日本呼吸器外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-4158
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30 巻 , 7 号
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巻頭言
原著
  • 橋本 昌樹, 近藤 展行, 中道 徹, 門司 祥子, 黒田 鮎美, 多久和 輝尚, 松本 成司, 長谷川 誠紀
    2016 年 30 巻 7 号 p. 794-799
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー

    背景:当科が経験した術中に状態が急変した症例の検討を行った.対象:当院では術中に危機的状況に陥った時に麻酔医が「Emergency call(EC)」を発令し,他の手術室スタッフに応援依頼を行う.2007年4月より2015年3月までに当科で施行した全身麻酔手術2640例のうち,ECを必要とした11例の原因とECを回避できた可能性について検討した.結果:全11例の内訳は血圧低下5例,酸素化不良2例,不整脈4例であった.手術室内での死亡例は認めなかった.原因が手術手技によるものが8例,患者因子が3例であった.検討の結果,回避しえた可能性は8例に認めた.6例は手術手技に起因するもので,2例は患者情報や手術内容を術前に他のスタッフと共有しておれば回避できた可能性があった.まとめ:丁寧な手術手技を心がけることと患者情報を手術に関わる全スタッフで共有することが安全に手術を行う上で重要であると思われた.

  • 東郷 威男, 羽隅 透, 星 史彦, 菊池 直彦, 岡田 克典, 齋藤 泰紀
    2016 年 30 巻 7 号 p. 800-805
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー

    50%ブドウ糖液による胸膜癒着術を気胸,術後肺瘻,癌性胸水の症例に対し施行し,その有効性およびドレーン排液量,血糖値変動につき検討したので報告する.胸膜癒着術は胸腔内に50%ブドウ糖液200 ml(PS不良例は100 mlに減量)を投与して行った.対象症例は気胸14例,術後肺瘻11例,癌性胸水4例であった.糖尿病合併例が5例含まれていた.気胸は11例,術後肺瘻は9例で治療効果を認めた.癌性胸水は2例で胸水の制御が可能であった.ドレーン排液量は200 ml投与群より100 ml投与群において少ない傾向があり,100 ml投与群においても治療効果は得られた.糖尿病合併例で治療1時間後に有意な血糖値上昇を認めたが,それに伴う有害事象は認めなかった.以上より本法はドレーン排液過多に伴う体液喪失および血糖値上昇に留意する必要はあるものの認容可能な胸膜癒着術であることが示唆された.

  • 金山 雅俊, 大﨑 敏弘, 西澤 夏將, 中川 誠, 宗 知子, 小舘 満太郎
    2016 年 30 巻 7 号 p. 806-810
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー

    2007年4月から2015年12月までに当院で経験した特発性血気胸14例について検討した.全例で胸腔鏡下に手術を行った.出血部位は全例で肺尖部壁側胸膜の血管を含む索状物からであり,1例は奇静脈近傍の縦隔胸膜の索状物からの出血も認めた.総出血量は平均1,072 mL(300-2,050 mL),2例に輸血を要し,1例はショック症状を呈した.すべての症例で術後3日目までに胸腔ドレーンを抜去し,術後平均在院日数は3.9日(2-7日)であった.特発性血気胸は大量出血によりショック状態を来たすこともある緊急性の高い疾患であるが,他科が初期対応した場合,5例が24時間を過ぎてからの手術になっており,早期手術の必要性を呼吸器外科医が熟知するだけではなく,内科医,救急医などへの啓発も必要である.また,手術の際は出血部位が一ヵ所とは限らないため,胸腔内の詳細な観察が重要である.

症例
  • 佐々木 高信, 古堅 智則, 照屋 孝夫, 國吉 幸男
    2016 年 30 巻 7 号 p. 811-814
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は37歳女性,失神発作を主訴に前医を受診.精査にて心囊内に右房を圧排する囊胞性病変を認めた.症状と囊腫の関連を疑い,手術適応と判断した.術前に一時的ペースメーカーを挿入し,手術は完全胸腔鏡下に囊腫の開窓術を施行した.術中囊胞内容排液後,心拍数の上昇(40→60回/分)がみられた.術後病理にて,(心囊内)心膜囊腫の診断に至った.

    これまでも心膜囊腫の単発の切除例の報告は散見されるが,症状を伴ったものの報告は少ない.このような症例は稀と考え,若干の文献的考察を加え,報告する.

  • 髙木 玄教, 長谷川 剛生, 樋口 光徳, 鈴木 弘行
    2016 年 30 巻 7 号 p. 815-820
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー

    61歳,女性.当院PET検診で左S4に1.5 cm大の孤立性pure GGNを指摘され,当科で経過観察となった.その後陰影の増大傾向を認めたため手術の方針とした.縮小手術も考慮されたが,中枢側に存在すること,区域間の境界が不明瞭であったことよりsurgical margin確保のため胸腔鏡補助下左上葉切除術を行った.組織学的には肺胞壁に沿って小型リンパ球様細胞やplasma cellsが増生して結節を形成し,免疫染色ではGD20+,CD79a+であった.さらに免疫グロブリン重鎖遺伝子の再構成を認め,肺原発MALTリンパ腫の診断を得た.術後13ヵ月経過した現在,無再発経過中である.肺原発MALTリンパ腫は粘膜関連リンパ組織に由来する低悪性度のB細胞性リンパ腫で比較的稀な疾患である.多彩な画像所見を呈するが,pure GGNを呈する症例は非常に稀で,示唆に富む症例であると考えられたため報告する.

  • 松本 博文, 小柳 彰, 中村 昭博
    2016 年 30 巻 7 号 p. 821-826
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は56歳男性.咳嗽あり近医を受診したところ胸部CTにて異常陰影を認め,診断・治療目的に当院紹介となった.気管支鏡検査やPET/CT検査が行われ,確定診断は得られなかったが原発性肺癌を否定できず外科的切除の方針となった.術中所見では胸腔内に少量の漿液性胸水とほぼ全面にわたる癒着を認めた.癒着を剥離し右上葉切除とリンパ節郭清を行った.永久標本では腫瘤内に多数の虫卵とともに虫体を認めた他,術後の血清学的診断にてウエステルマン肺吸虫症と診断された.

    本疾患は西日本を中心に稀に認める寄生虫疾患で,多彩な臨床症状を示すことが知られている.本症例はPET/CT検査でFDG高集積を示し原発性肺癌との鑑別が困難であったが,十分な食餌歴の問診により本来は切除することなく診断・完治できた可能性が高い.若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 児玉 渉, 吹野 俊介, 大野 貴志
    2016 年 30 巻 7 号 p. 827-833
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー

    右と左の下葉肺葉内肺分画症に対し,VATS肺葉切除術を行い良好な経過が得られ,太い異常動脈処理法とその断端について検討した.【症例1】54歳男性.胸部下行大動脈から分岐し,右肺下葉に流入する異常動脈を認めた.右下葉肺葉内肺分画症の診断となり,VATS右下葉切除術を行った.直径18 mmの異常動脈を下大静脈まで剥離し,異常動脈を中枢側からvessel tape,2号絹糸,1号絹糸の順に結紮し,最後に自動縫合器にて末梢を切離した.【症例2】27歳男性.左下葉肺葉内肺分画症にて,VATS左下葉切除術を行った.胸部下行大動脈の横隔膜付近より直径13 mmの異常動脈が左肺底区に流入しており,異常動脈処理は症例1と同様に行った.術後Dynamic CTで異常動脈断端は,ともに断端瘤の徴候はない.当院での異常動脈の処理法は,二重結紮と自動縫合器で行い,安全性確実性が確保できていると考えられる.

  • 千葉 直久, 富岡 泰章, 戸矢崎 利也, 上田 雄一郎, 後藤 正司, 中川 達雄
    2016 年 30 巻 7 号 p. 834-839
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー

    肺切除術の際に過分葉を認めることが時にあるが,不全分葉であることが多い.今回,上舌区域間に明瞭な過分葉を認めた症例に対して区域切除を行った2例を経験したので報告する.症例1は57歳男性.左S1+2の肺癌に対して,胸腔鏡下上区域切除術を施行した.上舌区域間に明瞭な過分葉を認め,肺動脈は上葉支の腹側を走行し,B1+2+3が独立して分岐する転位気管支を認めた.症例2は80歳女性.左舌区の肺癌に対して,胸腔鏡下左舌区域切除を施行した.左上舌区域間に明瞭な過分葉を認め,共通肺静脈幹を認める以外,分岐異常は認めなかった.術後経過は共に良好で,現在まで無再発生存中である.過分葉を認める肺癌手術症例について,文献的考察を交え報告する.

  • 川崎 成章, 竹中 裕史, 東山 将大, 石黒 太志, 石川 義登, 重光 希公生
    2016 年 30 巻 7 号 p. 840-844
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー

    重傷の胸骨骨折2例に対しプレートを用いた胸骨固定術を行い,良好な結果を得たので報告する.症例1は,52歳,男性.交通事故にて受傷.胸骨骨折とそれに関連するフレイルチェスト,呼吸不全のため人工呼吸管理となった.しかし,呼吸状態が改善しなかったため,胸骨骨折に対しプレート固定術を行った.その結果,早期に人工呼吸器から離脱することができた.症例2は42歳,男性.転落により受傷.胸骨骨折の転位が大きく,偽関節,慢性疼痛,運動制限などの後遺症が懸念されたため,同様に固定術を行った.術後は経過良好で,懸念された後遺症無く社会復帰することができた.胸骨骨折が呼吸不全に関与する場合や転位が大きく後遺症が懸念される場合には,積極的に胸骨固定術を検討すべきであり,プレート固定術は有用と考える.

  • 金山 雅俊, 井上 政昭, 吉田 順一, 山下 慶之, 恩塚 龍士, 上野 安孝
    2016 年 30 巻 7 号 p. 845-850
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は79歳男性.糖尿病治療目的に紹介となったが,初診時の検査で右上葉肺癌(c-T2aN0M0 Stage IB)及び高度の大動脈弁狭窄症を指摘された.心機能は保たれていたが,弁膜症が高度なため肺癌手術における循環動態悪化のリスクが高く,弁膜症手術後の二期的手術では肺癌の進展が危惧されたため,一期的手術を選択した.手術は胸骨正中切開を行い,循環動態悪化時に迅速に人工心肺が装着できるように上行大動脈・右房に固定糸をおいた上で右上葉切除とリンパ節郭清を行った.その後に人工心肺下に大動脈弁置換術を行った.術後合併症なく,術後17日目に自宅退院となった.弁膜症合併肺癌に対し一期的手術を行うことにより安全な術後経過をたどれた症例を経験したので報告する.心弁膜症合併肺癌の一期的手術は,術前の評価を正確に行う事で安全に行える術式であると考える.

  • 大槻 雄士, 桑原 博昭
    2016 年 30 巻 7 号 p. 851-855
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は67歳,男性.左肺S6の8 mm大のすりガラス結節影を呈する早期肺癌に対して,胸腔鏡下左肺S6部分切除術を施行した.病理組織診断はlepdic growth 100%のAdenocarcinoma in situであった.3ヵ月後のCTで,左肺S1+2に10 mm大のすりガラス陰影を認めた.6ヵ月後のCTでは,病変は胸膜陥入を伴う結節影へ変化し,PET-CTではSUV-max 1.7の集積を認めた.以上から異時性肺癌を否定できず,胸腔鏡下左肺S1+2部分切除術を行った.病理組織診断は,肺梗塞であった.肺梗塞は,一般的にCTにて多発結節影を呈するが,自験例では孤発性すりガラス陰影から結節影へと変化した.これは肺梗塞の病理組織学的経時変化に一致する所見であり,肺梗塞のCTでの経時変化を観察しえたと考えた.さらに,同所見は肺癌の画像所見にも矛盾せず,肺癌との鑑別に注意を要することが示唆された.

  • 吉田 将和, 深澤 拓也, 湯川 拓郎, 森田 一郎, 物部 泰昌, 猶本 良夫
    2016 年 30 巻 7 号 p. 856-860
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は77歳,男性.検診で胸部異常陰影を指摘され紹介となった.胸部CTで左下葉S10に31 mm大の腫瘤影,左上葉S3に長径8 mm大の結節影を認め,経気管支的肺生検にて,術前に左S10から扁平上皮癌と診断された.手術では,高齢かつ低肺機能を考慮し,上葉病変に関して左S3部分切除を施行した.術中迅速病理診断の結果,肺腺癌であったため,多発肺癌と診断し,引き続き左下葉切除およびリンパ節郭清:ND2a-1を施行した.術後病理診断は左上葉が混合型小細胞癌で腫瘍は過半数を小細胞癌が占めており残りは高分化型腺癌であった.左下葉は大部分が扁平上皮癌で占められていたが,約5%に大細胞型神経内分泌癌(LCNEC)を認めた.多彩な病理組織像を呈した左上葉および左下葉肺癌の稀有な1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

  • 月岡 卓馬, 高濱 誠, 中嶋 隆, 木村 通孝, 井上 英俊, 山本 良二
    2016 年 30 巻 7 号 p. 861-865
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー

    成人横隔膜弛緩症に対し腱中心を温存し,筋組織を縫縮し胸壁に固定するTransthoracic radial plication techniqueを施行した.患者は79歳・女性.右横隔膜弛緩症による奇異呼吸を認めた.第7肋間前腋窩線に皮膚切開をおき前鋸筋をsplitし開胸した.肋間→横隔膜→フェルト→横隔膜→肋間の順に水平マットレス縫合を施行し骨性胸郭の外側で結紮することで腱中心を温存し周囲の弛緩した筋組織を縫縮・牽引し胸壁に固定した.腹側から側胸部にかけては第7肋間前腋窩線の創部から施行した.次に第10肋間背側に皮膚切開をおき広背筋をsplitし骨性胸郭に到達.開胸することなく同様の手技で側胸部から背側にかけて弛緩した筋組織を胸壁に固定した.術後呼吸器症状は改善し術後54日目に自宅退院となった.術後18ヵ月が経過し呼吸器症状は認めず,自宅にて従来通りの生活を送られている.

  • 池田 敏裕, 奥田 昌也, 徳永 義昌, 喜田 裕介, 横田 直哉, 横見瀬 裕保
    2016 年 30 巻 7 号 p. 866-870
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー

    FDG-PETで陽性となった肺内リンパ節の1症例を報告する.症例は77歳女性.胸部異常陰影を主訴に受診.胸部CTで右肺中葉S5に9 mm大のspiculaを伴う不整な結節影を認めた.FDG-PETではSUVmax:1.3となり,他の組織の集積と比較して陽性と診断した.悪性疾患の可能性を否定できなかったため,胸腔鏡下右中葉部分切除術を施行した.

    胸腔内は全面に癒着を認め,過去に胸腔内に炎症が存在したことが示唆された.切除標本は9 mmの黒色結節であり,病理診断で結節は境界明瞭で類円形~紡錘形に示す組織球様細胞が線維性結合組織を伴った増生を認め,部分的に炭粉貪食像がみられることから肺内リンパ節との診断であった.FDG-PETで集積を示す結節は,悪性疾患,炎症性疾患などが鑑別に挙がるが,炎症の既往があった場合には肺内リンパ節も鑑別候補として考慮する必要がある.

  • 安川 元章, 川口 剛史, 河合 紀和, 東条 尚
    2016 年 30 巻 7 号 p. 871-876
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は68歳女性.夜間多尿,口渇,多飲を自覚し,全身浮腫も認めたため,前医を受診し,ACTH依存性クッシング症候群と診断され当院紹介となった.頭部造影MRIで下垂体腫瘍を疑う病変が見つかり摘出術を施行したが病態の改善を得なかった.異所性ACTH産生腫瘍を疑い,FDG-PET/CT検査を施行し,右肺中葉の結節影に淡い集積を認めたが,炎症所見と考え原因病巣は指摘できなかった.68Ga-DOTATOC-PET/CT検査を施行し,FDG-PET/CT検査で炎症病変と考えられた右肺中葉の結節影に異常集積が認められ,同部位が原因病巣と考え手術を施行した.右中葉の径15 mm大の結節を楔状切除し,病理結果は定型カルチノイドであった.切除後,病状の改善が得られた.異所性ACTH産生肺カルチノイドの診断には苦慮することが多いが,本症例では68Ga-DOTATOC-PET/CTが診断に有用であったので報告する.

  • 川村 昌輝, 島田 和佳
    2016 年 30 巻 7 号 p. 877-881
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は33歳男性.胸部異常陰影を指摘され当院へ紹介された.胸部CTで右S6に最大径13.9 mmで辺縁不整な結節影を認めた.1年間の経過観察後も画像所見が変化せず原発性肺癌を否定できないため,診断確定目的に胸腔鏡下右S6楔状切除術を施行した.病理組織診では著明な線維化とIgG4免疫染色陽性の形質細胞浸潤を認め,IgG4/IgG陽性細胞比は約60%であった.血中IgG4値も255 mg/dLと上昇しており,IgG4関連肺疾患と診断した.他臓器病変の存在が懸念されたが検索した範囲内で異常所見を認めず,肺単独発症と考えられた.術後11ヵ月現在も血中IgG4値が高値のため経過観察中である.

  • 上田 桂子, 井上 修平, 尾崎 良智, 大内 政嗣
    2016 年 30 巻 7 号 p. 882-887
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は80歳代,女性.2年前に左上肺野の結節影を指摘され経過観察されていたが増大傾向にあり,当科紹介となった.胸部CT検査で左肺上葉に26 mm大の結節影と5 mm大のスリガラス陰影を認めた.左上葉肺癌疑いで左肺上葉切除術を施行した.切除標本の病理学的検討から肺結節病変は乳頭型腺癌と淡明細胞腺癌との衝突癌,スリガラス陰影病変は細気管支肺胞上皮癌と診断され,同一肺葉内に存在する同時性多発肺癌と考えられた.経時的にCT画像を後方視すると,二つの結節影が増大傾向を示す過程で衝突する様子が確認できた.三ヵ所の病変についてEGFR遺伝子変異の検索を行うと,全て同一のExon19欠失変異であった.衝突癌を含む多発肺癌の報告は少なく,本症例は同一のEGFR遺伝子変異パターンを示しながら,異なる分化傾向を示した興味深い症例と考えられた.

  • 渡邊 拓弥, 横田 圭右, 川野 理, 深井 一郎
    2016 年 30 巻 7 号 p. 888-892
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は44歳男性.数日前から続く呼吸苦にて近医を受診した.左緊張性気胸と診断され当院救急外来を紹介受診した.胸部CTにより巨大気腫性肺囊胞症(以下Giant bulla)による左緊張性肺囊胞症と診断した.酸素飽和度の低下を認め,緊急手術の適応と判断し,入院同日に肺囊胞切除と肺縫縮術を施行した.麻酔導入はrapid sequence inductionにて行い,肺囊胞への加圧時間を最小限にし,緊張性肺囊胞拡大による呼吸循環不全の予防に努めた.成人発症の緊張性肺囊胞症は稀であるため,緊張性気胸と誤診されることがあるが,両者の治療戦略は大きく異なる.症状出現から救急外来受診までの注意深い問診と胸部CTが鑑別に有用である.

  • 國光 多望, 木村 尚子, 杉田 裕介, 有本 斉仁, 宮内 善広, 森田 敬知
    2016 年 30 巻 7 号 p. 893-898
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は18歳,女性.大学の健診で胸部異常陰影を指摘され受診した.胸部CTで気管右側に4.0×2.1×1.9 cmの多房性腫瘤を認め上縦隔腫瘍の診断で胸腔鏡下に摘出術を施行した.腫瘤は被膜に包まれ,囊胞性部分と虚脱した肺様の充実性部分からなり,頭側に径1 mm程度の索状物を認めた.病理所見では,囊胞壁は多列線毛上皮で覆われ,周囲に平滑筋や気管支腺,軟骨組織を認め,一部に虚脱した肺胞様の構造を認めた.流入血管は増生と壁肥厚を認め,体動脈供給を受けていたと考えられたが,還流静脈の部位ははっきりしなかった.しかし,臓側胸膜と考えられる膜に被包されており,病理学的に肺葉外肺分画症と診断した.

    上縦隔に発生する肺葉外肺分画症は稀で,文献的考察を加えて報告する.

  • 星 史彦, 羽隅 透, 川村 昌輝, 東郷 威男, 岡田 克典, 斎藤 泰紀
    2016 年 30 巻 7 号 p. 899-904
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー

    <背景>有瘻性膿胸に対してはドレナージのみでは軽快することが少なく,瘻孔閉鎖術,大網充填術,胸郭成形術などが行われることが多い.しかし基礎疾患を有している症例が多く,外科的治療のリスクも少なくないのが現状である.

    <症例>66歳男性,膿胸に対し前医にて持続吸引,胸腔内洗浄および抗生剤の投与が行われたが数日後より気瘻が認められるようになり当科紹介となった.持続吸引では肺の伸展が得られず,改善が望めないため外科的治療が考慮された.しかし基礎疾患より外科的治療のリスクが高いため,気管支鏡下に左B8およびB9にEndobronchial Watanabe Spigot(EWS)を挿入し瘻孔を閉鎖することができた.EWS挿入後は肺の伸展も良好となりドレーンを抜去し退院することができた.

    <結語>EWSにて気瘻を閉鎖し高リスクの手術を回避し得た症例を経験した.

  • 飯島 慶仁, 中島 由貴, 木下 裕康, 秋山 博彦, 平田 知己, 浦本 秀隆
    2016 年 30 巻 7 号 p. 905-909
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は76歳男性.胸部レントゲン異常陰影で発見された.胸部CTで右肺上葉S3に21 mm大の結節影と,それに連続した葉気管支間リンパ節の腫大を認めた.また,右肺門部に気管支透亮像を伴う肺硬化像を認め中葉低形成が疑われた.右上葉肺腺癌cT1bN1M0,Stage IIAの診断で手術の方針となった.手術は気管支形成術(楔状切除)を伴う右上葉切除術,縦隔リンパ節郭清術を施行した.術中,拇指頭大の右中葉を確認した.低形成肺は感染を繰り返す可能性があり切除することも考慮したが,気管支吻合部にかかる張力を考え切除は行わなかった.肺の発育不全に関して文献的考察を加えて報告する.

  • 峯浦 一貴, 小山 孝彦, 加藤 良一
    2016 年 30 巻 7 号 p. 910-914
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は65歳女性.60歳時,完全房室ブロックに対してペースメーカーを留置されたが,61歳時ポケット感染のため対側に入れ替えられている.両側乳び胸,乳び心膜による呼吸苦のため入院した.まず胸腔鏡下に胸管結紮術,心膜切開術を行ったが,術後乳び胸再発を来した.次いで両側胸腔・腹腔シャントバルブ(Denverシャント)設置術を行ったところ,状態良好のまま外来で経過観察可能となった.その後,シャントバルブ設置17ヵ月後に敗血症を発症したため,他院で,使用していない方のペースメーカーリードを抜去されたところ,バルブ操作をほとんど行わなくても胸水は貯留しなくなった.ペースメーカーリードが乳び胸の原因となっていた可能性のある,稀な症例と考えられた.胸腔・腹腔シャントは難治性乳び胸に対する有用な治療法の1つとなり得ると考え,報告する.

  • 石橋 直也, 佐藤 伸之, 阿部 皓太郎
    2016 年 30 巻 7 号 p. 915-920
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は79歳女性.2009年に胸壁腫瘍摘出術を施行し孤立性線維性腫瘍(Solitary fibrous tumor:SFT)と診断された.同時に糖尿病も発見され内服治療を開始している.2012年に経過観察を終了としたが,2015年8月呼吸苦を主訴に当科を受診,左胸腔内を占拠する充実性腫瘤と胸水を認めSFTの再発と診断した.胸腔ドレナージと胸膜癒着術を行い症状は軽快したが,1ヵ月後に低血糖による見当識障害を発症した.通常の治療では改善せず,精査の結果血清中に高分子insulin-like growth factor-II(IGF-II)が同定され,手術検体でもIGF-IIが陽性であったため再発巣からのIGF-II産生による低血糖と診断した.ステロイド投与により血糖値が安定し,現在外来加療中である.IGF-IIを産生するSFT症例は比較的稀であるが低血糖発作を起こすことがあり注意を要する.

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