 泰, 原田 匡彦
    2012 年 26 巻 7 号 p. 796-800
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/13
    ジャーナル フリー
    症例は80歳男性.2009年9月に左肺扁平上皮癌で左下葉切除を施行し,2年後に右肺結節性病変を指摘された.異時性多発肺癌を疑い,胸腔鏡下右下葉部分切除術を施行した.病理診断で扁平上皮癌と診断されたが,原発か転移かの鑑別は困難であった.遷延性の術後肺瘻のため,胸腔ドレーン抜去が第5病日となった以外は経過良好であった.第8病日に倦怠感と意識障害を呈し,著明な低ナトリウム血症を認めた.精査の結果,SIADHと診断した.水制限(1000 ml/day)と電解質補正により血清ナトリウム値は正常化し,症状も消失した.腫瘍随伴症候群としてのSIADHはよく知られたところであるが,術後に発症することは極めてまれである.外科的侵襲や胸腔内環境の変化が誘因となって術後SIADHが発症する可能性もあると考えられた.
  • 杉浦 八十生, 斉藤 良一, 柿崎 徹, 根本 悦夫, 井野元 智恵, 加勢田 靜
    2012 年 26 巻 7 号 p. 801-807
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2012/12/13
    ジャーナル フリー
    症例は50歳代女性.35歳で乳癌に対して手術施行された.嗄声を訴え近医受診,左中肺野に腫瘍を認めた.原発性肺癌と診断し,術前化学療法を2コース後,左肺全摘除術を行い,病理診断は肺原発腺癌であった.その4年後,孤立性脳転移を認め脳神経外科において摘除されたが,病理診断はestrogen receptor, progesterone receptor, human epidermal growth factor receptor type 2, mammaglobin 1が陽性,thyroid transcription factor 1, surfactant protein Aが陰性であったことから乳癌の転移と診断され,肺腫瘍も乳癌の転移と診断された.乳癌の既往がある場合長期経過・孤立性病変であったとしても,乳癌の転移が鑑別診断として挙がると考えられた.
feedback
Top