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宮澤 知行, 尾高 真, 浅野 久敏, 丸島 秀樹, 山下 誠, 森川 利昭
2015 年 29 巻 4 号 p.
448-451
発行日: 2015/05/15
公開日: 2015/05/26
ジャーナル
フリー
今回我々は肺嚢胞内に発育し進展した肺癌肉腫症例を経験した.症例は62歳男性.健診にて10年前より左肺嚢胞を指摘されていた.健診にて肺内の腫瘤影を指摘され当科を紹介受診した.胸部CTでは左肺S
1+2に65 mm大の腫瘤で,FDG-PETではSUV
max17.1と集積を認めた.左肺癌と診断し,左肺上葉切除を胸腔鏡下に成功裡に施行しえた.術後経過は良好で第7病日に退院した.病理学診断は肺癌肉腫であった.本症例は一般的に悪性度の高い癌肉腫が嚢胞外に浸潤せず,嚢胞内に発育進展した点が非常に興味深い.
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吉田 周平, 松本 勲, 齋藤 大輔, 高田 宗尚, 田村 昌也, 竹村 博文
2015 年 29 巻 4 号 p.
452-455
発行日: 2015/05/15
公開日: 2015/05/26
ジャーナル
フリー
患者は71歳,男性.65歳時に感染性肺嚢胞及び右肺中葉内膿瘍に対し中葉切除術を施行.6年後に胸部単純X線写真にて右中肺野の異常陰影を指摘された.経過観察を行ったが,陰影の増大を認め,PETにて肺癌を疑われ当科紹介となった.CTでは右肺S3に金属影を中心とした径20 mmの結節影を認め,PET検査では結節に一致しSUV max 10.0(早期相)から13.9(後期相)と高度の集積増加を認めた.手術は右肺上葉部分切除術を施行し,術中迅速病理診断にて炎症性結節と診断された.術後の病理組織学的診断ではstapleに対する異物反応による炎症性肉芽腫と診断された.本症例においては結節影が増大傾向にあったため肺癌を疑い手術を施行したが,炎症性肉芽腫の可能性も念頭に置いたうえで,術前に画像所見の検討を行うべきである.
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桃實 徹, 井上 匡美, 大瀬 尚子, 前田 元, 新谷 康, 奥村 明之進
2015 年 29 巻 4 号 p.
456-461
発行日: 2015/05/15
公開日: 2015/05/26
ジャーナル
フリー
症例は60歳代,男性.右肺腺癌Bu(上葉気管支原発)cT2aN2M0, cStage IIIAに対して,術前化学放射線療法を施行した後,右肺上葉管状切除術,ND2a-2を施行した.その後,1年6ヵ月の間に気管支吻合部狭窄に対して,バルーン拡張術を計7回とメタリックステント留置術を施行した.また,右残肺を中心に肺化膿症を2回発症したため,右残肺全摘の適応とした.術中所見では,肺動静脈切離後に,肺癒着剥離面より縦隔からの側副血行によると思われる出血を認めた.また,肺門での主気管支同定が困難であり,ステントが遺残した状態での残肺全摘術を施行した.術後は重篤な合併症なく経過し,現在,初回手術後2年1ヵ月,残肺全摘術後9ヵ月で無再発生存中である.肺化膿症に対する残肺全摘術に関する考察を含め報告する.
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戸矢崎 利也, 山本 恭通, 小阪 真二
2015 年 29 巻 4 号 p.
462-467
発行日: 2015/05/15
公開日: 2015/05/26
ジャーナル
フリー
症例は80歳男性.当院外科で横行結腸癌と胃の消化管間質腫瘍の手術歴がある.手術から4年後の胸部CTで右第4肋間胸骨傍に胸腔に突出する腫瘤を指摘された.CTガイド下針生検にて,αSMA陽性境界悪性の間葉系腫瘍が疑われた.当科で胸壁腫瘍切除術,胸壁胸骨再建術を施行した.右第3~5肋骨,右第6, 7肋軟骨,左第5~7肋軟骨を切除し,胸骨は胸骨角2 cm尾側以下を全て切除し胸壁腫瘍を摘出した.バードメッシュによる胸壁再建施行後,胸骨断端と肋軟骨断端に挿入したキルシュナー鋼線に骨セメントを巻きつけ胸骨再建を施行した.腫瘍の病理診断はデスモイド腫瘍であった.本症例で用いた胸骨再建法は心臓前面の剛性を保つ方法として有用と考えられ報告する.
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五十嵐 知之, 花岡 淳, 大塩 恭彦, 橋本 雅之, 林 一喜, 榎堀 徹
2015 年 29 巻 4 号 p.
468-474
発行日: 2015/05/15
公開日: 2015/05/26
ジャーナル
フリー
症例は34歳,女性.7ヵ月間に4度,月経期間中に気胸を繰り返したため,胸腔鏡下手術を行った.胸腔内を観察し,横隔膜腱中心に数ヵ所の瘻孔が認められたため,すべての瘻孔を含むように横隔膜部分切除を施行した.術後病理検査では,胸腔側の瘻孔周囲には異所性子宮内膜組織が認められなかったが,腹腔側から出血斑(blueberry spot)が観察され,異所性子宮内膜組織を認めた.術後9ヵ月後に右気胸を再発したため,ホルモン療法を開始し,以後は再発を認めていない.経胸腔アプローチによる手術療法のみでは腹腔側の病変まで観察することができないことが,月経随伴性気胸の手術単独療法での再発率が高い原因の一つの可能性であると考えられた.
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横田 圭右, 齋藤 雄史, 佐竹 章, 山川 洋右
2015 年 29 巻 4 号 p.
475-479
発行日: 2015/05/15
公開日: 2015/05/26
ジャーナル
フリー
大血管手術以外の周術期合併症としては非常に稀な脊髄梗塞の1例を経験したので報告する.症例は79歳男性.左上葉肺癌cT2aN2M0の診断にて左肺上葉切除ND2a-2+肺動脈形成+縦隔浸潤部(大動脈前面の縦隔胸膜,軟部組織)合併切除術を施行した.硬膜外麻酔は,術中ヘパリン投与の可能性のため,術直後に留置した.手術室退室後に,両下肢運動障害と乳頭より尾側の知覚障害を確認.硬膜外鎮痛中止も症状改善なく,硬膜外麻酔関連合併症を疑ったが,CTでは脊髄周囲に異常所見を認めなかった.術後7日目に解離性感覚障害が判明,脊髄障害を疑いMRIを施行,Th1~10の広範囲にわたる脊髄梗塞の診断を得た.リハビリテーションとPGE1製剤投与にて独歩可能となり,術後52日目にリハビリテーション目的で転院となった.脊髄梗塞は非常に稀で予測困難だが,術後神経障害発症時に,脊髄梗塞の可能性を念頭に置く必要がある.
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林 祥子, 北見 明彦, 鈴木 浩介, 植松 秀護, 神尾 義人, 鈴木 隆
2015 年 29 巻 4 号 p.
480-484
発行日: 2015/05/15
公開日: 2015/05/26
ジャーナル
フリー
症例は17歳,男性.胸部違和感を主訴に前医を受診した.左自然気胸と診断され胸腔ドレナージが行われた.気漏が持続したため,手術目的に当院へ転院となった.翌日,胸腔鏡下肺部分切除術を施行した.肺尖の嚢胞より気漏を確認し,自動縫合器にて切除した.また,縦隔胸膜に覆われた弾性軟の腫瘤様組織を認めた.胸腺左葉から明らかに突出する形態を呈し,異常と判断した.胸腺腫等の腫瘍性病巣の可能性も完全には否定できないため,診断目的に腫瘤および胸腺左葉の一部を切除した.この組織は胸腺左葉に連続しその境界は不明瞭であった.術後の病理所見は均一な正常胸腺構造を呈した事と,形態学的変化を基に胸腺過形成と診断された.胸腺の一部のみが腫瘤状変化を呈する過形成は比較的稀であるので,若干の文献的考察を加え報告する.
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半田 良憲, 原田 洋明, 北原 良洋, 倉岡 和矢, 山下 芳典
2015 年 29 巻 4 号 p.
485-490
発行日: 2015/05/15
公開日: 2015/05/26
ジャーナル
フリー
症例は55歳女性.健診で胸部異常陰影を指摘され,精査加療目的で当院に紹介受診となった.胸部CT検査にて左肺S6に10 mm大,右肺S10に8 mm大,左肺S10に5 mm大の境界明瞭で内部均一な円形結節影が認められたが,3ヵ月後にいずれも軽度縮小傾向を示したため炎症性変化と判断し経過観察とした.その後それらは性状に大きな変化なく経過したが,初診時から2年目に左肺S6の結節影が増大し,またこの部位にのみFDG-PETで軽度異常集積も認められた.悪性腫瘍の可能性も否定しきれなかったためその腫瘤に対して胸腔鏡下肺部分切除を施行したところ,38歳時に切除された子宮筋腫の組織像と類似しており,良性転移性肺平滑筋腫と診断された.良性転移性肺平滑筋腫は比較的まれな肺腫瘍性病変であり,一過性の消長という特徴的な所見を呈した症例と考えられたため文献的考察を加えて報告する.
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岩田 輝男, 竹中 賢, 岡 壮一, 宗 知子, 浦本 秀隆, 田中 文啓
2015 年 29 巻 4 号 p.
491-494
発行日: 2015/05/15
公開日: 2015/05/26
ジャーナル
フリー
右上葉支入口部浸潤進行肺癌と,炎症性気道狭窄のため萎縮した中葉を上中葉管状切除術により一期的に切除した症例を経験したので報告する.症例は74歳,男性.2011年3月,肝細胞癌術後8年目のCTにて右上葉肺門部に52×37 mm大の腫瘍を認め,肺癌の肺動脈上幹浸潤が疑われた.経気管支肺生検施行するも確定診断に至らず.また,中葉気管支は炎症性と考えられる著明な狭窄を認めた.臨床病期はT2bN0M0, IIAで上中葉管状切除施行.右主気管支―中間気管支幹末梢吻合再建の後,有茎傍心膜脂肪織にて被覆.肺靭帯切離し吻合部の緊張緩和をはかった.最終病理は小細胞肺癌,G4で肺門周囲脂肪織への浸潤,#11sリンパ節転移を認め,病理病期はT3N1M0, III A.術後補助化学療法としてCDDP/CPT-11を4コース施行.以後外来にて術後3年3ヵ月無再発生存中である.
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杉浦 八十生, 児玉 三彦, 橋詰 寿律, 加勢田 靜, 根本 悦夫
2015 年 29 巻 4 号 p.
495-500
発行日: 2015/05/15
公開日: 2015/05/26
ジャーナル
フリー
背景:集中治療の際に,廃用症候群とは異なり軸索障害による弛緩性麻痺を生じる病態をcritical illness polyneuropathy(CIP)という.今回,間質性肺炎合併肺癌術後,集中治療を要しCIPを発症した症例を経験した.症例:症例は70歳,男性.既往歴は間質性肺炎,肺気腫,関節リウマチ,糖尿病,高血圧があった.腫瘍径7 cm,扁平上皮癌,cT2bN0M0, cStage II Aに対して右肺下葉切除術を施行した.術後,間質性肺炎急性増悪,MRSA肺炎・CMV肺炎を発症し2度の人工呼吸器管理を要した.術後48日目に人工呼吸器離脱も,筋力低下が遷延し電気生理学的検査で運動・感覚神経伝導速度の低下を認めCIPと診断した.結語:間質性肺炎合併肺癌に対する周術期死亡率は未だに高く,急性増悪後の集中治療の際にはCIPという疾患が救命後のADLを低下させうることを念頭に入れるべきである.
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蒲原 涼太郎, 石井 光寿, 谷口 大輔, 中村 昭博
2015 年 29 巻 4 号 p.
501-504
発行日: 2015/05/15
公開日: 2015/05/26
ジャーナル
フリー
症例は76歳,男性.他疾患精査中の胸部X線単純写真で異常陰影を指摘された.胸部CTおよびMRIにおいて,肺と縦隔に広く接する6 cm大の腫瘤影を認めた.extrapleural sign陽性であり,微細石灰化,脂肪成分の存在が示唆された.縦隔奇形腫を疑い手術を行ったところ,腫瘤は右下葉から発生し肺外に突出するように発育する腫瘍性病変であった.下肺静脈に近接していたため部分切除は困難と判断し,右下葉切除術を行った.術後の病理診断により肺過誤腫の診断を得た.肺過誤腫は肺良性腫瘍の中で最も頻度が高く,比較的なじみのある疾患である.今回,特異的な発育形態と局在から,術前に縦隔腫瘍と診断された症例を経験した.稀ではあるものの類似の報告例もみられ,教訓的であると思われたので,文献的考察を加えて報告する.
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神津 吉基, 舘 良輔, 二川 俊郎, 泉 浩, 鈴木 健司
2015 年 29 巻 4 号 p.
505-511
発行日: 2015/05/15
公開日: 2015/05/26
ジャーナル
フリー
症例は28歳女性,妊娠24週.呼吸困難と背部痛を主訴に当院へ救急搬送された.来院時ショックバイタルを呈しており,貧血を認めた.胸部CTで右緊張性血胸と圧排性無気肺を認め,同側肺野に流入流出血管を伴った造影効果を有する結節が2個指摘された.両側頬部と手指に血管腫を認め,頻回の鼻出血の既往を有していた.以上から,遺伝性出血性毛細血管拡張症に伴う肺動静脈瘻が妊娠を契機に破裂し,緊張性血胸をきたしたと診断し緊急手術に移行した.胸腔内血腫を除去後に拍動性出血を伴う結節を右S10臓側胸膜表面上に認め,これを部分切除した.他に2病変を認め,計3病変を部分切除した.術後経過は良好で,妊娠37週に帝王切開により分娩,現在母子ともに健康である.妊娠中に緊張性血胸をきたした破裂肺動静脈瘻の治療に関しては,外科切除が安全,確実な治療であると考えられた.妊婦の肺動静脈瘻の治療方針に関する考察を含め報告する.
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張 性洙, 中野 貴之, 岡本 卓
2015 年 29 巻 4 号 p.
512-516
発行日: 2015/05/15
公開日: 2015/05/26
ジャーナル
フリー
症例は59歳男性.6年前に肺線維症に伴う喀血に対する気管支動脈塞栓術(BAE)施行歴あり.今回,右肺下葉肺癌に対して胸腔鏡下右肺下葉切除術とリンパ節郭清を施行した.術後20日目に気管支虚血による気管支胸膜瘻を合併した.有茎性大網充填術を施行するも瘻孔閉鎖に至らないまま間質性肺炎急性増悪により永眠された.BAE既往のある患者に対するリンパ節郭清を伴う肺葉切除術は気管支虚血のリスクが高くなることが示唆された.
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大渕 俊朗, 諸鹿 俊彦, 山下 眞一, 岩﨑 昭憲
2015 年 29 巻 4 号 p.
517-520
発行日: 2015/05/15
公開日: 2015/05/26
ジャーナル
フリー
胸膜肺全摘を施行せず,2年間無再発生存中の限局性悪性胸膜中皮腫の1例を経験したので報告する.本疾患は,病理学的にはびまん性悪性胸膜中皮腫と全く同じ所見を持つものの,生物学的悪性度が異なる稀な疾患である.症例は元建設業の70代男性.他疾患で受診した際,胸部レントゲンで左上肺野に約10 cm大の腫瘤を指摘.経皮的穿刺細胞診でclass V腺癌と診断された.胸壁合併左肺上葉切除を施行.病理学的に二相型悪性胸膜中皮腫と診断された.追加の治療は施行せず術後2年余経過したが,CTやPETで再発所見なく現在も生存中である.本疾患は術前から「限局性」と診断することが困難であり,術式選択が最大の問題となる.症例を集積し,診断方法を確立する必要がある.
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大原 信福, 岩澤 卓, 足立 史朗, 小川 和彦
2015 年 29 巻 4 号 p.
521-526
発行日: 2015/05/15
公開日: 2015/05/26
ジャーナル
フリー
症例は69歳男性.健康診断で左肺野の異常陰影を指摘された.胸部CTで左胸腔内に石灰化を伴う80×65 mmの腫瘤影を認めCTガイド下針生検で骨肉腫と診断された.腫瘤は浸潤性に乏しく肋骨との境界も保たれていたため胸壁または肺を原発とする骨外性骨肉腫を疑い外科的切除を行った.後側方開胸で,腫瘍と強く癒着していた左肺および第3~6肋骨とともに腫瘍を摘出した.腫瘍は肉眼的には境界明瞭,充実性で割面は灰白調,組織学的には紡錘形の腫瘍細胞の増殖と,腫瘍細胞から成る軟骨および骨組織の形成が認められた.肺や肋骨との連続性は認められず,免疫染色で中皮細胞に特異的なマーカーの発現も認められなかったため胸壁軟部組織を原発とする骨外性骨肉腫と診断した.術後補助治療は行わずに経過観察中,1年後のCTで左胸腔内に播種性転移再発を疑う所見を認めたためTomotherapyを行い,その1年後の時点では再燃は認めていない.
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高梨 裕典, 小山 真, 高橋 毅, 閨谷 洋
2015 年 29 巻 4 号 p.
527-530
発行日: 2015/05/15
公開日: 2015/05/26
ジャーナル
フリー
我々は,気胸患者に対する50%ブドウ糖液を用いた胸膜癒着術により脱水を来し,虚血性腸炎に至った症例を経験したので報告する.症例は97歳男性,呼吸苦を主訴に救急外来を受診し,胸部単純X線で右気胸を認めドレナージを実施した.5日間のドレナージで気漏が停止せず,50%ブドウ糖液400 mlを注入し胸膜癒着術を施行した.注入から翌日までの10時間で胸腔ドレーンより約1960 mlの排液を認め,脱水による腎前性腎不全を来した.補液を実施したが同日に下血を来し,虚血性腸炎を発症した.虚血性腸炎は絶食により軽快し,気漏は癒着術後6日目に停止した.高張ブドウ糖液に接触した胸膜から滲出性ないし浸透圧性に大量の胸水が誘導され,脱水を来し虚血性腸炎の契機になったと考えられた.これまで本法により虚血性腸炎を来した報告は認めないが,50%ブドウ糖液の使用報告は少なく,今後注意すべき合併症の1つであると考えられた.
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戸次 宣史, 加藤 雅人, 松本 耕太郎
2015 年 29 巻 4 号 p.
531-535
発行日: 2015/05/15
公開日: 2015/05/26
ジャーナル
フリー
気管支原性嚢胞の多くは中縦隔に発生し,前縦隔の胸腺内に発生することは極めて稀である.我々は胸腺内に発生した気管支原性嚢胞の1例を経験したので報告する.症例は53歳女性.検診目的に撮影された胸部CT検査で前縦隔に2 cm大の腫瘍を指摘され,当院を受診した.画像所見では胸腺内に2 cm大の嚢胞性病変を認めたが,嚢胞液が粘調な成分であったため,胸腺嚢胞よりは気管支原性嚢胞が疑われ,胸腔鏡下胸腺摘出術を施行した.組織学的検査の結果,嚢胞の内腔を被覆する上皮が線毛円柱上皮であったため,気管支原性嚢胞と診断した.前縦隔の嚢胞性腫瘤においては,稀ではあるが気管支原性嚢胞も鑑別にあげる必要があると考えられた.
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井上 卓哉, 木下 裕康, 大和田 有紀, 中島 由貴, 岡本 知恵, 浦本 秀隆
2015 年 29 巻 4 号 p.
536-539
発行日: 2015/05/15
公開日: 2015/05/26
ジャーナル
フリー
症例は70代男性.直腸癌,両側転移性肺腫瘍術後経過観察中,右転移性肺腫瘍を疑う結節影が出現し,手術を行った.開胸創を中心に再手術による広範な癒着を認めた.腫瘍摘出後に,剥離の際に生じた気瘻に対し,タコシール
®を使用した.貼付約20分後に血圧低下を認めた.エフェドリン,フェニレフリンの効果に乏しく顔面および四肢紅潮を伴い,タコシール
®によるアナフィラキシーと判断した.直ちに除去し温生食で洗浄すると,約5分後に血圧は回復した.タコシール
®によるアナフィラキシーショックをきたした極めて稀な1例を経験したので報告する.
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木下 裕康, 中島 由貴, 井上 卓哉, 秋山 博彦, 山田 壮亮, 浦本 秀隆
2015 年 29 巻 4 号 p.
540-544
発行日: 2015/05/15
公開日: 2015/05/26
ジャーナル
フリー
症例は67歳男性.CTで左肺上葉S3に結節影を指摘され,精査の結果,臨床病期cT2aN0M0 cStage IBの肺癌(扁平上皮癌)と診断.左肺上葉切除術を施行(sT2aN0M0 sStage IB).病理組織結果は低分化扁平上皮癌(pT2aN0M0 pStage IB).術後76日目に発熱と左胸水貯留あり入院.膿胸が否定できず手術を施行.術中所見は胸膜播種であった.1,2回目の手術前の血清G-CSFはそれぞれ22.8,126 pg/mlであった.G-CSFの免疫組織化学染色は1回目の手術検体では陰性であったが,2回目の手術検体において腫瘍細胞が染色された.したがって完全切除後の術後再発時に顕在化したG-CSF産生腫瘍と考えた.
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