日本呼吸器外科学会雑誌
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30 巻 , 5 号
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巻頭言
原著
  • 高橋 伸政, 澤端 章好, 川村 雅文, 大塚 崇, 堀尾 裕俊, 坂口 浩三, 中山 光男, 吉谷 克雄, 千田 雅之, 星 永進, 関越 ...
    2016 年 30 巻 5 号 p. 526-533
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    葉切非耐用症例におけるI期非小細胞肺癌症例(NSCLC)の局所療法は,放射線療法と外科的切除に大別される.定位放射線照射(SBRT)の多施設前向き試験(JCOG0403)では,3年全生存率76.0%,3年無増悪生存率69.0%,Grade 3以上の有害事象発生率は9.0%と報告されている.一方,葉切非耐用I期NSCLC症例の縮小肺切除の前向きのエビィデンスの集積はなく,多施設研究で検討した.NSCLCは32例登録され,男女比は30:2,年齢(中央値)74歳(61-85歳)で,Grade 3の合併症2例(6.3%)を認めたが,手術死亡はなかった.切除断端再発は1例(断端局所制御率96.9%),同一胸腔内再発は8例(局所再発制御率75.0%),3年生存率は79.0%,3年無増悪生存率は75.9%であった.葉切非耐用症例患者における縮小肺切除は安全で良好な治療成績が期待でき,SBRTと対比しうる.
  • 石黒 太志, 谷口 哲郎, 川口 晃司, 福井 高幸, 福本 紘一, 中村 彰太, 横井 香平
    2016 年 30 巻 5 号 p. 534-539
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    Thopaz吸引器(Thopaz™)は,胸腔ドレナージにおいてエアリーク量を数量的に測定できるデジタルモニタリング式持続吸引器である.今回,肺切除術後のエアリーク量について,Thopaz™による定量的評価と従来型持続吸引器による視覚での定性的評価を前向きに比較した.【方法】対象は2014年7月から11月までの肺切除症例で,エアリーク量を1日2回,従来型では4段階に目視で評価し,同時にThopaz™でも測定した.【結果】従来型による4段階のエアリーク量の程度は,Thopaz™ではそれぞれ平均4,20,63,662 mL/minであった.また,従来型でドレーン抜去が可能と判断した時点のエアリーク量は,Thopaz™では全例30 mL/min以下であった.【結論】本研究は,エアリーク量の従来型での定性的評価とThopaz™による定量的評価の相関を明示し,Thopaz™の臨床導入に役立つと考える.
  • 安川 元章, 川口 剛史, 河合 紀和, 東条 尚
    2016 年 30 巻 5 号 p. 540-544
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    膵癌は予後不良で局所再発や肝転移を来たしやすく,肺転移が発見された時点で手術適応であることはほとんどない.このため膵癌肺転移切除の報告例は多くない.今回,当院における膵癌肺転移に対する肺切除例について検討した.2004年1月から2014年12月までに当院において手術を施行した膵癌肺転移9例を対象とした.膵癌初回治療後から肺転移切除までの期間は平均47.9ヵ月(13-74ヵ月)であった.全症例での肺切除後観察中央期間は14ヵ月であった.肺切除後,9例中3例に新たな再発を認めたが,残りの6例は無再発生存中である.原発巣が制御され,肺転移巣が完全切除可能であれば,外科的切除は選択肢のひとつとなり得る.膵癌術後肺転移までの期間が予後因子となる可能性が示唆された.
症例
  • 木村 賢司, 亀山 耕太郎, 中島 尊, 奥村 典仁, 松岡 智章, 高橋 鮎子
    2016 年 30 巻 5 号 p. 545-549
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,女性.検診の胸部X線で胸部異常影を指摘された.胸部CTで前縦隔に4 cm大の腫瘤を認め,PET/CTでFDG軽度集積を認め胸腺腫を疑った.胸骨正中切開拡大胸腺胸腺腫瘍摘出術を施行し胸腺腫(Type B1)と診断された.術翌日にドレーン抜去,その後の経過は良好であったが,術後4日目に胸骨正中切開創の頭側頚部に発赤・疼痛を伴う腫脹を認めた.炎症反応上昇と共に穿刺液の細菌検査でG(+)coccusを検出した.胸部CTで頚部腫脹部と胸骨裏面は連続しており術後縦隔炎と診断した.腫脹部に10 mmの横切開を置き開放ドレナージを行い,同部よりVAC療法(持続陰圧療法)を行った.炎症反応改善,細菌検査陰性を確認し,治療開始14日目でVAC療法を終了した.横切開は自然閉鎖し,術後26日目に退院した.小開胸創から行ったVAC療法が奏効し胸骨正中切開創の再開創を回避できた術後縦隔炎の一例と思われた.
  • 水野 潔道, 卜部 憲和, 植松 秀護
    2016 年 30 巻 5 号 p. 550-554
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    症例は69歳女性.5年前に15 mmの前縦隔腫瘍を指摘され経過観察となっていた.前胸部痛と咳嗽を主訴に受診し,胸部CTでは腫瘍径は31 mmと増大,周囲の炎症所見を認めた.2週間後の胸部CTでは腫瘍は19 mmへ縮小したが炎症を引き起こした原因は不明であり今後も再燃する可能性を考慮し手術方針とした.胸骨正中切開による胸腺右葉切除術を施行.病理組織所見では内部は壊死組織であったが辺縁に異型細胞を認め胸腺癌の診断であった.Surgical marginは陰性であったため追加治療なく経過観察中である.胸腺癌が縮小傾向を示した珍しい経過を経験した.当初は感染を合併した囊胞性疾患を疑ったが今回のようなケースもあり安易に経過観察せず積極的に手術を勧める必要があると考えられた.
  • 中島 由貴, 秋山 博彦, 木下 裕康, 飯島 慶仁, 松本 卓子, 浦本 秀隆
    2016 年 30 巻 5 号 p. 555-560
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    近年,悪性胸膜中皮腫に対する根治療法の一環としての外科的治療に,胸膜切除/肺剥皮術(Pleurectomy/decortication;P/D)が注目されつつある.我々は20代女性で臓側胸膜にほとんど肉眼病変を認めない悪性胸膜中皮腫に対するextended P/Dを経験した.症例は25歳,女性で石綿暴露歴はない.1年前に左胸痛を自覚したが,胸膜炎の疑いで抗生剤を処方され症状は軽快した.2ヵ月前に症状が再燃,左胸水貯留を認めた.胸膜生検から上皮型悪性胸膜中皮腫(cT1bN0M0 Stage Ib)と診断された.手術は左extended P/Dを行った.臓側胸膜に肉眼的病変はほとんど認めなかったが,肉眼的完全切除(全臓側胸膜切除)は可能であった.術中出血,肺瘻も許容範囲で,術後合併症なく術後第7病日に退院した.術直後のPSは術前と変化なく,第32病日より抗癌剤治療を開始した.
  • 門松 由佳, 中島 潔, 上野 陽史, 内山 美佳, 森 正一
    2016 年 30 巻 5 号 p. 561-567
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    上大静脈と腕頭静脈の合併切除と再建は腫瘍の完全切除のために一定の頻度で行われている.施行例が少なく周術期および術後の管理法は定まっておらず,現状では各施設が経験に基づいて抗凝固療法を行っている.症例は60歳女性で,縦隔腫瘍に対して人工血管置換術後11日目にグラフト内血栓による肺梗塞を発症した.上半身や顔面浮腫は認めなかったが,呼吸苦精査のため行った造影CTで造影剤欠損部を認めた.術後病理診断は濾胞性リンパ腫であった.グラフト閉塞や狭窄による顔面浮腫の報告はこれまで散見されるものの肺梗塞を発症した症例は極めて稀である.経過より肺塞栓症発症の一因として不十分な抗凝固療法が考えられた.人工血管置換術後の肺梗塞の発症率は極めて低いと考えられるが,発症すれば致死的である.早期のグラフト内血栓生成を抑制するためには術後早期から十分な抗凝固療法を開始することと,離床前のグラフト内評価が勧められる.
  • 桧垣 直純, 中根 茂
    2016 年 30 巻 5 号 p. 568-572
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,女性.胸部異常陰影を指摘され,胸部CTで右上葉に境界明瞭な一部空洞を伴う3 cm大の腫瘤影を認めた.気管支鏡下生検で確定診断後,手術(初回:右上葉切除術)を施行し,病理学的に乳頭型腺癌(pT2aN0M0,Stage IB)と診断された.初回手術術後2年11ヵ月後に左S8に結節影が出現し徐々に増大,同時に左S1+2にも増大傾向の小結節を認めた.肺内転移と考えたが,組織学的診断のため,初回手術術後3年7ヵ月後に手術(2回目:左下葉S8および左上葉S1+2部分切除術)を施行した.病理学的に,左下葉S8は肺内転移を伴う小細胞癌,左上葉S1+2は扁平上皮癌であった.さらに,初回手術術後4年4ヵ月後には右下葉に出現した結節に対して手術(3回目:右下葉S6部分切除術)を施行し,病理学的に扁平上皮癌で,臨床的に第4癌と考えた.最終手術術後2年2ヵ月の時点で再発を認めていない.
  • 中島 由貴, 秋山 博彦, 木下 裕康, 飯島 慶仁, 小泉 潔, 浦本 秀隆
    2016 年 30 巻 5 号 p. 573-578
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    放射線肺臓炎を来たした肺を手術時にどのように扱うかを論じた報告は極めて少ない.症例は65歳男性.胸腺癌・正岡分類IV期の診断で化学放射線療法と脳転移に対してγナイフを施行した.原発巣縮小,脳転移は消失したため手術を施行した.胸腺と共に腫瘍を摘出,壁側胸膜と左肺上葉を部分合併切除した.その際放射線肺臓炎領域より気瘻を認め縫合閉鎖した.術後90日目に左胸水の減少あり左胸腔ドレーンを挿入した所,気瘻を認めた.術後120日目に手術施行,放射線肺臓炎領域に瘻孔を認め肋間筋にて被覆した.術後3年無再発生存中であるが,経過中2回,発熱・呼吸困難感と共に左胸水が減少するエピソードがあり未だに瘻孔は閉鎖していないと考えられる.放射線肺臓炎領域は血流の低下により創傷治癒機転と免疫が著しく低下していると考えられ,放射線肺臓炎領域からの肺瘻は入念な修復が必要であり,筋弁や心膜脂肪織での被覆が望ましいと考えた.
  • 大和 靖, 富樫 賢一, 篠原 博彦
    2016 年 30 巻 5 号 p. 579-583
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    症例は50歳代,男性.人間ドックで発見された,左上葉の3.9 cm大の腺癌に対し,完全鏡視下に左上葉切除とリンパ節郭清を行った.術後は順調に経過したが,第8病日の朝に,右中大脳動脈領域の広範な脳梗塞を発症した.胸部造影CTで左上肺静脈断端に血栓形成を認め,この血栓による脳梗塞が考えられた.エダラボンと濃グリセリン液による治療を開始し,ヘパリンの持続投与とワーファリンの内服を開始したが,麻痺は残存し,リハビリ目的で転院となった.左上葉切除後の上肺静脈断端に,血栓が出来やすいことは知られているが,それを予防する手段は今のところない.血栓の早期発見には,造影CTが有効であり,特に左上葉切除では,肺静脈断端血栓形成の可能性を考慮した術後管理,経過観察が必要である.
  • 井上 貴之, 村上 順一, 佐野 史歩, 林 雅太郎, 上田 和弘, 濱野 公一
    2016 年 30 巻 5 号 p. 584-588
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    小細胞肺癌の化学放射線療法施行後の被照射肺に発生した腺癌の1例を経験したので報告する.症例は57歳男性.縦隔型小細胞癌に対して化学放射線療法により完全寛解が得られたが,定期検診のCTで右肺上葉の被照射野に放射線肺臓炎を認めた.その陰影中に,器質化巣を疑う陰影が出現し1年間の経過観察後に47 mmに増大した.CTガイド下針生検にて腺癌と診断され,右上葉切除術が施行された.注意深い経過観察にもかかわらず,放射線肺臓炎の陰影に紛れて増大した,奇抜な像を呈した第2肺癌を経験したので注意喚起の目的で提示する.
  • 飯島 慶仁, 秋山 博彦, 福原 光朗, 中島 由貴, 木下 裕康, 浦本 秀隆
    2016 年 30 巻 5 号 p. 589-593
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    症例は76歳男性.胸部異常陰影を指摘され,精査の結果,右上葉肺腺癌cT1bN0M0, Stage IAの診断で手術目的に当科紹介となった.術前胸部CT検査で奇静脈裂と奇静脈葉が指摘された.辺縁不整な29 mmの腫瘍をS1bに認めた.腫瘍は奇静脈裂に接していた.手術時,腫瘍の奇静脈間膜への浸潤は認めず,奇静脈葉は奇静脈間膜と縦隔胸膜からなる囊状構造に収まり容易に尾側に引き抜くことができた.上縦隔のリンパ節郭清は奇静脈間膜を切開し,更に上縦隔胸膜を切開することで通常の上縦隔郭清が可能であった.奇静脈葉を伴う肺癌の手術報告は極めて少なく若干の文献的考察を加え報告する.
  • 親松 裕典, 大畑 賀央, 成田 久仁夫
    2016 年 30 巻 5 号 p. 594-597
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    背景.脊髄梗塞の発症は稀であるが,硬膜外麻酔併用全身麻酔手術後に発症した報告が散見される.症例.70歳代,男性.右上葉の肺癌に対して硬膜外麻酔併用全身麻酔下で右S2区域切除を行った.術後第1病日から右下肢筋力低下,右半身の乳嘴から下肢までの知覚低下がみられ,持続硬膜外麻酔薬注入の中断後も継続した.Th6-8の不完全型Brown-Sequard症候群がみられ,MRIでTh6-8に脊髄梗塞を認めた.硬膜外カテーテルを抜去し,抗凝固療法,抗浮腫薬点滴,リハビリ治療を行うことで膀胱直腸障害は軽快し,下肢筋力は歩行可能にまで改善した.結論.脊髄梗塞は麻酔や手術に起因し得る病態であるため,高齢,動脈硬化,糖尿病,脂質異常症,喫煙,脳梗塞,冠動脈疾患,癌等の危険因子をもつ患者では注意が必要である.また硬膜外麻酔も発症の一因となる可能性があるため,その適応にも慎重になるべきと考えられる.
  • 西田 智喜, 住友 伸一, 石川 将史, 今村 直人, 峯浦 一貴, 尾田 博美
    2016 年 30 巻 5 号 p. 598-602
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,男性.偶発的に発見された1A期肺癌に対して右肺下葉切除術,リンパ節郭清を施行した.特に誤嚥の徴候はなかったが,術後6日目より肺炎をきたし,抗生剤加療を開始した.しかし難治性であったことから,耳鼻科診察を依頼したところ,嚥下障害が判明した.もともと幽門側胃切除術後の逆流性食道炎が既往にあり,術後にその症状も増悪していたことから,化学性の肺障害を合併して難治性となり,気道保護のために気管切開術を施行した.しかしカフ脇からの垂れ込みが続くため,肺炎の改善が見込めず,最終的に喉頭摘出術を施行してリハビリ病院へ転院となった.胃癌術後の逆流性食道炎は術後難治性肺炎のリスクファクターであると考えられた.
  • 松山 孝昭, 服部 良信, 栃井 大輔
    2016 年 30 巻 5 号 p. 603-607
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    Bochdalek孔ヘルニアは,腹腔内臓器が胸腔内に脱出し,新生児期に重篤な症状でほとんどが発症する.しかし稀に無症状で経過し,成人になって発見される症例がある.今回我々は,完全胸腔鏡下のみで修復し得た成人型Bochdalek孔ヘルニアを経験した.症例は双胎分娩の既往のある38歳の女性.左胸部の違和感や痛みを自覚し,2012年9月当院を受診した.胸部単純X線,胸部CTで左横隔膜ヘルニアと診断した.11月分離肺換気,右半側臥位で完全胸腔鏡下に手術を施行した.成人型Bochdalek孔ヘルニアであり,ヘルニア門を2-0吸収糸の結節縫合で閉鎖し,Gore-Tex Dual Meshで補強した.第8病日退院し,術後2年半再発なく経過良好である.
  • 安部 美幸, 小副川 敦, 内匠 陽平, 橋本 崇史, 宮脇 美千代, 杉尾 賢二
    2016 年 30 巻 5 号 p. 608-614
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    症例は80歳女性.健康診断にて胸部異常陰影を指摘された.原発性肺癌と診断され,右上葉切除術+リンパ節郭清2a-2群を施行した.術後4日目より喘鳴が出現し,CTにて中葉支の浮腫が指摘されステロイドと抗菌薬投与を開始した.術後6日目に更なる呼吸状態の悪化と,著明な気道浮腫による右主気管支の閉塞を認めたため,気管内挿管・人工呼吸管理とした.ステロイドと利尿剤にて気道浮腫は改善し,術後8日目に挿管チューブを抜管した.以後ステロイド,利尿剤の内服加療を行い症状の改善を得た.本症例は気管支喘息や間質性肺炎などの基礎疾患はなく,心不全も否定的であった.浮腫は右主気管支に著明で,リンパ節郭清に伴うリンパ浮腫と考えられた.高齢かつ低身長に,循環血漿量増加が加わったことが,症状出現を助長したと考えた.術後のリンパ浮腫は稀な合併症であり,発生時期や持続時間も様々であるが,適切な治療により改善する病態である.
  • 竹内 千枝, 平田 知己, 吉野 直之, 細根 勝, 新井 悟, 臼田 実男
    2016 年 30 巻 5 号 p. 615-620
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    症例は66歳男性,胸痛に対する精査中に心尖部近傍の腫瘤影を指摘された.胸部CTで,左室に接し,淡い造影効果を伴う被膜に包まれた38×32 mm大の低濃度腫瘤を認め,MRIでは,内部はT1低信号・T2高信号であった.囊胞性病変と診断,経過観察としたが,緩徐な増大傾向を示したため,胸腔鏡下囊胞切除を施行した.胸腔鏡による観察では腫瘤の局在が確認出来ず,心囊外からの術中超音波検査により心囊内に発生した囊胞と診断した.心囊切開後,心尖部心外膜に固着した囊胞を可及的に切除した.病理組織学的には,多列線毛上皮に覆われた平滑筋や固有気管支腺を欠いた囊胞であり,心外膜に発生した気管支原性囊胞と最終診断した.
  • 古賀 教将, 森 毅, 柴田 英克, 池田 公英, 白石 健治, 鈴木 実
    2016 年 30 巻 5 号 p. 621-627
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    症例1:68歳男性.左上葉肺扁平上皮癌に対して,胸腔鏡補助下左上葉切除を施行.術後2日目に左側腹部痛が出現し,精査の造影CTを行ったところ左腎梗塞の診断となり,左上肺静脈断端内に血栓を認めた.症例2:71歳男性.左下葉扁平上皮癌疑いに対して行った胸腔鏡補助下左下葉切除術後1日目に右上下肢麻痺と失語を発症.左中大脳動脈の血栓塞栓による脳梗塞の診断となった.術後5日目急激に呼吸状態が悪化し,原因精査のため造影CTを行ったところ,左下肺静脈断端内に血栓を認めた.どちらの症例も心房細動をはじめその他の塞栓源は指摘されなかった.また術後4時間後から翌日までヘパリンを投与していた.左上葉切除後の左上肺静脈断端内血栓については複数の報告があり,近年呼吸器外科領域において注目されている.一方で腎梗塞の発症や,左下肺静脈断端内血栓は非常に稀であり,今回当科で経験したそれぞれの症例について報告する.
  • 瀬戸 克年, 黒田 浩章, 水野 鉄也, 坂倉 範昭, 坂尾 幸則
    2016 年 30 巻 5 号 p. 628-632
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    背景:食道癌術後患者は胸腔内や縦隔の強固な癒着が多く,肺切除を施行する際には癒着剥離に伴う出血や胃管損傷のリスク軽減を考慮した術式や戦略が必要である.症例:56歳,男性.食道癌術前CTで右上葉の異常影を指摘され,術後経過観察中に増大傾向を認めた.FDG-PETでもSUV max 10.25の集積を認めた.画像上原発性肺癌を強く疑ったが転移性肺腫瘍も否定できず,診断・治療目的に胸腔鏡下手術を施行した.手術時の胸腔内所見は,腫瘍と無関係に再建胃管と肺(臓側胸膜)が強固に癒着していた.再建胃管の損傷を避けるべく,臓側胸膜を再建胃側に残して癒着を剥離して部分切除を施行し,腺癌の診断を得た後に肺葉切除を完遂した.結論:食道癌術後患者の胸腔内癒着症例に対し,再建胃管損傷を避けるため,再建胃管に肺の臓側胸膜を付着させて剥離を施行することにより胃管損傷を生じることなく完全胸腔鏡下肺葉切除が可能であった.
  • 伏見 卓郎, 宮本 耕吉, 川井 治之, 能勢 聡一郎, 片岡 正文
    2016 年 30 巻 5 号 p. 633-638
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍にサルコイド反応によるリンパ節腫大を認めることがあり,転移・再発との鑑別を要する.肺癌に合併したサルコイド反応の3例について報告する.症例1は65歳男性.右下葉S9のすりガラス陰影と縦隔リンパ節腫大を認め,右下葉切除術施行.症例2は68歳女性.右上葉S3のすりガラス陰影と縦隔リンパ節腫大を認め,右上葉切除術施行.症例1・2ともに高分化腺癌(T1aN0M0)で縦隔リンパ節に類上皮肉芽腫を認めた.症例3は51歳男性.右上葉S2の低分化扁平上皮癌(T3N0M0)術後経過観察中に縦隔リンパ節腫大を認めた.右鎖骨上窩リンパ節生検により類上皮肉芽腫を認めた.3例ともサルコイドーシスを示唆する他臓器病変や結核などの感染症を認めずサルコイド反応と考えた.悪性腫瘍にサルコイド反応によるリンパ節腫大を認める場合がある.転移・再発との鑑別のために組織診断を行うことが望ましい.
  • 恒松 雅, 仲田 健男, 矢部 三男, 市川 晶博, 高木 正道, 秋葉 直志
    2016 年 30 巻 5 号 p. 639-644
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    症例は68歳男性.2009年4月,近医にて右肺S6の腫瘤影を指摘され,繰り返し気管支鏡検査を施行されるも,診断に至らず経過観察されていた.2014年6月,血痰が出現し前医の喀痰培養検査にてMycobacterium aviumが検出された.同年8月,喀血,発熱が出現し治療目的にて当院へ転院した.胸部CTにて右肺下葉に空洞を伴う感染性荒蕪肺を認め,選択的気管支動脈塞栓術および抗生剤加療にて軽快退院した.2015年2月,荒蕪肺に対し右中下葉切除術を施行した.病理組織学的検査にて肺放線菌症と診断した.術後,アモキシシリンを6ヵ月投与し,術後9ヵ月の現在,経過は良好である.肺放線菌症は比較的稀な疾患であり,今回,長期経過により荒蕪肺へ移行した右肺放線菌症の手術例を経験したため報告する.
  • 石川 浩之, 大政 貢, 田中 里奈, 藤本 遼, 宮田 亮, 青木 稔
    2016 年 30 巻 5 号 p. 645-649
    発行日: 2016/07/15
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    背景:気管支閉鎖症は,多くは先天性に気管支が閉鎖する比較的まれな疾患であり,自然気胸を契機に発見されることは極めてまれである.症例は17歳,女性.突然の左胸痛が出現し,左自然気胸と診断されたため,当院紹介となった.胸部CTでS6領域にブラおよび結節陰影を認め,B6気管支は描出されなかった.Mucoid impactionを伴った気管支閉鎖症を疑い,気管支鏡にて左B6の閉鎖を確認した.肺瘻遷延のため胸腔鏡手術を施行.肺漏はS6のブラから認めたが,S6は全体的に気腫化し,かつ区域間は明瞭であったためS6区域切除を施行した.結語:気胸を発症した気管支閉鎖症に対して胸腔鏡下にブラを含めた区域切除を施行した.同様の症例には区域切除が勧められる.
手技の工夫
Letter to the Editor
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