日本呼吸器外科学会雑誌
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29 巻, 1 号
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原著
  • 下川 秀彦, 宗 知子, 浦本 秀隆, 田中 文啓
    2015 年 29 巻 1 号 p. 2-5
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    膠原病に悪性腫瘍が合併する頻度が高く,様々な報告がなされている.2006年から2010年までの5年間に当科において手術を施行した原発性肺癌437例において,膠原病合併肺癌は22例(5.0%)であった.膠原病の内訳はリウマチが14例(66.7%)と最も多く,強皮症3例,SLE 2例,成人スティル病1例であった.病理病期ではIA期が16例(72.7%),IB期4例,IIIA期2例であった.膠原病合併肺癌と非合併肺癌において,術前の間質性肺炎の合併において有意差を認めたが,術式および術後合併症に差を認めなかった.膠原病合併肺癌においても,周術期管理を適切に行えば非合併肺癌と同様に安全に外科的治療を遂行できるものと考えられる.ただし,ステロイドおよび免疫抑制剤の使用による,術後補助化学療法が施行できない患者が多いことが問題であると考えられた.
  • 管野 隆三, 岡部 直行, 大石 明雄
    2015 年 29 巻 1 号 p. 6-10
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    有茎大網弁を用いた呼吸器外科手術25症例の臨床的検討を行った.適応疾患は膿胸11例,肺切除後気管支断端瘻8例,気管支吻合部被覆5例,胸骨骨髄炎1例.膿胸,気管支瘻,胸骨骨髄炎症例では全例一期的に軽快退院し,吻合部被覆症例では気管支瘻は発生しなかった.有瘻性膿胸と気管支断端瘻に対する大網充填術各1例で再燃を認めた.術後合併症では,吻合部被覆症例で吻合部狭窄と呼吸不全を各1例認め後者は術死した.大網作成に伴う重大な腹部合併症は認められなかった.手術手順では,開腹先行が開胸先行に比較して,有意に手術時間が短く,出血量も少なかった.膿胸,気管支断端瘻等に対する大網充填術は一期的治癒が期待でき有効な手術方法である.一方,吻合部被覆では気管支瘻発生の危険性と手術侵襲を考慮し慎重に適応を判断すべきと考えられた.
  • 田内 俊輔, 内野 和哉, 岡本 武士, 奥田 祐亮, 多根 健太, 西尾 渉, 吉村 雅裕
    2015 年 29 巻 1 号 p. 11-14
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    非小細胞肺癌手術での術中胸腔内洗浄細胞診(Pleural lavage cytology:PLC)は予後因子として重要な役割を果たす.しかし,その洗浄手技は確立されておらず,一定の方法がない.今回,PLCを施行する際に使用する洗浄液の量に関しての検討を行った.対象は2008年11月から2011年5月までの非小細胞肺癌手術症例で,開胸直後に生理食塩水を洗浄液として用い,5 ml, 100 mlの順でPLCを行った.それぞれの洗浄液中の腫瘍細胞の検出率を検討した.期間中のPLC施行例は435例,腫瘍細胞陽性例は40例(9.2%)であった.そのうち5 mlの洗浄液で腫瘍細胞を認めた症例は36例(8.3%),100 mlの洗浄液では38例(8.7%)に認め,検出率に差は認めなかった(κ係数=0.9114).PLCにおいて使用する洗浄液の量は少量でも検出率を損なうことなく施行しうると考えられた.
症例
  • 河本 宏昭, 寺本 典弘, 上野 剛, 末久 弘, 澤田 茂樹, 山下 素弘
    2015 年 29 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    症例は60歳男性.レントゲンで右上肺野異常影を指摘され,CT検査で右S1に25 mm大の結節を認めたが明らかなリンパ節腫大は認めなかった.右肺癌の診断で右上葉切除術+ND2aリンパ節郭清を行った.病理検査では上葉の腫瘍は高分化型腺癌であったが,気管気管支リンパ節に大細胞癌を認めた.肺高分化型腺癌pT1N0M0, Stage IAと原発不明縦隔リンパ節大細胞癌の同時性二重癌と考えフォローアップした.無再発で10年経過し左上葉に肺癌を疑う腫瘤が出現し,左上葉切除を行うと組織学的には紡錘形癌と腺癌よりなる多形癌であった.右上葉腺癌と左上葉多形癌は,縦隔リンパ節大細胞癌とは組織学的に異なる癌と診断された.原発不明縦隔リンパ節癌は稀で,肺癌手術で偶然発見された場合には,切除肺に原発巣が隠れている可能性があるが,慎重な病理学的検索にも関わらず原発巣が見つからない場合には,厳重なフォローアップが必要である.
  • 今給黎 尚幸, 巻幡 聰, 米田 敏, 山下 眞一, 白石 武史, 岩﨑 昭憲
    2015 年 29 巻 1 号 p. 20-24
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    後縦隔神経節細胞腫の2手術例を報告する.症例1:40歳女性.心窩部痛を主訴にCTで左後縦隔の傍椎体領域に11 cm大の腫瘤を認め,胸腔鏡下に腫瘍を摘出した.症例2:16歳女性.学校検診のレントゲンで異常陰影を指摘,CT, MRIで右傍椎体領域に17 cm大の腫瘤を認め右後側方切開で腫瘍摘出を行なった.病理ではともに神経節細胞腫の診断であった.稀な疾患だが発生部位や特徴的な画像所見から術前より同疾患を疑うことは比較的容易であり,後縦隔に発生する神経原性腫瘍の鑑別疾患として念頭におくべき疾患と思われた.
  • 池田 政樹, 高橋 耕治, 小松 輝也, 加藤 達雄, 藤永 卓司
    2015 年 29 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    気胸を契機に発見され,薄壁空洞を呈した原発不明癌多発肺転移の1例を報告する.症例は79歳男性.前医で20xx年7月と9月に左気胸で加療を受けた.2回目気胸時のCTで多発肺嚢胞を認め,気腫性変化の他に悪性腫瘍の可能性もあり腫瘍マーカーを測定したところCYFRA(cytokeratin 19 fragment)の上昇を認めた.精査検討中の10月に3回目の左気胸を発症し,精査加療目的に当院紹介となった.気胸はドレナージと自己血胸膜癒着術で治癒した.FDG-PET/CTで右頸部リンパ節に著明な集積を認め,右口蓋扁桃,両肺病変,前立腺に淡い集積を認めた.胸腔鏡下肺生検と右頸部リンパ節生検を施行し,いずれも扁平上皮癌であった.精査にて頭頸部癌や前立腺癌の可能性は低く,原発不明扁平上皮癌として,化学療法と頸部リンパ節放射線治療を行った.現在1年5ヵ月担癌生存中である.
  • 藤原 敦史, 奥村 典仁, 山科 明彦, 中島 尊, 松岡 智章, 亀山 耕太郎
    2015 年 29 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    外科的切除を行った肺放線菌症の3症例を報告する.症例1は87歳男性.持続する血痰を主訴に受診,CT上右中葉に20 mm大の結節影を認め原発性肺癌を疑い右中葉切除術を施行した.病理診断で肺放線菌症と診断.症例2は73歳女性.肺MAC症で経過観察中に大量喀血による出血性ショックで内科入院,気管支鏡検査で肺放線菌症と診断された.血痰の持続を認め症状制御も兼ねて左肺底区切除術を施行した.症例3は65歳男性.血痰・胸背部痛を主訴に受診.胸部CT上30 mm大の結節影を認め,原発性肺癌を疑い左上区切除術を施行,病理診断で肺放線菌症と診断.3例とも術後から現在まで症状の再燃は認めていない.本疾患は術前診断が困難であり,肺癌の疑いで手術となり切除により確定診断された報告が多いが,術前診断が得られている場合も,血痰を伴う場合は喀血のリスクを回避する意味でも早期に病巣の切除を考慮すべきと思われた.
  • 髙田 昌彦, 宮本 良文
    2015 年 29 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    肋骨に発生して胸痛をきたした骨軟骨腫の1例を経験したので報告する.症例は20歳,男性.中学生時より左側臥位になると左胸痛が出現した.平成25年6月スポーツ観戦中,非常に強い左胸痛が生じて他院を救急受診し,胸部異常陰影が認められたため当科紹介となった.胸部CTでは左第5肋骨に長さ20 mm,骨と同じdensityを示す棘状の隆起物と,この隆起物の先端から心嚢上に広がる軟部組織陰影を認めた.胸腔鏡下に観察したところ,左第5肋骨より突出する細長い骨様突起物を認め,この先端に相対する心嚢と臓側胸膜の肥厚を認めた.この突起物の直上に2 cmの皮切をおき,リュウエルを用いて切除し,肥厚した心嚢の一部を生検のため切除して手術を終了した.病理組織所見では突起物については,骨棘状の骨組織の上に軟骨帽が乗っており骨軟骨腫と診断され,心嚢上の肥厚組織については,刺激に伴う反応性変化として矛盾しないとの回答であった.術後より速やかに左側臥位における胸痛は消失した.
  • 徳永 義昌, 奥田 昌也, 池田 敏裕, 伊藤 公一, 加藤 歩, 横見瀬 裕保
    2015 年 29 巻 1 号 p. 42-45
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    症例は65歳男性.血痰を主訴に近医を受診した.胸部CT写真で右肺上葉に異常影を指摘され,気管支鏡検査が行われたが確定診断に至らず,当科紹介となった.CT再検で,右肺上葉の結節はわずかに縮小したため経過観察としたが,1年後陰影は残存していた.肺癌の可能性が否定できなかったため,診断治療目的に手術を行った.病巣は1.7 cm大で右肺上葉の肺門近くに存在し,部分切除での診断は困難であったため,右肺上葉切除術を施行した.悪性所見は認めず,細菌培養ではScedosporium apiospermumを検出し,スケドスポリウムによる肺真菌症と診断した.術後療法として2ヵ月間ボリコナゾールを内服し,術後18ヵ月現在再発は認めず,外来経過観察中である.Scedosporium apiospermumによる稀な肺感染症の1例を経験したので,報告する.
  • 星野 大葵, 吉澤 正敏, 石田 久雄, 桑原 正喜
    2015 年 29 巻 1 号 p. 46-50
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,女性.約40年前から右下葉の肺炎を繰り返し,食道気管支瘻と診断されていた.血痰,喀血,嚥下時の咳嗽発作が続くため,手術目的で当院に紹介となった.食道造影やCTでは食道下部から右下葉に交通する瘻管を認め,右下葉は荒蕪肺となっていた.手術は右開胸で瘻管の閉鎖と右下葉の切除が妥当と思われたが,患者は宗教上の理由により輸血を拒否したため,強固な癒着が予想される右からのアプローチはリスクが高いと考え,左からの小開胸で瘻管の遮断のみ行った.瘻管の周囲には強い癒着はなく,剥離は容易であった.出血量は50 mlで術後経過良好,術後約2週間で退院となった.その後肺炎を繰り返すこともなく,血痰は止まり,結果的に肺切除は必要なく瘻管の遮断だけで十分であったと判明した.文献例では類似の症例で肺切除を行っている症例が多く見られるが,本症例の経験は示唆に富むと考え,報告する.
  • 徳永 俊照, 久能 英法, 石田 大輔, 狩野 孝, 岡見 次郎, 東山 聖彦
    2015 年 29 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    症例は43歳,女性.約1年前より咳嗽,血痰を認めており,呼吸困難を生じたため,近医受診した.胸部CTにて約2 cm大の気管腫瘍を指摘された.気管支鏡検査を施行し,気管中部にカリフラワー状の有茎性腫瘍を認めた.組織生検にて,線維上皮ポリープと診断され,加療目的にて当科に入院した.治療は気管支鏡下にNd:YAGレーザーを用いて,ポリープ切除術を施行した.術後合併症はなく,切除後,症状の改善が得られた.
  • 野津田 泰嗣, 桜田 晃, 新井川 弘道, 遠藤 千顕, 岡田 克典, 近藤 丘
    2015 年 29 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    患者は62歳,女性.C型肝硬変,肝癌に対し生体肝移植施行.術後5年目の胸部CTで右中葉に8 mmの小結節が出現したが経過観察されていた.さらに2年後の胸部CTで結節が37 mm大に増大し,当科紹介となった.気管支鏡検査で腺癌の診断を得た.cT2aN0M0, stage IBと診断し,初診から2ヵ月後に右中葉切除術+肺門縦隔リンパ節郭清術を施行した.2ヵ月前より病状が進行しており,病理診断は,同一肺葉内転移,開胸時洗浄細胞診陽性,pT3N2M0, stage IIIAであった.シスプラチンとビノレルビンを併用した術後補助療法を施行したが,再発転移をきたした.第4次化学療法を行った後に緩和医療へ移行した.臓器移植後の悪性腫瘍発症リスクは健常者の3~4倍とも報告されており,移植後の発癌に対しては慎重なフォローアップによる,早期発見・早期治療が重要と考えられる.
  • 武本 智樹, 水内 寛, 佐藤 克明, 須田 健一, 岩崎 拓也, 光冨 徹哉
    2015 年 29 巻 1 号 p. 62-66
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    症例は71歳女性,定期検査の胸部X線写真で異常指摘され精査加療目的に紹介となった.CTにて前縦隔に6 cmの腫瘤を認め,上大静脈や右肺・心膜と境界不明瞭であった.FDG-PET/CTにてFDGの集積亢進(SUVmax:13.51)を認めた.浸潤性胸腺腫もしくは胸腺癌を疑い胸骨縦切開腫瘍摘出術,上大静脈・心膜・右肺合併切除術を施行した.腫瘍は白色充実性腫瘍で,病理組織学的に胸腺原発大細胞神経内分泌癌(LCNEC)と診断された.術後12ヵ月で縦隔リンパ節再発と多発肝転移を認め,CBDCA+VP-16療法を4クール施行し,縮小傾向認めたが,新たに多発骨転移を認めた.極めて稀な胸腺原発LCNECの1切除例を経験したので報告する.
  • 江花 弘基, 栗原 正利, 片岡 秀之, 溝渕 輝明
    2015 年 29 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    症例は63歳男性.2000年胸部CT検診で両肺の多発嚢胞を指摘され,前医にて画像上ランゲルハンス細胞組織球症と診断のもとに経過観察されていた.2003年右気胸発症し,胸腔鏡下肺生検を施行して悪性黒色腫と診断された.全身の精密検査で他臓器に悪性黒色腫を認めず肺原発と診断されていた.以後も気胸を繰り返し発症したために2004年気胸治療目的に当院紹介となった.当院転院後,胸腔鏡下に肺部分切除ならびに再生酸化セルロースメッシュとフィブリン糊による胸膜カバーリング術を行った.6ヵ月後に気胸発症したため,再び胸腔鏡手術を施行した.腫瘍細胞がカバーリング効果により肥厚した臓側胸膜を越えて浸潤し,腫瘍が自壊して気胸を発症していた.2005年脳転移を認め,2007年に死亡した.気胸を繰り返す転移性肺悪性腫瘍に対して胸膜カバーリング術は気胸予防に有効である可能性が示唆された.
  • 鎌田 嗣正, 櫻井 裕幸, 中川 加寿夫, 渡辺 俊一, 蔦 幸治, 淺村 尚生
    2015 年 29 巻 1 号 p. 73-77
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    症例1は53歳,男性.他院で下行結腸癌に対して結腸切除,多発肝転移に対して全身化学療法を施行後,CTで両肺に最大径10 mm,境界明瞭,辺縁整,内部均一な結節影を指摘され転移性肺腫瘍の疑いにて当院を紹介受診した.右肺上葉部分切除術を施行し血腫と診断された.慢性心房細動に対してWarfarin内服中であった.症例2は67歳,男性.弁置換術後のためWarfarin内服中,左肺下葉に造影効果のない,径29 mm,境界明瞭,辺縁整,内部均一な結節影を指摘され当院を紹介受診し,CTガイド下生検で血腫と診断された.経過で肺結節は縮小した.いずれも先行する外傷などの既往はなく,特発性肺内血腫と診断した.
  • 藤下 卓才, 須田 健一, 河野 幹寛, 吉田 月久, 岡本 龍郎, 前原 喜彦
    2015 年 29 巻 1 号 p. 78-83
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    鑑別に苦慮した肺腺癌合併前縦隔悪性リンパ腫の一例を経験した.62歳女性.胸部X線異常で当院受診した.胸部CTで右肺上葉,前縦隔,胸骨上窩に結節影を認めた.肺病変は経気管支肺生検にて腺癌の診断となった.前縦隔結節は最大径22 mm,胸骨上窩結節は最大径9 mmであり,いずれもFDG-PETで高集積を認めた.MRI信号パターンから胸腺由来と考えられた.腫瘍マーカーはsIL2-Rを含め正常範囲内であった.右上葉肺腺癌及び前縦隔腫瘍(胸腺癌疑い)の診断のもと,右肺上葉切除+縦隔リンパ節郭清術及び縦隔腫瘍・胸腺摘出術を施行した.縦隔腫瘍及び胸骨上窩結節は病理診断でdiffuse large B-cell lymphomaと診断された.本症例は比較的高齢であり,腫瘍も比較的小さく,臨床経過からも悪性リンパ腫としては非特異的であり,画像所見でも悪性リンパ腫は否定的と考えられた.術前の画像所見に関わらず悪性リンパ腫は常に鑑別に置く必要があると考えられた.
  • 西川 敏雄, 高橋 正彦, 森 雅信, 上川 康明, 井上 文之
    2015 年 29 巻 1 号 p. 84-88
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,女性.気管支拡張症及び非結核性抗酸菌症にて加療されており,左肺S6に空洞を伴う結節を認めていた.2013年6月発熱及び左胸痛にて受診,著明な炎症反応と左気胸を認めた.胸腔ドレナージ後のCT検査では左肺S6の結節に気管支瘻を疑う所見を認めた.その後も気漏及び発熱が持続し手術を施行した.左肺S6の結節部に瘻孔及び同部位よりの気漏を認めたため,S6区域切除術を施行した.切除標本の病理検査では壊死を伴う大小の結節が存在し,周囲には類上皮巨細胞やラ氏型の巨細胞を認めた.術前,術中の胸水の培養検査にてMycobacterium abscessusが検出され,これによる肺感染症に気胸を合併したものと診断した.非結核性抗酸菌症による続発性気胸に対しては早期に手術を中心とする積極的な治療を行うことが重要であると考えられた.
  • 福田 賢太郎, 田中 浩一, 谷岡 利朗, 山上 英樹
    2015 年 29 巻 1 号 p. 89-94
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,女性.前医で2001年6月に直腸癌および同時性肝転移に対して低位前方切除と肝部分切除術を施行され,術後骨盤内再発で2004年9月に腹会陰式直腸切断術が行われた.2008年のCTで左肺上葉の肺動脈(A1+2c)に一致する陰影を指摘されたが,積極的に悪性病変は疑わず経過観察となった.その後陰影は徐々に増大し,2013年4月のCTでは肺動脈内に留まるも,長径は約4.5 cmに増大していたため,当科にコンサルトされた.PET-CTを施行したところ陰影に異常集積(SUV max 17.1)を認めたため,悪性病変を疑い2013年6月左上葉切除術を施行した.摘出標本の病理検査で直腸癌の肺転移と診断された.腫瘍組織はほぼ全て肺動脈血管内に存在し,血管壁構造の破壊はわずかしか認めなかった.稀な形態を示した大腸癌肺転移症例を経験したので報告した.
  • 内田 真介, 高持 一矢, 北村 嘉隆, 金野 智明, 王 志明, 鈴木 健司
    2015 年 29 巻 1 号 p. 95-100
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    症例は23歳男性.職場健診で胸部異常影を指摘された.胸部CTで中縦隔に8 cm大の腫瘤を認めたため,経気管支生検,右開胸腫瘍生検を施行したが,確定診断には至らなかった.診断と治療目的で根治切除を行う方針とした.腫瘍は血流が豊富で開胸生検の際,止血に難渋したため,術前日に気管支動脈から腫瘍へ流入する栄養血管に対して塞栓術を施行した.腫瘍は大血管,左右主気管支を圧排しており,外科的アプローチに一考を要したが,最も難渋すると予想された左主肺動脈と左主気管支からの剥離を左開胸で行い,そのまま右側へ剥離することで完全切除し得た.術前の気管支動脈塞栓術は有効で術中出血を最小限に抑えることができた.永久標本ではCastleman病と確定診断された.
  • 吉田 久美子, 松田 英祐, 田中 俊樹, 田尾 裕之, 林 達朗, 岡部 和倫
    2015 年 29 巻 1 号 p. 101-105
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    稀な特発性奇静脈瘤の切除例を2例経験したので報告する.症例1は50歳代,男性.検診で25 mm大の右肺門部腫瘤影を指摘された.4年後腫瘤径は35 mmと増大し,造影CT, MRIの所見から奇静脈瘤と診断された.血栓症や破裂の危険性を考慮し,胸腔鏡下に瘤切除を行った.症例2は70歳代,女性.原発性肺癌に対し胸腔鏡下右上葉切除術を施行したが,術中奇静脈弓に限局する15 mm大の瘤を認めたため切除した.いずれの症例も,術後に合併症を認めず経過良好である.特発性奇静脈瘤は稀な疾患で,多くは無症状である.治療法には一定の見解はないものの,瘤内血栓の流出による肺血栓塞栓症や瘤破裂の可能性が指摘されており,瘤切除が行われることが多い.瘤化が奇静脈弓部に限局し,瘤内血栓のないものについては,胸腔鏡下に瘤切除が施行可能であると考えられる.治療方針の決定には,血管3D-CTが有用である.
  • 高橋 正彦, 高橋 健司, 平見 有二, 西川 敏雄, 森 雅信, 井上 文之
    2015 年 29 巻 1 号 p. 106-111
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    背景.真の肺癌肉腫は全肺悪性腫瘍の約0.1~0.3%であり,重喫煙者の高齢男性に好発する.術前診断は困難であり,確立された治療法はない.一般的に真の肺癌肉腫の腫瘍径は大きく,予後は不良である.症例.54歳男性,血痰を主訴に来院した.胸部XPおよび胸部CTにて左下葉に9.5 cm大の腫瘤を認めた.気管支鏡下生検にて確定診断は得られなかった.しかし,腫瘍の増殖速度が速かったため切除術を施行した.術後病理学的に腺癌と軟骨肉腫からなる真の肺癌肉腫と診断した.現在術後7年を経過するが無再発生存中である.結論.長期生存が得られた真の肺癌肉腫の1切除例を経験したので報告した.
  • 深澤 拓也, 森田 一郎, 沖本 二郎, 山根 弘路, 物部 泰昌, 猶本 良夫
    2015 年 29 巻 1 号 p. 112-117
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
    背景,症例は29歳男性,咳嗽および発熱を契機に,右S10区域に内部にniveauおよび壁肥厚を伴う空洞と帯状浸潤影を指摘された.精査にて肺アスペルギルス症を疑われ,内科的治療を行うも,軽快せず右下葉切除を施行し治癒し得た.結論,寛解と増悪を繰り返し,肺葉切除にて確定診断された慢性壊死性肺アスペルギルス症の一例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
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