日本呼吸器外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-4158
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28 巻, 5 号
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原著
  • 鈴木 聡一郎, 河野 匡, 藤森 賢, 一瀬 淳二, 原野 隆之, 福井 雄大, 飯田 崇博, 酒井 絵美
    2014 年 28 巻 5 号 p. 552-556
    発行日: 2014/07/15
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
    縦隔腫瘍を合併した肺病変に対し一期的手術症例のまとまった報告は少ない.当科における一期的胸腔鏡肺切除+縦隔腫瘍切除の24症例を後ろ向きに検討した.術式は肺葉切除+縦隔腫瘍切除が最も多く7例で施行した.病理診断は肺癌+胸腺嚢胞が最も多く7例,次に肺癌+胸腺腫3例を認めた.手術時間は198±84分,出血量は105±80 ml,胸腔ドレーン留置期間は1.6±1.0日,術後在院期間5.0±2.5日であった.開胸移行,術後合併症は認めなかった.縦隔腫瘍を合併した肺病変に対する一期的胸腔鏡手術は低侵襲かつ安全に行うことが可能である.
  • 溝渕 輝明, 尹 貴正, 鈴木 秀海, 稲毛 輝長, 山本 高義, 鎌田 稔子, 森本 淳一, 中島 崇裕, 岩田 剛和, 田川 哲三, 吉 ...
    2014 年 28 巻 5 号 p. 557-563
    発行日: 2014/07/15
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
    我々はCDCガイドラインに準じた予防的抗菌薬投与と慢性閉塞性肺疾患に対する周術期の積極的治療介入を行い術後肺炎の予防に努めてきたが未だ術後肺炎を時に経験する.気道内の細菌コロニー形成が術後肺炎に関与するかを検討した.2011年の原発性肺癌手術114例に対し,術直後の気管支鏡吸引痰培養検査で潜在的病原菌100コロニー以上を有意とし,サーベイランスの結果を含む術後肺炎の危険因子を後方視的に検証した.11例(9.6%)に潜在的病原菌が検出された.術後細菌性肺炎は10例(8.8%)に発症したが,潜在的病原菌陽性11例では2例(18.2%),陰性103例では8例(7.8%)であり,差を認めなかった(p=0.55).術後肺炎の危険因子に関する多変量解析では,喫煙指数の高値(p=0.009)および拘束性換気障害(p=0.035)が有意な術後肺炎の危険因子であった.
  • 渡辺 梨砂, 西岡 清訓, 岩澤 卓
    2014 年 28 巻 5 号 p. 564-568
    発行日: 2014/07/15
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
    急性膿胸に対する治療法として抗生剤投与・胸腔ドレナージが第1選択であるが,これらの治療が無効な場合は外科的治療が必要となる.近年は胸腔鏡下手術が広く行われており,その有用性が多数報告されている.今回,当院の胸腔鏡下手術の成績を報告する.2008年1月から2013年2月の間に急性膿胸に対して胸腔鏡下手術を施行した7例を対象とした.胸腔ドレーン挿入部にポートを留置,さらに1~2ヵ所のポート孔を追加し胸腔鏡下に吸引,掻爬を行った.手術時間は120~360分(中央値158分)で,平均術後ドレナージ期間は5日,平均術後在院日数は9日であった.手術関連死亡,膿胸の再燃は認めなかった.他の複数報告例の平均術後ドレナージ期間は7.9日,平均術後在院日数は18.3日であり,これらと遜色ない結果であった.またポート孔のみと低侵襲であり安全性も高く,急性膿胸における胸腔鏡下手術は有用である可能性がある.
  • 御鍵 寛孝, 永田 旭, 吉田 康浩, 柳澤 純, 徳石 恵太, 濱武 大輔, 平塚 昌文, 吉永 康照, 山下 眞一, 白石 武史, 岩﨑 ...
    2014 年 28 巻 5 号 p. 569-574
    発行日: 2014/07/15
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
    乳癌の遠隔転移は主に骨・肺・肝であるが,転移を認めた時は全身治療が主体である.しかし最近ではoligometastases(少数転移)という概念の提唱により,肺転移のみにおける肺切除術は長期生存をもたらす可能性があるとの報告がある.今回,当院で施行した乳癌の肺転移巣に対する11切除例について検討した.平均年齢は60.1歳,乳癌手術から肺切除までの期間は平均96.7ヵ月であった.術後は転移巣のサブタイプに応じた薬物療法を行い,11例中4例は新たな遠隔転移が出現しているが,観察期間の中央値49ヵ月の現在11例全てが生存している.乳癌術後の孤立性肺腫瘍は肺転移と断定できない症例が多く,乳癌原発巣と肺転移巣のサブタイプの不一致により治療方針が変わる.したがって,診断と治療を兼ねた胸腔鏡下肺切除術により,切除可能な転移巣を切除することで予後を改善できる可能性がある.
症例
  • 重松 義紀, 岸田 翔子, 高橋 守, 松倉 規
    2014 年 28 巻 5 号 p. 575-579
    発行日: 2014/07/15
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
    症例は38歳女性.突然の激烈な右腰背部痛を主訴に当院救急外来を受診した.胸部CTで右後縦隔に腫瘤を認めた.疼痛の改善がないため,診断と治療を兼ねた手術を行った.術中所見では少量の淡血性胸水と腫瘤周囲の炎症所見を認め,胸腔鏡下に右後縦隔腫瘤切除術を施行した.病理診断は肺葉外肺分画症の梗塞,出血壊死であった.術後,疼痛は改善し,第5病日に退院となった.今回,我々は稀で激烈な腰背部痛で発見された肺葉外肺分画症の1切除例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 井上 尚, 大泉 弘幸, 加藤 博久, 渡會 光, 貞弘 光章
    2014 年 28 巻 5 号 p. 580-584
    発行日: 2014/07/15
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,女性.40歳頃より関節リウマチに罹患し,ブシラミンおよびプレドニゾロン内服していた.咳嗽出現し前医受診.CTで前縦隔に多房性嚢胞を伴った腫瘤を認めたため精査.CTガイド下針生検施行するも診断がつかなかったため当科紹介.明らかな重症筋無力症症状認めなかったが,抗AchR抗体は1.4 nmol/lと軽度上昇.CTでは前縦隔に8.3×5.5×2.2 cm大の多房性腫瘤を認め,石灰化を伴っていた.FDG-PETでSUVmax=4程度の軽度集積を認めた.以上より嚢胞形成性胸腺腫や奇形種を疑い胸骨正中切開による重症筋無力症合併に準じた拡大胸腺摘出術を施行した.術後病理検査にて胸腺腫は認めず多房性胸腺嚢胞の診断となる.退院後後腹膜線維症を認めIgG4関連疾患と診断された.多房性胸腺嚢胞は後天性炎症反応に関連した稀な疾患とされ,IgG4関連疾患と考えられる症例の報告は認めなかった.
  • 松本 博文, 佐野 功, 谷口 英樹
    2014 年 28 巻 5 号 p. 585-589
    発行日: 2014/07/15
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
    症例は69歳女性.自覚症状無く胸部CTで右上葉S3に径13 mmの境界明瞭な結節影を認めた.明らかなリンパ節腫大の所見無し.術前診断では良性疾患を疑われ手術目的に当院紹介された.手術は胸腔鏡補助下右S3区域切除を施行.腫瘤の割面は白色で境界明瞭であった.術中迅速組織診で確定的な所見は得られなかったものの悪性所見は認めなかった.永久標本では肺実質内に存在する境界明瞭な腫瘍で短紡錐形細胞が密に増生し血管肉腫様パターンを呈していた.組織像のみでは確定的な診断は得られず最終的には免疫組織染色から肺原発筋上皮腫と診断された.核分裂像や脈管侵襲は明らかではなく,低悪性度腫瘍と思われた.筋上皮腫は通常唾液腺等に認められる比較的予後の良い腫瘍であるが,時に再発や遠隔転移を来たす事もある.肺原発の筋上皮腫は非常に稀でその臨床的特徴に関する報告は極めて少なく,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 山梨 恵次, 山田 徹, 青山 晃博, 板東 徹, 伊達 洋至
    2014 年 28 巻 5 号 p. 590-595
    発行日: 2014/07/15
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性.血痰を自覚し,右主気管支・気管右壁浸潤を伴う右上葉原発性肺扁平上皮癌(cStage IIIA T4N1M0)と診断された.術前化学放射線療法にてPRを得た.仰臥位,正中切開+右第3肋間前方開胸アプローチにて手術を施行した.右主肺動脈を上大静脈より中枢側で確保した.右上葉気管支入口部を管状に切離したが,中枢側の断端に異型細胞を認めたため気管右壁を追加切除した.気管右側壁の縫縮後に,中間気管支幹を吻合した.吻合部は有茎大網弁で被覆した.術後病理所見では,悪性細胞の残存は認めず,therapeutic effect Grade 3であった.術後合併症は一過性の心房細動のみで,術後経過は良好であった.
  • 別所 俊哉
    2014 年 28 巻 5 号 p. 596-600
    発行日: 2014/07/15
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
    術前診断した,稀な気管支性肺嚢胞壁発生肺癌の1例を経験した.症例は64歳男性,喫煙指数=400,複視の精査での胸部CTで,右下葉に壁の肥厚を伴う4.3 cm大の嚢胞を認めた.Multidetector-row CT(MDCT)のmultiplanar reconstruction(MPR)像で嚢胞壁に不整を伴う肥厚があり,FDG-PETでその肥厚部に高集積を認めた.喀痰細胞診で扁平上皮癌を認め右下葉切除術を行い,気管支性肺嚢胞壁発生肺癌(pT1aN0M0)と診断した.術後6ヵ月の現在再発なく経過中である.嚢胞性肺疾患から発生する肺癌の多くは気腫性肺嚢胞で,気管支性肺嚢胞から発生した肺癌は,自験例を含め8例のみであった.自験例は肺内嚢胞型の気管性肺嚢胞から発生した肺癌で,その診断にはMDCTのMPR像やFDG-PETや喀痰細胞診が有用であった.
  • 松井 雅史, 岩田 尚, 白橋 幸洋, 水野 吉雅, 荒川 友希, 竹村 博文
    2014 年 28 巻 5 号 p. 601-607
    発行日: 2014/07/15
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
    症例は80歳代,男性.右下葉原発性肺癌に対し右S9+10区域切除術を施行され,術後16日目に退院された.術後25日目に術創から排膿を認め,手術部位感染の診断で処置のため再入院となった.感染は肋間筋レベルまで及んでおり,CT上胸腔への交通を認めたが,肺実質は肥厚した胸膜に覆われていると判断し,創部洗浄を開始した.処置開始30日目にVacuum Assisted Closure(VAC)therapy systemを導入した.肺損傷を危惧し,吸引圧は50 mmHgと低く維持した.肉芽形成,創治癒ともに良好で,VAC therapy system導入40日目に退院された.VAC therapy systemは創治癒促進に貢献でき,胸腔と交通する創への使用は,醸膿胸膜などの肥厚した胸膜が存在する場合は安全であると考えられた.
  • 市原 智史, 長阪 智, 田崎 拓朗, 横手 芙美, 桑田 裕美, 喜納 五月
    2014 年 28 巻 5 号 p. 608-613
    発行日: 2014/07/15
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
    症例は74歳女性.16年前に右拇指悪性黒色腫の切除術を受けていた.当科紹介1年前頭痛,ふらつきが出現.前医で右前頭葉と右肺中葉の腫瘤影を指摘された.症状改善と診断目的に当院脳神経外科で開頭腫瘍摘出術を施行.黒色腫脳転移と診断された.症状改善後気管支鏡検査でも同診断となり,当科受診した.肺転移切除で閉塞性肺炎が改善し転移巣全摘除と判断.外科的治療を選択した.胸腔鏡補助下右肺中下葉切除術およびND2a-2を施行.経過良好であったが,術後2ヵ月目急激な脳と気管気管支内腔の局所再発を来し,術後4ヵ月目に死亡した.脳と肺の転移に対する外科的治療は予後を改善し得なかったが,組織学的診断と症状改善の点で有効であった.同疾患既往がある場合,経過期間に関わらず転移再発を考慮すべきである.また転移再発に対する外科的治療の有効性と適応について,さらなる検討が必要である.
  • 宮脇 美千代, 内匠 陽平, 橋本 崇史, 末廣 修治, 小副川 敦, 杉尾 賢二
    2014 年 28 巻 5 号 p. 614-619
    発行日: 2014/07/15
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,女性.不正性器出血を主訴に近医を受診した.CTで骨盤内腫瘍を指摘されたため当院産婦人科を紹介.その際,胸部CTで後縦隔腫瘍を指摘され当科へ紹介.骨盤内腫瘍は成熟奇形腫,後縦隔腫瘍は嚢胞性の良性腫瘍と診断し,同時に摘出術を行った.まず腹腔鏡下に両側付属器切除術を施行し,右半側臥位に体位変換,胸腔鏡下後縦隔腫瘍摘出術を行った.後縦隔腫瘍は薄い被膜に覆われた単房性嚢胞で,慎重に破らず摘出した.周囲との連続性は無かった.病理組織検査で,骨盤内腫瘍は成熟奇形腫瘍,後縦隔腫瘍は,腫瘍内腔は線毛円柱上皮で被覆され,免疫染色で被覆上皮はエストロゲンレセプター,プロゲステロンレセプター陽性でありミュラー管嚢胞と診断された.ミュラー管嚢胞は閉経前後の女性に認める縦隔嚢胞性疾患の新しいカテゴリーである.
  • 川田 順子, 神崎 正人, 吉川 拓磨, 前田 英之, 村杉 雅秀, 大貫 恭正
    2014 年 28 巻 5 号 p. 620-625
    発行日: 2014/07/15
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
    胸腺腫合併重症筋無力症に対し,ロボット支援下拡大胸腺―胸腺腫摘出術を施行した症例を経験したので報告する.症例は50歳女性.右眼瞼下垂と両上肢筋力低下を主訴に近医を受診し,精査の結果,重症筋無力症(MGFA class IIa)と診断された.精査加療目的に当科紹介受診.胸部computed tomographyで前縦隔に46×35 mmの腫瘤を認めた.手術は左胸腔よりアプローチし,ダヴィンチサージカルシステムを用いて行った.ポート作成後,胸腔内に二酸化炭素を送気した.左横隔神経の前方で縦隔胸膜を切開し,胸腺左葉下極より上極まで剥離した.その後,対側である右縦隔胸膜を切開し,右横隔神経に注意しながら胸腺右葉も下極から上極の順に剥離し,胸腺および胸腺腫を摘出した.病理診断はtype B2,正岡分類I期であった.二酸化炭素送気で,左胸腔アプローチでも良好な視野の下に安全に手術を施行することができた.
  • 有村 隆明, 境澤 隆夫, 小林 宣隆, 小沢 恵介, 西村 秀紀
    2014 年 28 巻 5 号 p. 626-632
    発行日: 2014/07/15
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
    症例は70歳女性,検診の胸部X線写真で縦隔拡大を指摘された.胸部CTでは縦隔上部に51×52×71 mmの境界明瞭な腫瘤を認めた.FDG-PETでは腫瘤に一致したSUVmax 5.3の集積と右鎖骨上リンパ節にSUVmax 2.4の集積を認めた.右鎖骨上リンパ節の経皮細胞診では診断できず胸腔鏡下腫瘍生検を行った.病理診断は多数の形質細胞と免疫グロブリンを認め形質細胞腫と診断し,二期的に縦隔腫瘍摘出術を行った.摘出標本は被包化された充実性の腫瘤であり,組織学的にはIgG kappa型の単クローン性増殖と多数の形質細胞を認め髄外性形質細胞腫と診断した.縦隔発生の髄外性形質細胞腫は稀な疾患であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 喜田 裕介, 三崎 伯幸
    2014 年 28 巻 5 号 p. 633-639
    発行日: 2014/07/15
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,男性で,肝硬変・肝細胞癌等で当院消化器外科に通院中で,息苦しさを自覚し左胸水の増加を認めた.胸水中のヘマトクリットは29.4%と血性胸水であった.CTにて胸壁に造影効果を伴う胸膜肥厚や結節影を認め,胸腔ドレーンより約2時間で約2000 ml以上の血性の排液があり,止血と生検目的にて緊急手術となった.術中所見は胸壁全体から出血がみられ,胸壁と肺実質に浸潤する腫瘍と,びまん性に播種巣を認めた.腫瘍は非常にもろく,易出血性であった.病理診断にて充実性に増殖する淡明な胞体をもつ上皮様の異型細胞を認め,免疫組織化学により淡明細胞型の悪性胸膜中皮腫と診断した.カルボプラチンとペメトレキセートにて化学療法を2コース施行したが,進行し111日目に永眠された.今回血胸を契機に診断した淡明細胞型の悪性胸膜中皮腫を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
  • 内藤 雅仁, 中島 裕康, 小川 史洋, 松井 啓夫, 塩見 和, 佐藤 之俊
    2014 年 28 巻 5 号 p. 640-645
    発行日: 2014/07/15
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
    症例は77歳男性.慢性咳嗽精査の胸部CTで左肺S10に51 mmの腫瘤影を認めた.経気管支肺生検にて肺扁平上皮癌(cT2bN0M0-IIA)と診断され,左下葉切除術ND2a-1を施行した.手術時,下行大動脈より下葉へ流入する異常血管を認め,Pryce I型肺分画症と診断した.最終診断は肺分画症合併肺扁平上皮癌(pT2aN0M0-IB)であった.肺分画症合併肺癌は稀であり,文献的考察を含め報告する.
  • 鈴木 仁之, 庄村 心, 矢田 真希, 近藤 智昭, 島本 亮, 高尾 仁二
    2014 年 28 巻 5 号 p. 646-650
    発行日: 2014/07/15
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,女性.54歳時,原発性副甲状腺機能亢進症に対して3腺摘出術の既往がある.健診で胸部異常陰影を指摘されて,当院紹介となった.気管支鏡検査では右中葉気管支をほぼ閉塞する腫瘍を認め,生検で定型カルチノイドと診断されたため,右中葉切除術を施行した.永久標本では非定型気管支カルチノイドと診断された.家族歴では内分泌腫瘍が多発しており,術前の全身検索で膵体部腫瘍も指摘されたため,多発性内分泌腺腫症(MEN)1型(MEN 1)に合併した非定型気管支カルチノイドと診断した.MEN 1に気管支カルチノイドを合併することは稀であるため文献的考察を加えて報告する.
  • 柳沼 裕嗣, 藤生 浩一, 管野 隆三, 宮元 秀昭, 鈴木 弘行
    2014 年 28 巻 5 号 p. 651-656
    発行日: 2014/07/15
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
    背景.良性転移性平滑筋腫(benign metastasizing leiomyoma,BML)は組織学的に良性である平滑筋腫が遠隔転移を来す稀な疾患である.今回2例の肺BML症例を文献的考察とともに報告する.症例1.52歳女性.子宮筋腫の術前検査にて多発肺腫瘍を指摘された.準広範子宮全摘術後に胸腔鏡下肺部分切除を施行した.病理診断は平滑筋腫で免疫染色ではestrogen受容体(ER)陽性,progesterone受容体(PgR)陰性であった.術後7ヵ月間ホルモン療法を施行し腫瘍は一時縮小したが,術後11年では腫瘍は徐々に増大している.症例2.51歳女性.11年前に子宮筋腫で単純子宮全摘を施行された.検診で多発肺腫瘍を指摘された.胸腔鏡下肺部分切除を施行され,BMLと診断された.ER,PgRのいずれも陽性であった.術後は無治療で経過観察中で,術後6ヵ月の時点で腫瘍の大きさに変化は認めない.
  • 田中 真, 井野川 英利, 橋本 好平, 前田 宏也
    2014 年 28 巻 5 号 p. 657-661
    発行日: 2014/07/15
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
    症例は19歳男性.2011年6月の胸部X線写真で心陰影に重なる肺の腫瘤影を指摘され,8月の胸部X線写真では腫瘤影が増大していた.発熱,咳,痰などの自覚症状は全く認めなかった.胸腹部造影CT検査にて腹部大動脈より分岐する異常血管を認め,左肺葉内分画症と診断し手術を施行した.分画肺は大きく開胸左下葉切除術を施行した.分画肺は周囲への癒着が強く剥離に難渋した.術後1日目に急激な胸部痛の増強と胸腔ドレーンより暗赤色の排液を多量に認めた.精査の結果,食道裂孔ヘルニアの嵌頓による胃穿孔と診断した.再開胸し胃の穿孔部を自動縫合器で部分切除.腹腔内へ胃を還納し,食道裂孔を縫縮した.分画肺の癒着剥離操作で食道裂孔周囲の組織が脆弱化したため生じた合併症の可能性がある.食道裂孔近傍に癒着を強く認める肺切除症例では閉胸時,本症例のような病態を念頭に置く必要があると考えられた.
  • 山本 耕三, 甲斐 裕樹, 廣瀬 龍一郎, 山下 眞一, 白石 武史, 岩﨑 昭憲
    2014 年 28 巻 5 号 p. 662-667
    発行日: 2014/07/15
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
    胸膜肺芽腫は非常に稀な肺・胸膜原発の小児悪性腫瘍である.治療は手術が第一選択であり化学療法,放射線療法を組み合わせ集学的治療が行われるが,再発率が高く予後不良の疾患である.最近胸膜肺芽腫の2例を経験したので報告する.症例1は4歳女児,咳嗽,喀血を主訴とし胸部CTで右胸腔内に7 cm大の腫瘍性病変を認めた.腫瘍は右下葉より発生しており,右下葉切除術を施行した.病理診断で胸膜肺芽腫Type IIIと診断され術後化学療法を施行したが,術後9ヵ月目に脳転移を認めたため同部位の腫瘍摘出術を施行した.症例2は4歳女児,咳嗽,発熱,左側胸部痛を主訴とし胸部CTで左胸腔を占める腫瘍性病変を認めた.腫瘍は左上葉より発生し嚢胞上の部分が下方に突出して下葉を圧排しており左上葉切除術を施行した.病理診断で胸膜肺芽腫Type IIと診断され術後化学療法を施行し10ヵ月経過して再発を認めていない.
  • 稲田 一雄, 岩崎 昭憲
    2014 年 28 巻 5 号 p. 668-675
    発行日: 2014/07/15
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
    60歳男性.アルコール性膵炎の既往あり.呼吸苦のため,当院救急搬入.血液生化学検査上CRP及び血性アミラーゼ値の上昇あり.画像上,大量の両側胸水及び腹腔内から連続する縦隔内嚢胞性病変あり.胸水中アミラーゼは異常高値であり,縦隔内膵仮性嚢胞と膵性胸水を併発したアルコール性慢性膵炎と診断し,両側胸腔ドレナージと内科的治療を開始した.炎症所見は徐々に上昇し,2週間後の画像検査で,左胸腔内は隔壁化し胸水のドレナージは不良であり,肺膨張も不良であった.それに加えて縦隔内嚢胞の消失を認めたため,仮性嚢胞の胸腔内穿破による左膿胸を疑い,胸腔鏡下に剥皮術と胸腔内及び縦隔のドレナージ術を施行した.その後の経過は比較的良好で,術後1ヵ月目から経口摂取を開始.縦隔内膵仮性嚢胞の治療に当たり,穿破に伴い膿胸など重篤な合併症を併発することも考慮に入れ治療する必要があると考えられた.
  • 勝俣 博史, 八柳 英治
    2014 年 28 巻 5 号 p. 676-681
    発行日: 2014/07/15
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
    症例は高血圧,前立腺肥大にて加療中の70歳,男性.2004年4月近医にて高CEA血症を指摘され,スクリーニング目的のCTにて肺の異常影を発見され当院紹介となった.CT上右S2bに16 mm大のspiculaを伴う腫瘤影,右S2aに15 mm大のスリガラス様陰影,左S6に35 mm大の空洞を伴う腫瘤影を認め,TBLBにて右S2b・左S6は腺癌と診断された.画像的に多発癌の可能性が高いと考え,まず同年7月左下葉切除術+縦隔リンパ節郭清を施行,その3ヵ月後に右肺の2病変に対し各々肺部分切除術を施行した.病理学的に右S2bは腺扁平上皮癌,S2aは腺癌(mixed subtypes),左S6は腺癌(papillary)であり多発癌と診断された.術後6年経過した現在無再発生存中である.
  • 渡邉 めぐみ, 林 同輔, 窪田 康浩, 三宅 孝佳
    2014 年 28 巻 5 号 p. 682-687
    発行日: 2014/07/15
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
    胸腺癌術後に小腸転移を来した稀な1例を経験した.症例は78歳,男性.顔面・両上肢浮腫にて受診し,CTで前縦隔腫瘤と上大静脈の狭小化を認めた.針生検で低分化胸腺癌を疑う所見を認め,術前化学療法としてCODE療法を行った.胸骨右半分切除・右肺上葉部分切除を伴う胸腺全摘術・リンパ節郭清を行い,右腕頭静脈と上大静脈間を人工血管で再建した.病理診断にてT3N1M0 stage IIIと診断された.1年半後,右胸壁に1 cm大の再発巣が出現し,切除術と60 Gyの放射線療法を行った.術後5年目に回腸出血を来しダブルバルーン内視鏡下に止血したが,再出血し回腸部分切除した.潰瘍を伴う白色腫瘤を認め,病理診断で胸腺癌の小腸転移と診断された.その後は無再発で経過し,初診から6年1ヵ月で脳梗塞と肺炎により他病死し再発は認めなかった.胸腺癌は予後不良であるが,本症例のように集学的治療により良好な予後を得られる可能性がある.
  • 奥谷 大介, 安藤 陽夫, 東 良平
    2014 年 28 巻 5 号 p. 688-692
    発行日: 2014/07/15
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,女性.65歳時,右乳癌(浸潤性乳管癌,硬癌,pStage IIB)に対して手術,放射線療法,化学療法,ホルモン療法を施行した.69歳時,膵体部癌(浸潤性膵管癌,中分化型管状腺癌,pStage III)に対して手術,化学療法を施行した.73歳時,胸部CTにて左肺S4, S8にそれぞれ約10 mmの結節を認めたので胸腔鏡下肺部分切除術を施行した.病理学的に膵癌の肺転移と診断され術後化学療法を施行した.75歳時の胸部CTにて右肺S5に12 mmの結節を認めたので診断治療のため胸腔鏡下中葉切除術を施行した.免疫染色ではエストロゲン受容体(ER)は陽性であり今回は乳癌の肺転移であると診断した.膵癌と乳癌からそれぞれ肺転移をきたし切除した症例はわれわれが検索した限りでは報告がなく,きわめて稀である.
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